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2013年10月11日 (金)

アリミデックスとエビスタの併用を回避する

AI剤とSERM
併用禁忌とも併用注意でもないこの組み合わせ。
なぜ回避する?

CASE 149

女性 60歳

副作用歴:スタチン→発疹や脱力感、ゼチーア→発疹、コレバイン→便秘や腹痛

他科より併用薬:アリミデックス錠1mg 1錠 / 1x朝食後 180日分

処方:
Rp 1)ネキシウムカプセル20mg 1錠 / 1x朝食後 28日分
Rp 2) レバミピド錠100mg 3錠・ユベラNソフトカプセル200mg 3C / 3x毎食後 28日分
Rp 3) エビスタ錠60mg 1錠 / 1x朝食後 28日分

*今回よりエビスタが追加となっている。

患者の訴え :
「骨量が少し低いって。乳癌の薬のせいだろうって。でもコレステロールも下げられる一石二鳥の薬を出しておくって。ほんとに下がるの? わたし、今までどの薬も合わなかったから心配で。合わないようなら、止めていいって先生は言っていたけど」

患者から得られた情報:
① LDL-C:170
② スタチン系やゼチーアなども副作用で継続できずにユベラNのみで対応するも、コントロール不良
③ アリミデックスはH23.10より開始。5年間服薬予定。関節痛やこわばりなどはみられない。

疑義照会:
(内容)アリミデックスとエビスタを併用すると、アリミデックスの再発予防効果減少
(回答)Rp 3)→Rp 4)へ変更
    Rp 4) エディロールカプセル0.75μg / 1x朝食後 28日分

□CASE 149の薬歴
#1 骨粗鬆症薬の変更を理解する
  S)骨量が少し低いって。乳癌の薬のせいだろうって。
   コレステロールも下げられる一石二鳥の薬を出しておくって。
 O) エビスタ追加
   他科にてアリミデックス服用中
 A) エビスタ併用にて、アリミデックスの乳癌再発予防効果減少
 P)疑義照会にてエディロールへ変更。その旨を説明。
   Caの吸収を助けるVDを朝食後に。
   骨粗鬆症のみの効果で、残念ながらコレステロールには効果なし。
 R) あら~、残念。でもビタミンなら副作用は心配なさそうね。
 
□解説
 この患者はスタチンを何種類か試したが、発疹や脱力感などで使えず、ゼチーアもコレバインもダメ。効果は期待できないながらもユベラNを続けている状況だった。

 今回、骨量減少を受けて、医師も「一石二鳥」と表現しているように、骨粗鬆症よりもコレステロールのほうを期待していたのかもしれない。

 しかし、アリミデックスとノルバデックスを併用すると、アリミデックス単独よりもその乳癌再発予防効果がわるくなってしまう(ATAC試験)。日本乳癌学会がまとめたガイドラインにも次のような記載がある。

 一方、ラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかしATACにおいてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し、しかもアナスタロゾールの乳癌再発予防効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため、アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。

(『科学的根拠に基づく乳癌ガイドライン①治療編 2011年版』金原出版株式会社 P. 154)

 よって疑義照会を行い、骨粗鬆症薬の変更を理解していただいた。

 
□考察

 ノルバデックス(タモキシフェン、TAM)は、抗エストロゲン薬と習った。それは昔の呼び名で、TAMも今ではSERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)と呼ばれる。

 これさえ知っておけば、エビスタ(ラロキシフェン)はその登場のときからSERMと呼ばれているから、TAMとエビスタは同じ仲間だとわかる。

 もう一つ、ATAC試験の結果から、アリミデックスのようなAI剤(アロマターゼ阻害剤)とSERMの併用はNGであるということ。

 この二つを知っていれば対応できる。しかし、この併用を避けるべきだということは、添付文書に記載はなく、併用注意にもなっていない。関連項目としては以下の記載があるだけだ。

 3. 外国術後補助療法大規模比較試験
 世界21ヵ国で実施した閉経後早期乳癌患者の術後補助療法大規模比較試験において、追跡期間の中央値約68ヵ月時点での再発・死亡・対側乳癌の発生率は、アナストロゾール群18.4%(575/3,125例)及びタモキシフェン群20.9%(651/3,116例)であった。無病期間のハザード比は0.87(95%信頼区間0.78-0.97、p=0.01)であり、アナストロゾール群はタモキシフェン群と比較して乳癌再発リスクを13%低下させた。遠隔再発までの期間のハザード比は0.86(95%信頼区間0.74-0.99、p=0.04)であり、アナストロゾール群はタモキシフェン群と比較して遠隔転移の再発リスクを14%低下させた。また、ホルモン受容体陽性患者における対側乳癌のハザード比は0.47(95%信頼区間0.29-0.75、p=0.001)であり、アナストロゾール群はタモキシフェン群と比較して対側乳癌発生リスクを53%低下させた。なお、追跡期間の中央値約47ヵ月時点でのアナストロゾール・タモキシフェン併用群とタモキシフェン群との比較においては、無病期間のハザード比1.04(95%信頼区間0.92-1.19、p=0.5)であり、アナストロゾールの併用による追加効果は認められなかった。
(アリミデックス添付文書より)

 乳癌の再発が起こりやすい時期は治療開始から2~3年後と言われる。今回の患者がまさしくその時期で、アリミデックスの副作用も幸いほとんどなく続けられている。この状態を邪魔するようなことはしたくない。

 ノルバデックスとエビスタでは用いられる分野がまったく異なる。が、その薬効群は同じだ。添付文書に記載がない現状では、他科の医師が知らないのは当然とも言える。

 アリミデックスを投薬する機会じたいは少ないけれども、併用薬として飲んでいるかたはたくさんいる。ならば、勉強しておくしかない。

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