カテゴリー「03、体内動態とその相互作用」の20件の記事

2013年12月13日 (金)

ニフェジピンCRとクラリスロマシンの併用の結果とその対応

CYP3A4の基質と阻害剤の組み合わせ
血中濃度の変化と臨床上の変化
一般化された情報と個人データの融合

CASE 153

女性 64歳 

処方内容:
Rp 1)トーワミン錠25mg 1錠・ニフェジピンCR錠20mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) マイスリー錠5mg 1錠 / 1x就寝前 28日分

*ニフェジピンCR錠20mg 2錠/2xより減量になっている

患者のコメント:
「きついしふらふらすると思ったら、血圧が88しかなかったの。でも脈は120もあるから心配で…」

お薬手帳から得られた情報(併用薬):
婦人科より Rp)クラリスロマイシン錠200mg 2錠/2x朝・夕食後 7日分
          Rp)ツムラ五淋散エキス顆粒 7.5g/3x毎食前     7日分

患者から得られた情報:
① 膀胱炎が治らないと思って婦人科を受診。膿がたまっていた。
② 併用薬を開始して5日目。
③ 下肢浮腫(+)

□CASE 153の薬歴
#1 ニフェジピン‐クラリスロマイシン併用に起因する問題へのアプローチ
  S) きついしふらふらすると思ったら、血圧が88しかなかったの。
    でも脈は120もあるから心配で…
 O) ニフェジピンCR減量 40mg/day→20mg/day
       併用薬:クラリスロマイシン 400mg/day
    下肢浮腫(+)
 A) クラリスロマイシンのCYP3A4阻害によるものだろう。
    不安に対してアプローチと併用が終わったあとのフォローが必要。
 P) 婦人科でもらった抗生剤との飲み合わせでニフェジピンが効きすぎたのでしょう。過降圧、頻脈、下肢浮腫すべてそのせいです。減量で解消すると思われます。ただし抗生剤の終了後に血圧が上がってくるかも。そのときはすぐに受診を。

□解説
 解説はとてもシンプルだ。CYP3A4の基質であるニフェジピンCRを服用中の患者が、CYP3A4阻害剤であるクラリスロマイシンを併用した。とうぜんニフェジピンの代謝が阻害され、その血中濃度が上昇する。ただ特筆すべきは、その汎用薬のよくある組み合わせとその結果の大きさだ。

 お薬手帳をみて、さらにクラリスロマインを飲み始めて5日目という事実に疑いを強める。過降圧だけではなく頻脈も起こっている。念のために足がむくんでいないかを尋ねると数日前からむくんでいるという。間違いない。すべてニフェジピン過量による薬理作用の延長線上の副作用だ。

 14員環マクロライド系薬のCYP3A4阻害様式は、アミノ糖の三級アミンの脱メチル化により生成した代謝物(ニトロソ中間体)がCYP450のヘムと共有結合を形成し、マクロライド・ニトロソアルカン複合体を形成するためと考えられている。このように、CYP3A4による代謝物が特異的にCYP3A4のヘムと複合体を形成しやすいことから、14員環マクロライド系はCYP3A4の自殺基質といえる。ヘムとの共有結合に起因するため阻害効果は強く、投与を中止しても持続する可能性は高い。
(杉山正康『薬の相互作用としくみ 全面改定版』日経BP社 P. 170-171)

 併用から4~10日後に相互作用の発現を認める場合が多いことにも注意したい。マクロライド系による代謝阻害はイミダゾール系による直接的な阻害と異なり、一度代謝を受ける必要があるため、阻害効果の発現に時間を要すると考察される。 
(同書 P. 173)

 医師がニフェジピンを減量したことで、過降圧や頻脈、そして下肢浮腫といったものへの患者の不安はそのうち解消するだろう。飲み合わせがよくなかったことを伝え、不安へのアプローチを図る。

 さらに問題がもう一つ。いずれクラリスロマイシンは終了する。すると、しばらくしてニフェジピンの代謝が元に戻ってくることになる。つまり降圧効果が弱まる。そこで、家庭血圧測定でのモニタリグを促し、血圧が上がってくるようなら、すぐに受診するようにアナウンスを行っている。

 
□考察
 ニフェジピンCRとクラリスロマイシン。たぶんいままで、たくさん同時に出してきたように思う。理論上の、つまりCYP3A4を介する相互作用のことはよくわかってはいる。ただ臨床上、問題になるような結果にはならないと考えていた。併用禁忌でもないし、クラリスロマイシンも通常用量だし…。

 こういう症例を一例でも経験してしまうと、やはり今後の対応を考えてしまう。ただ、いきなり説明しすぎてしまうのも服薬拒否につながりかねないので難しいところだ。

 しかし、少なくとも今回の患者においては、しっかりと今回の事実を薬歴のフェイスシートに落とし込むことで、次回からの対応は容易になる。クラリスロマイシンを避け、CYP3A4阻害の弱いルリッドもしくは14員環以外のマクロライドに変更してもらえばいい。

 そう、一般化された情報を個人データに融合させることこそが「現場の強み」なのだ。そして新たな個人データが生まれる。

 一般化をはねつけてこその医療だ。

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杉山正康『薬の相互作用としくみ 全面改定版』日経BP社
全面改定版となり、格段と見やすく、内容も豊富に。
第4章の薬物トランスポーターは必見。今後ますます重要になるだろう。

