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2016年2月26日 (金)

2016年2月のコラムの補足とセリバスタチン

2016年2月の薬局にソクラテスがやってきた
OATP1B1とスタチン、CYP2C8の基質と阻害剤
と言えば「セリバスタチン」が存在していたあの頃

【第49回】


 関連の薬歴公開は「ネオーラルースタチン」(2009/8/21)です。

 スタチンとシクロスポリンの相互作用は、OATP1B1の基質とその阻害剤の関係と説明できます。そして、併用禁忌とみなす判断基準があり、それを下回るのは、OATP1B1の基質ではないローコールだけと言っていいでしょう(もちろんローコールも低用量からスタートするといった注意が必要です)。

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【第50回】


 関連の薬歴公開は「ジャヌビア錠25mgの剤型変更と添付文書改定からわかること」(2013/8/30)です。

 プラビックスのグルクロン酸抱合体は強力なCYP2C8阻害剤である。この事実がなぜ今まで判明していなかったのでしょうか(第2相反応の代謝物だから検討されることがなかった?)。むしろプラビックスといえば、阻害剤ではなく、CYP2C19の基質というイメージでした。

 一方、シュアポストはCYP2C8阻害剤の影響を受けやすい基質としては有名で、IFにも次のような記載があります。

6)ゲムフィブロジルとの併用
健康成人(外国人)に、ゲムフィブロジル(CYP2C8 阻害剤、国内未承認、600 mg、1 日 2 回)を 3
日間投与し、3 日目に本剤(0.25mg)を併用したとき、レパグリニドの
Cmax 及び AUC0-∞は、
本剤を
単独投与したときの 2.4 及び 8.1 倍に増加し、t1/2は 1.3 時間から 3.7 時間に延長した。また、ゲムフィ
ブロジルに加えてイトラコナゾール(CYP3A4 阻害剤、100mg、1 日 2 回 3 日間、1 日目の初回用量は
200mg)を併用したところ、レパグリニドの Cmax 及び AUC0-∞は本剤を単独投与したときの 2.8 及び
19 倍に増加し、t1/2は 6.1 時間に延長した。

 レパグリニドの代謝には CYP2C8 が主に関与し、一部 CYP3A4 も 関与するといわれています。この結果を踏まえると、シュアポストとプラビックスの併用に加え、クラリスロマイシンやイトラコナゾールといったCYP3A4阻害薬を上乗せする状況になったとしたら、シュアポストのAUCの増加は2ケタになってもおかしくないわけです。

 そしてゲムフィブロジル。この本邦未承認のフィブラート系を目にして思い出すのはセリバスタチンです。


【懐かしのセリバスタチンとその当時】

 セリバスタチン(商品名:セルタ【武田薬品】・バイコール【バイエル薬品】)。今はなきこのスタチンをご存知でしょうか。僕がMRの頃、なかなかの強敵で・・・。武田系卸をフル活用しローラー作戦を仕掛けてくる武田、そして一本釣りのバイエル。苦労しました。が、このセリバスタチンは販売中止、自主回収となってしまいます(こちら)。

 セリバスタチンは発売当初、CYP2C8とCYP3A4の多代謝経路のために相互作用が少ないと言われていました(セリバスタチンはCYPで代謝され、グルクロン酸抱合を受ける)。ところが、ゲムフィブロジルを併用すると、その強力なCYP2C8阻害作用と、それに続くグルクロン酸抱合の阻害により、横紋筋融解症の発現へとつながったのです。

 そして、セリバスタチンの販売中止。これがスタチンとフィブラートの原則禁忌の引き金になりました。

 また当時、もう一つの相互作用も報告されていました。それがスタチンとシクロスポリンです。当時はシクロスポリンのCYP3A4阻害作用によるものと考えられていました。しかし、CYP3A4で代謝されないスタチンの血中濃度も上昇してしまうことから、CYP3A4を介さない相互作用の機序が研究されることになります。

 その答えが、シクロスポリンの肝臓でのOATP1B1阻害です。これなら水溶性のメバロチンが、シクロスポリンとの併用において、そのAUCを23倍にも上昇させるという報告があることにも頷けるわけです。
 

