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2016年5月27日 (金)

乳がん治療薬の飲み合わせ

“TAM=SERM”
“SERMとAI剤”
他科からの併用薬に注意


【TAM-CYP2D6阻害薬】
 
 2016/5/19のコラム 「ノルバデックス+ベタニス=薬効増強?減弱?」で、ノルバデックス(TAM)を服用している患者に対して、安易なCYP2D6阻害薬の併用を避けましょう、と提案しました。他科からの処方でのこういう事例に対して、僕たちは注意しなければなりません。


【TAM=SERM】
 
 もう一つ、違うケースがあるとすれば、ノルバデックスを服用している患者に対してのエビスタやビビアントといったSERMの処方。これは同じ薬効群の重複投与になってしまいます。まだ遭遇経験はありませんが、じゅうぶんに考えられます。こういったケースを回避するには、ノルバデックスの処方を切ったDrが骨粗鬆症まで合わせて診てくれるのが理想ですね。


【SERM-AI剤】
 
 さらに、この分野で注意したい飲み合わせがあります。それがSERMとAI剤の併用です。詳しくは、Blog「アリミデックスとエビスタの併用を回避する」(2013年10月11日)を参照ください。

 アリミデックスとノルバデックスを併用すると、アリミデックス単独よりもその乳癌再発予防効果がわるくなってしまうこと(ATAC試験)を受けて、ノルバデックスと同じSERMであるエビスタについて、ガイドラインには次のような記載があります。

 一方,ラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかし,ATACにおいてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し,しかもアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。 乳がん治療ガイドラインCQ42より)

 ビビアントの記載はまだありませんが、エビスタと同様と思っていいでしょう。

 一方で、SERMの併用により、動態に影響が出てしまうアリミデックスだからダメなのであって、影響の少ないアロマシンなら併用に期待できる、といった報告もあるようです。

 結論として、専門医が行うAI剤とSERMの併用には口を出さず、あくまでもAI剤服用中の患者に対して、他科からのSERMの処方を防ぐ。これが僕のスタンスです。
 

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2016年5月20日 (金)

2016年5月のコラム ~CYP2D6阻害薬と遺伝子多型について~

2016年5月の薬局にソクラテスがやってきた
CYP2D6に関する話題。
阻害薬と遺伝子多型について。

【第61回】


 薬効が増強して副作用が発現するようなら、患者でも気がつくことができます。でも、薬効が減弱するとなると・・・。そして、その結果どうなるかは、数年後の再発率で考えるしかないわけです。

 でも、理論だけで、この手の問題は、この問題の場合は回避することができます。そして、飲み合わせの専門家こそが薬剤師だ、と僕は思っています。

CYP450の相互作用では、阻害薬と基質薬を併用すると、基質薬の過量服用のような副作用を生じることがあります。ただし、例外もあります。また、添付文書に記載されている薬剤以外にも、同様の機序で相互作用を引き起こす可能性があることに注意が必要です。

【ヒット記事再録】


 GFJも大量に飲めば小腸以外でのCYP3A4やP-糖蛋白に影響すると言われています。この記事ではそういう特殊状況下は考慮していませんのでご注意ください。

 
ヒット記事再録】最近登場したNOAC(新規抗凝固薬)であるプラザキサ(一般名ダビガトラン)とイグザレルト(リバーロキサバン)。「同じP-糖蛋白の基質なのに、併用禁忌も、併用注意もなぜ違うんですか?」
##
山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」:薬局で生じる数々の疑問を山本氏がモノローグ調で解き明かすコラム。2014年1月から連載開始。※記事は2014年に公開されたものです。現状と異なる可能性があります。

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2016年5月13日 (金)

震災状況下での服薬中止指示

静脈血栓塞栓症(VTE)とSERM
震災時の治療の優先順位。
僕たちの行為の目的。

CASE 181

女性 70歳 

他科受診:整形外科  併用薬:ビビアント(4月初旬に77日分処方)

定期処方:
Rp1) カムシア配合錠LD   1錠  
    ピタバスタチン錠1mg  1錠  分1 朝食後 28日分

Rp2) レボフロキサシン錠250mg  1錠 分1 夕食後  7日分

患者のコメント:
「夜は車にいるから、ついついトイレを我慢してね」

患者から得られた情報:
① 足のむくみや痛みはない
② ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
③ 水は出ないし、トイレが気になり、夜は水分を控えている