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2013年9月27日 (金)

ハルシオンとGFJ(グレープフルーツジュース)

併用禁忌でも併用注意でもないこの組み合わせ。
じっさいに併用すると、血中濃度の推移はどう変化する?
併用を避けていただく理由がそこにある。

CASE 148

女性 65歳

前回の処方:
Rp 1)ロサルタンK錠25mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) アモバン錠7.5mg 1錠 / 1x就寝前   28日分

今回の処方:
Rp 1)Do 28日分
Rp 3) ハルシオン錠0.25mg 1錠 / 1x就寝前   28日分

患者の訴え : 「朝起きたときに、口の中が苦いことがあるといったら、薬をかえておきましょうって」

患者から得られた情報:
① 寝つきが悪く、アモバンを開始。
② アモバンで睡眠状況は良好になるも、数か月後に苦味を感じ、Drに訴える
③ アルコール(-)
④ GFJ:常飲はしないが、あれば飲むこともある

□CASE 148の薬歴
#1 ハルシオン服用中はGFJを飲用しない
  S)朝起きたときに、口の中が苦いことがある→薬をかえておきましょうって
 O) アモバン→ハルシオン、GFJ:あれば飲む、アルコール(-)
 A) ハルシオン-GFJ→5時間後も非摂取時のピーク相当濃度を維持
 P)GFJを飲んでしまうと、薬が身体から抜けにくくなって残ってしまう。
   ハルシオンを飲んでいるあいだは、同時でなくてもGFJを摂らないように。

 
□解説
 ハルシオンとGFJについて言及した書籍がある。ぼくの愛用書「ポケット医薬品集(2013年版) (*1)」だ。いったん廃版となったこの書籍は澤田先生のおかげで復活を遂げた。ただ難点をいえば、サイズが大きくなったこと。ちょっとポケットには難しくなった。

 それはさておき、ポケット医薬品集のハルシオンの項には、次のような記載がある。

 8.グレープフルーツジュースを避ける→吸収量増:5時間後も非摂取時のピーク相当濃度を維持。

 この一文の根拠(*2)を次に示す。

Gfj
 これでは別の薬だ。速やかに立ち上がって、素早く消失していくから「超短時間型」であって、この血中濃度の推移では、医師の処方意図を汲むことはできない。

 
 ゆえに、GFJを禁止する服薬指導を行っている。
 

 
□考察
 このハルシオンとGFJの組み合わせは併用禁忌でも、併用注意でさえもない。しかし、眠剤の中でハルシオンだけは、GFJの飲用に気をつけるようにアナウンスをする医療者は多い。

 メーカに問い合わせてみると、海外での併用のデータ(*2)を持ってはいるものの、「改定の根拠となるような有害事象例がないため」に添付文書には記載がなく、また改定の予定もないようだ。

 さきのデータ(*2)は海外のものだが、ハルシオンを0.25mgとGFJを250mLを健常人10名に対して行った試験である。その結果、AUCは1.5倍、Cmaxは1.3倍、Tmaxは1.6~2.5倍に延長とそんなに大きな変化はないように、一見するとみえる。ただそれは数字だけを見ているからであって、上の図を見るとその意味がよくわかる。

 ハルシオンは超短時間型と分類されていて、医師もそのつもりで使う。だが、GFJと併用してしまうと、そう分類するのは難しい。

 だから添付文書に記載がなくても、GFJとの併用は避けていただく。添付文書に記載があるかどうかは、その判断基準がぼくとメーカでは違うのだからしかたがない。

 情報をどう扱うかが、ぼくの仕事だ。

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*1:ポケット医薬品集 2013年版

*2:Clin. Pharmacol. Therap, 58: 127~131(1995)

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2013年2月22日 (金)

アムロジピンとGFJをどのように指導しますか?

Ca拮抗剤とGFJ(グレープフルーツジュース)
ピンからキリまであるこの組み合わせ
リスクの低いと言われた「アムロジピンとGFJ」をどう指導する?

CASE 135

60歳 女性

処方:
Rp 1) アムロジピン錠2.5mg 1錠 / 1x朝食後 28日分

患者から得られた情報:
「ここで薬をもらい始めてから、(血圧が)下がりすぎたことなんて一度もない。
 だいたい120~130くらいで安定している」

薬歴から得られた情報:
① 10年前に初来局。前医ですでに半年、アムロジン錠2.5mgを服用。
  GFJが大好き。アムロジンを服用するために飲まないように指示されていた。
  病院ならびに薬局を変わる際に、当局からGFJによる影響のほとんどないタイプと説明をうけ飲用を再開。
② 飲用再開後も血圧の変化はまったくなし。
③ 現在も週に3~4回はGFJを継続中。

□CASE 135の薬歴
#1 アムロジピン‐GFJによる血圧への影響
  S)10年間過降圧なし。120~130で安定
 O) GFJを週に3~4回飲用→血圧への影響なし
 A) 今のところGFJによる影響はないようだ
 P) ふらつきや動悸、血圧が100を切るようなときはすぐに申し出を

 
□解説
 Ca拮抗剤とGFJといえば、メディアでも取り上げらる有名な相互作用だが、その影響は大小さまざまだ。

 GFJは有名なCYP3A4阻害剤。だが、その作用点は小腸。つまりADMEのA、吸収の過程での相互作用ということになる。そして、その影響の大きさは、その薬剤のBA(バイオアベイラビリティ)によって予測が可能だ。

