2015年6月のコラム ~サイアザイド類似薬とサイアザイド利尿薬~
2015年6月の「薬局にソクラテスがやってきた」
サイアザイド利尿薬、サイアザイド類似薬、サイアザイド系利尿薬。
心血管系と利尿作用のどちらに重きを置くか。
【第34回】
2015/6/9 「ARBと利尿薬をあえて単剤で処方する理由 」
Twitterでこんな質問がありました。「なぜARBとサイアザイド類似薬の合剤を作らないのだろうか?」と。今回のケースでいえば、塩野義のイルベタン+フルイトラン(イルトラ)に対抗するなら、アバプロ+ナトリックス(もし出るなら「アバックス?」)ということになるでしょうか。
でも、これは出ないと思います。ヒントは今回の記事のイントロ部分、症例の設定のところにあります。
Nさんは最近退職したばかりの65歳の男性で、心筋梗塞の既往があり、たくさんの薬を服用している。惜しいのは、心筋梗塞ベースであるにもかかわらず、ACE阻害薬による血管浮腫の副作用歴があるために、ARBを服用しているという点だ。空咳くらいなら、何度でもACE阻害薬にチャレンジしたいところだが、血管浮腫となると近付けない。
そうです。NさんはACE阻害薬を使いたくでも使えない状況に設定してあったのです。つまり、サイアザイド系利尿薬で心血管系イベント抑制効果に優れるものを選択するのならば、当然RA系でもそうすべきです。
ということは、「アバックス?」なるものを発売してPRするとなると、当然、おススメの症例にはARBではなくてACE阻害薬を勧めなければ筋が通りません。だから、ARBとサイアザイド類似薬の合剤は発売されない。そういうことだと思います。
【第35回】
2015/6/23 「ループとの併用でサイアザイドが復活する理由」
GFR<30において、サイアザイド系利尿薬はなぜ効果が乏しいのか? それがループ併用だとなぜ使えるのか? ループ利尿薬で利尿が得られれば、少なくとも作用部位である遠位尿細管に到達するターゲットとなるNaと薬物量がともに増える。ループ利尿薬との併用であれば、また活躍するチャンスはある、というわけです。
記事の内容以外にも病態的な理由もありますが、それは次回、第36回にて触れる予定です。そもそもループとサイアザイドを併用する状態になってしまうのはなぜなのか? これについてはループ利尿薬抵抗性について触れなればなりません。が、記事のボリュームの問題もあり、今回はそれ以外で1本の記事にしました。
そして、じつはこのテーマを2本に分けた理由がもう一つあります。それは第34回の反響の中にありました。ナトリックスなどのサイアザイド類似薬は良くて、サイアザイド利尿薬は悪いという二元論。エビデンスがあるかないか、物事はそんなに単純ではないわけです。
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