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2015年3月27日 (金)

2015年3月のコラム~NOACとNOAC、NOACとWF~

2015年3月の「薬局にソクラテスがやってきた
NOACはクラスエフェクトでよいのか?
僕たちはWFを本当に理解しているのか?


【第28回】


 関連の薬歴公開はなく、書き下ろしです。

 「(NOACには)クラスエフェクトでは済まされない歴然とした差異がある」これがこの記事で言いたかったことです。効果面、安全面、相互作用、排泄などなど。

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 その中でも特徴的な腎排泄の面を話題の中心に据えました。おそらく透析患者においてもエリキュースとリクシアナのほうが安全なのじゃないかなとも思います(でも、そんなことになったら、日本の医療費はまた確実に・・・)。

 この記事の参考資料は、下の『New and New』です。

【第29回】


 こちらも関連の薬歴公開はなく、書き下ろしです。

 NOACの話題を耳目するたびに思うことは、NOACの本当のメリットというものが理解されていないのではないか? ということです。それは畢竟、ワーファリンを理解したつもりになっている、ということでもあります。

 そして、じつはもう一つ、NOACの利点を忘れていました。それは守備範囲の広さです。NOACはCHADS2(チャッズ・ツー)スコアが1点から推奨されているのに対して、ワーファリンのそれは2点以上です(この理由は記事の内容とオーバーラップしますので割愛)。CHADS2スコアに関しては、2014年7月のコラムで紹介しています。

 また、そうは言っても、昨今の日本の医療経済事情に鑑みると、諸手を挙げて、NOACを歓迎するわけにもいかないこともよく理解できます。さらに、生保の方には遠慮なく、NOACが使われているなんて状況も生まれており、なんとも言えない気持ちになってしまいます。

 この記事で用いた引用は、下の『Old and New』からです。

山下先生の上記の2冊を読み込めば、NOACをかなりマスターすることができます。

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2015年3月20日 (金)

アピキサバンの「間質性肺疾患」について

 2015年2月、アピキサバン(商品名:エリキュース錠)で、「使用上の注意」改定のお知らせが発行された(こちら)。

 重大な副作用に「間質性肺疾患」が追記され、副作用症例概要として、70代女性の症例が1例だけ記載されている。

 「間質性肺疾患:間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、血痰、息切れ、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。」

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 この1例は、投与81日目に血痰が見られている。2015年2月17日の日経メディカルの記事(アピキサバン、重大な副作用に「間質性肺疾患」追加)によると、これが「間質性肺炎」ではなく「間質性肺疾患」とされた理由とされている。

 つまり、この1例はその意味で特徴的であったために、この1例だけの記載になっているようだ。しかし、1例だけでは副作用分類を試みて、モニタリング・ピリオドを設定するわけにもいかない。

 他のNOACではどうだったか。2014年1月にリバーロキサン(商品名:イグザレルト錠)で、「イグザレルト錠服用中の間質性肺炎について」が発行されており、そこでは症例が3つ紹介されている。

 症例1(80代・男):10mg、投与期間28日間、死亡、投与10日にて発熱・咳
 症例2(80代・女):10mg、投与期間4日間、投与4日にて呼吸困難
 症例3(80代・男):15mg、投与期間59日間、投与52日にて夜間咳嗽
                             投与55日咳嗽増悪にて血痰

 間質性肺炎の発生機序は大きく2つに分けられる。

 「一つは、ある種の抗がん剤などのように、細胞を直接傷害する医薬品によって肺の細胞自体が傷害を受けて生じるもので、医薬品を使用してからゆっくり(数週間~数年)発症するものです。もう一つは、薬に対する一種のアレルギーのような免疫反応が原因となるもので、多くは、医薬品の使用後早期(1~2 週間程度)に発症するものです。多くの種類の医薬品がこのタイプとされています」

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル 間質性肺炎(肺臓炎、胞隔炎、肺繊維症)』より

 リバーロキサンの場合はどれも症状の発現が早い。アレルギー性の機序と考えていいだろう。よってモニタリング・ピリオドは6ヶ月(特に2ヶ月以内)と設定していた。

 では、アピキサバンはどうするか。症例は一つしかない。

 症例1(70代・女):5mg、投与期間240日間、投与81日にて血痰

 なるほど、血痰から始まっている。間質性肺炎の初期症状として息切れ、発熱、空咳だけを追っていたら、見逃してしまうかもしれない。たしかに特徴的ではあるが、1例だけではどうしようもない。メーカーに確認すると、あと4例(合計5例)を確認することができる。その4例の症状発現は14日、59日、51日、2ヶ月とどれも6ヶ月以内。