 たとえば、GFJと禁忌レベルのCa拮抗剤、バイミカードのBAは8.4±1.0%(IF参照。3~10%や3.9%としている文献もある)しかない。そして、添付文書には

本剤の血中濃度が上昇し,作用が増強されることがある。
患者の状態を注意深く観察し,過度の血圧低下等の症状が認められた場合,本剤を減量するなど適切な処置を行う.なお,グレープフルーツジュースを常飲している場合,飲用中止4日目から投与することが望ましい。

 との記載がある。GFJの影響は3~4日くらいあることも考慮された内容だ。同時服用にて、AUCが2~4.5倍、Cmaxが3~5倍にもなると言われている組み合わせなのだから、当然と言えば当然だ。

 うっかりGFJを飲んでしまえば、ふらつきやめまい、動悸、フラッシングなどの副作用が容易に想像できる。

 いっぽう、アムロジンのBAは64%もある。やはり影響は少なそうだ。IFでは、現在でも次のような記載のままとなっている。

 (参考)
グレープフルーツジュースによるアムロジピンの血中濃度の上昇は軽度(Cmax115%、AUC116%に上昇)で血圧と心拍数に影響はなかったとの報告
28)及び薬物動態と血圧に影響はなかったとの報告29)がある。(外国人データ)

 そして当時(10年前)は併用注意にGFJの記載すらなく、その後、2010年8月にアムロジンの添付文書が改定され、記載されることになる。「症例の蓄積」と「外国の添付文書情報等との整合性を図るため」がその理由とされている。

 件の患者は、今も変わらず、GFJを愛飲している。もっとも現在では併用注意なので、その状況を確認しつつ、モニタリングを続けている。

 

□考察
 アムロジピンとGFJの併用。これをどう思いますか? こう尋ねると、じつにさまざまな意見が出る。

 「アムロジピンでもGFJとの併用で低血圧の症例がじっさいに出ている。だからGFJは禁止すべきだ」とか「GFJは飲まないといけないものではない」といった意見がある。

 また、一方では「問題はないとしている文献もある」、「リスクは低く、起こる症状も予想できるのだから、注意を与えておけばいい」という意見も当然ある。

 でも、いろいろな意見があるのは当たり前で、それは一般化された情報だけを取り扱っているからだ。そこに実際の患者はいない。だから、医師や薬剤師の考えが色濃く出てしまうわけだ。

 今回の症例の患者は、ぼくの薬局の患者で10年も利用していただいている。そして薬歴には、血圧とGFJの飲用についての個人データがぎっしりだ。これが「現場の強み」だ(CASE 134参照)。だから添付文書が改定になった後も、GFJを禁止することなく、自信を持ってモニタリングを続けている。

 では、はじめてアムロジピンを飲む患者へのGFJは、どう指導しますか? 

 そこにも一般化された情報しかない。患者がいない。だから、僕なりの考えもあるけれども、決まった解などはありはしないのだ。
 

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2011年2月18日 (金)

薬を飲みたがらない肝硬変の患者

薬を飲みたがらない肝硬変の患者
その理由は?
薬学的視点を持って、(S)をフォーカスする

CASE 86

72歳 女性 

他科受診:消化器科 
併用薬(当薬局より):
Rp1) アミノレバンEN 100g / 2x朝食後と寝る前
  2) プロマック顆粒 1g / 2x朝・夕食後
  3) タケプロンOD錠15mg 1T / 1x就寝前
  4) ウルソ錠100mg 6T / 3x毎食後

内科より処方:
Rp5) アレグラ錠60mg 2T / 2x朝・夕食後 14日分
  6) ザジテン点眼液 5mL

患者のコメント:
①「もう目はかゆいし、鼻水は止まらないし」
②「薬はあんまり飲みたくないのよね~」
③「この薬、肝臓に負担がかかるんじゃない?」

薬歴から得られた情報:
① 花粉症(+)
② C型肝炎→肝硬変
③ 消化器科からの薬の服薬状況はよいが、それ以外はよくない。
③ 昨年の花粉症シーズンのアレグラの投薬は1回(14日分)のみで、
  「効かないから、もういらない」とコメント(+)
④ 直近のデータ
  GOT:29  GPT:24
   Plt:10.3  Alb:3.0  TC:118
   eGFR:65

□CASE 86の薬歴
#1 アレグラは肝臓に負担をかけないとわかってもらう
  S)この薬、肝臓に負担がかかるんじゃない?
 O) 花粉症にてアレグラ処方も飲みたくない様子
   eGFR:65で腎はNP 
 A) アレグラは腎排泄型。安心してもらおう
 P) 薬は肝臓に負担をかけるものと腎臓に負担をかけるものがある。
    アレグラは腎臓のみで、肝臓にはまったく負担はかからない。
   もっと重症の肝硬変の人でも飲める薬ですよ。
 R) じゃあ、飲んでみようかしら
 
□解説
 「目はかゆい、鼻水は止まらない」とつらい症状を訴えるのに「薬はあんまり飲みたくないのよね~」といわれる。この患者は肝硬変の方で、検査値もご自分からよく見せてくれる。
 
 ビリルビンやPTは控えてないので、はっきりとは言えないが、脳症や腹水もないので、Child-Pugh分類のGrsde Aくらいなのだろう。定期薬の服薬状況は良好だ。

