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2015年4月17日 (金)

清張記念館

 地下駐車場から地上に上がる。暖かい日差しほどには空が青く抜けていない。それどころか遠くは霞んでいるように見える。あとで知ったところによると、この日、北九州地方には今年初のPM2.5の警報が発令されていた。

 目的地へと歩き出すとすぐに小倉城が見えてくる。さっそく写真に収める。地元の城をいまさら? 子供のころからさんざん見ているのに? そう言われては返す言葉がみつからない。しいて言えば、城がそうさせるのだ。もちろん、口には出さないが、重厚な装備と高そうなレンズを装着した数人のカメラマンが無言のエールを送ってくれていた。

Photo


 小倉城を写真に収めるのなら城だけにすべきだ。紫川の対岸から、ひいて写真に収めようとすると小倉城よりも大きな市庁舎やリバーウォークの奇抜なフォルムが目立っていけない。特に市庁舎がいただけない。まるで、僕が子供のころに流行った超合金のロボットのようだ。城とロボット、なんというミスマッチ。さしずめ、リバーウォークは怪獣といったところだろうか。

 目的地は松本清張記念館。とくにファンというわけではないが、北九州出身者としては訪れないわけにはいかない。と思いつつも齢を重ねてもうすぐ四十。きっかけは自分で作らないとなかなか行動には結びつかない。

 下調べもなく赴いたのだが、折よく特別企画展『玄人』が開催されていた。清張古代史テーマの一つ。そこで僕の目を引いたもの、それはテーマでも、作品でもなく、清張の姿勢とも言うべきものだった。おびただしい数のカード。その一つひとつには古代史についての情報がぎっしり書き込まれている。清張はこのカードの手法を60代後半から始め、本人が実感しうる効果を上げたようだ。清張曰く「もっと早くからやっていればよかった」と。

 そのほかにもテーマごとのノート類。もちろん清張の再現家屋にはいくつもの書庫が。そう無から有は生まれない。

 僕たちは結果だけを目にして、才能の一言で片づけてしまう。でも、こういう記念館や資料館では、その過程を垣間見ることができる。清張ほど圧倒的な仕事量をアウトプットするためには、それを凌駕するインプットはあって然るべきだ。だが本質はそこではない。

 「重要なことは、けっして使い尽くすことのない資本をつくることだ」ゲーテはそう言った。清張にはそれがあった。だからこそインプットすればするほど、アウトプットができたわけだ。もちろん、それはこれですと指し示すことができるような有形のものであろうはずもない。

 ネット時代の僕らはすぐに答えを探し求める。仕事の場においてもその姿勢は変わらないようにみえる。ネット検索術が僕らにとっての「使い尽くすことのない資本」なのか。そうではない。そうではないはずだ。ショーケースのなかに鎮座する赤ペンの入った清張の遺稿を見つめながらも、僕の思考は、僕を貫き、僕らの仕事の本質へと馳せていった。

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