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2013年11月29日 (金)

妊婦への降圧剤 ~ニュース、ガイドライン、バイブル~

妊婦に禁忌の降圧剤は?
妊婦に安全な降圧剤は?
NHKニュースと高血圧ガイドライン2014(案)、そしておすすめ書籍

【「高血圧の薬で妊婦20人に副作用かNHK2013年11月14日

 妊娠中にACE阻害薬やARBを服用し、羊水が減少する副作用が、この10年間に少なくとも20件あることが、NHKと国立成育医療研究センターの調査で判明したとNHKで報道された。

 妊娠中期以降にRA系の降圧剤を服用すると、羊水が減り、胎児の成長を妨げてしまうために、妊婦への投与が禁忌となっている。先の20件のうち6人の赤ちゃんが死亡し、2人の赤ちゃんが腎臓に重い障害を患っているという。

 またACE阻害薬は、妊娠初期の服用において、心血管系と中枢神経系奇形のリスクが増加するとの報告があり、添付文書にも記載がある。しかし現在では、否定的な報告も多い。

 妊娠初期は原則禁忌、中期以降は絶対禁忌といったところか。

 どちらにしても、妊娠が判明した場合や妊娠を計画しているケースでは、RA系以外の降圧剤を使用すべきだろう。

【高血圧治療ガイドライン2014(案)】

( 追記:ガイドライン2014の妊婦・授乳婦はこちら

 現在、高齢出産(35~40歳)の頻度は4人に1人にのぼる。つまり妊娠高血圧症候群(昔の妊娠中毒症)のリスクが高まっていることになる。この状況を踏まえ、ガイドライン2014では、妊娠中の降圧剤が示されている(予定)。

 妊娠20週未満 : 中枢作動薬のメチルドパ(アルドメット)
     (3剤)    血管拡張薬のヒドララジン(アプレゾリン)
             αβ遮断薬のラベタロール(トランデート)
 妊娠20週以降 : 上記に加えて
     (4剤)    Ca拮抗薬のニフェジピン(アダラート)

 *この他のβ遮断薬やCa拮抗薬を投与する場合は、患者へのインフォームドコンセントを行い、医師の責任の下で使用する。

 同様に授乳の機会も高まることから、以下の10成分が示されている(予定)。

 Ca拮抗薬:ニフェジピン(アダラート)、ニカルジピン(ペルジピン)、アムロジピン(アムロジン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)
 αβ遮断薬:ラベタロール(トランデート)
 β遮断薬:プロプラノロール(インデラル)
 中枢作動薬:メチルドパ(アルドメット)
 血管拡張薬:ヒドララジン(アプレゾリン)
 ACE阻害薬:カプトプリル(カプトリル)、エナラプリル(レニベース)

【妊娠と授乳のバイブルから】

 
 
ぼくのこの分野のバイブルは『薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳』(*1)だ。これは薬局必須のアイテムだろう。実用性も非常に高い。以下、バイブルより参考までに。

<妊娠初期> (*1より引用 P. 262)

 軽症高血圧(140~160/90~110mmHg)で臓器障害のない場合は経過観察でよい。
 重症高血圧(160~180/110mmHg以上)では、軽症高血圧を目標に降圧剤を投与する。

 「妊娠前から降圧薬を服用している場合は妊娠中も同様の薬剤を使用してよい。ただし、ACE阻害薬またはARB使用中に妊娠が判明すれば直ちに中止する。Ca拮抗薬、利尿薬については催奇形性の報告はないが、妊娠の自然経過により血圧が下降する可能性が期待できるため降圧薬の減量もしくは他剤に変更することも考慮する」

<妊娠中期・後期> (*1より引用 P. 264)

 「血圧を140/90mmHg以下にコントロールすることで良好な妊娠経過および出産が可能となる。メチルドパ(またはヒドララジン)により、目標血圧140/90mmHg以下になるよう調節する。コントロール不良であればラベタロールまたはCa拮抗薬への変更または併用を考慮する。(中略)また、急激な降圧は胎盤還流障害の可能性(特に妊娠後期)があるため、家庭内血圧測定を行いながら少量より開始し、徐々に増量することが望ましい」

