カテゴリー「(14) 妊婦・授乳婦」の5件の記事

2016年6月24日 (金)

妊婦・授乳婦への降圧薬 ~高血圧治療ガイドライン2014~

飛び込みの患者さんの意外な訴え。
授乳婦さんへおススメのの降圧薬。
ガイドラインにも載ってますよ。

 飛び込みの新患さん。お薬手帳には“アルドメット錠250mg 3錠/分3”の記載。その併用薬に話が及ぶと開口一番、「授乳中に使える血圧の薬って、これだけですか? 他にありませんか? 1日3回も飲まないといけないから・・・」。

 お話を伺うと、妊娠中にはアルドメットを服用しており、出産後は近くの内科で診てもらうように、と。内科医は授乳婦さんに使える薬がわからないから、妊娠中と同じものにしておこう、と。隣の薬局で相談するものの医師の選んだものを、と。そのことがひっかかっていて、他の薬局でも聞いてみようと思い至ったらしい・・・。

 いや、そんなに難しい話じゃありません。ガイドラインにも載ってますよ。いろんな意味で残念な話ですが、せっかくなのでのっけておきます(以下、高血圧治療ガイドライン2014より)。

【妊娠高血圧の降圧薬選択】

Fig1

【授乳が可能と考えられる降圧薬】

Fig2

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2013年11月29日 (金)

妊婦への降圧剤 ~ニュース、ガイドライン、バイブル~

妊婦に禁忌の降圧剤は?
妊婦に安全な降圧剤は?
NHKニュースと高血圧ガイドライン2014(案)、そしておすすめ書籍

【「高血圧の薬で妊婦20人に副作用かNHK2013年11月14日

 妊娠中にACE阻害薬やARBを服用し、羊水が減少する副作用が、この10年間に少なくとも20件あることが、NHKと国立成育医療研究センターの調査で判明したとNHKで報道された。

 妊娠中期以降にRA系の降圧剤を服用すると、羊水が減り、胎児の成長を妨げてしまうために、妊婦への投与が禁忌となっている。先の20件のうち6人の赤ちゃんが死亡し、2人の赤ちゃんが腎臓に重い障害を患っているという。

 またACE阻害薬は、妊娠初期の服用において、心血管系と中枢神経系奇形のリスクが増加するとの報告があり、添付文書にも記載がある。しかし現在では、否定的な報告も多い。

 妊娠初期は原則禁忌、中期以降は絶対禁忌といったところか。

 どちらにしても、妊娠が判明した場合や妊娠を計画しているケースでは、RA系以外の降圧剤を使用すべきだろう。

【高血圧治療ガイドライン2014(案)】

( 追記:ガイドライン2014の妊婦・授乳婦はこちら

 現在、高齢出産(35~40歳)の頻度は4人に1人にのぼる。つまり妊娠高血圧症候群(昔の妊娠中毒症)のリスクが高まっていることになる。この状況を踏まえ、ガイドライン2014では、妊娠中の降圧剤が示されている(予定)。

 妊娠20週未満 : 中枢作動薬のメチルドパ(アルドメット)
     (3剤)    血管拡張薬のヒドララジン(アプレゾリン)
             αβ遮断薬のラベタロール(トランデート)
 妊娠20週以降 : 上記に加えて
     (4剤)    Ca拮抗薬のニフェジピン(アダラート)

 *この他のβ遮断薬やCa拮抗薬を投与する場合は、患者へのインフォームドコンセントを行い、医師の責任の下で使用する。

 同様に授乳の機会も高まることから、以下の10成分が示されている(予定)。

 Ca拮抗薬:ニフェジピン(アダラート)、ニカルジピン(ペルジピン)、アムロジピン(アムロジン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)
 αβ遮断薬:ラベタロール(トランデート)
 β遮断薬:プロプラノロール(インデラル)
 中枢作動薬:メチルドパ(アルドメット)
 血管拡張薬:ヒドララジン(アプレゾリン)
 ACE阻害薬:カプトプリル(カプトリル)、エナラプリル(レニベース)

【妊娠と授乳のバイブルから】

 
 
ぼくのこの分野のバイブルは『薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳』(*1)だ。これは薬局必須のアイテムだろう。実用性も非常に高い。以下、バイブルより参考までに。

<妊娠初期> (*1より引用 P. 262)

 軽症高血圧(140~160/90~110mmHg)で臓器障害のない場合は経過観察でよい。
 重症高血圧(160~180/110mmHg以上)では、軽症高血圧を目標に降圧剤を投与する。

 「妊娠前から降圧薬を服用している場合は妊娠中も同様の薬剤を使用してよい。ただし、ACE阻害薬またはARB使用中に妊娠が判明すれば直ちに中止する。Ca拮抗薬、利尿薬については催奇形性の報告はないが、妊娠の自然経過により血圧が下降する可能性が期待できるため降圧薬の減量もしくは他剤に変更することも考慮する」

<妊娠中期・後期> (*1より引用 P. 264)