 薬歴からわかる定期薬以外の服薬状況の悪さと昨年のアレグラの服薬状況から、「薬はあんまり飲みたくないのよね~」とくるのは予想できた。原因は何なのだろう。薬が多いから? それとも・・・。飲みたくない理由を何度か訪ねるうちに出てきたコメントが「この薬、肝臓に負担がかかるんじゃない?」だった。
 
 これだったのだ。薬で肝臓がこれ以上悪くなるのが怖かったわけだ。当然、ここをフォーカスする。これが(S)だ。患者のコメントがなんでもかんでも(S)ではない。そんなことをしていたら、頭でっかちなSOAPになって、きっとプロブレムネームも付けられない。

 アレグラの処方をうけるが飲みたくない患者。腎機能は問題ない(以上、O情報)。なら話は簡単。アレグラは腎排泄型の薬なので、心配する必要はまったくない(A)。安心して飲んでもらえるように服薬支援を実施する(P)。

 肝機能障害患者における体内動態(外国人データ)7)
成人の肝機能障害患者17例(アルコール性肝硬変10例、ウイルス肝炎5例、その他2例)にフェキソフェナジン塩酸塩カプセル80mgを単回投与したとき、肝機能障害患者におけるフェキソフェナジンの薬物動態は、被験者間の分散も大きく、肝障害の程度による体内動態の差はみられなかった。Child‐Pugh分類でB又はC1であった患者のフェキソフェナジンのAUC0-∞は2176ng・hr/mL、Cmaxは281ng/mL、t1/2は16.0hrであった。これらの値は健康若年者における値のそれぞれ1.2、1.1、1.2倍であった。なお、忍容性は良好であった。
(注)成人における本剤の承認された用量は1回60mg、1日2回である。
(*アレグラ添付文書より引用)

 
 
□考察
 (S)がある。これはSOAPのメリットだ。薬剤師の専門性を活かせる情報にフォーカスする。それも患者の訴えを真摯に受け止めながら行う。そうすれば、薬剤師サイドからの一方的な服薬支援を避けることができる。レスポンス(R)がその証拠だと思う。

 ただ形だけの服薬指導を記録するだけなら、なんとでも書ける。初回服薬指導やひもつきの服薬指導なら、じつは(S)はなんでも成り立つ。型をつくろうとすると、(S)は「主訴」としか書けない。

 だから(S)があることはすばらしいのだ。それは「起点」となる。さらに(O)で「方向」を決め、(A)(P)で「力」を決めて、その日の服薬支援のベクトルが描ける。そのベクトルが患者にフィットすれば、行動変容が起こるきっかけとなるだろう。

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2010年10月29日 (金)

セフゾンと鉄のキレート

セフェム系で唯一、キレートを起こすセフゾン
とくにFeとの親和性が高く、微量のFeでも影響大だ
キレート回避について考える

CASE 77

90歳 女性 
他科受診:なし 併用薬:なし

前回の処方内容:
Rp1)ブロプレス4mg 1T・アムロジピン錠5mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T・スローフィー錠50mg 1T / 1x朝食後 28日分
 2) レバミピド錠100mg 3T・ウルソ錠100mg 3T / 3x毎食後 28日分
 3) アローゼン顆粒 0.5g / 1x寝前 28日分
  4) マグミッド錠330mg 4T / 2x朝・夕食後 21日分
 5) ボナロン錠35mg 1T / 1x起床時(日曜日)4日分
 6) セフゾンカプセル100mg 3C / 3x毎食後 4日分
 *Rp1)~2)は一包化薬

前回の薬歴:
#1 セフゾンのキレート回避
 S)排尿痛があるみたい。膀胱炎ですって(娘より)
 O) Fe、Mg服用中にセフゾン追加
 A) キレートを回避する
 P) 抗生剤といつもの薬は1~2時間あけて服用を

今回の処方内容:
 6) セフゾンカプセル100mg 3C / 3x毎食後 4日分

患者の娘のコメント: 「少しはいいみたいだけど、まだ菌(+)だった」

患者の娘から得られた情報:
① 起きてすぐセフゾンを服用。食後にいつもの薬で1時間くらいはあけている。
② なんとか忘れずに飲めているが、(服用回数が多くて)たいへん。

疑義照会:
(内容)セフゾンとのキレート回避は難しい。他のセフェム系を提案。
(回答)Rp6)→7)へ変更
    Rp7) フロモックス錠100mg 3T / 3x毎食後

□CASE 77の薬歴
#2 キレート形成をしない抗生剤をしっかり飲んでもらう
  S)少しはいいみたいだけど、まだ菌(+)だった
 O) 起床時にセフゾンを服用、食後に定期薬→1時間程度しかあいていない
   明日は日曜のため、 BP系の服用にも支障あり
   服用回数が増え、家族の負担も大きい    
 A) 現状ではセフゾン‐Feのキレートは回避できていない
   状況的にも他剤変更が望ましい
 P) 疑義照会にて、フロモックスへ変更。
    今回の抗生剤は時間をずらす必要がありません。
   いつもの薬と一緒にしっかり飲ませておいてください。
 R) 助かります

