カテゴリー「副作用」の16件の記事

2009年12月11日 (金)

リレンザが効かない!?

タミフル・リレンザは解熱剤ではない
この誤解は根強い
熱が急激に下がるのは副作用かもしれない

CASE 44

18歳 男性
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし

処方内容
Rp1)リレンザ 4BL / 2x朝・夕食後 5日分
 2)カロナール錠300mg 1T / 1x発熱時 5回分

投薬2日後にTEL:
「リレンザでは熱が下がらない。以前、タミフルを飲んだときには1日で下がった。
 タミフルでなくて大丈夫か?」

薬歴より得られた情報:
① 平成17年12月タミフル服用歴あり
② 2日前にリレンザを投薬。薬局にて1回分(2吸入)実施。手技に問題なし。
  

患者から得られた情報:
① KT:38.6℃ 夜になると高くなる。
② 熱以外に症状はなく、食事も取れている。
② 手技、用法・用量は問題ない。

□CASE 44の薬歴
#1 リレンザへの誤解
  S) リレンザでは熱が下がらない。以前、タミフルを飲んだときには1日で下がった。
    タミフルでなくて大丈夫か?
 O) H17.12にタミフル服用歴あり。
   リレンザの吸入手技、用法・用量NP。
    2日経過し、熱(KT:38.6℃)以外症状なし。
 A) 抗ウイルス剤への理解が必要
 P) リレンザやタミフルは解熱剤ではありません。
    ウイルスの増殖を抑えて、インフルエンザで苦しむ期間を短くする薬です。
    そのまま吸入を続け、高熱できついときはカロナールで対応してください。

□解説
 新型インフルエンザ騒動でおざなりになってはいるが、10代へのタミフルの投与は原則禁忌となっている。そこでリレンザが選択され、投薬の際は納得して帰られている。熱が下がらないことと過去に経験したタミフルの効果(ここではそう表現しておく)から、「タミフルでなくて大丈夫か」との電話を受ける。

 ‘タミフルやリレンザは熱を下げる’といった誤解は根強い。「どのくらいで効きますか」との質問の意も同じだろう。そこで、リレンザの吸入手技や用法・用量そして患者の全身状態を確認してうえで、リレンザの薬識の補正を行っている。

□考察
 タミフルが登場したとき、ほんとうに驚いた。‘タミフルは効く’。まさに特効薬。高熱がすっと下がるからだ。ウイルスの増殖を抑えれば、きっと身体が発熱しなくても済むんだろうなんて思っていた。

 しかしそれは見当違い。タミフルの未変化体が脳内の体温調節中枢を阻害する。結果、熱が下がる。この機序は中外製薬も認めている。タミフルの副作用に‘低体温’もある。これが‘タミフルは効く’の正体と考えればスッキリする。

 精神神経系の症状はインフルエンザそのものが原因のこともある。それは高熱状態でおこる。しかしタミフルでは、熱が37℃台まで下がって異常行動を起こしているケースがある。やはりタミフルの副作用と考えるのが自然だろう。

 タミフルが脳に移行することはよく知られている。最近は患者も知っている。ではリレンザはどうだろうか。リレンザはBAも低くほとんど吸収されない。理論的には低体温も起こらないはずだ。添付文書にも記載はない。

 ところがGSKに確認すると、なんとリレンザでも数例ではあるが低体温の報告があるそうだ。たった1度の吸入で39℃から34℃台になった症例もある。全身性の副作用は考えにくいが原因は不明…。

 

 薬剤師の目からみれば、安全性ではリレンザが一枚も二枚も上手だ。しかし過信は禁物。患者を安心させようと言い過ぎてはいけない。過ぎたるは及ばざるが如しである。

 

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2009年11月20日 (金)

10代へのタミフル投与

10代へのタミフル原則禁止は継続されている
にもかかわらず、新型では解禁扱い
異常行動のリスクはどうなった?

CASE 43

13歳 男の子
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし

処方内容
Rp1)タミフルカプセル 1.92Cap / 2x朝・夕食後 5日分(*脱カプセルにて調剤)
  2)カロナール細粒50% 0.7g / 1x発熱時 5回分

母親のコメント:「インフルエンザだった。新型なのに、本人はケロッとしてるんだけど」

患者から得られた情報:
① KT:38.9℃ 他に症状はない
② BW:36kg
③ 過去にタミフルの服用歴があり、新型なのでタミフルを使うとDrより説明あり

□CASE 43の薬歴
#1 10代へのタミフル投与と異常行動
  S) KT:38.9℃、本人はケロッとしている
 O) 過去にタミフル服用歴があり、新型なのでタミフルを使うとDrより説明あり
 A) 10代への投与の現状と異常行動への理解必要
 P) 通常の季節性のインフルエンザでは10代へのタミフルは禁止となっています。
   2日間は目を離さない、服用直後は特に注意しておいてください。
   うわ言をいう、ぼっーとなる、息苦しそうなどいつもと違うときは即中止を。

