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2013年2月22日 (金)

アムロジピンとGFJをどのように指導しますか?

Ca拮抗剤とGFJ(グレープフルーツジュース)
ピンからキリまであるこの組み合わせ
リスクの低いと言われた「アムロジピンとGFJ」をどう指導する?

CASE 135

60歳 女性

処方:
Rp 1) アムロジピン錠2.5mg 1錠 / 1x朝食後 28日分

患者から得られた情報:
「ここで薬をもらい始めてから、(血圧が)下がりすぎたことなんて一度もない。
 だいたい120~130くらいで安定している」

薬歴から得られた情報:
① 10年前に初来局。前医ですでに半年、アムロジン錠2.5mgを服用。
  GFJが大好き。アムロジンを服用するために飲まないように指示されていた。
  病院ならびに薬局を変わる際に、当局からGFJによる影響のほとんどないタイプと説明をうけ飲用を再開。
② 飲用再開後も血圧の変化はまったくなし。
③ 現在も週に3~4回はGFJを継続中。

□CASE 135の薬歴
#1 アムロジピン‐GFJによる血圧への影響
  S)10年間過降圧なし。120~130で安定
 O) GFJを週に3~4回飲用→血圧への影響なし
 A) 今のところGFJによる影響はないようだ
 P) ふらつきや動悸、血圧が100を切るようなときはすぐに申し出を

 
□解説
 Ca拮抗剤とGFJといえば、メディアでも取り上げらる有名な相互作用だが、その影響は大小さまざまだ。

 GFJは有名なCYP3A4阻害剤。だが、その作用点は小腸。つまりADMEのA、吸収の過程での相互作用ということになる。そして、その影響の大きさは、その薬剤のBA(バイオアベイラビリティ)によって予測が可能だ。

 たとえば、GFJと禁忌レベルのCa拮抗剤、バイミカードのBAは8.4±1.0%(IF参照。3~10%や3.9%としている文献もある)しかない。そして、添付文書には

本剤の血中濃度が上昇し,作用が増強されることがある。
患者の状態を注意深く観察し,過度の血圧低下等の症状が認められた場合,本剤を減量するなど適切な処置を行う.なお,グレープフルーツジュースを常飲している場合,飲用中止4日目から投与することが望ましい。

 との記載がある。GFJの影響は3~4日くらいあることも考慮された内容だ。同時服用にて、AUCが2~4.5倍、Cmaxが3~5倍にもなると言われている組み合わせなのだから、当然と言えば当然だ。

 うっかりGFJを飲んでしまえば、ふらつきやめまい、動悸、フラッシングなどの副作用が容易に想像できる。

 いっぽう、アムロジンのBAは64%もある。やはり影響は少なそうだ。IFでは、現在でも次のような記載のままとなっている。

 (参考)
グレープフルーツジュースによるアムロジピンの血中濃度の上昇は軽度(Cmax115%、AUC116%に上昇)で血圧と心拍数に影響はなかったとの報告
28)及び薬物動態と血圧に影響はなかったとの報告29)がある。(外国人データ)

 そして当時(10年前)は併用注意にGFJの記載すらなく、その後、2010年8月にアムロジンの添付文書が改定され、記載されることになる。「症例の蓄積」と「外国の添付文書情報等との整合性を図るため」がその理由とされている。

 件の患者は、今も変わらず、GFJを愛飲している。もっとも現在では併用注意なので、その状況を確認しつつ、モニタリングを続けている。

 

□考察
 アムロジピンとGFJの併用。これをどう思いますか? こう尋ねると、じつにさまざまな意見が出る。

 「アムロジピンでもGFJとの併用で低血圧の症例がじっさいに出ている。だからGFJは禁止すべきだ」とか「GFJは飲まないといけないものではない」といった意見がある。

 また、一方では「問題はないとしている文献もある」、「リスクは低く、起こる症状も予想できるのだから、注意を与えておけばいい」という意見も当然ある。

 でも、いろいろな意見があるのは当たり前で、それは一般化された情報だけを取り扱っているからだ。そこに実際の患者はいない。だから、医師や薬剤師の考えが色濃く出てしまうわけだ。

 今回の症例の患者は、ぼくの薬局の患者で10年も利用していただいている。そして薬歴には、血圧とGFJの飲用についての個人データがぎっしりだ。これが「現場の強み」だ(CASE 134参照)。だから添付文書が改定になった後も、GFJを禁止することなく、自信を持ってモニタリングを続けている。

 では、はじめてアムロジピンを飲む患者へのGFJは、どう指導しますか? 