 
□解説
 抗生剤でキレート形成といえば、ニューキノロン系にテトラサイクリン系。意外とノーマークなのが、セフェム系のセフゾンだ。

 セフゾンはFeやZn、Cuとキレートを形成すると考えられている。とくにFeとキレート結合を起こしやすい。ちなみにAl、Mgとはキレートではなく吸着により、吸収が低下する。

 #1の対応は結論から言ってアウトだ。おそらくセフゾンはまったく効いていないだろう。セフゾンの添付文書を以下に示す。

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:鉄剤

臨床症状・措置方法 :本剤の吸収を約10分の1まで阻害するので、併用は避けることが望ましい。やむを得ず併用する場合には、本剤の投与後3時間以上間隔をあけて投与する。

機序・危険因子: 腸管内において鉄イオンとほとんど吸収されない錯体を形成する。

 セフゾンとFeとのキレート回避には、セフゾン服薬後3時間以上の間隔が必要とされている。つまり、#1の対応ではキレート回避はできていない。また、仮に3時間あけたとしてもAUCの低下は免れない。

 図9の実験では、徐放性Fe剤(フェロ・グラデュメット錠)との同時服用の結果であり、徐放剤であるため、セフジニルはかなり微量のFeとキレート形成すると判断してよい。したがって、セフジニルとFeの併用は、基本的に避けたほうがよい(原則禁忌)。やむをえず併用する場合には、図9に示すように、セフジニル投与後3時間以上あけてFe剤を投与する。これは、セフジニルのTmaxが4時間であることにも起因するが、3時間あけた場合でもセフゾンのAUCが36%低下することは留意しておかなくてはならない。

(杉山正康「薬の相互作用としくみ第9版」医歯薬出版株式会社 p48)

 さらに、マグミットやボナロンなどの問題にくわえ、家族の負担。他剤変更しかないだろう。
 

□考察
 ADMEに関する相互作用の中で、A(吸収)に関する相互作用の対処はシンプルだ。時間をずらせばよい。

 もしくは休薬できるものは休薬する。貧血症状もなく、つづけて飲んでいるFe剤なら4日休薬したところで問題はないだろう。

 CASE77では、一包化であったことにくわえ、さまざまな要因があり、キレート回避は難しい。患者やその家族の視点を考えれば、容易に想像ができる。

 薬剤師は疑義照会の労を惜しんではならない。

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2010年8月27日 (金)

イトリゾール - リピトール

CYPを介する相互作用の考え方
阻害剤と基質の関係、そして阻害剤の用量
CYP3A4阻害剤‘イトリソール’

CASE 70

74歳女性 
他科受診:なし 併用薬:なし

処方内容:
Rp1)ドグマチール錠50mg 2T・シグマート錠5mg 2T / 2x朝・夕食後 28日分
 2) バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 28日分
 3) リピトール錠5mg 1T / 1x夕食後 28日分
  4) ヘルベッサーRカプセル100mg 1C / 1x就寝前 28日分
 5) イトリゾールカプセル50mg 8C / 2x朝・夕食直後 7日分

患者のコメント:
「爪の水虫が厚くなって治らないから相談した」

疑義照会:
(内容)リピトールとイトリゾールの併用で横紋筋融解症のリスクが高まる。
    リポバス、リピトール以外のスタチンを提案
(回答)Rp3)→6)へ変更
    Rp6) メバロチン錠10mg 1T / 1x夕食後 28日分

□CASE 70の薬歴
#1 イトリゾールには併用注意が多いことを認識してもらう
  S) 爪の水虫が厚くなって治らないから相談した
 O) イトリゾールのパルス療法開始
   疑義照会にてリピトール→メバロチン
 A) イトリゾールは併用注意が多いとの認識が必要
 P) 爪の薬は1週服用で3週お休み。お休みの間も飲み合わせの注意が必要。
   疑義照会の内容を説明。他科にかかる場合は必ず飲んでいる薬を伝えること。
   
  
□解説
 イトリゾールとリピトールは併用注意だ。同系統のリポバスは併用禁忌であり、どちらもイトリゾールのCYP3A4阻害作用に起因している。ちなみにイトリゾール‐リポバスではAUCが10~20倍にもなり、実際に横紋筋融解症も起きている。

 リピトールのIF(併用注意とその理由)をのぞくと、

 【イトラコナゾール】(外国人データ)
対象:健康成人10例(男性5例、女性5例)〔21~35歳〕
方法:イトラコナゾール(200 mg)あるいはプラセボを1日1回、4日間経口投与し、4日目に本剤40 mgを経口投与後、さらに投与後24時間にイトラコナゾール(200 mg)あるいはプラセボを経口投与

結果:併用により本剤のAUC0 - 72 hおよび消失半減期(t1 / 2)がそれぞれ3 . 2倍増加および2 . 9倍遅延(p<0 . 001)したが、Cmaxに影響は認められなかった。一方、併用によりM- 2のCmaxおよびAUC0-72hが対照群のそれぞれ約1/6および2/5に減少した(p<0.01)。また、HMG-CoA還元酵素阻害活性体のAUC0 - 72 hは1 . 6倍上昇した(p<0 . 001)。イトラコナゾールによる本剤の初回通過効果阻害により、血漿中主代謝物であるM- 2濃度が減少し、未変化体濃度が上昇したと考えられた。

 
 
 とある。パルス療法では、一時的にだが、阻害剤であるイトリゾールの用量が400mg/dayになるわけだから、もっと多く見積もる必要がある。さらに代替薬も多数ある。当然、疑義照会を行う。