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*1:伊藤真也、村島温子『薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳』南山堂
 これは薬局必須のアイテムでしょう。すぐに使えます。

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2013年11月22日 (金)

フランドルテープの貼付部位

唐突と思える質問や「?」となる質問。
患者の質問の意図を考える。
薬識ケアのきっかけに。

CASE 152

男性 75歳 

他科受診・併用薬:なし、副作用歴・アレルギー歴:なし

処方(Do処方):
Rp 1)アジルバ錠20mg 1錠・バイアスピリン錠100mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) ユリーフ錠4mg 2錠 / 2x朝・夕食後 28日分
Rp 3) クレストール錠5mg 1錠 / 1x夕食後 28日分
Rp 4) フランドルテープ40mg 28枚

患者からの質問: 「ちょっとお尋ねします。心臓はどこにあるのですか? ここ(左胸)ですよね?」

患者から得られた情報:
① 友人から心臓は胸の真ん中にあると聞いた。
② じぶんは左胸に心臓があると思っている。
③ だから心臓の貼り薬(フランドルテープ)を毎日左胸に貼っている。
④ かぶれや狭心症症状はない

□CASE 152の薬歴
#1 フランドルテープの貼布位置を理解する
  S)心臓はどこにあるのですか? ここ(左胸)ですよね?
   心臓の貼り薬を毎日左胸に貼っている。
 O) 友人から、心臓の位置が胸の真ん中にあると聞いて、
   フランドルテープの貼布位置が気になっている様子。
   かぶれや狭心症症状はない
 A) フランドルテープの薬識ケアをするいい機会
   このままだとかぶれも心配
 P)ご友人の言うとおり、心臓は真ん中にあります。
   でも心臓の貼り薬は心臓の上でなくても、ちゃんと効いています。
   できればかぶれ防止のために、毎日貼る場所を変えましょう(パンフ提供)。
 R) 安心しました。

□解説
 「ちょっとお尋ねします」いつもおとなしい患者さんの一言に身構える。そして、つぎの言葉「心臓はどこにあるのですか?」に一瞬「???」となる。

 そこで「どうして(そのような質問をされるの)ですか?」と応じてみる。

 すると、心臓の位置について、友人と意見が異なるという。ここまでくれば、フランドルテープに関することだろうと察しがつく。

 
 つまり、心臓の位置が気になっているのは、フランドルテープを貼る場所を間違えているのはないか、効いていないのではないかと不安になっているわけだ。

 ここにアプローチする。ついでに、かぶれ防止も含めて、薬識のケアも図っている。

 
 
□考察
 この症例を取り上げるかどうかはちょっと迷った。とくに目新しい情報でもないし、一見するとなんでもないやりとりにも見える。

 でも「心臓はどこですか?」にたいして「ここですよ」で終わってしまうこともあるのではないだろうか?

 唐突な質問やなんでこんな質問をするのだろうと「?」となる質問には、その背後に目を向ける。質問の背後にある不安に対してアプローチする。そして、薬識ケアを試みる。

 ぼくはこういうアプローチを大事にしたい。

 友人からの些細な一言で、患者の薬識は揺れうごく。薬識はじつに相対的なものだ。

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2013年11月21日 (木)

いよいよ日曜日!

11/24(日)服薬ケア研究会第3回大会プログラム発表
そして、教育講演の講演時間延長! ありがとうございます。
スライドはそのまま、想いは増えます。「less is more」

Photo

  • 日時 :平成25年11月24日(日) 10:00~17:00
  • 場所 :昭和大学旗の台キャンパス
         〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8