 そこにも一般化された情報しかない。患者がいない。だから、僕なりの考えもあるけれども、決まった解などはありはしないのだ。
 

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2013年2月15日 (金)

二陳湯とその派生処方 その3

二陳湯といえば陳皮と半夏
陳皮と半夏のどちらかだけの派生処方
寒痰と熱痰について

 寒痰のイメージは白・うすい・量が多い小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯を。
 熱痰のイメージは黄・粘調・炎症。清肺湯や竹笳温胆湯を。

【基本処方:二陳湯(詳細は二陳湯とその派生処方 その1を参照)】

 二陳湯はあまり使われていないイメージがあるが有名な基本処方だ。主薬は半夏と陳皮。この2つは古いものほどよく効く。そして「陳」には「古いもの」という意味がある。2つの古いものだから、二陳湯というわけだ。

 No.81(二陳湯):半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜

 適応:湿痰

 主薬の半夏、陳皮には化痰(けたん=去痰)作用がある。そして、茯苓が脾の水をさばき、痰の生成を防ぐ。甘草は諸薬を調和し、半夏の毒性を除くために生姜(「半夏+生姜」の配合法則)がくわえらている。

 咳、白い多量の痰、胸のつかえ、食欲不振、悪心・嘔吐などの湿痰の症状に適する。

【二陳湯の派生処方】

 No.119(苓甘姜味辛夏仁湯):半夏、茯苓、甘草乾姜、細辛、五味子、杏仁

 適応:寒痰の喘咳

 
 二陳湯から陳皮を除き、生姜を乾姜に変え、細辛、五味子、杏仁を加えると「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」となる。各生薬名を1つずつとった名前だが、…とにかく長い。発音しにくい。言えれば構成生薬をぜんぶ言えたも同然だが…。

 じつはこの苓甘姜味辛夏仁湯は「小青竜湯(No.19)のウラ処方」と呼ばれており、よく似ている。

 No.19 :半夏、乾姜、甘草、五味子、細辛麻黄、桂枝、芍薬<表証・実証向き>
         (ここの5つの生薬は同じ)
 No.119:半夏、乾姜、甘草、五味子、細辛杏仁、茯苓    <裏証・虚証向き>

 アレルギー性鼻炎の8割は小青竜湯で大丈夫だが、残りの2割は苓甘姜味辛夏仁湯の証だと言われている。

 風寒があって、肺の動きがにぶり、寒痰の症状(色は薄く、量の多い鼻水など)を示す場合には小青竜湯が有効だ。これが8割。そして残りの2割は、胃腸が弱い(脾胃陽虚)ために、肺の動きがにぶり、寒痰の症状を呈している。

 つまり、寒痰の原因が風寒ではない。この場合が苓甘姜味辛夏仁湯の証となる。

 症状からだけではわかりにくいが、鼻汁の他にくしゃみを伴う場合は表証の場合が多いので、小青竜湯の適応としてよい。また、小青竜湯を服用すると動悸や不眠、胃腸障害を生じるようなときは苓甘姜味辛夏仁湯を考慮すべきだろう。

 
 

 No.90(清肺湯):陳皮、茯苓、甘草、生姜、大棗、黄芩、山梔子、桑白皮、貝母、桔梗、杏仁、麦門冬、天門冬、五味子、当帰、竹笳

 適応:肺

 二陳湯から半夏を除き、大棗以下を加えると「清肺湯」になる。構成生薬が多いので、各生薬の働きを以下に記す。

 黄芩、山梔子、桑白皮:肺熱を鎮める(桑白皮は肺熱による咳を鎮める主薬)
 貝母、桔梗、杏仁   :止咳の専門薬
 桔梗+甘草(桔梗湯)  :のどの痛みに
 陳皮、茯苓、生姜       :脾胃を整え、化痰する 
 天門冬、麦門冬、五味子:咳、たんに
 当帰             :補血作用だけでなく、肺に潤いを与える
 生姜+大棗    :副作用防止

 熱痰(粘調で切れにくい、やや黄色の痰や鼻水)やのどが痛い、咳がひどいなどの肺熱の症状を伴うカゼやインフルエンザ、気管支炎などに清肺湯が適している。

【投薬時の注意点】

 No.119(苓甘姜味辛夏仁湯):肺陰虚(空咳や咽喉部の乾燥感)や肺熱証(黄色い痰、喀血)などには適さない。

 No.90(清肺湯):肺寒証(顔面蒼白、痰が薄く白い)には適さない。
 

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2013年2月 8日 (金)

「NSAIDsによる血圧の上昇」という一般化をはねつける

「NSAIDsによる血圧上昇」
その理由は薬理作用から容易に説明できる。
それを現場でどう活かせばよいのか?