 イトリゾールは飲み合わせに気をつけないといけない薬がたくさんある。パルスなら休薬期間も気を付けないといけない。患者に認識してもらうために疑義照会の内容をネタとした。

□考察
 リピトールの併用注意の欄には、シクロスポリン・イトラコナゾール・クラリスロマイシンといった薬が並んでいる。
 
 ネオーラル併用に関しては、わたしは限りなく併用禁忌に近いと考えている(CASE 35参照)。

 本題のイトリゾール併用は、スタチンの代替薬がいくらでもある。特に、パルス療法では疑義照会でよいだろう。

 では、クラリス(クラリシッド)はどうだろうか。添付文書にはCmax:+55.9%、AUC:+81.8%とある。しかしIFをのぞくと、阻害剤であるクラリスの用量は1000mg/dayと通常の2.5倍だ。ランサップ800の場合だけ、気を付けておけば充分だろう。

 

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2010年8月20日 (金)

ルボックス ‐ テオドール

CYPを介する相互作用の考え方
阻害剤と基質の関係、そして阻害剤の用量
CYP1A2阻害剤‘ルボックス(デプロメール)’

CASE 69

80歳女性 
他科受診:精神科  
併用薬:アリセプト錠5mg 1T/1x朝食後、ルボックス錠25mg 2T/2x朝・就寝前  35日分

処方内容:
Rp1)テオドール錠200mg 2T / 2x朝・夕食後 7日分
 2) シングレア錠10mg 1T / 1x就寝前 7日分

患者のコメント:
「夜中に苦しくなる。喘息だろうといわれた」

疑義照会:
(内容)他科にてルボックスを服用中。テオドールを半量に減量することを提案
(回答)Rp1)→4)へ変更
    Rp4) テオドール錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 7日分

□CASE 69の薬歴
#1 精神科の薬に変更があったときには申し出る
  S) 夜中に苦しくなる。喘息だろうといわれた。
 O) ルボックスを50mg服用のため、
   疑義照会にてテオドールを400mg/日→200mg/日へ減量
 A) ルボックスが増量となれば、さらにテオドールを減量する必要があるし,
   処方変更となれば効果不足も考えられる
 P) 喘息の薬は精神科の薬に影響を受けるので、
   精神科の薬が変更になったときは必ず教えてください。
  

□解説
 ルボックスは強力なCYP1A2阻害剤である(厳密には他の分子種も阻害する)。併用禁忌の他にCYP絡みの併用注意も多い。そしてテオドールはTDMを必要とする基質薬剤。いかにも危険な組み合わせだ。

 ルボックスの添付文書によると「テオフィリンのクリアランスを1/3に低下させることがあるので、テオフィリンの用量を1/3に減ずるなど、注意して投与すること。なお、併用により、めまい、傾眠、不整脈等があらわれたとの報告がある」とある。

 ところが単純に1/3にすればいいというわけでもないらしい。‘日経DIクイズ(7) ’によると

 フルボキサミンが50mgなら、テオフィリンの血中濃度は約2倍
 フルボキサミンが100mgなら、テオフィリンの血中濃度は約3倍

 となるらしい。なるほどCYP阻害剤の用量が変われば、基質薬剤の血中濃度の上昇率も変化するわけだ。

 これを踏まえ疑義照会を行う。副作用回避だけでなく、効果も期待できるだろう。さらに、疑義照会の結果をO情報とし、今後を考え(A)、相互作用への意識付けを患者に行うことにした(P)。

□考察
 CYPを介する相互作用は次のステップで考えている。

 まず、阻害剤と基剤の関係にあるか。
 次に、阻害剤の用量が臨床上影響のあるものなのかどうか。
 最後に、相互作用による副作用の具体的な回避策を考える。
 
 疑義照会をするか否かは、‘組み合わせとCYP阻害剤の用量’ これがポイントになりそうだ。

 ~参考~
 <CYP1A2阻害剤が関与する併用禁忌>

 
 シプロキサン(阻害剤)⇔ テルネリン(基質)⇔ ルボックス(阻害剤)⇔ ロゼレム(基質)

 *隣合わせのもののみが併用禁忌

 

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2010年7月23日 (金)

テオドール‐タガメット

テオドールとタガメットの併用
死亡例もあるこの併用注意
今回はそのまま投薬します

CASE 66

34歳男性 
他科受診:なし  併用薬:なし

処方内容:
Rp1)タガメット錠200mg 2T・ノイロトロピンル錠4単位 4T / 2x朝・夕食後 14日分
  2) ロキソニン錠60mg 1T / 1x疼痛時 10回分
  3) テオドール錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 7日分
*Rp3)が初処方

患者のコメント:
「最近、息苦しくてね~」
「(帯状疱疹の)ピリピリはだいぶいいんだけど、胸のもやもやがあってね。気管支からみたい」

患者から得られた情報:
① タバコ(‐)
② 母親がぜんそく

薬歴から得られた情報:
CASE 65の症例のつづき
② 帯状疱疹後疼痛にてタガメット服用中

□CASE 66の薬歴
#1 テオドール-タガメット併用は今回はNPも今後は注意要
  S) 息苦しさ(+)
    胸のもやもや→気管支から
 O) テオドール200mg/day、タガメット400mg/day併用
    タバコ(‐)
 A) テオドール・タガメットの投与量が少ないので今回は併用NPだろう
    今後の投与量の変化によっては注意が必要
 P) 息苦しさなどをやわらげる気管支拡張剤は帯状疱疹の薬の影響を受けます。
    今回はどちらも量が少ないので大丈夫でしょう。
    吐き気やふるえなどの気になる症状があったら、中止・受診を。
    また、自分で勝手に量を増やしたりしないように。
  