 「血圧を140/90mmHg以下にコントロールすることで良好な妊娠経過および出産が可能となる。メチルドパ(またはヒドララジン)により、目標血圧140/90mmHg以下になるよう調節する。コントロール不良であればラベタロールまたはCa拮抗薬への変更または併用を考慮する。(中略)また、急激な降圧は胎盤還流障害の可能性(特に妊娠後期)があるため、家庭内血圧測定を行いながら少量より開始し、徐々に増量することが望ましい」

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*1:伊藤真也、村島温子『薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳』南山堂
 これは薬局必須のアイテムでしょう。すぐに使えます。

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2012年5月25日 (金)

「妊娠しているかも」への投薬

明日が生理予定日で「妊娠しているかも」
患者の不安に対して
妊婦への投薬における原則

CASE 118

25歳 女性  

他科受診:なし  併用薬 :なし

今回の処方:
Rp1) ホスミシン錠500mg 2T/2x朝・夕食後 3日分
    2) プリンペラン錠5mg 3T・ビオフェルミン錠剤 3T /3x毎食後 3日分

患者から得られた情報:
①「妊娠しているかも」
② 明日が生理予定日
③ ①②はDrには伝えている。
④「胃腸炎だろう」といわれた。

□CASE 118の薬歴
#1 服薬への不安をやわらげる
  S) 妊娠しているかも。明日が生理予定日。
 O) Drには伝えている。不安な様子(+)
    胃腸炎にてRp1)2)処方
 A) 絶対過敏期だがサリドマイドでも31日まではNP。
    さらに処方薬は安全性が高い
 P) 妊娠していたとしても、妊婦にも使われる薬ですし、
   薬の影響を受けない期間にはもうすこし余裕があるので、
   3日間はしっかり飲んで大丈夫。
    その後は過敏な時期なので、自己判断は禁物です。
      
 
□解説
 明日が生理予定日ということは絶対過敏期にあたる。「生理が遅れている」「妊娠しているかも?」くらいがいちばん薬の影響を受けやすい。

 Drには状況を伝えているし、Drも安全性の高い薬を選んでいる。この状況でできることは安心して薬を飲んでもらうこと。それしかない。

 A)で示した「絶対過敏期だがサリドマイドでも31日まではNP」はCASE 117でも引用した下記を根拠にしている。

 また、サリドマイドの服用時期とそれによって生じた奇形の間には明確な因果関係が知られている。最終月経から32日以前、あるいは52日以降の服薬では奇形が発生していない。このことはサリドマイドであっても受精後2週間は先天異常を引き起こさなかったことを示している。 
(林昌洋『高リスク患者への薬学的ケア 研修用テキスト』日本薬剤師研修センター  P.18)

 妊婦に通常使用し得る薬剤であること。そしてまだ日程的にはじつは大丈夫であること。これらを材料に安心して服薬するように促している。

 
 
□考察
 今回のケースでは、患者の不安をやわらげるためだけに知識を用いた。なぜなら特別なリスクがほとんどないからだ(通常成人への投薬と変わらないの意)。CASE 117ではこの分野の知識の使いかたを誤った。

 妊婦への投薬は、まずリスクをできるだけ回避する。そのうえで必要な薬はできるだけ安心して飲んでもらう。

 これを原則として刻んでおこう。

 
 そして患者に安心を与えるためには薬剤師の自信が必要だ。そう言い切るための根拠。これがなければ「心配はいらない」というメタ・メッセージは伝わらない。

 今回はその根拠がふたつもあった。メタ・メッセージはきっと伝わっただろう。
 

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2012年5月11日 (金)

ナウゼリンと妊娠?

知識と情報をどう使うか?
いちばんたいせつなことは何なのか?
迷いや後悔とならないための方針

CASE 117

20歳 女性  

他科受診: 耳鼻科

併用薬 (お薬手帳より) :
Rp1) クラリチン錠10mg 1T/1x夕食後 28日分
  2) アラミスト点鼻液27.5μg 1本

今回(5月9日来局)の処方:
Rp3) ガスターD錠10mg 2T/2x朝・夕食後 3日分
   4) ナウゼリン錠10mg 3T/3x毎食前   3日分

薬歴から得られた情報:
① 2回目の来局(CASE 116 の患者)
② Rp3) 4)は前回Do

患者から得られた情報:
① 吐き気(+)、食欲(-)
② 「妊娠はしてないと思うけど・・・」
③ 生理予定日は月末の30日くらい。

□CASE 117の薬歴
#1 無影響期のナウゼリンと残薬
  S) 妊娠はしてないと思うけど・・・
 O) 吐き気(+)食欲(-)→ナウゼリン処方
    生理予定日は月末30日くらい
 A) 無影響期なので3日間はNP
    ナウゼリンには催奇形性があるので残薬が心配
 P) ナウゼリンは生理予定日以降はぜったいに飲んではいけない。
    3日経過したら、余っていても捨ててしまうこと。
 
□解説
 最終月経初日からの日数が28日未満は無影響期とよばれ、薬の影響を受けることはない(半減期が長い場合は考慮が必要になる場合もある)。

 このことはあのサリドマイドが証明している。

 また、サリドマイドの服用時期とそれによって生じた奇形の間には明確な因果関係が知られている。最終月経から32日以前、あるいは52日以降の服薬では奇形が発生していない。このことはサリドマイドであっても受精後2週間は先天異常を引き起こさなかったことを示している。 
(林昌洋『高リスク患者への薬学的ケア 研修用テキスト』日本薬剤師研修センター  P.18)