□解説
 タミフルの10代原則禁止は継続されており、公式には解除されていない。原則禁止が継続となっている理由は2つある。まず、1万人規模の疫学調査において、異常行動のリスクを高めている可能性を否定できないデータが出ていること。もう1つは原則禁止となってから、異常行動による死亡事故が報告されていないことだ。
 タミフルの警告には「この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること」とある。今回の新型はハイリスクとみなされているため、解禁状態になっているといっても差し支えないだろう。

 しかし、異常行動の問題が解決されたわけではない。「2日間は目を離さない」この約束は徹底する必要がある(幸いというか、世間が過剰な対応をしているので、子供がインフルエンザなら親も出勤できないようなケースも多く、この点で問題になることは少ないようだ)。
 さらに、タミフル服用開始から異常行動や精神神経系の副作用が出るまでの時間は短い傾向にある。7割くらいはタミフルを1~2回服用したあとに起こっているようだ。以上の点を考慮して服薬支援を行っている。

□考察
 新型なので10代もOK。この理論は効果面だけを見たものだ。その根拠も怪しい。異常行動(をはじめとした精神神経系の副作用)の問題は議論されていない。

  「インフルエンザ脳症などによっても、同じ様な症状があらわれるとの報告がありますので、同様にご注意ください」と指導箋には書いてある。たしかに起きている症状は表層的には同じだ。しかし、実は違う。インフルエンザで起こるせん妄は高熱状態で起こるが、タミフルによるせん妄は低体温でも起きる。さらに脳症のタイプも全く異なる。
 
 また過去の症例を紐解くと、精神神経系の副作用症状は最初のタミフル服用直後に起こっているケースが多い。タミフルの脳への移行が原因であるならば、未変化体の体内動態が問題となる。未変化体のみがBBBを通過しうるからだ。
 未変化体のTmaxは 非常に早い。これがタミフル服用直後に症状が現れていることと関係しているのではないだろうか。
 未変化体の大部分が肝臓において加水分解されるまでに、脳も自分自身で積極的に解毒を行っている。BBBにおいて、P糖タンパク質が脳に入ろうとする未変化体を汲み出す。「あたかも脳は、一個の生体に寄宿している、排泄機能を備えた別の一個体なのである(*1)」という澤田先生のフレーズを思い出す。しかし、肝臓による代謝やBBBのP糖タンパク質には個人差がある。さらにインフルエンザで全身状態が悪くなり、その機能が弱まっていたとしたら・・・。

  異常行動や精神神経系の症状は、タミフルによる副作用と考えて対応していくことが正しい、と私は考えている。一薬剤師にできることは限られていることもわかっている。しかし、タミフルの副作用を前提とした服薬支援を行うか否かは、各薬剤師に選択できることではないだろうか。

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*1:この薬はウサギかカメか(中公新書) 澤田康文 著 

 
 
 
 
 

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2009年10月30日 (金)

タミフルと麻黄湯

新型インフルエンザ問題
タミフルと簡易検査の問題
麻黄湯はハズレじゃないぞ

CASE 41

32歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし

処方内容
Rp1)ツムラ麻黄湯エキス顆粒 7.5g / 3x毎食前 4日分
  2)カロナール錠300mg 1T / 1x発熱時 5回分

患者のコメント:
「子供がインフルエンザだから、そうだと思ってたけど陰性だった。
 陰性だからタミフルは出せないけど、インフルエンザに効果のある漢方をだしておくと」

患者から得られた情報:
①今日の昼くらいから急に発熱(16時来局)
②KT:38.2℃
③悪寒あり、発汗なし
④納得していない様子あり

□CASE 41の薬歴
#1 ツムラNo.27の服薬意欲を高める
  S) 検査で陰性だからタミフルは出せないけど、インフルエンザに効果のある漢方をだしておくと
 O) 子供がインフルエンザ→納得していない様子(+)
    昼より発熱、16時来局
    KT:38.2℃、悪寒(+)、発汗(-)
 A) インフルエンザと思われる
    証は適、しっかり服用するように仕向ける必要あり
 P) タミフルと同等の効果が報告されている漢方薬です。
    発汗させることにより免疫力をあげ、早くなおしてくれます。
    今日はすぐに1包飲んでください。

□解説
 インフルエンザパニックを引き起こしている日本。検査で陰性の結果に納得がいかない患者がいる。「なんでタミフルをもらえないんだ」そういう空気が伝わってくる。なかにはドクターに頼み込んで出してもらって満足している患者もいる。異常だ。
 今回のケースは状況や症状を考えても間違いなくインフルエンザだろう。ドクターもそう思っているから麻黄湯を選択している。

 ここで2点補足をいれておく。
 ①タミフルの処方に際して、検査は必須項目ではない。はっきりいって医療費のムダにすぎない。しかしインフルエンザ恐怖症に陥ってしまった日本において、会社や学校といった世間がそれを許さない状況にあることは悲しい。
 ②迅速検査キットにて陽性と判断できるにはある程度のウイルス量が必要といわれている。発熱から12時間以上経過すると90%~100%の確率で陽性と判断できるとのデータもある。日本では陽性患者の約3割が陰性に、CDCは約6割と報告している。つまり陽性なら信頼できるが陰性なら信頼できないということになる。検査は必要ないといわれるわけだ。