□解説
 タガメットはCYP非特異的阻害剤であり、CYPで代謝されるほとんどの薬剤に少なからず影響を与える。

 特にTDMを要する薬剤(テオフィリン、フェニトイン、プロカインアミド、プロプラノロール、リドカイン、カルバマゼピンなど)およびワルファリンとの併用は避けるが、やむをえず併用する場合にはTDMや凝固能検査を実施し、場合によっては投与量の減量や、CYP450酵素阻害作用の低い他のH2拮抗剤に変更する。シメチジンにより代謝阻害を受ける薬剤は今後も増えると予測され、基本的にCYP450で代謝されるすべての薬に注意したほうがよい。(*1)

 このケースではタガメットを適応外処方で使用している。ガスターなどへの変更はできない。
 次にタガメットのIFをのぞくと

 【投与量とチトクロームP450阻害作用の相関性】
チトクロームP450が関与するシメチジンの相互作用は、シメチジンの投与量増加により相互作用の程度が増加すると考えられている。また、シメチジンの相互作用報告は800mg/日を超える投与量で多く、400mg/日などの低い投与量では相互作用による副作用の発現の可能性は低いとの報告85)がある。

 以上タガメットの定性的かつ定量的情報より、今回は併用しても大丈夫であろうとの判断に至る。
 念のため、副作用の初期症状や自己増量をしてはいけないことを伝える。

□考察
 タガメットに併用禁忌はない。しかしながら併用注意は非常に多い。身構えてしまう薬の1つだ。できればテオドールとの併用は避けたい。これがわたしの薬剤師としてのデフォルトだ。より安全な道をいきたい。
 
 しかし今回のタガメットは代替が効かない。相互作用を考察した結果、投薬することにした。

 タガメットとテオドールの併用では死亡例の報告もある。もちろん、そのケースとは投与量がまったく違う。死亡例でのタガメットの投与量は1200mg/dayにもなっており、テオドールも400mg/dayだった。その結果、デオドールの血中濃度は80μg/mLにも達している。(*2)
 
 CYPの阻害作用が投与量に依存することを考えると死亡例があるから併用禁忌にすべきだと一概には言えない。しかしわれわれはそういう危ない組み合わせであることを認識しておくべきだろう。

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*1:杉山正康「薬の相互作用としくみ」医薬歯出版

(引用文は第7版)

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*2:藤村昭夫「疾患別これでわかる薬物相互作用」日本医事新報社

(引用情報は初版)

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2010年3月26日 (金)

本当の肝機能

禁忌「重篤な肝障害のある患者」
どんな状態? 何を指標にする?
本当の肝機能とは?

CASE 54

65歳 男性

処方:
Rp1) ニューロタン錠25mg 1T
    バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 28日分
Rp2) ウルソ錠100mg 3錠 / 3x毎食後
Rp3) ロキソニン錠60mg 1T / 1x疼痛時

Drより相談:「ニューロタンが保険でカットされた。他のARBもダメか?」

薬歴より得られた情報:
① ニューロタンは服用3年になる
② 血圧コントロールは良好

カルテより得られた情報:
① 肝硬変・肝がんの既往(+)

□CASE 54の薬歴
#1 ARBと肝障害
 S) ニューロタンが保険でカットされた。他のARBもダメか?
 O) 肝硬変・肝がんの既往(+)
 A) ニューロタン・ミカルディスは重篤な肝障害に禁忌であり、
   他のARBは慎重投与。ACE-Iは腎排泄のためNP。
 P) ニューロタン・ミカルディス以外は使用可。ACE-Iは腎排泄のため使用可。
   ARBはすべて肝排泄なので少量の使用を勧める。

□解説
 Drとの協議の内容を薬歴に残したもの。これは本来、SOAPで記載する必要がない。いわゆるクセに近いものかもしれない。

 患者に肝硬変や肝がんの既往があることは全く把握できていなかった。Drより相談された際にカルテの病名より確認した。

 ARBはすべて肝排泄型であり、肝障害があれば血中濃度の上昇や排泄遅延・蓄積といったものが考えられる。しかしARBごとに、やや差があるようだ。各社のPDR(米国の添付文書)やIFによると

 軽症から中等症の肝障害における投与量の調整
 ニューロタン  少量から投与すること(PDR)
 ブロプレス    中等症では少量から投与すること(PDR)
 ディオバン     少量から投与すること(IF)
 ミカルディス   重篤な肝障害の患者では投与禁忌(IF)
 オルメテック  必要なし(IF)
 
  *藤田敏郎編集「ARBの新しい展開」(日本医学出版)を参考

 添付文書上では、「重篤な肝障害」に対してニューロタンとミカルディスの2剤が禁忌となっている。イルベタン(アバプロ)まで含めた他のARBは慎重投与であるのでカットされる可能性は低いと考え、回答している。

