妊婦への降圧剤 ~ニュース、ガイドライン、バイブル~
妊婦に禁忌の降圧剤は?
妊婦に安全な降圧剤は?
NHKニュースと高血圧ガイドライン2014(案)、そしておすすめ書籍
【「高血圧の薬で妊婦20人に副作用か」NHK2013年11月14日】
妊娠中にACE阻害薬やARBを服用し、羊水が減少する副作用が、この10年間に少なくとも20件あることが、NHKと国立成育医療研究センターの調査で判明したとNHKで報道された。
妊娠中期以降にRA系の降圧剤を服用すると、羊水が減り、胎児の成長を妨げてしまうために、妊婦への投与が禁忌となっている。先の20件のうち6人の赤ちゃんが死亡し、2人の赤ちゃんが腎臓に重い障害を患っているという。
またACE阻害薬は、妊娠初期の服用において、心血管系と中枢神経系奇形のリスクが増加するとの報告があり、添付文書にも記載がある。しかし現在では、否定的な報告も多い。
妊娠初期は原則禁忌、中期以降は絶対禁忌といったところか。
どちらにしても、妊娠が判明した場合や妊娠を計画しているケースでは、RA系以外の降圧剤を使用すべきだろう。
【高血圧治療ガイドライン2014(案)】
( 追記:ガイドライン2014の妊婦・授乳婦はこちら)
現在、高齢出産(35~40歳)の頻度は4人に1人にのぼる。つまり妊娠高血圧症候群(昔の妊娠中毒症)のリスクが高まっていることになる。この状況を踏まえ、ガイドライン2014では、妊娠中の降圧剤が示されている(予定)。
妊娠20週未満 : 中枢作動薬のメチルドパ(アルドメット)
(3剤) 血管拡張薬のヒドララジン(アプレゾリン)
αβ遮断薬のラベタロール(トランデート)
妊娠20週以降 : 上記に加えて
(4剤) Ca拮抗薬のニフェジピン(アダラート)*この他のβ遮断薬やCa拮抗薬を投与する場合は、患者へのインフォームドコンセントを行い、医師の責任の下で使用する。
同様に授乳の機会も高まることから、以下の10成分が示されている(予定)。
Ca拮抗薬:ニフェジピン(アダラート)、ニカルジピン(ペルジピン)、アムロジピン(アムロジン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)
αβ遮断薬:ラベタロール(トランデート)
β遮断薬:プロプラノロール(インデラル)
中枢作動薬:メチルドパ(アルドメット)
血管拡張薬:ヒドララジン(アプレゾリン)
ACE阻害薬:カプトプリル(カプトリル)、エナラプリル(レニベース)
【妊娠と授乳のバイブルから】
ぼくのこの分野のバイブルは『薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳』(*1)だ。これは薬局必須のアイテムだろう。実用性も非常に高い。以下、バイブルより参考までに。
<妊娠初期> (*1より引用 P. 262)
軽症高血圧(140~160/90~110mmHg)で臓器障害のない場合は経過観察でよい。
重症高血圧(160~180/110mmHg以上)では、軽症高血圧を目標に降圧剤を投与する。「妊娠前から降圧薬を服用している場合は妊娠中も同様の薬剤を使用してよい。ただし、ACE阻害薬またはARB使用中に妊娠が判明すれば直ちに中止する。Ca拮抗薬、利尿薬については催奇形性の報告はないが、妊娠の自然経過により血圧が下降する可能性が期待できるため降圧薬の減量もしくは他剤に変更することも考慮する」
<妊娠中期・後期> (*1より引用 P. 264)
「血圧を140/90mmHg以下にコントロールすることで良好な妊娠経過および出産が可能となる。メチルドパ(またはヒドララジン)により、目標血圧140/90mmHg以下になるよう調節する。コントロール不良であればラベタロールまたはCa拮抗薬への変更または併用を考慮する。(中略)また、急激な降圧は胎盤還流障害の可能性(特に妊娠後期)があるため、家庭内血圧測定を行いながら少量より開始し、徐々に増量することが望ましい」
*1:伊藤真也、村島温子『薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳』南山堂
これは薬局必須のアイテムでしょう。すぐに使えます。
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