 今回のケースに話を戻す。問題点は「患者に(インフルエンザ陰性もしくはタミフルをもらえないことに)納得をしていない様子がみられる」ことだ。せっかくきつい身体に鞭打って診てもらったのに、明日また違う病院に行くなんてことになったら・・・。
 麻黄湯の証でもあるし、しっかり飲んでもらえるように服薬支援を行っている。
 漢方製剤「麻黄湯」タミフル並み効果(2009年5月8日 読売新聞)

□考察
 検査で陽性→タミフル or リレンザ
 検査で陰性→麻黄湯
 というパターンが当薬局では増えている。まるで予選落ちのような感じで麻黄湯をもらいにくる患者には声を大にして言いたい。「麻黄湯はハズレじゃない」と。

 タミフルは問題が多い薬だ。メリットとデメリット、効果と副作用のバランスのとれた服薬支援をおこなっていきたいとCASE 39では書いたがこの薬だけは無理だ(リレンザにはそこまでの感情はない)。

 今回の新型インフルエンザの流行に際して、ノイラミニダーゼ阻害薬の役割は、季節性インフルエンザで周知されている発熱期間の短縮ではなく、重症化や死亡を防止することにある。

 厚生労働省のHPにある「新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)」には上記のように書かれている。確かにタミフルが最適な時間に投与されれば、重症化や死亡を防止することができるかもしれない。しかし実際には難しい。迅速検査キットになど頼っていればなおさらだ。診療ガイドラインの目論見通りにはならない。
 なぜなら、タミフルでは脳症などの重症化を防止できないからだ。

 タミフルは脳症になるのを予防しない。脳症になるのが恐いからタミフルを飲むというのは、まったくおかしい。脳症はサイトカインストームで起きていて、タミフルを服用する頃はサイトカインはすでにたくさん出ていてサイトカインストームを抑えるわけではありません。厚労省の研究班だった横田俊平氏(横浜市立大学医学部小児科教授)も脳症を防止しない、と言っています。(*1)

 タミフルは発熱期間を1日短縮させる。しかし脳症は予防しない。周囲への感染拡大防止を示すデータもない(中外製薬学術より)。さらには異常行動やタミフル脳症の問題。
 どうしても副作用中心の服薬支援しかできない。
 「麻黄湯は当たりですよ」

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*1:薬のチェックは命のチェック 36 [特集]インフルエンザはかぜ!

 

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2009年10月23日 (金)

トピナと腎結石

トピナをはじめて投薬した
この手の薬は慎重になる
O)情報は患者のフィルター情報だ

CASE 40

30歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし  副作用歴:なし
アルコール(-)  タバコ(-)  車の運転(+)

前回の処方
Rp1)デパケンR錠200mg 10T / 2x朝・夕食後

前回の薬歴
#1:デパケンR増量によるSEへの注意喚起
 S)Css=48mg/dLなのに、またてんかん発作(動作停止あり)
 O)身体が大きいから効き難いのかも
   Css≧50で有効とするデータもあるので増量と説明あり
   デパケンR 1600mg→2000mgへ増量
 A)デパケン増量による傾眠・高NH3血症
 P)眠気で困る、ボーっとなるようなら申し出るように

今回の処方
Rp2)デパケンR錠200mg 8T / 2x朝・夕食後
  3)トピナ錠50mg 1T / 1x夕食後

患者のコメント:「もう身体がきつくて・・・」

患者から得られた情報:
①脱力感やふらつきあり、眠気や意識がボーっとなるようなことはない
②仕事はデスクワーク中心で汗をかくようなことはない
③腎結石の既往歴あり
④サプリメントの摂取はない

□CASE 40薬歴
#2:トピナ初回服薬支援
  S) もう身体がきつくて・・、脱力感・ふらつき(+)
 O) デパケンRは1600mgに戻り、トピナが追加となる
   仕事:デスクワーク中心で汗をかくことなし
   腎結石の既往歴(+)
   サプリメント摂取(-)
 A) トピナ初回のため服薬支援
   特に腎結石素因(+)なので注意要
 P) トピナも脳神経の興奮を鎮めて発作を予防します。
   デパケン同様に眠気には注意が必要
   汗をかきにくくなったり、腎結石ができることがあるので、
   水分を十分に取って予防するようにしてください。

□解説
 2006年ガバペン、2007年トピナ、2008年ラミクタールと新しい抗てんかん薬が登場し、薬剤選択の幅は広がってきている。新しい抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に追加併用される。
 CASE 40はデパケン1剤でのコントロールを試みたが適わず、トピナが追加併用となった症例だ。トピナの「重要な基本的注意」を下記に示す。

 トピナ「重要な基本的注意」

1)腎・尿路結石があらわれることがあるので、結石を生じやすい患者に投与する場合には十分水分を摂取するよう指導すること。

2)代謝性アシドーシスがあらわれることがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、重炭酸イオン濃度測定等の検査を患者の状態に応じた適切な間隔で実施することが望ましい。

