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2016年12月23日 (金)

車イスの高齢女性への高用量レボフロキサシンに待ったをかける

高齢者への高用量クラビットの処方。
腎機能を確認しているドクター。
検査値表示の仕方で対応できるのでは?

CASE 188

女性 90歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  

定期処方
Rp1) ロサルタン錠50mg 1錠
         フェロミア錠50mg    1錠  朝食後  28日分

Rp2) ルネスタ錠1mg  1錠   
      プルゼニド錠12mg  2錠 分1 就寝前 28日分

今回の処方
Rp3) レボフロキサシン錠250mg 2錠 分2 朝・夕食後 3日分

Rp4) カロナール錠300mg 1錠 発熱時 5回分
         

患者の娘のコメント:
「熱が下がらなくて。CRPが高いから入院したほうがいいって」

患者・薬歴からの情報:
① 患者の体格 TALL:148cm、BW:36kg
② 車イスで通院。自宅でもほとんど歩けない。
③ 正確な腎機能の把握(-)
④ 食事は摂れておらず、病院にて点滴(+)

疑義照会:
(内容) おそらくレボフロキサシン過量では?
(回答) Rp3)→Rp5)6)へ変更
     Rp5) レボフロキサシン錠250mg 2錠 分1 夕食後 1日分(初日)
     Rp6) レボフロキサシン錠250mg 1錠 分1 夕食後 2日分(2・3日目)

□CASE 188の薬歴
#1 レボフロキサシンによる腎後性腎障害の予防
 S) 熱が下がらなくて。CRPが高いから入院したほうがいいって
 O)  疑義にて、レボフロキサシン減量。食事(-)→点滴(+)
 A)  発熱→脱水→レボフロキサシンによる腎後性腎障害のリスク(+)
 P) 抗生剤の服用を間違えないように、薬袋の指示通りに。
   食事摂れなくても服用してよいが、脱水にならないように水分をしっかりと。
 
□解説
 もう当薬局を長く利用している患者さん。ゆえに性格・体格はよく把握していたものの、今まで腎機能が問題になるような薬の服用がなく、意外にもS-Crの記載がまったく見当たらなかった。

 しかし、90歳で、36㎏、そして最近は車イスなのだから、レボフロキサシン500mg連用は明らかに過量だ。そして、その理由も見当がついていた。

 医師に照会すると、熱もCRPも高く、抗生剤をしっかり効かせたいとの意向。そして、腎機能はS-Crが0.4だから問題ない、と。

 やはりだ。車イスを使用し、36㎏なのだから、当然その筋肉量は少ない。ということは、S-Crが高くなるはずがない。そして、S-Crが0.6未満の数値というのは、S-Crをもとにした推算式には使ってはならないのだ。S-Crが0.6未満の値を使用したeGFRやCCrというのは大きな値となることが多く、これはS-Crをもとにした腎機能予測の限界といっていいだろう。

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 試しにS-Cr:0.4で、日本腎臓病薬物療法学会のサイトで計算してみると、なるほどレボフロキサシン500mg連用で問題なさそうに見える。しかし繰り返すが、0.6未満の数値をS-Crをもとにした推算式に使ってはならない。推算式を使いたいのなら、0.4ではなく0.6を代入して用いると幾らか近づくだろう(S-Cr0.6は推算式が当てになる限界値だから)。

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 S-Cr0.6なら、少しは現実味を帯びた数字が出てきた。では、結果のどれを用いるべきか。もちろん補正値は使わない。そして、患者は自力歩行が難しい車イスを要するフレイル患者だった。ということは未補正CCr、つまり、35.42mL/min、これを用いるべきだ。

 医師に腎機能評価について簡単に説明し、さらに鉄剤とのキレート回避も視野に入れ、Rp5)6)を提案し、採用となる。

3
 (クラビットの添付文書より)

 ここまでは投薬前での作業。投薬時には脱水からレボフロキサシンが腎後性腎障害を引き起こすことなのないように、と服薬指導を行っている。
 
□考察
 腎機能の評価には、どの値を、どのように用いるべきか。これは慣れるまで大変だ。薬剤師ですらそうなのに、医師にはなおさらなのではないだろうか。

 低いS-Crは、腎臓が良いからなのか、筋肉量が少ないためなのか、これは患者をみて判断するしかない。そして、どちらにしても、S-Cr0.6未満はS-Crをもとにした推算式による腎機能評価には適していない。

 今回のような事案では、例えば検査値の結果表示にでも、S-Cr0.6未満の場合には、この値もしくはこの値を使用したeGFR(CCr)を鵜呑みにしないでください、と一言アナウンスをしてくれると非常に助かる。同様に高すぎるeGFR表示に対しても(欲を言えば、補正値ですよ~、1.73m2は身長170cm・体重63kgに相当しますけど、そんな体格の患者はほとんどいないから、もっと悪いですよ~etc.etc.)。

 腎後性腎障害についてはまた別の機会に。

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