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2013年8月30日 (金)

ジャヌビア錠25mgの剤型変更と添付文書改定からわかること

剤型変更と添付文書改定の関係。
割線が新設されることで禁忌が一つ減る。
その理由は?

【腎排泄型DPP-4阻害剤を比べてわかったルール】

 
 ジャヌビア(グラクティブ)とネシーナの用量設定と禁忌を比べることで、あるルールを導き出した(「腎排泄型DPP-4阻害剤を比べてみてわかること」参照)。

 それは、「腎機能に応じた規格や割線がない場合、その対応できないステージは禁忌となる」ことだった。

【ジャヌビア(グラクティブ)の剤型変更】

 まず、ジャヌビアの剤型変更の案内が先に薬局に送られてきた。

Photo
 これにともない添付文書も後日、改定となる。

Photo_2
 つまり割線が入ることで、従来対応できなかった重度腎機能障害のステージに対応できるようになる。ゆえに、禁忌「重度腎機能障害のある患者」が削除となっている。

 メーカーがこの対応を迫られたのには、競合他社からの誹謗があったものと思われる。その規格がないばっかりに、禁忌に「重度腎機能障害のある患者」があるばっかりに、腎臓に悪い薬というイメージをばらまかれていたのだろう。

 だが薬剤師にとっては、これが禁忌であろうとなかろうとやることはあまり変わらない。患者の腎機能に応じた薬の量をチェック、提案していくだけだからだ。

【ルール】

 腎機能に応じた規格や割線が新設されれば、対応可能となったステージは禁忌ではなくなる。

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追記:海外では主用量が100mgなので、25mg錠があることで、重度腎機能障害のある患者に対して禁忌ではない(くま☆さんから情報をいただきました<m(__)m>)

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2013年8月23日 (金)

構造式から光線過敏症を予測する

光線過敏症は誰に起こるかわからない。
たしかに人側からみればそうだ

でも構造式側からみてわかることもある。

CASE 146

男歳 60性

処方:
Rp 1) ボルタレンテープ15㎎  28枚 (前回まではモーラステープ20㎎)
Rp 2)  マイザー軟膏 20g

患者の訴え :
「ゴルフで日光に当てちゃったからね。聞いてたけど、ほんとに出るとはね~。今度のは大丈夫?」

患者から得られた情報:
① 右ひじのところがまっ赤に(光線過敏症)
② ゴルフは昨日。モーラステープは2日前まで使用していた。

疑義照会:
(内容)ボルタレンテープも光線過敏症の可能性あり。ロキソニンテープを提案。
(回答) Rp 1)→3) ロキソニンテープ50mg 28枚 へ変更。

□CASE 146の薬歴
#1 モーラステープによる光線過敏症のモニタリング期間を理解してもらう
  S) ゴルフで日光に当てちゃったからね。聞いてたけど、ほんとに出るとはね~。
   今度のは大丈夫?
 O) モーラステープで右ひじに光線過敏症(+)、2日前まで使用
   疑義照会にて、ボルタレンテープ(15)→ロキソニンテープ(50)
 A) ロキソニンテープならリスクは低いが、
   まだあと4週弱はモーラステープの影響あり
 P) 今度のは理論的にはだいじょうぶです。起こりません。
   あと26日くらいは前のテープの影響があるので、日光に当てないように。
 
□解説
 モーラステープによる光線過敏症については過去に二回触れているので下記参照を。

 2010年5月21日 (金) CASE 59  モーラステープによる光線過敏症
 2012年6月 8日 (金) CASE 119 予想はできないが予防はできる外用剤の光線過敏症

 解説は疑義照会の内容について。

 医師にボルタレンテープからロキソニンテープへの変更を提案したときの反応は、「同じNSAIDsなんだから、程度の差じゃないの? ボルタレンはダメでロキソニンならいいっていうのがわからない」といったものだった。

 たしかに医師からしてみれば同じNSAIDsにみえるだろう。ということは、添付文書に光線過敏症の記載があるかないかでは説得力に欠けてしまう。そこで、構造式の話題を持ち出すことにした。