3)発汗減少があらわれることがあり、特に夏季に体温が上昇することがあるので、本剤投与中は体温の上昇に留意し、このような場合には高温環境下をできるだけ避けること。なお、あらかじめ水分を補給することにより症状が緩和される可能性がある。

4)体重減少を来すことがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、定期的に体重計測を実施するなど患者の状態を慎重に観察し、徴候が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

5) 連用中における投与量の急激な減量ないし投与中止により、発作頻度が増加する可能性があるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。なお、高齢者、虚弱者の場合は特に注意すること。

6)眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

7) 本剤は血液透析により除去されるので、透析実施日は本剤の補充投与を考慮すること。

8)投与開始に先立ち、主な副作用について患者に説明し、異常が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指示すること。

 2)4)5)は初回に確認する必要はない。7)は関係なし。そこで1)3)6)を念頭におき、患者に質問を行い、O)情報を得る。腎結石の既往歴を確認したので、そこを重点的に服薬支援を行っている。
 また、トピナはCYP3A4の基質薬剤で、CYP3A4を誘導するセイヨウオトギリソウに注意する必要があるので、サプリメント摂取についても確認し、O)情報に加えている。

□考察
 トピナの投薬・服薬支援をはじめて行った。禁忌は過敏症で副作用歴(-)なら飲んでみないとわからないね、用法・用量NP、慎重投与該当なし、重要な基本的注意は8っつもあるの!それから併用注意と代謝という感じで添付文書を眺める。
 伝えることはいっぱいある。何を重点的に伝えるかは患者のリスクファクター次第となる。患者というフィルターを通して薬剤を観るわけだ。
 患者がどんなフィルターをどのくらい持っているか。それを質問にて確認する。O)情報を得ていく。ここでは、薬剤の知識とその状況を考慮した質問力が必要となる。今後は状況が変化していくことを確認または想定しながら、モニタリングしていく必要がある。

 フィルターはもともと「光の通過を制限する」のが役目であり、二枚のフィルターによって、光は完全にカットされていたにもかかわらず、あえて三枚目のフィルターを足すことによって、光は復活するのです。
 いったい、なぜでしょう? モノ的な思考では、この現象は決して理解することができません。
 これは、ようするに、光の「偏光状態」が、光というモノが単独でもっている客観的な性質ではなく、観測装置との関係によってしか決まらない、ということのなのです。
 偏光状態は光というモノの属性ではありません。偏光状態は光とフィルターの関係性によって決まるコト的な属性なのです。偏光状態は光の属性でもなく、フィルターの属性でもありません。観測装置(=フィルター)と観測対象(=光)の関係性なのです。(*1)

 服薬支援も同じだ。服薬支援も薬剤によって決まるものではない。薬剤と患者の関係性によって、はじめて意味のあるものになるのだから。

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*1:世界が変わる現代物理学(ちくま新書) 竹内薫 著

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2009年10月16日 (金)

セイブルとベイスン

心血管疾患のリスクを高める食後高血糖
酸化ストレスから血管を守るα-GI
ベイスンとセイブル 薬剤の個別性を考える

CASE 39

56歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし

前回の処方
Rp1)オルメテック錠20mg 1T・リピトール錠10mg 1錠 / 1x朝食後
 2)ベイスン錠0.3mg 3T / 3x毎食直前

今回の処方
Rp1)オルメテック錠20mg 1T・リピトール錠10mg 1錠 / 1x朝食後
  3)セイブル錠50mg 3T / 3x毎食直前

患者のコメント:「血糖値は悪くないけど、Drがもっといい薬があるから変えておくと」

薬歴より:食後高血糖は動脈硬化によくないとの説明を受けベイスンをスタート

□CASE 39の薬歴
#1:セイブル初回服薬支援
  S) 血糖値は悪くないけど、Drがもっといい薬があるから変えておくと
 O) ベイスン(0.3)→ セイブル(50)
   動脈硬化防止のためα‐GI服用中
 A) セイブル初回のためメリットとSEについて
 P) セイブルは効き目が早いため、より血管への負担を減らします。
   飲みはじめの数日は下痢になるかもしれません。
   じきに身体が慣れておさまりますが、ひどい時は申し出てください。
      また、糖分の取りすぎも下痢を助長するので注意してください。
   

□解説
 繰り返す食後高血糖が血管を傷めている。食後の急激な血糖上昇と酸化ストレスマーカーには高い相関がある(HbA1cにはない)。
 食後高血糖というと食後2時間血糖値をよく目にするが、食後血糖のピークは2時間というわけではない。ヨーロッパやアメリカではそのピーク値が注目されている。
 セイブル(150mg/day)とベイスン(0.9mg/day)は食後2時間値で比べるとほぼ同等の効果を示す。しかし、食後30分~1時間では効果に明らかな差がある。セイブルのほうが食後血糖のピーク値を低くし、急激な血糖の上昇を抑える。食事の欧米化を考えると、血管にはセイブルのほうが「もっといい薬」といえるだろう。
 一方、α‐GIの副作用である消化器症状はベイスンのほうが少ない。おならやお腹のはりといった症状はさほど大差はない。セイブルの弱点は服用初期の下痢の多さにある(セイブル錠75mgは高頻度の下痢を理由にMRでさえ奨めていない)。そこで、下痢が原因でノンコンプライアンスとならないように服薬支援を行っている。
 下痢の原因はセイブルのスクラーゼ阻害活性の強さにある。スクロースが小腸下部に流れ込み水分をひいてしまうわけだ。そこで糖分の取りすぎには注意するようにアドバイスを加えている。

