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2016年5月13日 (金)

震災状況下での服薬中止指示

静脈血栓塞栓症(VTE)とSERM
震災時の治療の優先順位。
僕たちの行為の目的。

CASE 181

女性 70歳 

他科受診:整形外科  併用薬:ビビアント(4月初旬に77日分処方)

定期処方:
Rp1) カムシア配合錠LD   1錠  
    ピタバスタチン錠1mg  1錠  分1 朝食後 28日分

Rp2) レボフロキサシン錠250mg  1錠 分1 夕食後  7日分

患者のコメント:
「夜は車にいるから、ついついトイレを我慢してね」

患者から得られた情報:
① 足のむくみや痛みはない
② ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
③ 水は出ないし、トイレが気になり、夜は水分を控えている

□CASE 181の薬歴
#1 VTEを回避する
 S) ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
 O) 併用薬:ビビアントを77日分、足のむくみや痛みはない
   水は出ない。夜はトイレが気になり、水分を控えている→膀胱炎
 A) VTEのリスク大
 P) 車中泊を止められないのなら、血栓症が起こりやすくなるビビアントを中止。
   水分をしっかり摂って、足を動かす運動などを。パンフレット提供。
 
□解説
 熊本地震の翌週の薬歴。TVでもエコノミークラス症候群の注意が盛んに行われている中でのケース。

 患者は70歳の女性で、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子のオンパレード。車中泊(長時間足を動かさずに同じ姿勢でいる)で、水分摂取にも問題があり、おまけに血栓症の副作用のあるSERMまで飲んでいる。これはかなりのハイリスクだ。

 話を伺うと、エコノミークラス症候群が怖い疾患であるとの認識はなく、今すぐ車中泊を止めることも難しそうだった。そこで、併用薬のSERMの中止を指示し、厚生労働省作成のパンフレット(こちら)を用いて指導を行っている。
 
□考察
 震災直後のこの状況で、SERMを続けなければならない理由、僕にはそれが思いつかなかった。骨質をよくしてもVTEを起こすリスクを抱え込んでしまっては意味がない。つまり、この状況での服薬は勧められない。

 震災直後は水分摂取が困難な状況も散見された。別のケースだが、主治医と連絡が取れない場合には、僕の独断で、SGLT2阻害薬の一時中止を指示することもあった。

 そういうことをするには勇気がいる、躊躇してしまう、といった意見が少なからず耳に入ってくる。でも、もしその躊躇で、じぶんの患者がVTEや脳梗塞を起こしてしまったら? 僕が主治医なら、薬剤師に患者を救うチャンスがあったのに何をしていたんだ、ときっと思うに違いない。

 そもそも患者が薬を飲んでいるのはなぜなのか。もちろん、健康でありたいから。ということは、目的は同じだ。僕らは薬を飲んでもらうためだけにいるのではない。また、併用薬の確認は、飲み合わせのチェックだけをすればいいわけでもない。行為のすべては、患者の幸せに繋がっているかどうか。その一点にある。
 

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