 「光線過敏症をひきおこす構造というのは決まっていて、モーラスやボルタレンはそういう構造をとっています。でも、ロキソニンが光線過敏症をひきおこすリスクは構造上とても低くて、じっさいにロキソニンの添付文書にも記載がありません」

 これで解決。医師も理由さえあれば反対はしないものだ。

 
□考察

 光線過敏症という副作用は、人側つまり体質的なものは既往歴がないかぎり、予想ができない。しかし構造式サイドからは、その薬剤が光線過敏症を引きおこすかどうかは予測ができる。

 光線過敏症に必須な構造。それは

 「ローンペア + 共役構造」

  * ローンペア(非共有電子対):C=OやN、O、Sの原子中にある余っている電子の二つのペア

  
  * 共役構造:二重結合と単結合の繰り返し。ベンゼン環など。

 これさえ覚えておけば、あとは構造式を眺めるだけでいい(参考図書:*1)。

 <モーラスの構造式>

Photo

 <ボルタレンの構造式>

Photo_2

 <ロキソニンの構造式>

Photo_3

 
 この三つの構造式の中に、光線過敏症に必須な構造があるかないか、つまりローンペアと共役構造とが隣接しているセットがあるかどうかを探せばいい。

 まずモーラスには「ベンゼン環+カルボニル基(C=O)+ベンゼン環」のセットがある。つぎにボルタレン。これも「ベンゼン環+アミノ基(NH)+ベンゼン環」のセットが存在している。

 さいごにロキソニンだが、これにはそのセットが見当たらない。これだと紫外線がカルボニル基のローンペアの電子を一つ飛ばしても隣に共役構造がないので、すぐに元に戻ってしまう。つまり光線過敏症が起こりにくいというわけだ。

 言葉は違うものを同じにしてしまう。しかし、上でみたように実際には異なるわけで、それを医師に説明する際に「構造上は」「構造式からみると」というフレーズには力がある。なぜなら、この分野こそ薬剤師の専売特許にほかならないからだ。

 構造式には、薬剤の個性が表現されている。
 
 

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2013年8月16日 (金)

二陳湯とその派生処方 その4

二陳湯ベースの有名な処方
高血圧の随伴症状などに釣藤散
五十肩専用薬の二朮湯

【基本処方:二陳湯(詳しくは二陳湯とその派生処方 その1を参照)

 二陳湯はあまり使われていないイメージがあるが有名な基本処方だ。主薬は半夏と陳皮。この2つは古いものほどよく効く。そして「陳」には「古いもの」という意味がある。2つの古いものだから、二陳湯というわけだ。

 No.81(二陳湯):半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜

 適応:湿痰

 主薬の半夏、陳皮には化痰(けたん=去痰)作用がある。そして、茯苓が脾の水をさばき、痰の生成を防ぐ。甘草は諸薬を調和し、半夏の毒性を除くために生姜(「半夏+生姜」の配合法則)がくわえらている。

【派生処方】

 No.47(釣藤散) : 釣藤鈎、菊花、石膏、麦門冬、人参、防風、半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜

 適応 : 肝熱、風痰

 
 熱があると風、すなわち上昇気流がおきる。

 肝熱があると、風が生じ、痰を上にもっていく。すると、めまいや頭痛がおこる。これを「風痰」という。

 二陳湯に肝熱を冷ます釣藤鈎・菊花・石膏、補剤の麦門冬と人参、肝風を防ぐ防風を加えると「釣藤散」になる。主薬は釣藤鈎で肝熱や肝陽の上昇による頭部の症状(めまいや頭痛、目の充血、いらいら、顔の紅潮)を治療する要薬である。

 
 臨床では、脳血管障害に伴う認知症や降圧剤を飲んでも自覚症状のとれない方に用いられている。血圧は上の血圧が高いタイプによいといわれている。また、降圧剤を使わないと200くらいあるのに、使うといっきに100くらいまで下がるようなタイプにも向いている。

 No.88(二朮湯) : 半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜、蒼朮、白朮、香附子、羗活、威霊仙、天南星、黄芩