□考察
 セイブルは従来のα‐GIとは異なる体内動態を示す。まず高濃度のセイブルが小腸上部に到達するために、効果発現が早くおこる。その後、50%もの量が体内に吸収される。その結果、下痢以外の消化器症状はベイスンなみとなる。体内に取り込まれないほうが安全なイメージがあるが、消化器症状に限っていえばそうではない。まさに逆転の発想だ。

 もともと人間の意識は、先入観や偏見に満たされているものです。目の前にあるものを自分ではしっかり見ているつもりでも、厳密な意味で正しく見ているわけではありません。「魚だ」「これはリンゴ」という概念で理解するだけで、現に目の前にある魚やリンゴの個別性、本質は見ていないと言っていいでしょう。ほとんど思い込みで見ているというのが正直なところです。(*1)

 以前はセイブルもベイスンも同じα‐GIという概念で理解して投薬をしていた。α‐GIとひとくくりにせずに、薬剤の特徴を押さえた、効果と副作用のバランスのとれた服薬支援を行っていきたい。

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*1:頭がよくなる思考法 天才の「考え方」をワザ化する(ソフトバンク新書)

  著者:齋藤孝
 

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2009年9月25日 (金)

ラミクタールによるSJS

新しいムードスタビライザー
ラミクタール
投薬時にSJSの注意を促すはじめての薬ではないだろうか?

CASE 38
  37歳女性
 他科受診:なし  併用薬:なし
 
  定期処方:
    Rp1)ジプレキサザイディス錠10mg 2T / 1x夕食後
    Rp2)ワイパックス錠0.5mg 3T / 3x毎食後
 今回より下記2剤追加 
  Rp3)ラミクタール錠25mg 1T / 1x夕食後(隔日) 
    Rp4)リボトリール錠0.5mg 1T / 1x夕食後 

 薬歴より:
   ①おそらく双極性障害にて治療中
   ②患者主訴はいつも幻聴、ここ数ヶ月はたいしたことない様子
   ③リーマス:かゆみの為、中止歴あり
   ④デパケン:合わない・ひどくなったと中止歴あり
 
 患者のコメント:最近、すごい幻聴におそわれる。
  
 患者より得られた情報: 新しい薬を試してみようとDrより説明があった
 

□CASE 38の薬歴
 ♯1 ラミクタールによるSJS
  S) 最近、すごい幻聴におそわれる
  O) ラミクタール・リボトリール追加
  A) SJSを意識した対応が必要
  P) 神経の過剰な興奮をおさえて幻聴を和らげる薬です。
    ラミクタールは体を慣らし、副作用を少なくするために隔日です。
    発疹と同時に熱や粘膜症状などが出たときはすぐに
   皮膚科や大きな病院を受診してください。

□解説
  定期処方からは統合失調症か双極性障害かはわからないが、リーマスやデパケンを過去に服用したことがあることやジプレキサは双極性障害で適応追加の申請を狙っていることから、双極性障害の患者と思われる。医師でもこのあたりの診断は難しいらしい。そもそも病名区分への疑問の声もある。そのような状況下で薬剤師が病名に振り回されることはナンセンスであろう。
 ムードスタビライザー(気分安定剤)の導入がうまくいかずにメジャートランキライザーのジプレキサで対応していたが、症状の悪化に伴いラミクタールを導入したものと思われる。ラミクタールは海外では双極性障害の治療薬としてその名が知られている。精神症状にかなりの効果があるようだが、治験時の副作用のために日本では導入が遅れていた。
 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、この重篤副作用が治験時に3例確認された。バックボーンには高用量やデパケンとの併用があり、細かな用量設定の下に日の目を見たかたちだ。特に、投与初期の4~8週や増量期に注意が必要だ(SJSはアレルギー性の副作用と思っていたが、用量依存的に増えているところをみると全部がぜんぶアレルギー性のものではないようだ)。
 ちなみに精神症状にはラミクタールを25mgで十分効果があるとの評価もある。また、リボトリールの併用は保険対策の意味合いもあるかもしれない。

□考察
 このケースで特徴的なのは、最初(事前説明の段階)からSJSの注意を促している点だ。SJSの原因薬は、抗生剤やNSAIDs、抗てんかん薬、痛風治療薬、サルファ剤、消化性潰瘍薬と多岐にわたる。しかしながら、積極的にこちらから最初にアプローチすることは少ない。
 
 似たような重篤副作用疾患に中毒性表皮融解壊死症(TEN)がある。「フェニトインTEN事件」では、投薬時の説明義務違反はないが経過観察中の予兆の早期発見に努めるようにといった内容の判例が出ている(H14.9.11 東京高裁)。
 つまり、SJSやTENの説明がノンコンプライアンスを招くようなら、確率的に考えて経過観察に努めなさいということだ。

 しかし、ラミクタールには警告の欄にSJSの記載がある。これは今までの対応だけではダメだということを意味している。リウマトレックスやアラバの間質性肺炎も同様のケースといえるだろう。

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2009年9月18日 (金)

スタチン系と脱毛

スタチン系で脱毛
薬理作用からは推測しにくい副作用だ
コレステロールと脱毛は関係あるのか?

