« CCBによる下肢浮腫への対応 | トップページ | 腸管膜静脈硬化症の記載のある漢方薬はいくつある ~安心処方infobox 実践例第88回~ »

2015年11月20日 (金)

2015年11月のコラム ~QT延長からのTdPとZ-Drugの依存リスク~

2015年11月の薬局にソクラテスがやってきた
抗不整脈薬のQT延長 第2弾!
Z-Drug(非BZD系睡眠薬)の依存リスクについて。

【第43回】


 「QT延長に伴う心室頻拍に要注意な抗不整脈薬」(2015/10/2)の続編です。

 TdPの発生率は管理する側の要因にも大きく左右される。その要因についての内容です。ベプリコールを題材として取り上げましたが(他の抗不整脈薬よりもリスクが高いので)、他の薬剤でも使える考え方だと思います。

Qt

【第44回】


 記事を放ったあとにタイトルをしくったな、と。ラセミ体からS-体なので、光学異性体ではなく、キラルスイッチとかラセミ分割とかにすればよかった、と反省。平面上で書けば同じ構造でも、立体構造としては異なる光学異性体では、生体への作用の仕方が異なることがあるのは周知の事実。ということで、薬理作用の違いが実感しやすい方を優先して、今回のタイトルはこのままで。

 ゾルピデム(マイスリー)、ゾクピロン(アモバン)、エスゾピクロン(ルネスタ)といった非BZD系睡眠薬は、その頭文字をとって“Z-Drug”と呼ばれるようになってきているようです(僕の周辺ではあまり浸透していないようなので、記事ではその名称を使いませんでした)。

 では、そのZ-Drugには違いがあるのか? わかりやすい違いといえば「苦み」でしょうか。それ以外は? 薬理(とくに薬力学)的には? そういった内容になっています。

 うまくいった光学異性体の例として思いつくのは、クラビット(S-体が抗菌活性、R-体が副作用)とネキシウム(CYPの影響を受けにくい)くらいでしょうか。それ以外はあまり変わらないのでは? と正直感じていました。エスゾクピロンはどうなのでしょう。発売当時には予想していなかった効果が確認されてきているようです。

 その一つが依存性の問題です。記事ではさらっと流しましたが、これは臨床において、この系統の薬剤が抱える大きな問題です。エスゾクピロンは、BZD系はもちろんのこと、他のZ-Drugと比べても、依存性のリスクが低いと考えられています。なぜなら、記事でも紹介したように、依存形成のリスクはα1サブユニットを介して生じるからです。

Photo

(ルネスタの製品情報概要より)

 

 BZD系およびZ-Drugによる依存形成は、
中脳辺縁ドパミン作動神経細胞からのドパミンの過剰放出が、その原因とされています。

 α1サブユニット(①α1GABAA受容体)を介して強く作用する薬物、すなわちBZD系、ゾルピデム、ゾクピロンは、抑制性GABA介在神経を抑制し、GABAの遊離を抑制(脱抑制:①→②)。その結果、ドパミン神経系が活性化され、中脳辺緑系の投射先である側坐核などにおいてドパミンが過剰に遊離され、依存が引き起こされると考えられています。
 
 しかしエスゾクピロンの場合、中脳辺緑ドパミン神経(②α3GABAA受容体)に直接作用するため、ドパミンの放出が抑えられ、依存形成のリスクが低くなるというわけです。

 現在、BZD系やZ-Drugの抱える一番の問題点である依存の問題。これを回避するためにα1サブユニットへの活性を持たない物質の開発が始まっています。そういう意味では、現時点において、依存のリスクが最も低いのはエスゾピクロンといっていいでしょう。

 医師の処方変更の意図はこれかもしれない。BZD系や非BZD系で依存リスクの低いのは? と問われたなら、エスゾピクロンはいかがでしょう、と答えることができると思います。

 と、ここまで記載したところで、注文していた『薬局』が届きました。この本にも同様の言及があったので関連個所を引用しておきます。

 エスゾピクロンはゾピクロンに含まれるS体であり、従来は薬力学的にはゾピクロンとほとんど類似していると考えられてきたが、表3に示すように、現在ではその薬理作用はα2およびα3サブユニットを介して発揮されると考えられている。したがって、このα2およびα3GABAA受容体への作用とその生体内動態とにより、エスゾピクロンの睡眠薬としての入眠効果および睡眠維持効果は、ゾルピデムやゾピクロンのなどのZ薬物より優れていると現在考えらえている。さらに、後述するように、依存形成が生じる可能性はα1サブユニットを介して薬理作用を発現する他のGABAA受容体作動性の睡眠薬に比して格段に低いと考えられ、事実多くの臨床試験の結果もこの推測を裏付けている。(薬局 2015:66;2965.より引用)

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

 

 

|

« CCBによる下肢浮腫への対応 | トップページ | 腸管膜静脈硬化症の記載のある漢方薬はいくつある ~安心処方infobox 実践例第88回~ »

(17) 今月のコラム(DI online)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2015年11月のコラム ~QT延長からのTdPとZ-Drugの依存リスク~:

« CCBによる下肢浮腫への対応 | トップページ | 腸管膜静脈硬化症の記載のある漢方薬はいくつある ~安心処方infobox 実践例第88回~ »