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2016年9月 9日 (金)

ベルソムラの併用注意についての考察

2016年11月25日追記 

~2016年11月18日にベルソムラ錠10mgが発売~

ベルソムラ錠 使用上注意改訂のお知らせ
ベルソムラ錠 添付文書

111

以下の過去記事のケースでは、10mg錠へ減量となります。

ベルソムラの弱点。
併用注意もかなりのAUC上昇。
やはりもう少し下の規格が欲しい・・・。

CASE 185

男性 60歳 

他科受診:なし  併用薬:なし  運転(+)  アルコール(-)

処方(1,2は定期、3が追加となる):
Rp1) ヘルベッサーRカプセル100mg  2C 分2 朝・夕食後  28日分

Rp2) バイアスピリン錠100mg 1錠 
    クレストール錠2.5mg   1錠 分1 朝食後  28日分

Rp3) ベルソムラ錠20mg  1錠 分1 就寝前 28日分

患者のコメント:
「どうも最近眠れなくて・・・。でも睡眠薬を飲んでいて、地震が起きたらと思うと心配でね。先生に相談したら、今日のなら大丈夫、と」

患者からの情報:
① 日中はきついが昼寝はしていない(リズム異常なし)
② 夕食19時、就寝23時くらいで、夜食の習慣なし

疑義照会:
(内容)ヘルベッサーとの併用でベルソムラの[C]2倍に。15mg錠を提案。
(回答) Rp3) ベルソムラ錠20mg→15mgへ変更

□CASE 185の薬歴
#1 ベルソムラ初回服薬指導と不安へのアプローチ
 S) どうも最近眠れなくて・・・。でも睡眠薬を飲んでいて、地震が起きたらと思うと心配でね。先生に相談したら、今日のなら大丈夫、と。
 O) リズム異常なし。19時夕食、23時就寝、夜食習慣なし。
ヘルベッサーを服用中のため、疑義照会にて、ベルソムラ錠20mg→15mgへ変更。
 A) 不安に対してのアプローチが必要。また、ベルソムラを減量したものの、なお30mg相当の用量と考えられる。
 P) 従来の睡眠薬とは異なり、生理的な睡眠に近い自然な眠りをもたらします。そのため、地震などの外からの刺激があったときにはすぐに起きることができますし、力が入りにくいといった作用もない薬なので安心してください。就寝30分前くらいの服用がオススメです。また、夢を見るかもしれませんが、なくなっていきます。ただし、翌日まで持ち越し、運転に支障が出るようなら中止してください。
 
□解説
 ベルソムラはCYP3A4の基質薬でCYP3A4阻害薬の影響を強く受ける(下記、引用はベルソムラのIFより)。

①ケトコナゾール
健康成人(10例)を対象に、本剤(4 mg 単回)と CYP3A を強く阻害するケトコナゾール(400 mg 1日1回経口反復)11日間反復投与の2日目に併用した際、スボレキサントのCmax及び AUC0-∞は23 %及び179 %増加した

 強いCYP3A4阻害薬との結果が上記であり、これを受けて併用禁忌の薬剤が設定されている。

 併用禁忌:CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビル、ボリコナゾール)

②ジルチアゼム
健康成人(18 例)を対象に、本剤(20 mg 単回)をジルチアゼム(240 mg 1 日 1 回反復)6 日間反復投与の 2 日目に併用した際、スボレキサントの Cmax 及び AUC0-∞は 22 %及び105 %増加した。

 中等度のCYP3A4阻害薬との併用が上記。これに加え、「15mg 錠よりも低含量の減量のための製剤がないため」、併用注意に設定されている。

 今回の症例では、地震時への不安がまずあり、BZD系やZ-DrugなどのGABAA受容体作動薬は不適と考えられる。さらに、リズム異常はない。たしかにベルソムラが最適ではあるが、最初の処方のままだと(ヘルベッサーとの併用のために)、ベルソムラの血中濃度は40mg相当にまで達してしまう。

 また、ベルソムラには割線がなく、データが存在しないために半割・粉砕は好ましくない。

 光及び湿気を避けるため、PTP シートのまま保存し、服用直前に PTP シートから取り出すこと。錠剤が粉砕された状態での薬物動態解析、有効性試験、安全性試験は実施されておらず、その有効性・安全性を評価する情報は存在しない。
以上の理由により、本剤の粉砕投与は推奨されない。

 そこで、ベルソムラを15mgへの減量を提案し、採用となる。ただし、それでもベルソムラ30mg相当の血中濃度になると考えられるので、患者への不安に対応しながら、持ち越しについても注意を促している。
 
□考察
 ベルソムラの弱点はその用法・用量にある。高齢者か否かどうかで15mgか20mgに振り分けられる。米国では5mgや10mg製剤が存在する、と耳にすれば、余計に不安になるではないか。ベルソムラの持越し効果関連の有害事象の発現割合や自動車運転能力に対する影響には、用量依存性が認められているのだ。

 CYP3A4の強力な阻害薬は併用禁忌、中等度の阻害薬は併用注意。じつにシンプルでわかりやすい。しかし、併用注意の対応はじつに難しい。

重要な基本的注意とその理由及び処置方法
(3) CYP3A を阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、併用は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとすること。やむを得ず併用する際には患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

 今回の症例は有益性を重視したわけだが、不安はぬぐえない。そもそも血中濃度2倍で、剤型的に対応できない併用注意なんて、どうなのだろう。それに対して、メーカー側の言い分はこうだ。高用量(非高齢者 40 mg、高齢者 30mg)群でも安全性は確認されていたが、有効性に大差がないために低用量(非高齢者 20 mg、高齢者 15 mg)群が採用になっただけだ、と。

 しかし、PMDAは「第Ⅲ相試験で示された低用量と高用量の有効性を比較したときに、本剤低用量と比較して高用量でリスクを上回るベネフィットが示されていると結論することは困難であり、本剤高用量を承認用量に含めることは適切ではないと考える」と述べているし、今回の事例ではちょっと事情も異なる。審査報告書に目を通すと、ベルソムラのBAは高用量になればなるほど低下するようなのだ。

単回経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティ(以下、「BA」)推定値は、本剤 10、20、40 及び 80 mg において、それぞれ 0.82、0.62、0.47 及び 0.37 であった。

 ということは、今回の症例における“ベルソムラ30mg相当”という僕のアセスメントは過小評価なのかもしれない。

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