  • 電話番号 :03-3784-8000
    アクセス  :旗の台駅東口下車徒歩5分
  • 全体テーマ :「服薬ケアとの出会い~医療者としての自己確立~」   
  • プログラム:
    10:00~10:05 開会の挨拶
             会頭 服薬ケア研究所 岡村 祐聡
    10:05~10:50 大会長講演:「服薬ケアと私~出会い、気付き、そして出会い~」 
             大会長 平田薬局 平田 義人
    11:00~12:10 教育講演:「ひのくにノ薬局薬剤師。の勉強法 
                   ~自分で創る、機会を創る、自分を創る~」
             アップル調剤薬局 山本 雄一郎
    12:10~13:30   (お昼休憩)
    13:30~15:30 一般演題
      演題01:平山ゼミに参加して~一薬剤師 研究とは何か にふれる~
           みずき薬局 ○道中惠巳 (千葉県)
      演題02:インバース・アゴニストとしての抗ヒスタミン薬の可能性
           平田薬局 ○佐々木孝式 (栃木県)
      演題03:サプリメント市場と抗酸化サプリメントの有用性
           ヒルマ薬局小豆沢店 ○比留間康二郎 (東京都) 
      演題04:女性のクオリティ オブ ライフ向上のパートナーとして
           ~産婦人科スタッフの取り組み~
           医療法人光智会 産科婦人科のぼり病院 (鹿児島県)
           ○昇映月子 時任淳子 永田淳子
      演題05:日本一を目指している薬局に入社して~2013入社 新人社員の視点から~
           えむ調剤薬局 (香川県)
           ○高橋佳代 横村優子 稲盛直美 青木瑠美 宮崎真理子 村岡由季絵
      演題06:勇気を持って疑義照会
           クオラリハビリテーション病院 薬剤課 ○元池直子 (鹿児島県) 
      演題07:服薬ケアに出会って得た価値
           えむ調剤薬局 ○森久美子 (香川県)
      演題08:考えるということ
           服薬ケア研究所 客員教授 ○平山 広喜 (茨城県)
    15:50~16:50 会頭講演「医療者に必要なアイデンティティの確立」 
         服薬ケア研究所 所長 岡村 祐聡
    16:50~17:00 閉会の言葉
         大会長 平田薬局 平田 義人
  • *申し込みは不要です。当日そのままお越しください。

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    2013年11月16日 (土)

    服薬ケア研究会第3回大会のご案内

    目玉らしいです^_^;
    めったにしませんし。ほんとに。
    申し込みなしでも参加OKです。

    【服薬ケア研究会の学術大会です!】

     第3回目の服薬ケア学術大会ですが、いよいよ、あと1週間ほどとなってきました。今回、昭和大学の広い会場をお借りできましたので、まだまだ十分参加可能です! ぜひ皆様お越しください。

     今回の目玉はなんと言っても、アップル薬局の山本先生による教育講演です。ブログの読者は必聴です!もちろん、ブログの読者でなくても、ぜひお話しをお聴きください。めったに講演を引き受けてくださらない先生なので、このチャンスを逃すとなかなか聴けないですよ!

     それ以外にも、一般演題にも興味深い内容が詰まっています。ヒスタミンレセプターのインバーストアゴニストに関する学術的研究から、薬剤師としての勉強の仕方、そして医師とのやり取りで、処方を減らす努力を続ける薬剤師の活動報告など、たくさんの一般演題が集まっております。

     11/24はぜひ昭和大学までお越しください。
     

     *詳しくはこちら→服薬ケア研究会HP

    【マルチポスト失礼いたします】
※何度もご覧になる方、お許しください。m(__)m

第3回目の服薬ケア学術大会ですが、いよいよ、あと1週間ほどとなってきました。今回、昭和大学の広い会場をお借りできましたので、まだまだ十分参加可能です!ぜひ皆様お越しください。

今回の目玉はなんと言っても、アップル薬局の山本先生による教育講演です。ブログの読者は必聴です!もちろん、ブログの読者でなくても、ぜひお話しをお聴きください。めったに講演を引き受けてくださらない先生なので、このチャンスを逃すとなかなか聴けないですよ!

それ以外にも、一般演題にも興味深い内容が詰まっています。ヒスタミンレセプターのインバーストアゴニストに関する学術的研究から、薬剤師としての勉強の仕方、そして医師とのやり取りで、処方を減らす努力を続ける薬剤師の活動報告など、たくさんの一般演題が集まっております。

11/24はぜひ昭和大学までお越しください。
    前夜祭もあります。参加希望のかたはコメントやFBから連絡をください。

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    2013年11月15日 (金)