CASE 37

66歳女性 
他科受診:なし  併用薬:なし
既往歴:高血圧、脂質異常症、胃潰瘍、便秘症、不眠症

定期処方
Rp1)ディオバン錠80mg 1T / 1x朝食後
 2)リピトール錠5mg 1T・ガスターD錠20mg 1T / 1x夕食後
 3)セルベックスカプセル50mg 3P・マグラックス錠330mg 3T / 3x毎食後
 4)プルゼニド錠12mg 1T・デパス錠0.5mg 1T / 1x眠前

処方医よりTEL
 内容:シャンプーのときに脱毛があるようだ。薬は関係あるか?
 回答:リピトールにて報告(+)
    代替薬としてゼチーアを提案
 結果:リピトール錠5mg → ゼチーア錠10mg に変更となる

□CASE 37の薬歴
  #1 コレステロール低下剤による脱毛の可能性
  S) 最近、シャンプーのときに髪が抜けるので相談してみた。
    コレステロールの薬が原因かもしれないといわれた。
 O) リピトール(5)→ ゼチーア
 A) ゼチーアには脱毛の記載はないが、コレステロールの低下自体が
    原因なら、脱毛がつづく可能性あり
 P) 今回のゼチーアには脱毛の報告はなく、薬の作用も違いますが、
    脱毛がつづくようなら、中止して様子をみてください。

□解説
 脱毛のような副作用は、薬理作用から原因薬を推測することが難しい。そこで、まずは添付文書にあたることになる。
 ここで、便利なツールがIMSジャパンが無料で提供している検索サイトの「副作用サーチ」だ。副作用名と服用している薬を入力し検索をかける。リピトールのみに脱毛の記載があることが一瞬でわかる。
 次に代替薬を相談されることを想定し、同じスタチン系の薬剤であるメバロチン・リポバス・ローコール・リバロ・クレストールと別の作用機序のゼチーアを副作用サーチで同様に検索してみる。すると、メバロチン・リポバス・ローコール(・リピトール)には脱毛の記載があり、リバロ・クレストール・ゼチーアには記載がないことがわかる。
 リバロ・クレストールは比較的新しいスタチンであり、今後の添付文書の改定次第(副作用の集積次第)ではスタチン系共通の副作用となるかもしれないと考え、ゼチーアを提案するに至る。
 しかし、スタチン系で論じる以前にコレステロール低下自体と脱毛が関わっているのなら、ゼチーアもあり得ると考え指導を行っている。ちなみに、フィブラート系ではほとんどの薬で脱毛の記載があるようだ。

□考察
 副作用サーチは重宝しているツールだ。服用薬7剤の添付文書を引っ張り出して、と考えるとかなりの時間節約になっている。さらに、代替薬を考えるときなどには同種同効薬をまとめて検索することで導きやすくなる。
 
 スタチン系と脱毛、コレステロール低下剤と脱毛、すべて仮定である。しかし添付文書に記載がないからといって、その副作用がおこらないとは限らない。

 今回のケースでは、副作用サーチで検索しながら思考がまとまっていった感じがあった。私にとってこの検索エンジンは、さしずめ「思考のツール」といったところだろうか。

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2009年7月10日 (金)

クラビットへの戸惑い

7月7日に高用量のクラビットが発売がされた
腎不全の患者でも初回500mg
尿細管へのダメージが心配だ

CASE 31
  70歳男性
  他科受診:泌尿器科  
  併用薬:ラシックス錠40mg 1T・ザイロリック錠100mg 1T・アーガメイトゼリー 25g/1x朝食後
 他科受診:整形外科  
  併用薬:シグマート錠5mg 2T/2x、バイアスピリン錠100mg 1T・アマリール錠1mg 1T・ガスターD錠10mg 1T/1x、モーラステープ
 
  処方(初来局):
    Rp1)クラビット錠100mg 3T・ムコソルバン錠 3T・アストミン錠 3T / 3x毎食後
  Rp2)テオドール錠 2T / 2x朝・夕食後
  Rp1)2) x 5日分

 
 患者のコメント:代理(娘)ゼコゼコいってて、きつそう。
  

 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① お薬手帳より、他科受診・併用薬
 ② 腎機能(S-Cr:2.6、BUN:48)

 疑義照会:
 (内容)S-Cr:2.6のため、クラビット 1T/day が適量
 (回答)症状がひどいので、2T/2xでいこう
  
  クラビット錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 へ変更となる

□CASE 31の薬歴
 ♯1 クラビットによる低血糖
  S) ゼコゼコいってて、きつそう
  O) クラビット 200mg/day、S-Cr:2.6でやや過量
     DM(+)アマリール服用中
  A) クラビットによる低血糖の恐れ
  P) いつもの薬と併用NP
     ただし、低血糖には十分に注意を