CASE 134

65歳 男性 

処方:
Rp 1) ブロプレス錠8mg 1錠・メインテート錠5mg 1錠 / 分1 朝食後

患者のコメント :
「痛み止めで血圧が上がることってあるの?」

患者から得られた情報:
① 肋骨を折って、整形に入院。退院後も服薬継続。
② お薬手帳より、併用薬:ハイペン錠200mg 2錠/分2 朝・夕食後
③ ハイペンを指示通り服用、むくみ(-)
④ さいきんはあまり痛みがないので、飲み忘れもある。
⑤ (ハイペン服用)以前の血圧120/80くらい
⑥ 現在、血圧140-150/ 90-95になることがある

□CASE 134の薬歴
#1 ハイペンによる血圧上昇への対応
  S)「痛み止めで血圧が上がることってあるの? 」
     以前の血圧120/80が、痛み止めを飲みだして140-150/ 90-95に
 O) 他科:整形(肋骨を折って入院していた)
   併用薬:ハイペン錠200mg 2錠/分2
   むくみ(-)、痛みがあまりないために飲み忘れもある
 A) NSAIDs→PG↓→水分貯留、ARBの効果減弱
   さらに服用状況によって、血圧変動を大きくしているのだろう
 P) 痛み止めは水を貯めこむ作用があるので、血圧↑となることがある。
   あまり痛みがないのなら痛み止めを中止して、様子をみて。
   塩分十か条にて塩分指導。
 
□解説
 血圧コントロールで通院中の患者さん。「さいきん血圧が高いんだよね~」と来局される。

 お薬手帳を確認すると、肋骨を折って痛み止めを服用しているという。ハイペンを飲みだしてから、血圧が高くなっていないかを確認すると、「痛み止めで血圧が上がることってあるの?」と驚きながらも、「たしかに」となる。

 血圧はだいたい 120/80 → 140~150/90-95 と変化している。

 かなり上がっている。薬理作用的にハイペンが影響していることは間違いない。

 <ハイペンの慎重投与(ハイペンの添付文書より)>

Photo

 <ブロプレスの相互作用(ブロプレスの添付文書より)>

Arbnsaids

 

□考察
 じつはこの症例、ずいぶん前に経験していた。ただ、NSAIDsによる血圧上昇やARBとNSAIDsの併用といった一般化された知識をどう活用すべきかを思いつかず、そのままになっていた。

 そんな折、堀美智子先生の勉強会に参加する機会を得た。

 「病院薬剤師も薬局薬剤師も知っておきたいOTC薬 第4回」

 講師:医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー  堀美智子 先生
 日時:平成25年1月26日(土) 16:00~18:00
 場所:熊本県薬剤師会館 多目的大ホール

 

 そこでこの問題についての言及があった。

 NSAIDsの服用により、水分貯留がおこり、一般的に血圧が「5」くらい上昇する。この「5」という数字は以前の高血圧ガイドラインには記載があったそうだ。しかし個人差が大きいために削除されたらしい。

 堀先生は提案する。

 「痛み止めを飲んだとき、どのくらい血圧が変わるか、測ってみて」

 こういう「個人データ」が大切なのだ。これが「現場の強さ」である、と。

 たとえば痛み止めを飲んで血圧が10上がるなら、その旨の注意を促し、塩分指導などを行う。もしくは痛み止めを飲んでも血圧に変化がないなら、その影響がないこと自体が、その方のデータとなるわけだ。

 堀先生の講演をききながら、ハッとなった。今回の症例が頭をよぎる。そして思い至る。僕はなんて勘違いをしていたんだろう、と。

 僕らは一般化された知識を用いて患者応対にあたる。でも個別の症例にあたるときは個人のデータを蓄積し、それを活用するべきなのだ。そのための薬歴、そのためのかかりつけだった。