    温める生薬と冷やす生薬

    附子は温める生薬の代表格。
    石膏は冷やす生薬の代表格。
    「黄」色い生薬は清熱が多い。

    【温めて冷えを改善する生薬】

     1、附子:痛みや浮腫、下痢に。*附子があれば温める方剤と考えてよい。
          Ex.八味地黄丸、真武湯、桂枝加朮附湯など

     2、乾姜:生姜をほしたもの。腹部症状と呼吸器症状に。
          Ex.小青竜湯、人参湯、桂枝人参湯など

     3、桂皮:気をめぐらせて温める。
          Ex.桂枝湯、桂枝加芍薬湯、葛根湯など

     4、呉茱萸:頭痛や吐き気に。
          Ex.呉茱萸湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、温経湯など

     5、細辛:咳に。
          Ex.小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、麻黄附子細辛湯など

     

    【冷やして炎症を改善する生薬】

     1、石膏:冷やす生薬の代表。*石膏があれば冷やす方剤と考えてよい。
          Ex.白虎加人参湯、小柴胡湯加桔梗石膏、越婢加朮湯など

     2、黄芩、黄連、黄柏:上焦の炎症には黄芩、中焦には黄連、下焦には黄柏。
          Ex.半夏瀉心湯、三黄瀉心湯、黄連解毒湯
         

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    2013年11月 8日 (金)

    アミティーザの用法と悪心

    便秘薬の新薬「アミティーザ」
    患者はどのように飲んでいるのか?
    その用法の意味を伝えているか?

    CASE 151

    女性 65歳 

    併用薬なし、肝機能・腎機能NP

    前回の処方:
    Rp 1)ブロプレス錠4mg 1錠・ラッシクス錠20mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
    Rp 2) ビオフェルミン錠剤 3錠 / 3x毎食後 28日分
    Rp 3) リバロ錠2mg 1錠・ゼチーア錠10mg 1錠 / 1x夕食後 28日分
    Rp 4) プルゼニド錠2錠 / 1x就寝前 28日分
    Rp 5) アミティーザカプセル24μg 2C / 2x朝・夕食後 14日分

    *Rp 5) が初処方

    前回の薬歴:
     #1 アミティーザ初回服薬指導
      S) 便がコロコロしてて。新しい薬を試してごらんと。
     O) 医師の指示:アミティーザを1日1回でもいいので、自己調整して服用を
     A) アミティーザ初薬
     P) 腸管内の水分をふやして便をやわらかくする。
       1日2回まで服用できる。やわらかくなりすぎるときは減薬を。
       プルゼニドを常用しなくなるといいですね。

    <投薬後(2日後)の患者からの電話>
    患者の訴え:飲めばスッキリ出るんだけど、夜中に吐き気で目が覚める。

    アミティーザの服用状況:プルゼニドといっしょに、寝る前に1錠だけ服用している。

    □CASE 151の薬歴
    #2 アミティーザの用法を理解する
      S)飲めばスッキリ出るんだけど、夜中に吐き気で目が覚める
     O) プルゼニドといっしょに、アミティーザを寝る前に1錠服用中
     A) 空腹時の服用が原因かもしれない
     P)寝る前などの空腹時の服用では吐き気などが出やすくなる。
       夕食後で試してみて。それでもダメなら中止・受診を。
     R)便秘の薬だから、寝る前でもいいかと思ってた。
     
    □解説
     投薬後の患者さんからの電話に対しての対応を記録したもの。

     アミティーザを飲みだして、スッキリはするが、夜中に吐き気で目が覚めてしまうという。そこで、服薬状況を確認すると、寝る前にプルゼニドといっしょに1錠だけ服用しているという。

     アミティーザは空腹時に服用すると悪心の発現頻度が高くなる。

     食前投与で悪心の発現頻度は40.6%(米国第Ⅱ相試験)なのに対して、食後投与でのそれは26.4%(米国第Ⅲ相試験)と低くなる。

     これを受けてアミティーザのIFには、「海外で実施した臨床試験において、主な副作用として認められた悪心が、本剤の食前投与に比べて食後投与においてその発現頻度が低下したことから、国内で実施した臨床試験は全て食後投与で実施した」とある。

     そこで、寝る前の服用から夕食後への服用に改めて、様子をみるように指導している。

     
    □考察
     
    「便秘の薬だから、寝る前でもいいかと思ってた」

     なるほど、前回の薬歴をみると、医師から「1日1回でもいい」「自己調整して」との指示が出ている。これは新薬のために、(定期薬が28日分に対して)14日分しか出せないことも関係していたのだろう(2013年12月この11月より長期可能に)。

