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2014年1月24日 (金)

ねたきり患者へのタミフル

90歳、ねたきり、S-Cr:1.1
腎排泄型薬剤の投与量をどう考える?
菅野先生から教わった式。

CASE 155

90歳 男性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)バイアスピリン錠100mg 1T
       ラシックス錠40mg         1T
    アルダクトンA錠        1T
    アリセプトD錠5mg        1T /1x朝食後 28日分
  2) レバミピド錠100mg     3T
    マグミット錠250mg        3T
    アントブロン錠15mg      3T / 3x毎食後 28日分
  3) プルゼニド錠12mg     2T
     デパス錠0.5mg          1T / 1x就寝前 28日分

臨時処方:
 4) タミフルカプセル75mg  2C / 2x朝・夕食後 5日分
 5) カロナール錠300mg     1T / 1x発熱時   10回分

患者の娘から得られた情報:
① 「孫がインフルエンザで、本人も急に38度だから間違いないだろうと」
② 本人は連れてきていない。
③ 食事はおかゆを食べた。水分は摂っている。尿量はわからない。
④ 吸入薬は吸う力も弱いし、難しいと思うので断った。

薬歴から得られた情報:
① ほぼねたきりの状態で、痩せている。
② いつもは車椅子にて診察。
③ 先月のS-Cr:1.1、体重はわからない。

疑義照会:
(内容)ねたきり、90歳、S-Cr:1.1 タミフルの減量を提案
(回答)タミフル2Cから1Cへ減量 Rp4)→Rp5)へ変更
    Rp 5) タミフルカプセル75mg 1C / 1x朝食後 5日分

□CASE 155の薬歴
#1 タミフルを1xでしっかり続けてもらう
  S)孫がインフルエンザで、本人も急に38度だから間違いないだろうと。
   吸入薬は吸う力も弱いし、難しいと思うので断った。
 O) ねたきり、痩せ身で90歳、S-Cr:1.1
   おかゆ、水分は摂れているが、尿量はわからない。
   疑義照会にてタミフル減量 2C→1C
 A) 潜在的な腎機能低下は間違いない→疑義照会にて大丈夫だろう。
   ハイリスク患者なので、しっかり飲んでもらう必要がある。
 P) 医師と相談して、状態にあわせた量にタミフルを減量。
   今日はすぐに1Cを服用。明日からは朝で5日間しっかりと。
   それでもボッーとなる、うわ言を繰り返すようなら、中止・受診を。

 
□解説
 今回のテーマはタミフルを減量するか否か。S-Cr:1.1(男性の正常値 0.6~1.1)。S-Crが異常値ならば、医師も考慮しただろう。さらに、体重もわからず、クレアチニンクリアランスを算出することもできない。

 ただ、ねたきりの場合は、筋肉量が極端に少ないことが多いために、S-Crが当てにならない。ということは体重がわかったとしても、そのクレアチニンクリアランスが当てにならない。

 代替薬としてすぐに浮かんだリレンザやイナビルも、すでに医師とのやり取りの中で患者(の娘)の方から断っている。

 S-Crでは判断できないとなると、なにが手掛かりになるかというと、いちばんはやはり尿量なのだろう。でも、これも薬局窓口ではわからないことが多いし、どう利用すればいいのか・・・。

 となると、はっきりわかるのは年齢だけということになる。この「年齢しかわからない場合」において、高齢者のクレアチニンクリアランスを推測する手段がある。これは、どんぐり工房の菅野彊先生からの教えだ。

 高齢者のクレアチニンクリアランスを推測する
 ①年齢しかわからない場合

 
高齢者のCLcr=若年者CLcr-若年者CLcr x [(年齢-25)x1.0%]

 ②年齢、血清クレアチニン値、体重がわかる場合
 Cockcroft-Gaultの式

 男性CLcr=[(140-年齢)x体重]/[72x血清クレアチニン]
 
女性CLcr=男性CLcr x 0.8

 「25歳を超えると、クレアチニンクリアランスが年に1%ずつ低下していく」といわれており、90歳の患者のクレアチニンクリアランス低下率は、(90-25)x1.0%=65%となる。

 若年者のクレアチニンクリアランスを100mL/minとすると、推測クレアチニンクリアランスは、100mL/min-100mL/min x 0.65 = 35mL/min となる。

 タミフルはCLcr>30で通常用量となるが、上記はあくまでも推測値であり、ねたきりなのにS-Crが1.1もあるため、副作用のリスクを考慮し、医師と相談したうえでタミフルを半量に減量することになった。

 しかし患者は、高齢そして慢性心疾患とハイリスク患者でもある。減量した分、1日1回はしっかりと服用してもらったほうがいいだろうと考え、服薬指導を行っている。

 
□考察
 腎機能別薬剤使用マニュアルによると、

タミフルの腎不全時の1回投与量と投与間隔
 
 Ccr>30   1回75mg 12時間間隔
 10<Ccr≦30  1回75mg 24時間間隔
 Ccr≦10      推奨用量は確立していない

 となっている。

 今回は年齢からの推測値(CLcr:35)ではあったが、ねたきり状態だったので、「10<Ccr≦30」を採用した。

 たとえば、この患者の体重が45kgでねたきりではなかったら、Cockcroft-Gaultの式が使えて、CLcrは28.4となり、「10<Ccr≦30」の用量で問題はなかっただろう。

 だが、90歳でほんとうにCLcrが35だったとして、通常用量でよいのか? ちょっと気になったので、投与量を計算してみた。

 D(r)=D-Dxfu x [(CLcr-CLcr(r))/ CLcr ]

 腎障害患者投与量=腎正常者投与量-腎機能低下による蓄積量

  D(r):腎障害者投与量
 D:腎正常者投与量(タミフル 150mg/day)
 fu:尿中未変化体排泄率(タミフルのIFより、74%)
 CLcr:腎正常者クレアチニンクリアランス(100とする)
 CLcr(r):腎障害者クレアチニンクリアランス

 これも菅野先生に教えてもらった式で、Giusty-Heyton法という。

 計算してみると、D(r)=150-150x0.74x[(100-35)/100]=77.85、1日投与量は約78mg! タミフル1C(75mg)の1xで充分のようにみえる。このくらいの、ちょっと30を超えているくらいがいちばん過量になりやすいのかもしれない。
 
 やはり腎機能低下者に対しては、リレンザやイナビルのような吸入薬を選択してもらいたい。

 タミフルしか選択肢がないときには、マニュアルよりも少しきびしめに減量を考慮するか、精神神経系の副作用を充分にアナウンスしていくしかないだろう。

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