 今回のケースでは、次回の生理予定日を30日として今が9日だから、無影響期で間違いない。

 ナウゼリンは動物実験において催奇形性が確認されている。ゆえに妊婦には禁忌となってはいるが、無影響期においては当てはまらない(だって無影響期だから)。むしろ問題は残薬だ。

 吐き気止めの類は症状が改善してしまうと、服薬を中断することが多い。つまり、リスクのある薬が手元に残ってしまうことになる。そのリスクを回避するために、処方日数の3日が過ぎたら、破棄するようにアナウンスしている。

 
□考察
 投薬後に後悔した。やっぱり疑義照会をしてプリンペランなどに変更してもらえばよかった、と。

 たしかに理論上は問題ない。スケジュール的にはまだ受精すらしていないかもしれない。でも残薬というリスクは残ることになる。そして疑義照会さえしておけば、そのリスクすら雲散する。

 「妊娠しているかもしれない」そして「より安全な薬がある」。であるならば、すぐに疑義照会へと行動を移すべきだ。

 無影響期なのかどうかといった情報を用いるのはそのあとだ。今回のケースなら、患者に安心を与えるようにその情報を使えばいい。そのための知識であるべきだった。

 知識の使い方を誤ったケースとして記しておく。

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2010年3月12日 (金)

若い女性を見たら、妊娠を疑え

「若い女性を見たら、妊娠を疑え」 これは鉄則だ
急性期疾患なら必ず確認している事項だが・・・

CASE 52

28歳 女性

処方:
Rp1) メバロチン錠5mg 1T / 1x夕食後 28日分

患者のコメント:「このお薬、妊娠してても大丈夫ですか?」

患者から得られた情報:
① 健診にてコレステロールが高いと指摘(+)
② LDL-C:152mg/dL、家族歴(+)
③ Drより、「家族歴(+)なので、やさしい薬を飲んでおこう」と話あり
④ 子供を望んでおり、妊娠の可能性(+)

疑義照会:処方削除、病院に戻るように伝言依頼(+)

□CASE 52の薬歴
#1 妊娠希望・可能性のためスタチンは不適
 S) このお薬、妊娠してても大丈夫ですか?
 O) LDL-C:152、家族歴(+)にてスタチン処方
   子供を望んでおり、妊娠の可能性もあり
 A) スタチンは催奇形性が高く不適
   状況的にも薬物療法は不適と思われる
 P) 疑義照会
   薬は中止、病院に戻るように伝える

□解説
 何となく違和感を感じていた。一通りのやりとりを終えた後、患者からの質問が「このお薬、妊娠してても大丈夫ですか?」だった。

 スタチンは催奇形性の高い薬である。

<催奇形性の危険度の高い薬剤一覧(*1)>
5点:サリドマイド、チガソン、ワーファリン、アレビアチン、デパケン、ミノアレ散、リウマトレックス
5点~4点:チョコラA
4点:ストレプトマイシン、テグレトール、リボトリール、コルヒチン、セルシン、ボンゾール、リーマス
   フェノバール、マイソリン、サイトテック、卵胞‐黄体ホルモン配合剤(高用量)
   レベトール、HMG-CoA還元酵素阻害薬
妊娠後期4点:ACE阻害薬、ARB(←現在は妊娠初期も注意が必要
       テトラサイクリン系抗生物質
(抗がん剤などの細胞毒性・遺伝毒性を有する薬剤は取り上げていない)

*1:2005年4月1日 日本薬剤師研修センター発行
 「正しい薬物療法のために病態整理と薬効薬理から処方せんを見る‐婦人科領域‐」より引用
 

 疑義照会にてDrに感謝された。私は患者さんに感謝しながら、疑義照会の内容を伝えた。

□考察
 言い訳にすぎないが、慢性疾患の薬であったために、確認を怠ってしまった。

 「若い女性を見たら、妊娠を疑え」

 これは鉄則だ。調剤の段階で確認できるようになりたい。
 
 
 違和感は確かに感じていた。しかし慣れた薬と混みあった薬局の雰囲気が、判断力をミスリードさせた。
 

 私たちはよく「違和感がある」と言っているが、その正体をとらえるところまで考えようとしないことが多い。何がその違和感をもたらしているかまで意識を掘り下げないうちに、忘れたり、慣れたり、流したりしてしまう。違和感を曖昧なものにしているのは、自分自身なのだ。
 心に「ん? あれ?」というかすかなさざなみが立ったら、それを感情の動きとしてすくい取る。メモにしてみたり、口に出してみたりして、違和感を意識化する。なんとなく埋もれてしまわないようにつかまえる。そしてその正体を見抜いていく。(*2)

 「違和感を流さず、リスクを回避する」

 リスクマネージメントには欠かせない原則だ。

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*2:齋藤孝『違和感のチカラ-最初の「あれ?」は案外正しい!』角川oneテーマ21

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