ニトロペンが効かないと訴える患者 ~(S)と(O)に分ける利点~
直接的な回答ではなく、まず確認
(S)と(O)に分ける利点
SOAPは思考のガイドなのだ
CASE 143
70歳 女性
定期処方:
Rp 1)バイアスピリン錠100mg 1錠・イルベタン錠50mg 1錠・ラシックス錠20mg 1錠 / 1x朝食後 21日分
Rp 2)アーチスト錠2.5mg 2錠 ・ステーブラ錠0.1mg 2錠/2x朝・夕食後 21日分
Rp 3)ニコランジル錠5mg 3錠・レバミピド錠100mg 3錠 / 3x毎食後 21日分
Rp 4)ファモチジン錠10mg 1錠・デパス錠0.5mg 1錠 / 1x就寝前 21日分
Rp 5)フランドルテープ40mg 21枚
Rp 6)ニトロペン錠0.3mg 1錠/発作時 10回分
患者の訴え : 「先日、ニトロペンを3錠目でやっとよくなった。
3錠で効かなかったら、どうするの?」
患者から得られた情報:
① ニトロペンは舌下している。
② 保管OK。アルミから出してはいないし、破れてもいない。
③ 口渇(+)
④ ニトロペンの使用間隔は1分しか空けていないので、3分くらいで3錠使用。
⑤ 舌下後はしばらくじっとしている→ふらつき(-)
□CASE 143の薬歴
#1 口内を湿らせてニトロペンを舌下し、2錠目までは5分あける
S) 先日、ニトロペンを3錠目でやっとよくなった。
3錠で効かなかったら、どうするの?
O) 舌下用法、保管ともにOK。ただし口渇(+)
使用間隔を1分しか空けていない→3分くらいで3錠使用
A) 追加タイミングが早すぎる。
口渇もあるから効果発現が少し遅いのかも(ステーブラの影響か?)
P)一般的には1~2分で効くが、口が渇いていると遅くなることも。
少し口内を湿らせてから舌下を。2錠目の舌下は、5分間あけてから。
R)昔はすぐ効いていたから、心配で。
□解説
ニトロペンの効果に不安を訴える患者への対応。その訴えは 「先日、ニトロペンを3錠目でやっとよくなった。3錠で効かなかったら、どうするの?」というもの。
ここで「(ニトロペン)3錠で効かなかったら、どうするの?」にすぐに直接答えてはいけない。つまり「主治医に連絡するか、救急病院に」と答えない。もちろん、そういう答えになることもよくある。が、その前に、ニトロペンをどのように使用しているのか? を確認すべきだ。
ニトロペンを飲みこんではいない。保管状況も問題ない。口渇があるから、溶けにくいかな。最後にニトロペンの舌下間隔は・・・、とここで問題があった。1分間隔で次々と舌下して、3分くらいで3錠も舌下している。つまり追加のタイミングが早すぎるのだ。ただ幸い、ふらつきなどの副作用はないようだ。
とうぜん、使用間隔を修正してもらうように指導を行う。あわせて口渇対策として、少し口内を湿らせてからの舌下を勧めている。
患者のレスポンス(R)は「昔はすぐ効いてたから、心配で」というもので、その不安がうかがえる。立て続けに舌下した理由がよくわかった。
□考察
(S)と(O)に分ける利点。それは(S)と(O)に分けて書くことにあるのではない。そうではなくて、(S)と(O)に分けて考えること、ここにSOAPのメリットがある。
SOAPは記載方法ではなく、思考のガイドなのだ。
患者は薬剤師が取り上げるべきことだけを話してくれるわけではない。そのときの関心事から世間話までランダムに口にする。そのなかの一部分にフォーカスする。これが(S)だ。
この時点で「ニトロペンをきちんと使えていないのでは?」という、いわば仮のアセスメント(A)が想定されている。だからこそ、フォーカスしたともいえる。つまり、(S)が決まった時点で、仮の(A)が存在していることになる。
この仮の(A)が合っているかどうかを確かめるために、患者に質問をしていく。つまり(O)情報を積み重ねていく。
そして、抽象的だった仮の(A)が、より具体的な(A)へと固まっていく。つまり、仮の(A)を導くための(S)であって、(A)を確定させるための(O)なのだ。
その結果、その患者に応じた服薬指導(P)をすることができる。
こういう思考の流れになっている。
だからSOAPは有用なのであって、その利点はSOAPで書くからではなく、SOAPで考えることによって生じるのだ。
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