□考察
 「重篤な肝障害のある患者には禁忌」の線引きをどう考えればよいだろうか。そもそも添付文書上での「軽症の肝障害」とはどんな状態を指しているのだろうか。GOT・GPTが上昇している状態のことなのか。

 ヒントとなる言葉が‘Child-Pugh分類’だ。以下はミカルディスの添付文書からの抜粋である。

 5. 肝障害患者への投与
肝障害男性患者12例(Child-Pugh分類 A(軽症):8例、B(中等症):4例)にテルミサルタン20mg及び120mg注)を経口投与したとき、健康成人に比較しCmaxは4.5倍及び3倍高く、AUCは2.5倍及び2.7倍高かった。16)
[16)は外国人のデータ]
注)肝障害のある患者に投与する場合の最大投与量は1日40mgである。

 つまり、添付文書上での肝障害の軽症、中等症といったものは‘Child-Pugh分類’に基づいている。これは‘肝硬変の重症度分類’のことなのだ。軽症といったその言葉自体のイメージに惑わされてはいけない。

 であるならば、何を指標に薬学的な判断(疑義照会など)をすればよいか。GOTやGPTは本当の肝機能ではない。障害を受けると結果的に上がってくるものであり、腎臓で例えるとBUNやたんぱく尿のようなものだ。
 
 本当の肝機能を示すものは、血小板、アルブミン、コレステロールといったものである。これらの合成能こそが本当の肝機能だ。いちばん最初に減少してくるのは血小板、そしてアルブミン、コレステロールが減少してくる。

 血小板が減少してきたら、肝機能は低下してきている

 こう考えるとスッキリする。血小板が15万~20万くらいあれば肝臓は悪くない。肝硬変で10万、肝がんになると6~8万くらいといわれている。

 血小板が10万以下ならば、肝排泄の薬は減量を考える。

 これが僕の疑義照会やトレースレポートのラインとなっている。

 
 

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2010年1月22日 (金)

チラーヂンSとプロマック

チラーヂンSとプロマックによるキレート
いわゆるふつうの併用注意
どう対応し、どう薬歴に残すか

CASE 48

42歳 女性

定期処方:
Rp1)チラーヂンS錠50μg 1T / 1x朝食後
Rp2) マイスリー錠5mg 1T / 1x眠前

フォーカスした患者のコメント:「最近、身体がなんとなくきつい」

患者から得られた情報
① Drからは様子を見るようにと言われている、採血(-)
② 他科受診:2週間前に胃痛(+)→胃潰瘍と診断
③ 自覚症状:痛みはないが、重い感じは残っている
④ 併用薬:パリエット錠10mg 1T / 1x朝食後
      プロマックD錠75mg 2T / 2x朝・夕食後

□CASE 48の薬歴
#1 チラージンS - プロマック のキレート回避
 S) 最近、身体がなんとなくきつい
 O) 2週間前からプロマックD併用中、採血(-)
 A) チラーヂンS-Zn → チラーヂンS[C]↓ の為に不定愁訴が出ているのでは?
    採血(-)なので次回チラーヂンSが増量になることもないだろう。
 P) チラーヂンSを起床時に服用するように提案

□解説
 チラーヂンSはAl、Ze、Fe、Caといった金属カチオンとキレートを形成する(カマはチェックフリー)。

 チラーヂンSの添付文書にはプロマックとの併用注意の記載はないが、プロマックの方にはチラーヂンSとの併用注意(キレート)の記載がある。臨床問題としてはその程度の相互作用と見ることもできる。

 しかし今回は、実際にプロマック併用後から不定愁訴がおきている。かつ採血などDrが対策を講じていない。そこでキレート回避の用法を提案することにした。

 後日、「チラーヂンSを起床時に飲むようにしたら、身体のきつさがだいぶ楽になった気がする」とのコメントが薬歴に記載されていた。

□考察
 今回のケースではチラージンSとプロマックをもうすでに併用してしまっている。もし体調が安定していたなら、特にキレート回避案を提案することもなかっただろう。

 しかしキレートを回避してもしなくても、その根拠はしっかりアセスメントして薬歴に残しておきたい。次の薬剤師への申し送りもさることながら、「患者の状態の把握なくキレートを回避する」「相互作用を見落としているのではと思われる薬歴」ではかっこ悪い。

 #2 チラーヂンSとプロマックの併用の経過観察
 S) 胃の重い感じが残っているがその他に気になる事はない。
 O) 2週間前から胃潰瘍治療にてプロマックD併用中
  A) チラーヂンSとZnでキレートを形成するが、臨床上NPのようだ
 P) 疲労感がぬけないなど気になることがあったら申し出て

とこんな感じになっただろう。杓子定規にキレート回避策を講じるのではなく、患者の状態まで視野を広げて対応していきたい。

 併用注意だから対応する。併用注意だからスルーする。ここには「患者」の存在がない。「人間」が中心にない。

 「人の外に道無く、道の外に人無し」  (上巻・第八章)

 人間である。学問は人間のためにある。自分を高めるために人間性を知り、修行する。人間を中心に置かない学問は、すべてどこかがおかしい筈である。 (*1)

 江戸時代の儒学者、伊藤仁斎の言葉だ。

 私の考える‘薬学’も「人間」が中心にある。キレートを回避するかどうかも「人間」を観ないとわからない。「人間」が変われば、自ずと答えも変わってくるはずだ。

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*1:【中古】【古本】人間通でなければ生きられない/谷沢永一

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