□CASE 181の薬歴
#1 VTEを回避する
 S) ご主人と二人で普通車に車中泊(自宅の壁にヒビがあり余震が怖いため)
 O) 併用薬:ビビアントを77日分、足のむくみや痛みはない
   水は出ない。夜はトイレが気になり、水分を控えている→膀胱炎
 A) VTEのリスク大
 P) 車中泊を止められないのなら、血栓症が起こりやすくなるビビアントを中止。
   水分をしっかり摂って、足を動かす運動などを。パンフレット提供。
 
□解説
 熊本地震の翌週の薬歴。TVでもエコノミークラス症候群の注意が盛んに行われている中でのケース。

 患者は70歳の女性で、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子のオンパレード。車中泊(長時間足を動かさずに同じ姿勢でいる)で、水分摂取にも問題があり、おまけに血栓症の副作用のあるSERMまで飲んでいる。これはかなりのハイリスクだ。

 話を伺うと、エコノミークラス症候群が怖い疾患であるとの認識はなく、今すぐ車中泊を止めることも難しそうだった。そこで、併用薬のSERMの中止を指示し、厚生労働省作成のパンフレット(こちら)を用いて指導を行っている。
 
□考察
 震災直後のこの状況で、SERMを続けなければならない理由、僕にはそれが思いつかなかった。骨質をよくしてもVTEを起こすリスクを抱え込んでしまっては意味がない。つまり、この状況での服薬は勧められない。

 震災直後は水分摂取が困難な状況も散見された。別のケースだが、主治医と連絡が取れない場合には、僕の独断で、SGLT2阻害薬の一時中止を指示することもあった。

 そういうことをするには勇気がいる、躊躇してしまう、といった意見が少なからず耳に入ってくる。でも、もしその躊躇で、じぶんの患者がVTEや脳梗塞を起こしてしまったら? 僕が主治医なら、薬剤師に患者を救うチャンスがあったのに何をしていたんだ、ときっと思うに違いない。

 そもそも患者が薬を飲んでいるのはなぜなのか。もちろん、健康でありたいから。ということは、目的は同じだ。僕らは薬を飲んでもらうためだけにいるのではない。また、併用薬の確認は、飲み合わせのチェックだけをすればいいわけでもない。行為のすべては、患者の幸せに繋がっているかどうか。その一点にある。
 

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2016年5月 6日 (金)

「あまり思い詰めないほうが良いこともあります」

「今の技に不足があるのは、そこに至る技、そのまえの技に因がある」(P. 106)


フォグ・ハイダ [ 森博嗣 ]
価格:799円(税込、送料無料)


【少しくらいの濁りはあった方がいい】

 「坊主の私が言うのも、だいぶ筋違いと思いますが、少しくらいの濁りは、あった方がよろしい。この世にあるものは、いかなるものも、必ず無駄なものが混ざっております。なにも溶けていない水はない。なんの匂いもしない風もありません。それでも、それを綺麗な水といい、澄んだ空という。おそらくは、正しい剣、正しい刀も、そのようなものと想像いたします」

(森博嗣『フォグ・ハイダ』中公文庫 P. 361)
 
 どんな仕事でも、真剣に対峙すればするほど、悩み思い詰めるものなのだろう。そんなときに思い出したいフレーズだ。理想には遠く届かなくても、綺麗な水であり、澄んだ空であるならば、きっと方向性だけは間違っていない。ただし、そう判断するのは他者であり、じぶんではないことだけには留意したい。
 
 
【人生には理由などない】

 もともと、都へ行くつもりなどなかった。カシュウが言い遺したのは、山を下りろというだけのことである。山は下りた。山を下りたところには里があって、その里から続く道は、街道へと繋がり、たまたま西へ向かって歩くことになった。そして、道すがら、大勢の者が、どちらへ行くのかと尋ねてくる。面倒なので、都へ行くと答えた。そう答えているうちに、本当の目的になりつつある。それだけのことなのだ。どうしても行かなくてはならない理由などまったくない。
 
森博嗣『フォグ・ハイダ』中公文庫 P. 382

 身も蓋もないかもしれないが、これが人生だ。例えば、僕が薬剤師で生きていかないといけない理由などまったくない。前職であるMRも楽しかったし、向いていたと思う。家族と趣味の都合で薬剤師になった。そして、後輩とつるんでいるうちに後輩にはみっともない姿を見せるわけにはいかなくなった。ただそれだけのことが今の活動へとつながっている。
 

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