« 温清飲とその派生処方 | トップページ | 薬剤師ブロガーセミナー »

2013年4月26日 (金)

どこにフォーカスするか? ~プロテカジンと舌痛症~

(S)とは薬剤師がフォーカスしたところ
それはたんに薬剤師が興味のある点ではない
患者の意識の中心を考える

CASE 139

65歳 女性

処方(初来局):
Rp 1) プロテカジン錠10mg 2錠 / 2x朝・夕食後 28日分

患者から得られた情報(コメント):
① 「舌の痛みで、ずっと耳鼻科に通っているけど効果がなくて…」
② 「カンジダでも舌癌でもなかった」
③ 「先生から、胃薬の中に舌の痛みに効く成分も入っているから試してみようと」
④ 「胃はなんともないのに、胃の薬を続けて飲んでもだいじょうぶなの?」
⑤ 食欲(+)、胃症状(-)、RE症状(-)

問診票より: 他科受診(-)、併用薬(-)、副作用歴(-)、アレルギー歴(-)

□CASE 139の薬歴
#1 胃が正常なのに胃薬を飲むことへの不安に対するアプローチ
 S) 胃はなんともないのに、胃の薬を続けて飲んでもだいじょうぶなの?
 O) 舌痛症にプロテカジン処方、カンジダや舌癌は否定
 A) 患者の不安に対してアプローチする必要あり
 P)胃はなんともなくても、たとえば痛み止めやステロイドから胃を守るために、
   胃潰瘍の再発予防や逆流性食道炎などでも胃薬を長期に服用する。
   今回は舌の痛みを和らげるために。続けて服用して様子をみて。
 
□解説
 舌痛症に対するプロテカジンの処方をはじめて経験した。さいわい、薬理作用的に知っていたので、この適応外処方を理解することができた。

 
 薬理作用的には次のようになる。まず、プロテカジンの薬理作用。

Photo

 IFの図からもわかるように、プロテカジンはH2 受容体拮抗作用を介して胃酸分泌を抑制し、さらに胃粘膜に見出されているカプサイシン感受性知覚神経を介し、胃粘膜血流増加作用及び胃粘液増加作用を示している。

 そして、このカプサイシン感受性知覚神経が胃だけではなく、舌や口腔内にも存在するために舌痛症や癌化学療法時の口内炎などに有効なのだそうだ。

 この適応外処方はいったいどのくらい奏功するものなのだろう。薬剤師的には非常に興味のある症例だ。

 しかし、患者の意識の中心は、プロテカジンが効くかどうかではなく、「胃はなんともないのに、胃の薬を続けて飲んでもだいじょうぶなの?」という副作用面にあった。ここにフォーカスすることにした。

 この患者の不安に対して、ただ「だいじょうぶですよ」ではなく、具体的に「胃はなんともない状態で使われている例」を示すことで、不安をやわらげるアプローチを図っている。

□考察
 こういう適応外の珍しい処方では、ついついその作用機序や根拠などに目が行きがちになる。薬剤師ならば当然ともいえる。

 ただ薬剤師が興味のある点にフォーカスするとどうなるか?

#2 舌痛症に対するプロテカジンの処方
 S)先生から、胃薬の中に舌の痛みに効く成分も入っているから試してみようと
 O) 舌痛症にプロテカジンの処方、カンジダや舌癌は否定
 A)カプサイシン感受性知覚神経によるものだろう
 P)この胃薬は舌の血流をよくすることで痛みを和らげます。続けて様子をみて。

 となる。患者にこれといったプロブレムがみつからない場合、つまり初回服薬指導としては悪くはない。

 だが、この患者は不安を抱えている。このケースであれば、フォーカスすべきは、「胃はなんともないのに、胃の薬を続けて飲んでもだいじょうぶなの?」ここだ。

 患者の意識の中心ともいえるべきことを捉え、薬剤師として患者のためになることを選択する。じぶんが興味のある内容に引っ張られてはいけない。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

|

« 温清飲とその派生処方 | トップページ | 薬剤師ブロガーセミナー »

(01) SOAP」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1124939/50960616

この記事へのトラックバック一覧です: どこにフォーカスするか? ~プロテカジンと舌痛症~:

« 温清飲とその派生処方 | トップページ | 薬剤師ブロガーセミナー »