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2016年6月 3日 (金)

「未来からのまなざしを受けつつ仕事をする」

「結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ」(P. 9)


しんがりの思想 [ 鷲田清一 ]
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【市民の無能力化とできること】

 こういう仕組みが完備してゆくことで、市民生活において逆にクオリティを大きく損なったものがある。いうまでもなく、≪いのちの世話≫を自力でおこなう能力の喪失である。(中略)ましてや災害時の排泄物の処理方法、雨水を飲料水に変える方法を知っているひとはほとんどいない。災害で食材の流通が止まったときも、じぶんたちで工夫して野山の植物を調理するのではなく、配給を待つだけだ。
(中略)
 では、トラブルが起こったとき、サービス劣化したときにわたしたちにできることは何か。皮肉にも行政やサービス企業の担当者にクレームをつけることだけなのである。

(鷲田清一『しんがりの思想』角川新書 P. 62-65)
 
 熊本震災、本震の直後、実際にこの状況を体験することとなった。そして僕らは無力だった。断水が続き、結果、給水に救われる。給水所に並ぶこと2時間、一家族あたり1回4Lの水を手にした。

 行政の職員が僕らの持参した容器に水を入れてくれる。彼らは休むことなく、淡々と作業をこなしていた。多くの人は感謝の言葉を告げていたように思う。だが、中には「まだ、水道はなおらんのか!」とクレームをつける人間もいたのだ。職員は「すみません。がんばっていますので、もう少しお待ちください」と大人の対応だった。でも、謝る必要なんて、これっぽっちもない。災害なのだし、この状況は僕らが選択してきた結果なのだから。
 
 
【石工の矜持】

「ほめられなくても自分の気のすむような仕事はしたいものだ」とも、この職人は語っている。この言葉を承けて、宮本はこう書きついでいた。「誰に命令せられるのでもなく、自らが自らに命令することのできる尊さをこの人たちは自分の仕事を通して学びとっているようである」、と。
 石工は、田舎を歩いていて見事な石の積み方に心打たれ、将来、おなじ職工の眼にふれたときに恥ずかしくないような仕事をしておきたいとおもった。このとき石工のこだわりはじつに未来の職人に宛てられていた。これに対して、目先の評判や利害ではなく、何十年か先の世代に見られてもけっして恥ずかしくない仕事を、というそのような矜持をもって仕事に向かうひとがうんと減ったのが現代である。未来世代のことをまずは案じる、そういう心持ちをほとんど失っているのが現代である。
 
(鷲田清一『しんがりの思想』角川新書 P. 9)

 生き残ること、利益を上げること、どちらも大切なことではある。でも、だからと言って、この石工のような矜持を失ってはならない。目の前のことだけに追われていてはいけない。仕事の一部は未来の薬剤師のために。

 常に最高の自分を差し出すべく努力をしていく中で、一つだけ忘れてはならない観点がある。それは、目の前の仕事だけに没頭してしまわずに、常にその一部を未来の薬剤師のために捧げてほしいということだ。今、自分のことだけを考えるのではなく、未来の自分、未来の薬剤師のための種を蒔くのである。それを絶対に忘れないでほしい。

(岡村祐聡『新・服薬ケア概論 エッセンシャルズ』服薬ケア研究所 P. 89)
 

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