 アピキサバンも機序的にはリバーロキサンと同様にアレルギー性で、そのモニタリング・ピリオドは6ヶ月と設定してよさそうだ。ただし、血痰から症状が発現することもあり、アピキサバンでは「間質性肺疾患」を想定することを忘れないようにしなければならない。

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2015年3月13日 (金)

イグザレルトにクラリスロマイシンって事実上併用禁忌!?

イグザレルトはCYP3A4/P-gpの基質薬物。
CYP3A4/P-gp阻害剤としてのクラリスロマイシン。
併用注意? 代替薬は?

CASE 168

男性 57歳 

処方:
Rp1) クラリスロマイシン錠200mg 2錠 分2 朝・夕食後   4日分
Rp2) カルボシステイン錠500mg  3錠
    アンブロキソール錠15㎎ 3錠  分3 毎食後 4日分
Rp3) カロナール錠300mg 1錠 発熱時 5回分

患者のコメント:
「咳・痰が続いている。先生にはサラサラの薬を飲んでいるとは伝えたよ」

お薬手帳より:
他科受診:循環器
併用薬:アーチスト錠2.5㎎ 4錠 分2 朝・夕食後
     イグザレルト錠15㎎ 1錠 分1 朝食後

疑義照会:
(内容)クラリスロマイシンにてイグザレルト減量の必要あり。ルリッドすすめる。
(回答)Rp1)→4)へ変更
     Rp4)ルリッド(150) 2錠 分2 朝・夕食後 4日分

□CASE 168の薬歴
#1 抗生剤変更を通して薬識を高め、手帳を活用してもらう
  S) 咳・痰が続いている。先生にはサラサラの薬を飲んでいるとは伝えたよ。
 O) イグザレルト服用中のため、
   疑義にて、クラリスロマイシン→ルリッド
 A) ルリッドならリスクは低い。
   イグザレルトの飲み合わせについてアナウンス必要。
 P) 飲み合わせOKの抗生剤へ変更。
   サラサラの薬は飲み合わせ注意が多いので手帳活用を。
 R)手帳大事やね。
 
 
□解説
 クラリスロマイシンはCYP3A4/P-gp阻害剤で、多くの薬と併用注意となっている。

 他科にて服用しているイグザレルトは、肝臓においてCYP3A4で代謝され、腎臓にてP-gpを介して排泄される。イグザレルトの添付文書には次のような記載がある。

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 そこでCYP3A4/P-gp阻害の弱いルリッドを代替薬として提案し、採用となる。せっかくの機会なので、患者が飲んでいるイグザレルトの薬識の是正とお薬手帳が役に立っていることを印象付けることにした。


 
□考察
 イグザレルトの添付文書の薬物動態の項は次のようになっている。

Igu_cam_3

 クラリスロマイシンとの併用データにおいて、クラリスロマイシンの用量は1,000㎎/日といったかなり多めのデータであることが多いのだが、イグザレルトのそれは500㎎/日で、日本の通常用量に近い。

 「クラリスロマイシン500㎎の併用で、イグザレルトのAUC1.5倍、Cmax1.4倍」これはイグザレルトによる出血傾向を高める。イグザレルトはピークの血中濃度と出血傾向が相関するからだ。イグザレルトの減量規定は厳密に守ったほうがいいだろう。

 だが、「本剤10㎎1日1回を考慮する」と言われても、まず今回のようなケースでは、持参していないだろうし、調整のしようがない。粉砕は可能だが、短期間だけイグザレルトを加工するのも現実的ではない。こういう事態を想定してルリッドはぜひとも在庫しておきたい一品だ。

 それにしても、イグザレルトとクラリスロマイシンの併用というのは、現状の規格で対応が可能なため禁忌にはなっていないものの、現実的に考えると、すぐには対応できない場合が多いと思われる。ということは事実上、併用禁忌として扱うしかないのではないだろうか。

 

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2015年3月 6日 (金)