     さらに、薬剤師の服薬指導(P)をみても、用量に対しての言及はあるが、用法に対してのそれはない。

     であるならば、患者が便秘の薬を1日1回飲むときに、プルゼニドといっしょに寝る前に服用してもおかしくない。

     用法に意味がある場合、その意味はしっかりと伝える必要がある。
     

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    2013年11月 1日 (金)

    「未来とつながりたい」という想い

    時間に一矢むくいることで、歴史に参加する。
    「ことばは時間に拮抗するための人間にとって唯一の武器だ」

    【時代の枠組から逃れる】

     時間を越えたい、いいものを作りたいなどというと「小狡エリート趣味」「嘘っぽい」「根暗、やーね」と一笑に付されてしまう。というと人はテレビと小説とを混同していると腹を立てるかもしれない。しかしそうではないので、これらの風潮の底の底には、大量生産→大量宣伝→大量購買→大量破棄という、この時代の枠組がある。 (中略)

     こういった事情をもっとも雄弁に物語っているのは、近ごろのパロディブームとか称するものだろう。パロディが成立するには必ず原作=伝統がなければならぬ。ところが今のパロディの原作は殆どが、標語とコマーシャルである。すなわち時間をさかのぼることはせずに、同時代のものをなぞり、もじっているだけなのだ。ここでも過去と切れている。したがって未来なぞあるはずはない。一回性を越えるために発明された人類の全遺産が、一回性がいいのだとする刹那的な場当り主義によって危機に瀕しているのである。

    (井上ひさし『自家製 文章読本』新潮文庫 P. 13-15)

     この問題提起は、それこそ枠組みを超える。たとえば、医療というぼくらの仕事やその記録である薬歴でさえもあてはまる。つまり、その場しのぎ的な仕事と継続性のあるものとの違いだ。

     継続性のある仕事をする。そして患者にとって、よりよいものを求めていく。これはPOSの考え方といってもいい。ケアプランを立て、薬歴にSOAPで経過記録をつけ、オーディットなどでケアプランを再考する。こういうサイクルを回していくことで、患者にとって、ベストなものを求めていく。

     薬歴なくして、POSは、薬剤師の仕事は語れない。過去と切れていては未来の予測など出来はしないからだ。

    【過去や未来とつながりたいという想い】

     筆者はまず、この宇宙での最大の王は「時間」である、と考えた。この王の治世下においては、永遠でありたいと願うことは許されない。だが、人間としては、永遠ということばを発明してしまった以上、やはり永遠でありたいと願わざるを得ない。人間はやがてことばが、いささかではあるが時間を超えることに気づいた。こうして、わたしたちは読書行為に「過去とつながりたい」という願いをこめるようになった。そして、書記行為に「できるだけ遠い未来へとつながりたい」という想いをこめた。この二つの行為によって、ヒトが言語を手にした瞬間にはじまり、そして過去から現在を経て未来へとつながってゆく途方もなく長い連鎖が見えてきた。しかも読書と書記という二つの行為によって、わたしたち一人一人がその長い連鎖のうちの一環になることができるのである。書かれたものを読むことで過去がよみがえり、よみがえった過去に足を踏まえて未来に向けて書く。このようにしてわたしたちは「時間」と拮抗する。

    (井上ひさし『自家製 文章読本』新潮文庫 P. 250)

     「ことばは時間に拮抗するための人間にとって唯一の武器だ」という説である。なるほど、無意識のうちに、このように願い、そして行動していたのかもしれない。

     医薬分業不要論や薬剤師バッシングなど、あまりにも耐えがたい状況にある現状。これをなんとかするには、薬剤師という職種の連鎖のなかに入り、過去を踏まえ、未来につなげるしかない。このときに現在がスッポ抜けてしまうと観念的なものになってしまう。だから、大局をみつつも、小局をだいじにする必要がある。

     思えば、たった二人の後輩のためだけに始めたこのブログもだらだらともう丸五年。最初は意識すらしていなかったが、やはり書く行為には変わりがなく、未来とつながりたいという想いが、ぼくの中にあったことは間違いない。

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