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2016年2月19日 (金)

乱読、再読『ガラスの街』

再読、乱読、積読。
「偶然以外何一つリアルなものはないのだ」
仕事論、そして最後の一文。

ガラスの街 [ ポール・オースター ]
価格:561円(税込、送料込)


 僕みたいな乱読家にとって、本にまつわる問題は山のようにある。なかでも、本の整理という物理的な問題は避けがたく存在している。書き込み、線引き、端折りなど、なんでもありの僕の本には、古本としての価値もなく、それこそ山積みとなっている。

 片づけが進まない理由、それは時間がないからではない。時間がないというセリフは、優先順位が低いという意味でしかない。そうではなく、手にとると開いてしまうからである。再読が始まる。もちろん最初から最後まで読んでしまうわけではない。僕が残した印である書き込みや線引き、端折りを探してしまうのだ。

 今回手にしたのは、ポール・オースターの『ガラスの街』。僕の印が数ヶ所ある。まずは物語の冒頭部分。

 そもそものはじまりは間違い電話だった。真夜中にベルが三度鳴り、向こう側の声が、彼ではない誰かを求めてきたのだ。ずっとあとになって、自分の身に起きたさまざまなことを考えられるようになったとき、彼は結局、偶然以外何一つリアルなものはないのだ、と結論を下すことになる。(ポール・オースター『ガラスの街』新潮文庫 P. 5)

 「偶然以外何一つリアルなものはないのだ」ほんとにその通りだ。僕はたぶん初めて読んだその時と同じように膝を叩く。そして、主人公クインとその物語を思い出す。その物語は間違い電話から始まるのだが、じつはオースターがこの小説を書くきっかけになったのも間違い電話なのだ。

 オースターのエッセイ『トゥルー・ストーリーズ』に「私のはじめての小説は間違い電話から着想を得た」とある。そして、この事実を赤いノートブックに書きつけた、とも。オースターも僕と同じノート使いなのだ。

 『ガラスの街』には3ヶ所、僕の印が刻まていた。二つ目は仕事論的なフレーズだった。

 「いいですか。私はですね、仕事の枠を限定する必要を悟ったのです。すべての結果が決定的なものとなるよう、十分小さな領域のなかで作業を進めることが肝要なのです」(同書 P. 138)

 まさにゲーテを彷彿とさせる。「小さな対象だけを扱うように」「小さな題材を扱うのが一番だよ」「ただ君の手にあうような個々の部分だけをそれぞれ独立して表現するなら、それはきっとよいものができる」(エッカーマン著、山下肇訳『ゲーテとの対話(上)』岩波文庫)。オースターも『ゲーテとの対話』を読んでいたのかもしれない。

 僕もこの忠告を守りつつ表現しようと心がけている。しかしそれは、同時にまた一抹の不安でもある。パスカルの言葉を借りるなら、「われわれは絶壁が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶壁のほうへ走っている」のではないか、と。

 『ガラスの街』についている最後の印は、赤いノートの最後の一文だった。

 「赤いノートにもう書くところがなくなったらどうなるのだろう?」(同書 P. 236)

 クインはノートのはじめの方での多くのページの無駄使いを嘆く。が、それは人生において必要だったのだと了解しつつ、最後の一文へとつながる。それは人間の最後の言葉を僕に連想させた。

 最後の言葉として感動とともに覚えているのは、ユゴーの『レ・ミゼラブル5』(新潮文庫)でのジャン・ヴァルジャンの言葉だ。「死ぬことはなんでもない、生きていないことが、恐ろしい」。この一文を目にするためにこの大長編をここまで読み進めてきたのだ、といった意味でも感慨深いものだった(ユゴーは「主題を見失わなければ、脱線にはならない」と居直り、歴史背景や時代の問題点を了解しないままに、物語を進めることを拒否している)。