 適応 : 湿ひ

 二陳湯に白朮と蒼朮を加え(だから二朮湯)、その化痰利水作用で風湿(急な水の代謝異常)を除く。他の生薬は発散性の鎮痛・鎮痙作用を示す。

 よって、湿の邪気が身体に入ってきて、だるさやしびれ、痛みをひきおこすような症状(湿ひ)に二朮湯は適している。

 
 臨床では、五十肩専用の処方として用いられている。肩が重いといった初期には二朮湯単剤で充分だが、慢性となり活動が制限されるような痛みがある場合は瘀血が生じている可能性が高い。そのような場合は二朮湯に桂枝茯苓丸加薏苡仁を加えるとよい。

 ここで駆瘀血薬として桂枝茯苓丸ではなく、桂枝茯苓丸加薏苡仁を選択するのは、薏苡仁が風湿を除く要薬だからである。

 
【投薬時の注意点】

 No.47(釣藤散):低血圧の方には用いない。また石膏が入っているので、寒がりや冷え症の方は避ける。冷服がおすすめ。

 No.88(二朮湯):ほてりやのぼせ等の陰虚のある方には避ける。
 

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2013年8月 9日 (金)

「脈はどこまで下がってもいいの?」

β遮断薬を服用中の患者
脈はどこまで下がってもいいの?
不安に対しては具体的な目安を

CASE 145

男歳 60性

定期処方(Do処方):
Rp 1)バイアスピリン錠100mg 1錠
    イミダプリル錠5mg       1錠
    メインテート錠2.5mg      1錠  / 1x朝食後
Rp 2)アダラートCR錠20mg    1錠
        リバロ錠2mg               1錠 / 1x夕食後
以上 28日分

患者の訴え :
「脈がたまに50を切ることがある。
 Drは薬のせいだから心配いらないって言うんだけど、どこまでいいの?」

患者から得られた情報:
① 血圧と脈はほぼ毎日測定。血圧手帳(+)
② 血圧:110-120/60台
③ 脈:50台、47とか48が1~2回/月
④ 身体のきつさなどの自覚症状(-)

薬歴から得られた情報:
① 心筋梗塞歴(+)

□CASE 145の薬歴
#1 脈の目安を理解することで服薬への不安をやわらげる
  S) 脈がたまに50を切ることがある。
       Drは薬のせいだから心配いらないって言うんだけど、どこまでいいの?
 O) メインテート錠2.5mg服用中、Drから具体的な指示(-)
   脈は50台、47とか48が月に1~2回、自覚症状(-)
 A)  一般的な目安だけでも安心するだろう
 P) あくまでも一般的な目安ですが、無症状であれば、
   安静時40台後半は大丈夫ですよ。40台前半になるようならすぐに連絡を。
 R) 47、48は心配ないんだね
 
□解説
 米国では心筋梗塞後の80%くらいにはβ遮断薬が使われている。たいして日本では30%くらいと言われており、もっと使われてもいい薬効群だと思われる。

 
 症例の患者も心筋梗塞の既往のある患者で、その再発予防のために服薬を続けている。だが、徐脈傾向が気になり、医師に相談するも不安は解消されないままでの来局となっている。

 ただこういう場合は、もう患者のなかでも「大丈夫」とわかっていることも多い。薬剤師からの後押しが欲しい、つまり不安感をやわらげて欲しいというケースのように感じられた。

 具体的な数値を確認すると、たしかにメインテートの影響だと思われるが、自覚症状もないし、脈も47、48とたいしたことはない。そこで一般的な目安を提供することで、患者に安心感を与えることを考えて服薬支援を行っている。

□考察
 心筋梗塞の再発予防や心不全にたいして、β遮断薬は多少無理してでも使っていく必要がある。ということは薬局窓口では自己中断を予防するようなアナウンスを心掛けたい。

 そのときに問題となるのが過降圧と徐脈である。

 血圧と脈はどこまで下がっても心配しなくてもよいか? この答えは患者によって、もしくは患者の状態によって異なってくる。だから、患者が医師から指示を受けておくことが、そしてその指示を薬歴に落としておくことが理想だろう。とくに血圧の許容範囲は医師や施設によってかなり差があるように感じられる。

