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2016年6月24日 (金)

妊婦・授乳婦への降圧薬 ~高血圧治療ガイドライン2014~

飛び込みの患者さんの意外な訴え。
授乳婦さんへおススメのの降圧薬。
ガイドラインにも載ってますよ。

 飛び込みの新患さん。お薬手帳には“アルドメット錠250mg 3錠/分3”の記載。その併用薬に話が及ぶと開口一番、「授乳中に使える血圧の薬って、これだけですか? 他にありませんか? 1日3回も飲まないといけないから・・・」。

 お話を伺うと、妊娠中にはアルドメットを服用しており、出産後は近くの内科で診てもらうように、と。内科医は授乳婦さんに使える薬がわからないから、妊娠中と同じものにしておこう、と。隣の薬局で相談するものの医師の選んだものを、と。そのことがひっかかっていて、他の薬局でも聞いてみようと思い至ったらしい・・・。

 いや、そんなに難しい話じゃありません。ガイドラインにも載ってますよ。いろんな意味で残念な話ですが、せっかくなのでのっけておきます(以下、高血圧治療ガイドライン2014より)。

【妊娠高血圧の降圧薬選択】

Fig1

【授乳が可能と考えられる降圧薬】

Fig2

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2016年6月17日 (金)

「血栓があるのに抗凝固薬は要らないんですか?」

車中泊で血栓ができました。
「血栓予防の薬(抗凝固薬)は必要ないんですか?」
僕たちの病識は・・・。

CASE 182

女性 45歳 

他科受診:婦人科  併用薬:なし(ピルを中止)

定期処方:
Rp1) オルメテック錠20mg   1錠   分1 朝食後 28日分

前回の薬歴より:
① 車中泊、ピル服用、利尿剤服用→左足にむくみと痛み
② エコノミークラス症候群疑いにてB病院へ紹介
③ ラシックス錠20mgと併用薬のピル→中止

患者のコメント:
「左ヒザ裏の下に血栓ができていた。この場所は経過観察と言われました。
血栓の薬とか飲まなくていいんですか?」

患者から得られた情報:
① B病院からの処方薬はロキソニンとムコスタ 各3錠/3xのみ
② 弾性ストッキング着用、車中泊はもうしていない
③ ラシックスやピルは中止のまま

□CASE 182の薬歴
#1 血栓症の病識ケア
 S) 左ヒザ裏の下に血栓ができていた。この場所は経過観察と言われました。
   血栓の薬とか飲まなくていいんですか?
 O) 併用薬:ロキソニン・ムコスタ 
   弾性ストッキング(+)、車中泊(-)、ピル・利尿剤の服用(-)
 A) 不安に対して病識ケア
 P)表在性血栓と深部静脈血栓の違いを説明し安心してもらう。
   ただし、リスクファクターを取り除いておくことが大切。
 
□解説
 いわゆるエコノミークラス症候群は深部静脈血栓症や肺塞栓症のことを言う。この場合は入院下の初期治療などの後に、ワーファリンやリクシアナなどの抗凝固薬の服用が一般的な治療法だ。

 今回のケースでは、血栓はできているが経過観察でよく、薬物療法もNSAIDsによる対症療法となっている。もちろん、血栓症のリスクファクターは排除されている。これは表在性血栓静脈炎への対応だ。

 静脈炎の範囲が短く(<5cm)、深部静脈との結合部から遠く、ほかに血栓症の危険因子がない場合は、下肢挙上やNSAIDsで対症的な治療を行う。それ以外の場合は超音波検査による血栓範囲の評価、抗凝固療法の考慮が必要である。
(今日の治療指針2016 P. 479)

 メルクマニュアルの表在性血栓静脈炎のページにも「深部静脈と違って表在静脈は筋肉に取り囲まれていないため、血栓が押し出されることはありません。したがって、表在性血栓静脈炎はほとんど塞栓症を起こしません」と記されている。

 これらのページを患者といっしょに参照しつつ、患者に安心してもらい、今後も血栓症のリスクファクターに対して注意を払うように指導している。
 
□考察
 TVやラジオなどのメディアでエコノミークラス症候群の危険性が繰り返し放送されていた中で、血栓があると言われ、ロキソニンだけという対応に患者は不安だったようだ。

 一方、僕らも「薬があるからその周辺の病識を形成している」可能性がある。経過観察でよいような疾患で、その疾患の薬も処方されないとなると、僕らがその疾患に触れる機会も少なく、そのあたりの病識が乏しいのは当然といえば当然なのかもしれない。