 堀先生のお話は、そういうあるべき姿を示唆してくれた。

 話は戻って、症例の患者。薬歴を取り出し、「ハイペン(200)2T/2xで血圧が20以上も上昇」という個人データをフェイスシートに書き込んだ。

 一般化をはねつけてこそ愛だ。だから医療は愛なんだ。

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2013年2月 1日 (金)

「言葉より以下に『降りなければ』、言葉を創ることはできない」

概念世界と感覚世界を往復する。
言葉を怠けると世界はひたすら「同じ」になる。
現実はつねに「違う」ものだ。

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【感覚世界と概念世界】

 感覚世界は差異の連続である。そこに正解なんて、あるわけがない。「正解らしい」答えがあるだけである。それは状況によって変わる。だからそのつど、正解をめぐって苦労すりゃいいのである。お釈迦様のいう四苦八苦とは、そのことであろう。

 数学の世界に正解があるのは、それが概念世界に属するからである。概念世界と感覚世界が、一対一に対応するなんて保証はない。感覚世界では、あっちの問題と、こっちの問題は、すでに「違う」問題である。 

(同書 P. 228)

 いわゆるハウトゥー本が役に立たない理由もここにある。あっちの問題とこっちの問題は違う問題なのだ。

 だから概念世界で得た知識をそのままこっちの問題に当てはめてもうまくいかない。そうではなくて、その知識を手持ちの武器の一つにたずさえて、一つひとつの問題で苦労しなくてはならないわけだ。

【二つの世界をつなぐものこそが「言葉」である】

 現実は人によって違う。一言で表すことができない。一言でいうためには「同じ」にしてしまうしかない。だからたとえば「なにごともアッラーの思し召し」ということになる。「同じ」を繰り返す意識が、その意味で多彩な現実を嫌うことは、むしろ当然であろう。現実=感覚世界を、意識はできるだけ「同じ」に変えていく。
 「そのほうが便利だから、そのほうが楽だから」
と人々はいう。

 (中略)

だからこそ私は、
 「言葉は感覚世界と概念世界をつなぐだろうが」
とわざわざいわなければならないのである。言葉こそが「同じ」と「違う」の間で、微妙な釣り合会いを保つ。そこを「怠けたら」、世界はひたすら同一化する。

(同書 P. 215-216)

 概念の世界、つまり言葉や意識は、「同じ」「同じ」を繰り返すことで世界を単純化していく。「同じ」世界になっていく。

 この「同じ」世界の解毒剤こそが感覚世界だ。

 この「同じ」世界の唯一の解毒剤は、感覚世界である。感覚世界は「同じなんてない、違いしかない」というからである。二つのリンゴは概念化すれば「リンゴとして同じ」だが、見て嗅いで触って、食べてみれば、違うとわかる。

(同書 P. 201)

 そして、この二つの世界をつなぐものこそが「言葉」である。だから言葉は大事なのだ。

 感覚世界において、既成の言葉をふりまわし、千差万別の諸問題をひたすら同一化していくことは避けなければならない。

【言葉の下に降りる】

 世間では、
 「虫は要するに虫だろ」
という。つまりすべては「同じ」虫なのである。そこには生物多様性なんかない。ここには言葉が基底にあって、それ以下には潜ろうとしないという、いまの世間の態度がみごとに示されている。同様にして、
 「死体は死体だろ」
で世間の話は終わる。しかし、言葉より以下に「降りなければ」、言葉を創ることはできない。だから現代人は「既成の言葉をただ運転している」と私はいう。それをコミュニケーションなどと称するのである。それで人生が済むと思っていられるのは、自分以外のだれかが感覚世界と格闘してくれているおかげである。 

(同書 P. 204-205)

 これはとても手厳しい意見だ。

 既成の概念を勉強して、当てはめているだけではダメだ。そういうことだろう。言葉を使うときには、どうしてもその言葉のイメージや枠組みにとらわれる。これは仕方がない。それこそが言葉の力でもある。

 だから言葉の下に潜る必要があるのだろう。ありのままを視る。そして知識、経験を動員する。そのときにはじめて言葉は生まれる。岡村先生の「服薬ケア」や川添先生の「暮らしが先に来る思考回路」もそうやって生まれたのだろう。

 もちろん、既成の概念が使えるのなら使えばいい。けっして無理に当てはめないことだ。

 こう抽象的に考えると出来そうなのだが、これは容易ではない。

 あの問題もこの問題も「同じ」になってしまうとき、そのとき僕らは感覚世界で格闘していないのかもしれない。

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