三叉神経痛といえば
西洋薬のfirstはCBZ
漢方薬は? どんな位置付け?
CASE 144
80歳 男性
定期処方:
Rp 1)バイアスピリン錠100mg 1錠・ブロプレス錠4mg 1錠 / 1x朝食後
Rp 2)ユリーフ錠2mg 2錠 ・テグレトール錠200mg 2錠 / 2x朝・夕食後
Rp 3)レバミピド錠100mg 3錠・マグミット錠330mg 3錠 / 3x毎食後
Rp 4)プロテカジン錠10mg 1錠 / 1x夕食後
Rp 5) グッドミン錠0.25mg 1錠 / 1x就寝前
以上 7日分
*処方はずっと、ほとんど変わりない。
*テグレトール、マグミット、グッドミン以外は一包化薬
患者の訴え : 「最近、ふらつくことがある。何度かこけて危なかった。
今度、CTを摂ってもらうことにした」
患者から得られた情報:
① 夜はよく眠れている。グッドミンは毎晩1錠服用中。
② 血圧は良好。立ちくらみ(-)
③ GFJ(-)
④ 三叉神経痛がよくなく、最近テグレトールを1日3回飲むことがある。
⑤ ④はDrに伝えていない。
薬歴から得られた情報:
① アルコール(-)、眠剤による持ち越し歴(-)
② テグレトールは屯用。今までは1日1~2回で余ることが多かった。
□CASE 144の薬歴
#1 テグレトールを1日2錠までにする
S)最近、ふらつくことがある。何度かこけて危なかった。
今度、CTを摂ってもらうことにした。
O) 三叉神経痛のコントロール不良→最近、テグレトールを1日3回飲むことも。
Drには伝えていない。
A) テグレトールの増量が原因かもしれない
P)テグレトールは用量調節が難しく、ふらつきやめまい、
倦怠感などが出やすい。 1日2錠までに留めておくように。
Drにも状況を伝えておきます(トレースレポート提出)。
R) お願いします。痛み止めだから3錠までいいかと思ってたよ。
たしかに三叉神経痛がよくない日だったかもしれない。
□解説
処方日数が7日分だったので、その理由を尋ねてみると「ふらつきがあるから、CTを受ける」という。とうぜん、ふらつきの原因が薬にあるのではないか? そう考え、質問していく。
原因になりそうな薬はたくさんある。過降圧なら処方が変更されるだろうし、血圧も良いとのことなので降圧薬は除外。立ちくらみでもないからユリーフも違うかな。眠剤の持ち越しでもない。GFJを飲んでしまっていて、テグレトールの血中濃度上昇か? これでもない。やはりCTの結果待ちかなと思っていると、
「三叉神経痛がよくなく、最近テグレトールを1日3回飲むことがある」とのコメントが、思いがけず患者の口から飛び出す。
これだ。テグレトールは三叉神経痛が痛むときに屯用していたため、一包化薬から外していた。余りがちになることも多く、まさか勝手に量を増やしているとは想像できなかった。
ともかく、これでアセスメントは確定した。あとは服薬指導とトレースレポートにて対応している。
<トレースレポート>
最近、三叉神経痛の調子がよくなく、自己判断でテグレトールを1日3回飲むことがあるそうです。テグレトールは、患者が訴えるような、ふらつき等の副作用が多い薬なので、1日2回の指示を守るように指導しています。
また、漢方薬の柴胡桂枝湯は証に関係なく、三叉神経痛に有効と言われています。
ただし単剤での治療は難しく、そのメリットは併用にてテグレトールを減量できることにあります。
あわせてご報告します。よろしくご検討をお願いします。
□考察
CTの結果、原因は違うところにあるかもしれない。しかし、もしテグレトールが原因であるならば、今まで何もなかったことを考えても、やはりその量に問題があることになる。
だが、三叉神経痛もつらいようだ。テグレトールの用量を守るだけでは、ふらつきを改善できたとしても、つらいままになってしまう。別の手が必要だ。
そこで使えるのが柴胡桂枝湯だ。証をあまり考えずに病名投与でいけるとされている(ただ理論的には、陰虚にはむかない。とうぜん、件の患者は陰虚ではない。その他、葛根湯や五苓散、桂枝加朮附湯なども三叉神経痛に用いられる)。
そして、その最大のメリットはテグレトールを減量できることにある。なんせテグレトールは、ちょっと気を遣う薬ですから・・・。
追記: 記事作成後に偶然、患者さんと遭遇。テグレトールを2錠/日までにして、ふらつきがなくなったとのこと。やっぱりね。しかも、「じつは4錠/日飲むこともあった」とカミングアウト! 「三叉神経痛が痛むので、早めに病院にいく」とも。ぜひ、そうしてください ^_^;

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