 こういう機会を捉え、周辺知識を充実させていく。そういったことを心がけていきたいと思う。
 

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2016年6月10日 (金)

2016年6月のコラム ~CYP阻害薬の“強さ”について~

2016年6月の薬局にソクラテスがやってきた
CYP阻害薬の“強さ”の程度について。
役に立つかどうかは距離の取り方しだい。


【第62回】


 強力なCYP阻害薬、中等度の・・・、弱い・・・。その程度はどういうルールで決まっているのか? 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」を参考に記事を進めています。

好評連載「薬局にソクラテスがやってきた」。今回は“CYP阻害薬の強さ”がテーマ。強い/中等度/弱い阻害薬の違いはどこにあるのか?これを知ると、実際の症例への近付き方についてヒントも得られそうです。

【ヒット記事再録】


 コラムの中で触れましたが、イグザレルトの出血リスクはやはりピークと相関しているといわれています。一方、リクシアナはトラフと相関すると言われ、1日1回でよい理由も異なる理論のようです(こちら)。

 【ヒット記事再録】新規抗凝固薬のイグザレルト(リバーロキサバン)、プラザキサ(ダビガトラン)、エリキュース(アピキサバン)の半減期はほとんど変わりません。なのに、プラザキサとエリキュースが1日2回で、イグザレルトだけが1日1回なのです。その理由とは?
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。

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2016年6月 3日 (金)

「未来からのまなざしを受けつつ仕事をする」

「結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ」(P. 9)


しんがりの思想 [ 鷲田清一 ]
価格:885円(税込、送料無料)


【市民の無能力化とできること】

 こういう仕組みが完備してゆくことで、市民生活において逆にクオリティを大きく損なったものがある。いうまでもなく、≪いのちの世話≫を自力でおこなう能力の喪失である。(中略)ましてや災害時の排泄物の処理方法、雨水を飲料水に変える方法を知っているひとはほとんどいない。災害で食材の流通が止まったときも、じぶんたちで工夫して野山の植物を調理するのではなく、配給を待つだけだ。
(中略)
 では、トラブルが起こったとき、サービス劣化したときにわたしたちにできることは何か。皮肉にも行政やサービス企業の担当者にクレームをつけることだけなのである。

(鷲田清一『しんがりの思想』角川新書 P. 62-65)
 
 熊本震災、本震の直後、実際にこの状況を体験することとなった。そして僕らは無力だった。断水が続き、結果、給水に救われる。給水所に並ぶこと2時間、一家族あたり1回4Lの水を手にした。

 行政の職員が僕らの持参した容器に水を入れてくれる。彼らは休むことなく、淡々と作業をこなしていた。多くの人は感謝の言葉を告げていたように思う。だが、中には「まだ、水道はなおらんのか!」とクレームをつける人間もいたのだ。職員は「すみません。がんばっていますので、もう少しお待ちください」と大人の対応だった。でも、謝る必要なんて、これっぽっちもない。災害なのだし、この状況は僕らが選択してきた結果なのだから。
 
 
【石工の矜持】

「ほめられなくても自分の気のすむような仕事はしたいものだ」とも、この職人は語っている。この言葉を承けて、宮本はこう書きついでいた。「誰に命令せられるのでもなく、自らが自らに命令することのできる尊さをこの人たちは自分の仕事を通して学びとっているようである」、と。
 石工は、田舎を歩いていて見事な石の積み方に心打たれ、将来、おなじ職工の眼にふれたときに恥ずかしくないような仕事をしておきたいとおもった。このとき石工のこだわりはじつに未来の職人に宛てられていた。これに対して、目先の評判や利害ではなく、何十年か先の世代に見られてもけっして恥ずかしくない仕事を、というそのような矜持をもって仕事に向かうひとがうんと減ったのが現代である。未来世代のことをまずは案じる、そういう心持ちをほとんど失っているのが現代である。
 
(鷲田清一『しんがりの思想』角川新書 P. 9)

 生き残ること、利益を上げること、どちらも大切なことではある。でも、だからと言って、この石工のような矜持を失ってはならない。目の前のことだけに追われていてはいけない。仕事の一部は未来の薬剤師のために。

 常に最高の自分を差し出すべく努力をしていく中で、一つだけ忘れてはならない観点がある。それは、目の前の仕事だけに没頭してしまわずに、常にその一部を未来の薬剤師のために捧げてほしいということだ。今、自分のことだけを考えるのではなく、未来の自分、未来の薬剤師のための種を蒔くのである。それを絶対に忘れないでほしい。

(岡村祐聡『新・服薬ケア概論 エッセンシャルズ』服薬ケア研究所 P. 89)
 

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