 たいして脈のほうはそんなに大きな差がないような気がする。30台になるとやばいので40台前半で医師の指示を仰ぐようにしておく。そして少々の、つまり40台後半で無症状ならば、自己中断をしないようにアナウンスをする。

 
 一度はじめたβ遮断薬はなるべく中止したくはない。

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2013年8月 2日 (金)

理解、本質、時間。すべては成熟のために。

この本は経済の本ではない。
人間そのものについて書かれている本だ。

【何かがわかるということ】

 しかし、何かがわかるということは、「ああだから、こうなった」といった事実の因果が解明されるということだけでは足りない。そこに自らが果たした役割を認識するということが必要だと私は思う。自分が生きている時代について理解するということは、その絵柄の中に自分自身を発見し、もう一度描き直すことが必要なのだ。
 安易にわかるということは、既知の鋳型にはめ込んでわかったつもりになっているに過ぎない。

(平川克美『経済成長という病』講談社現代新書 P. 25)

 原因と結果はその事実の関係性のことであって、それ以上でもそれ以下でもない。その関係だけを見て安易にわかったつもりになっていることは思考停止と変わらない。ほんとうの理解はそこからはじまる。そして、そのときにたいせつなこと、それはぼくがあなたが、どういう役割を果たし得たかと想像することである。

 ぼくやあなたのというものが欠落しているとき、それはわかったつもりなのかもしれない。

 薬学部が四年制から六年制になっても、なんら変わりがないように見えるのも同じなのかもしれない。

 ほんとうのプロとは、資格を有したあとに、自らが果たした役割を認識していくうちになり得るものであって、机上の勉強や現場の見学を何年重ねたかではないからだ。

【簡単でわかり易い答えはしばしば物事の本質を隠ぺいする】

 これらの問題(二00七年に日本で相次いで起こった食品会社の不祥事)には、簡単でわかり易い答えが用意されている。その答えとは、倫理観の欠如した経営者が、不当な利潤を得ようとして、あえてルールの一線を踏み越えたのだというものである。事実、メディアはこれらの経営者を激しく指弾し、法律もまたかれらに相当の罰を科してきた。
 しかし、いつの時代にも、倫理観の欠如した経営者というものはいただろうし、やらずぼったくりのような商法で小金を溜め込むといった詐欺まがいの商法はあった。だから、この答えは間違ってはいないが、何故これほど頻発するのかの説明にはなっていない。
 老舗と言われるような信用のある会社や、大企業がこれほど続けて不祥事を起こすということには、経営者の個人的な倫理とは別のところに理由があるように思える。簡単でわかり易い答えというのは、しばしばものごとの本質を隠蔽するものだと思った方がよい。

(同書 P. 111-112 カッコは補足)

 なるほど。たしかにその通り。倫理観の欠如だけでは、「何故これほど頻発するのかの説明にはなっていない」。これには「株式会社の病」という答えが用意されているわけだが、そのことよりも、この思考過程に得心する。

 一見もっともらしい答え、間違ってはいないけれども何かひっかかるような答え、こういうものに遭遇したときには思い出したい。

 「簡単でわかり易い答えというのは、しばしばものごとの本質を隠蔽するものだ」

【時間の概念がなければ、だれでも現在の利益を優先させる】

 観念的な言い方を許していただけるなら、生きるということは、時間の中に自分を投ずることである。そして、私は、それは将来の自分というものに対して、投資し続けるということ、言い換えるなら、絶えず何かを贈与し続けるということではないかと言ってみたい気がする。贈与している何かとは「若さ」そのものである。
 長い時間の中で、自らが行った贈与は、思わぬところを迂回して自分の所へ返ってくるのである。手元に「若さ」は既にない。しかし、私は「若さ」が何であったのかをこのときはじめて知るのである。

(同書 P. 231)

 「若さ」の新しい定義だ。若さとは自分への「投資そのもの」であり「贈与そのもの」である。そして、それは事後的に、回顧的にしかわからない。

 若さを有効に使おうにも計量するものもなければ、効果をすぐに実感できるわけでもない。市場原理主義的な考え方ではダメなのだ。じぶんの成熟を信じて、進むしかない。それが、その過程こそが「生きる」ということなのだ。

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