□解説
  年齢とアーガメイトゼリー服用の2点から、クラビットは過量と判断できる。さらに、S-Crの情報からも間違いない。疑義照会の内容はいつものように欄外に必要事項を記載する。
 腎不全のためクラビットはやや過量である、アマリールにてDM治療中であるといったリスクファクター(O)から、キノロンによる低血糖を心配して(A)、服薬支援(P)を行っている。

 
 クラビット錠100mgの腎不全時の用量(*1)
 40≦Ccr<70 1回100mg 12時間間隔
 20≦Ccr<40 1回100mg 24時間間隔
  Ccr<20       1回100mg 48時間間隔

 
 クラビット錠100mgの添付文書
  重大な副作用
  13. 低血糖
   頻度不明注1)
   **[糖尿病患者 (特にスルホニルウレア系薬剤やインスリン製剤等を投与している患者)、腎機能障害患者であらわれやすい]

□考察
 7月7日、クラビット錠500mg・250mgが発売された。キノロンは用量依存性の抗菌剤であり、PK/PD理論的にも1日1回高用量が優れているのは理解できる。しかし、用量に違和感を感じる。MRによる拡宣も‘効果’と‘耐性菌’の話ばかりで、用量についての納得のいく説明はない。

 <用法・用量に関連する使用上の注意>
5.腎機能低下患者では高い血中濃度が持続するので、下記の用法・用量を目安として、必要に応じて投与量を減じ、投与間隔をあけて投与することが望ましい。
 20≦Ccr<50 初日500mgを1回、2回目以降250mgを1日1回投与する。
  Ccr<20       初日500mgを1回、3回目以降250mgを2日1回投与する。

 1回100mgを24時間・48時間間隔で投与していた患者に、いきなり欧米なみの500mg。やはり今までの感覚とは合わない。CASE 31ではDM治療中だったので、クラビットによる低血糖に焦点を当てているが、腎臓への影響も心配だ。クラビットは腎不全患者の尿細管に相当なダメージを与える。このS-Crなら100mg1Tで十分、そんな感覚だった。

 キノロンで最も安全だったクラビット。高用量化後は疑義照会もできない。
「むくみ」、「尿量の減少」、「倦怠感」、「食欲不振」、「吐き気・嘔吐」といった症状に注意していくしかないだろう。

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*1:腎機能別薬剤使用マニュアル改訂2版

 

 

 
 

 

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2009年6月26日 (金)

カマグによる高マグネシウム血症

薬局薬剤師の実力を測りうるバロメータ
薬歴に検査データの記載なしの状態では
薬の適正使用に貢献することは難しいだろう

CASE 30
  80歳女性
  既往歴:腎不全、高血圧、腹部大動脈瘤、腸閉塞x3回
  他科受診:なし  併用薬:なし
 
  処方内容:
    Rp1)オルメテック錠10mg 1T / 1x朝食後
  Rp2)ラックビーN微粒 3g / 3x毎食後
  Rp3)ツムラ大建中湯エキス顆粒 15g / 3x毎食前
  Rp4)酸化マグネシウム 0.67g / 1x寝る前

  Rp1)~3)は前回Do、Rp4)は今回追加

 
 患者のコメント:カマグをお願いしたら、夜1回だけならいいだろうって
  
 
 薬歴から得られた情報:
 ① 採血結果 S-Cr:2.6、BUN:39、Mg:3.0
  ② 前回、高マグネシウム血症のためにカマグ(酸化マグネシウム 2g/3x毎食後)は中止となっている。自覚症状(-)。
 ③ 下剤で腹痛がおこりやすく、効かないので飲みたくない

 薬剤師とのやりとりで得られた情報:
 ① 採血結果 S-Cr:2.8、BUN:39、Mg:2.2
 ② 便が硬く、腸閉塞再発への不安(+)
 ③ 患者希望を認める形で、カマグ再開

□CASE 30の薬歴
 ♯1 カマグによる高Mg血症
  S) カマグは夜1回だけならいいだろうって
  O) カマグ減量のうえ再開 Rp4)追加
     Mg:3.0→2.2
         S-Cr:2.6→2.8
         BUN:39→39
  A) Mg↓だがS-Cr↑のため、高Mg血症のリスク大
  P) Drの指示通り夜1回のみにしておくこと。
     採血をこまめにうけるようにすること。
     吐き気や身体がきつい、力が入らないなどの症状
      →カマグを中止し、受診するように

□解説
  平成20年11月27日の医薬品・医療機器等安全性情報の内容を下記に記す。

 
 酸化マグネシウムは,昭和25年から便秘薬や制酸剤などとして広く使用されており,関係企業が推計したおおよその年間使用者数は約4,500万人(平成17年)である。

 酸化マグネシウム製剤における高マグネシウム血症について
 
  酸化マグネシウム製剤による高マグネシウム血症に関しては、これまで「使用上の注意」の「副作用」の項等に記載しておりましたが、国内において、重篤な高マグネシウム血症が25例報告(そのうち死亡例4例)されております。
 