 でも今、最後の言葉を求められたとしたら、この言葉を提出することはない。否、できそうにない。僕は“ほんとうに”生ききれているのか、そう問わずにいられない。だが、ここでまたパスカルの言葉が思い浮かぶ。「私が何も新しいことを言わなかった、などと言わないでもらいたい。内容の配置が新しいのである」。この言葉なら、薬局薬学のエディタとしての僕のノートの最後に刻まれてもいいだろう。

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2016年2月12日 (金)

アボルブ休薬中の患者への麻黄湯

アボルブ休薬中
いつまで大丈夫?
風邪薬や麻黄剤など

CASE 179

男性 65歳 

他科受診:なし  併用薬:なし

定期処方:
Rp1) アムロジピン錠2.5mg 1錠   分1 朝食後   28日分

Rp2) ユリーフ錠4mg  2錠 分2 朝・夕食後  28日分

Rp3) ツムラ麻黄湯エキス顆粒 7.5g 分3 毎食前 3日分

Rp4) カロナール錠300mg 1錠 発熱時頓用 5回分

*H28.1.12よりアボルブ休薬中

患者のコメント:
「寒気がする。会社で(インフルエンザが)流行り出した。たぶんそうだろうって」

患者の情報:
① アボルブ休薬後も尿の出は問題ない。
② 汗(-)

□CASE 179の薬歴
#1 アボルブ休薬による尿閉リスクの回避
  S) 寒気がする。会社で(インフルエンザが)流行り出した。たぶんそうだろうって
 O) アボルブ休薬1ヶ月→排尿に問題なし
   インフルエンザ疑いにて、ツムラNo.27処方(無汗OK)
 A) アボルブ休薬1ヶ月なのでまだ大丈夫だろう
   念のため、麻黄剤や風邪薬による尿閉のアナウンスを
 P) 抗ウイルス作用のある漢方薬。発汗剤なので水分もこまめに。
   尿の出が悪くなるようなら中止を。今後も市販の風邪薬でも同様に注意を。
 
□解説
 前立腺肥大症治療薬「アボルブⓇカプセル 0.5mg(デュタステリドカプセル)」の出荷調整のお詫びとお知らせ。これによる対応はさまざまだ。アボルブを休薬したら間違いなく尿閉やオペになるような患者を除いては、アボルブの休薬もしくは抗アンドロゲン薬への変更をお願いしている。
 
 この患者はアボルブを休薬している。まだ1ヶ月だ。そして、排尿に関しての問題は見当たらない。おそらく、麻黄剤による尿閉は大丈夫だろうとは思いつつも、アボルブの供給再開の見通しがたっていない以上、今後のことを考えた服薬指導をしておこう、といった内容になっている。
 
□考察
 2~3ヶ月ならアボルブを休薬しても問題はない、とメーカーは案内している。たしかに5α還元酵素阻害薬や抗アンドロゲン薬は半年くらいかけて前立腺を小さくしていくわけだから、その通りなのだろう。

 コントロールされた前立腺肥大症の患者への抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、そして麻黄剤など。そういったことは日常的になされている。が、アボルブを休薬中の患者は意識しておかないといけない。今から時間が経てば経つほどに。
 

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2016年2月 5日 (金)

サーチ実践例と勉強会のご案内

安心処方infoboxサーチ実践例更新
服薬ケアで目指す「本物の薬剤師」

【第90回サーチ実践例】

90

 こんな疑問が頭をよぎったら、副作用サーチが便利です。検索して思うことは、添付文書に載せるかどうか、そしてその重症度といった扱いは、ほんとメーカーによってかなり違うんだな、ということでした。

 過去の実践例はこちら


【勉強会のご案内】

2

 岡村先生のご講演。「薬の知識、病理学、薬の使用感等、使用する薬が体内でどのように吸収、分布、消失するのか、その薬物動態をイメージ出来るようになる・・・」うん、面白そうです。

 福岡での開催が近づいてきましたので、ご案内します(申し込みはこちら)。

 日時:2016/02/14(日)13:30~16:00(受付開始13:15)

 場所:天神クリスタルビル3F Bホール
     (福岡県福岡市中央区天神4丁目6-7 天神クリスタルビル3F)

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