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2016年7月 8日 (金)

日本全国の慢性疾患患者の薬識がゆらいだ日

薬識は心の中にある。
ゆえに、薬識は常にゆらぐ。

日本全国で患者の薬識がゆらいだはず!

CASE 183

男性 60歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg  1錠 
    エナラプリル錠5mg  1錠 
    トラゼンタ錠5mg  1錠      分1 朝食後 28日分

Rp2)メトホルミン錠500mgMT  2錠 分2 朝・夕食後 28日分

Rp3)クレストール錠2.5mg  1錠
    ニフェジピンCR錠20mg  1錠 分1 夕食後 28日分

患者のコメント:
「ちょっと聞いていい? 週刊誌みた?
 クレストールを飲むと腎不全になるって本当?」

週刊誌:
飲み続けてはいけない薬のリスト①
「クレストールは腎不全になる可能性もある」(佐藤氏)

患者や薬歴から得られた情報:
① 医師には相談していない
② クレストールは不安を感じながらも続けている
③ 心筋梗塞歴(+)

□CASE 183の薬歴
#1 クレストールの薬識を是正する
 S) クレストールを飲むと腎不全になるって本当?
 O) 週刊誌を見て、不安を感じつつも服薬を続けている
 A) クレストールの薬識ケアが必要!
 P)逆です。クレストールが腎臓を悪くするのではなく、腎臓の悪い人がクレストールを服用すると、思った以上に効き過ぎってしまって、副作用の恐れがあるんです。その程度の信ぴょう性です。
 R) 聞いてよかった。心筋梗塞やってるから飲まないといけないよね。
 
□解説
 週刊現代の「飲み続けてはいけない薬リスト」。これを目にした患者のクレストールの薬識はゆらいでいた。つまり、“心筋梗塞の再発予防のために大切な薬”から“飲み続けることで腎不全になる薬”へと。活字になったこういう情報を目にして不安にならないわけがない。

 しかし、その不安は間違った内容の記事によるものと判明している。かつ不安を感じながらも服薬を続けてくれている。であれば、ゆらいだ薬識をまた元に戻せばいい。
 
□考察
 週刊誌第一弾のときの事例。今でも続編が続いているという。最新号では、というよりも新聞広告の見出しが話題を読んでいる。

糖尿病のジャヌビア 脳梗塞・心筋梗塞のプラビックス 高血圧のミカルディス コレステロールのクレストールほか
生活習慣病薬【被害レポート】5年飲み続けたら、こんな「後遺症」が残った

 なんでも記事を読んだ人間によると、スタチン系を続けると筋肉が溶けて腎不全になるから飲み続けてはいけない、と。いや、むしろ何年も飲んでいる人の方が、もうリスクは低いことが多いのだが・・・。

 確かに横紋筋融解症を起こして、適切な処置が取られなければ腎不全に至ってしまう。だが、そうならないように、副作用のモニタリングピリオドを意識した服薬指導を行うわけだし、医師は採血を行うわけだ。飲み合わせだって、お薬手帳などの活用を呼びかけているのはこういう重篤な副作用を引き起こさないためでもある。

 そもそも薬に効果がある以上、副作用もある。どちらか一方を、副作用面だけを煽った、さもすべての人があてはまるような情報を垂れ流す。バランスが悪いといった次元ではなく、もう品がない。品がないから生活習慣病薬をターゲットにするのだろう。だって、それが一番、部数が伸びるわけだから。それでも、そういったゴシップ的記事を読んで不安になった患者に対して、日々、時間をかけて説明していくのも僕らの仕事だと、もう半ばあきらめている。

 一部の施設では、「じゃあ、薬を変えましょう」と応じるときく。週刊誌の情報をもとに処方を変更するなんてことは本当はあってほしくない。だが、患者の理解力の問題もある。どちらにしても僕らにとっては迷惑この上ない話であることには変わりはない。

 話が脱線してしまったが、かように薬識というものは外部刺激によって簡単にゆらぐ。それは薬識の問題が、心の、感情の問題だからだ。とくに僕らは不安という感情にアプローチすることを忘れてはならない。
 

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