  重篤な高マグネシウム血症(死亡例を含む)が報告されております。
長期にわたり投与する場合や高マグネシウム血症が疑われる症状が発現した場合等には、血清マグネシウム濃度の測定を行うなど十分な観察を行ってください。

高マグネシウム血症:本剤の投与により、高マグネシウム血症があらわれ、呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止に至ることがある。悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠等の症状の発現に注意するとともに、血清マグネシウム濃度の測定を行うなど十分な観察を行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 腎不全があるため、カマグはよくないと患者本人も理解している。Mgが3.0となり高Mg血症と診断(*1)されたために、カマグは中止となっていた。今回、Mgが2.2と下がったのを受け、カマグを減量したうえで再開となる。 
 しかし、S-Crは上昇しており、高Mg血症のリスクは高い。
 そこで、カマグの量を守ること、こまめに採血をうけること、初期症状に注意することの3つをお願いする。ちなみに、実際に高Mg血症の初期症状が現れるのは、Mg:4.0mg/dLくらいからといわれている。
 
 
□考察
 カマグ報道のレスポンスはさまざまだった。「もうこんな薬はのまない」というおじいちゃんもいれば、「死んでも私は飲むから」「もう30年飲んでるから大丈夫でしょう」というおばさまもいた。

 安全性情報には「統合失調症や認知症を合併している患者などに対して漫然と長期投与されていたと考えられる症例及び高マグネシウム血症による症状と気づかないまま重篤な転帰に至った症例が認められたことから,・・・」との記載があるが、最大のリスクファクターは‘腎不全’だろう。

 処方薬からだけでは‘腎不全’があるとはわからない。そもそも、患者の腎機能や肝機能の把握なくして、薬の適正使用など無理だ。検査データをみせてもらえるかどうかは、薬局薬剤師としての実力があるかどうかのバロメータといえるだろう。

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*1:熊本県薬剤師会HP 電解質異常の自覚症状のアンサーページ

 

 
 

 

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2009年4月10日 (金)

半減期の長い睡眠薬の筋弛緩作用

BZ系睡眠薬はその用量によって作用が異なる。
いや、作用が増えていくと考えたほうがよいだろう。
潜在的な筋弛緩作用による影響を忘れてはならない。

CASE 21
  73歳男性
  既往歴:不眠症・便秘症・糖尿病・高血圧・脂質異常症
  他科受診:なし  併用薬:なし

  定期処方(前回Do)
    Rp1)ロヒプノール錠1mg 1T ・ハルシオン錠0.125 1T・アローゼン 1g / 1x寝前 
    Rp2)マグラックス錠330mg 3T/3x毎食後
    Rp3)グルコバイ錠50mg 3T/3x毎食前
  Rp4)ミカルディス錠20mg 1T・クレストール錠2.5mg 1T・アマリール錠1mg 0.5T / 1x朝食後

  Rp1)~4) 28日分

 娘さんが来局・娘から得られた情報:
 ① 夜はよく眠っているし、朝起きれないことはない。
 ② 毎日、20時には薬を飲んで寝て、翌朝9時くらいまで寝ている。
 ③ 日中よくふらつくし、ボッーとしている。杖がないと危ない。

 プロブレムリスト
 ♯1 グルコバイの飲み忘れ時の対応
 ♯2 低血糖時の対応(α-GI+SU剤)
 ♯3 マグラックス-クレストール(CASE 2参照)
 ♯4 ハルシオンの服用タイミング
 ♯5 ハルシオン・ロヒプノールの筋弛緩作用

□CASE 21の薬歴
 ♯6 ロヒプノールによる日中の転倒リスク
  S) 日中よくふらつくし、ボッーとしている。杖がないと危ない。
  O) ロヒプノール・ハルシオン毎日20時服用
     睡眠状況 20時→9時
     朝起きれないことはない
  A) ロヒプノールの筋弛緩作用による影響
  P) ロヒプノールの影響が考えられることを伝え、
     ロヒプノールを1/4~1/2減量してみるように提案。
     Drにも状況を伝えておきます(トレースレポート提出)。

  
□解説
 以前よりハルシオン・ロヒプノールを服用している患者。両剤とも筋弛緩作用が強い薬なので、夜中のトイレなどで、ふらつきに注意するようには指導していた(♯5)。今回、娘さんより情報を得て#6を立案するに至る。
 半減期から考えると、ハルシオンの翌日への影響は少ないと思われる。一方、ロヒプノールの半減期は7(~24)時間、つまり定常状態にあり、その血中濃度はわずかな日内変動しか示さなくなる(CASE 15参照)。ゆえに、ロヒプノールの筋弛緩作用が脱力感や筋力低下をもたらし、転倒リスクを高めていると考え、服薬支援ならびにトレースレポートの提出を行う。

□考察
 BZ系では用量によって発揮する作用が異なる。用量が増えていくと 「抗不安作用」<「筋弛緩・抗けいれん作用」<「睡眠作用」<「健忘作用」 といった作用を表す。
 
 「睡眠作用」を発揮している状態であれば、潜在的に「筋弛緩作用」も発揮していることになる。特に高齢者への投薬の際は、この視点は必要だろう。

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