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2016年1月22日 (金)

「探偵のように推理し、患者の暮らしを守る」

薬剤師のやるべきことは、・・・、薬と人の支援、つまり「服薬支援」と「患者支援」です。(P. 73)


【暮らしが先に来る思考回路】

薬剤師は、患者さんに薬をしっかり飲んでもらうことが大切だと思うけど、患者さんの願いはただ一つ、「暮らしを守ってほしい」という思いですよ。これを医学用語に言い換えたものが「クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を守る」でしょう。(中略)QOLを守ったり上げるために薬剤師のやるべきことは、「薬によってQOLを下げないように守る」ことなんです。そこに薬剤師の大いなる使命と役割が存在するんです。薬剤師の、人へのかかわりというのは、そこにある。
 薬がその人の暮らし、QOLに影響を与えていないかを視る。それは「薬が先に来る思考回路」ではなく。患者さんの暮らしを視て、薬の影響が出ていないかを視る、つまり、さっきの逆。そこで、僕はそれを、「モノが先に来る思考回路」に対して、「暮らしが先に来る思考回路」と名付けて、ずっと言い続けてきている。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 14-15)
 
 川添先生が形を与えた、この「暮らしが先に来る思考回路」という概念。この考え方に初めて触れたのは平成18年、漆畑先生の調剤報酬改定の講演目当てに参加したセミナーでのことだった。衝撃だった。

 この思考回路を通して、「暮らしから薬をアセスメントする」。そして、そのためには「薬学的知識が欠かせない」。もちろん「経験」も。

 知識と経験で予測もできる。患者の暮らしを守る。現在の、そして将来の。
 
 
【食事、排泄、睡眠の中には、直接薬をアセスメントできる項目がいっぱい】

 でも、思うんです。じゃあ、薬っていうのは、血圧さえ下がればいいのか? それは違うでしょう? 人間にとって薬を飲む意味は、血圧を下げることによって長生きすること、例えば脳梗塞の発症リスクを下げることにあるわけですよね。
 では、何のために長生きするかというと、それはやっぱり豊かな人生を歩んで、人生を楽しく生きるためじゃないですか。じゃあ、薬によって人生が楽しくなくなってしまっては元も子もないだろうと。
 楽しむためには、食事と排泄と睡眠の三つが満たされていることはすごく大事だと、僕は思うんですよ。快食、快便、快眠という言葉は、見事に人間のクオリティー・オブ・ライフを言い表していると思うんですよ。クオリティー・オブ・ライフって何なのか、人生の質って何なのかを考えると、究極は、快食、快便、快眠なんだと僕は思っています。
 それらが人生おいて重要だと考えれば、副作用チェックに際して最も優先すべきことは、快食、快便、快眠を妨げるような副作用チェックをすることじゃなかろうかと。もちろん、命にかかわるような副作用チェックは重要ですけど、この三つが脅かされていないか、副作用が出ていないかをチェックすることは決して忘れてちゃいけないと思うんですよね。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 170-180)
 

 ほんとうにこの三つのチェックは忘れちゃいけない(フローチャートには「運動」と「認知機能」が加わる。2010年2月26日 (金) 「暮らしが先に来る思考回路」参照)。そして、薬歴の記載において重要な指摘が続く。

比較のためには、問題がなかったときの記録を残しておくことが大切なんです。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 181)
 
 僕らは薬歴の記載において、POSの考え方でSOAP形式で記録をつける。POS(Problem Oriented System)とは、患者の持っている医療上の問題点に焦点を合わせ、その問題を持つ患者の最高の扱い方(best patient care)を目指して努力する一連の作業システムのことをいう。この定義、いや日本語訳が問題なのだ。

 Problemを問題(問題点)と訳するから、その言葉に引きずられる。つまり、患者の問題(問題点)を探してしまう。だから、よい状態、問題がなかったときの記録を残すことができない。結果、後から読み返したときの価値が目減りしてしまう。経時的な変化が追えなくなる。そうなるくらいなら、Problemは「プロブレム」のまま使えばいい。そして、「テーマ」くらいの意味合いで捉えておけばいいのだ。
 
探偵のように推理するのが薬剤師の仕事

 例えば僕は、新しい薬が発売されたときにその薬を知ろうと思ったら、まず添付文書を見て「食事」に関する副作用に赤で丸を付ける。そして、次に「排泄」に関する副作用は青で囲む。そして「睡眠」は緑とかで印を付けていく。そうすると、全部の副作用の8割ぐらいは、食事か排泄か睡眠かのどれかに影響する副作用に該当します。(中略)だから、食事、排泄、睡眠に関する簡単な質問を入り口に、いろんな副作用の可能性が引き出せる。そして、出てきた可能性を一つずつ検証しながら、可能性をつぶしていく。患者さんに聞いて確認したり、自分の目で患者さんの様子を視たり、介護者に聞くというのもありでしょう。そうやって、探偵のように推理しながら、原因を確かめていくのも薬剤師の仕事だと思います。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 188)

 この勉強法は面白い。今度やってみよう(赤・青・緑って齋藤孝の三色ボールペン術みたいだし)。しかし、ただ副作用を見つけて終わりじゃない。その先、次の段階の問題点まで視野に入れて行動することが大切だ。

 薬剤師は、副作用を見付けて、見付けたことを喜ぶ職業じゃない。時々、口渇を見付けた途端に、「患者さんが『口が渇く』と言っています。副作用じゃないでしょうか」と医師に相談してしまう薬剤師がいるんですけど、それだけで相談されても医師は困る。何が問題なのか、本当に患者さんが困っているポイントは何かをしっかり見極めて、解決策を医師と共に探していくことが大切でしょう。

(川添哲嗣『「Do処方、特変なし」から脱却せよ!』日経BP社 P. 198-199)

 探偵のように推理する。そして、患者のQOLが薬で下がることがないように、暮らしを守る。薬剤師ってかっこいいじゃん。

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(16) 今月の1冊(ひのくにノ本棚)」カテゴリの記事

コメント

この考え方、今でももちろん全くぶれてません。
病院でも薬局でも同じです。
自分の本なのに、こうやってレビューを読むと新鮮です。
ありがとうございます!

それにしても昨夜のソクラテス先生の話はよかった。
かなり、刺激を受けました。
構造式ももっと勉強したくなりました。
そして本を読もうと心から思いました。
これまたありがとう!!

投稿: 川添哲嗣 | 2016年1月24日 (日) 23時29分

川添先生、コメントありがとうございます。昨日はおつかれさまでした。そして、ありがとうございました。

先生の本はもっと早く読んでおくべきでした。たしかにブレてない。髪の毛以外、変わってません(笑)

9月、1月と先生の同じタイトルの講演を聴きながら、前回のノートと比べながら、先生のすごさを感じた次第です。たぶん、僕だけ違う意味で感動していたのかも。

僕も回を重ねるごとに成長してやる、と思いながら飲んだ鍋島は格別でした。またご一緒できる日を楽しみにしています。

山本雄一郎

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2016年1月25日 (月) 00時06分

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