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2013年8月 2日 (金)

理解、本質、時間。すべては成熟のために。

この本は経済の本ではない。
人間そのものについて書かれている本だ。

【何かがわかるということ】

 しかし、何かがわかるということは、「ああだから、こうなった」といった事実の因果が解明されるということだけでは足りない。そこに自らが果たした役割を認識するということが必要だと私は思う。自分が生きている時代について理解するということは、その絵柄の中に自分自身を発見し、もう一度描き直すことが必要なのだ。
 安易にわかるということは、既知の鋳型にはめ込んでわかったつもりになっているに過ぎない。

(平川克美『経済成長という病』講談社現代新書 P. 25)

 原因と結果はその事実の関係性のことであって、それ以上でもそれ以下でもない。その関係だけを見て安易にわかったつもりになっていることは思考停止と変わらない。ほんとうの理解はそこからはじまる。そして、そのときにたいせつなこと、それはぼくがあなたが、どういう役割を果たし得たかと想像することである。

 ぼくやあなたのというものが欠落しているとき、それはわかったつもりなのかもしれない。

 薬学部が四年制から六年制になっても、なんら変わりがないように見えるのも同じなのかもしれない。

 ほんとうのプロとは、資格を有したあとに、自らが果たした役割を認識していくうちになり得るものであって、机上の勉強や現場の見学を何年重ねたかではないからだ。

【簡単でわかり易い答えはしばしば物事の本質を隠ぺいする】

 これらの問題(二00七年に日本で相次いで起こった食品会社の不祥事)には、簡単でわかり易い答えが用意されている。その答えとは、倫理観の欠如した経営者が、不当な利潤を得ようとして、あえてルールの一線を踏み越えたのだというものである。事実、メディアはこれらの経営者を激しく指弾し、法律もまたかれらに相当の罰を科してきた。
 しかし、いつの時代にも、倫理観の欠如した経営者というものはいただろうし、やらずぼったくりのような商法で小金を溜め込むといった詐欺まがいの商法はあった。だから、この答えは間違ってはいないが、何故これほど頻発するのかの説明にはなっていない。
 老舗と言われるような信用のある会社や、大企業がこれほど続けて不祥事を起こすということには、経営者の個人的な倫理とは別のところに理由があるように思える。簡単でわかり易い答えというのは、しばしばものごとの本質を隠蔽するものだと思った方がよい。

(同書 P. 111-112 カッコは補足)

 なるほど。たしかにその通り。倫理観の欠如だけでは、「何故これほど頻発するのかの説明にはなっていない」。これには「株式会社の病」という答えが用意されているわけだが、そのことよりも、この思考過程に得心する。

 一見もっともらしい答え、間違ってはいないけれども何かひっかかるような答え、こういうものに遭遇したときには思い出したい。

 「簡単でわかり易い答えというのは、しばしばものごとの本質を隠蔽するものだ」

【時間の概念がなければ、だれでも現在の利益を優先させる】

 観念的な言い方を許していただけるなら、生きるということは、時間の中に自分を投ずることである。そして、私は、それは将来の自分というものに対して、投資し続けるということ、言い換えるなら、絶えず何かを贈与し続けるということではないかと言ってみたい気がする。贈与している何かとは「若さ」そのものである。
 長い時間の中で、自らが行った贈与は、思わぬところを迂回して自分の所へ返ってくるのである。手元に「若さ」は既にない。しかし、私は「若さ」が何であったのかをこのときはじめて知るのである。

(同書 P. 231)

 「若さ」の新しい定義だ。若さとは自分への「投資そのもの」であり「贈与そのもの」である。そして、それは事後的に、回顧的にしかわからない。

 若さを有効に使おうにも計量するものもなければ、効果をすぐに実感できるわけでもない。市場原理主義的な考え方ではダメなのだ。じぶんの成熟を信じて、進むしかない。それが、その過程こそが「生きる」ということなのだ。

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