『場末の文体論』はやっぱり人間論だった

小田嶋隆の文体論。手に取るとそれはやはり人間論。文はヒトなりか。違うか。


【争点は事態の背景ではなく文章そのものにある】

 文章において、書き手の真意は、どんなに技巧的に書いても、最終的には、必ず読者に伝わることになっている。どういうことなのかというと、書き手が、ニセモノの感情を書いたり、ウソの理屈を並べたところで、読者は、必ずやそれを見破るということだ。
 好き嫌いは、特に隠せない。
 どんなに美辞麗句を並べてみても、嫌っている対象についての賞賛は、読者に見破られる。逆に、大好きな人を罵倒してみても、敏感な読者は、その口汚い罵詈雑言から、書き手の愛情を読み取ってしまう。
 これは、書き手の技巧が水準に達していないからではない。
 文章というツールの基本仕様の問題だ。
 文章を書く人間は、言葉を並べることはできても、行間を書くことはできない。
 そして、最も普遍的なメッセージは、行にではなく、行間に現れることになっている。
 ということはつまり、文章を書く人間は内心を隠すことができないのである。
 なんということだろう。われわれは丸裸なのだ。
 だからこそ、嫌いな人物について書く時は、極力上品な書き方を心がけなければならない。
 具体的には、感情的な物言いを避けて、つとめて理性的に、抑制をきかせた文体で書かねばならないということだ。

(小田嶋隆『場末の文体論』日経BP社 P. 145-146)
 
 僕たちは行間を書くことはできない。その行間にはメタメッセージが宿っている。そして、行間においては、僕たちは感情を隠すことはできない。特に好き嫌い、つまり価値観については。

 であるならば、できることがもう一つある。何かの記事についてコメントを書いたとしよう。そこでこう自分に問うのだ。「僕はどういう価値観に基づいて、このコメントを書いたのか」と。行間を探る手立てはそれしかないような気がする。
 
【アメとムチの副作用】

なるほど動かなかった人間のうち幾人かは、アメとムチによって動くことになるだろう。が、アメとムチで動くことを覚えた人間は、アメとムチでしか動かなくなる。あたりまえの話だ。 (中略) 
 日本中の、大阪の住民票を持っていない人たちに言っておきたい。
 大阪でこれから起こることの一部始終を、私たちは、よく見ておこうではないか。
 観察と学習は、きっと、後々、役に立つことになるはずだ。
 
(小田嶋隆『場末の文体論』日経BP社 P. 135-138)

 アメとムチの問題はその対象がなんであっても同じだ。薬歴問題も然りだ。この対象となった会社のこれからをよく見ておこうではないか。

 目的がアメとムチにある以上、必ずそれに依存する。いま行っている行為はそもそも何のために行っているのか。それが説明できないようなら、こうなるに決まっている。

 患者が心配ではないのか。薬学を活かそうとは考えないのか。薬歴なしで投薬するなんて、僕にはこわくてできない。


【二択問題では何も解決しない】

 おそらく、問いの立て方が間違っている。
「体罰は是か非か」
 という二択問題を掲げた瞬間に、既にして議論は、硬直しているのだ。

(中略)

 リーダーの振る魔法の杖が、この国のすべての教室から体罰を根絶させるみたいなお伽話が実現する道理は無いのだし、どんなに優秀な人間がアタマを絞ったところで、体罰が求められている状況を教育現場から一掃する秘策が見つかるというものでもない。
 であるならば、現場の教師と、教育委員会が、状況に合わせて、ひとつずつ問題を解決して行くしかないではないか。
 一部で言われているように、体罰が蔓延している現状を追認する形で、それを合法化するのは、スジが違うと思う。駐車違反が一向に減らない現状に追随すべく、路上駐車を解禁するのは、考えるだに本末転倒だし、実際の方策としては「禁止されていてなおこれだけ蔓延している」という現実と、法執行(違反取り締まり)の間に広がっている矛盾を根気よく埋めて行く、といったあたりが落としどころになるはずだ。

(小田嶋隆『場末の文体論』日経BP社 P. 183-190)


 この問題も僕たちの問題に当てはまる。現場の医師が、薬剤師が、状況に合わせて、ひとつずつ問題を解決していくしかないではないか。

 僕は目の前の患者しか救うことができない。それを積み上げていくしかない。

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