« 2012年12月 | トップページ | 2013年2月 »

2013年1月25日 (金)

抗インフルエンザ薬の構造式

タミフル、リレンザ、イナビル
構造式だけで判別できる?
副作用歴と構造式からの副作用を予測する

CASE 133

21歳 男性 
他科受診(-) 併用薬(-)

処方:
Rp1) イナビル吸入粉末剤20mg 2キット
 2) クラリシッド錠200mg 2錠 / 2x朝・夕食後 3日分
 3) カロナール錠200mg 2錠 / 発熱時屯用 5回分

患者のコメント: 「先生から一回だけでいい新薬を出しておくと。薬局でして帰りなさいと」

お薬手帳より: (副作用歴)リレンザ → 発疹

患者から得られた情報:
① インフルエンザA(+)、 38.7℃
② 数年前にリレンザと何種類か服薬。開始2日後に皮疹(ひどくはなかった)。
  リレンザ以外は服用歴があったため、リレンザが被疑薬。
③ タミフル服用歴(+)→SE(-)

疑義照会:
(内容)リレンザにて皮疹歴あり。イナビルも構造類似。タミフルは服用歴あり。
(回答)タミフルへ変更 Rp 1)→5)

 Rp5) タミフルカプセル75mg 2C / 2x朝・夕食後 5日分

 
□CASE 133の薬歴

#1 イナビルからタミフルへの変更を理解してもらう
  S)先生から一回だけでいい新薬を出しておくと。薬局でして帰りなさいと。
   インフルエンザA(+)、38.7℃
 O) リレンザSE歴(+)のため、イナビル→タミフル
    タミフルは服用歴(+)
 A) タミフルなら副作用は大丈夫だろう。
    疑義の内容を伝えて、理解を得る必要あり。
 P) 一回だけの吸入薬はリレンザに似ているのでまた薬疹が出るかもしれない。
   Drと相談のうえ、飲んだことがあるタミフルへ変更。
   こちらは5日間しっかりと続ける必要がある。帰宅後すぐに1カプセルを。
 
□解説
 リレンザにて発疹歴のある患者に対して、イナビルが処方された症例(ここで確認し損なっていることがあった。それは患者がお薬手帳を処方医に見せたかどうかだ。つまり、リレンザの発疹歴を把握していたかどうか)。

 抗インフルエンザ薬の構造式を下記に示す(添付文書より)。

Photo_3
 

 左から順にタミフル、リレンザ、イナビルの構造式だ。一見すると、似ているような違うような。ではリレンザとイナビルの活性代謝物を比べてみると・・・。

Photo_4

 そっくりだ。長いエステル結合を取り払ってみると、ほとんど同じだ。メチル基ひとつの違いにすぎない。代謝の違いとメチル基ひとつで半減期がこんなにも違ってくるとは。

 幸いこの患者はタミフルの服用歴がある。イナビルの代替薬としてタミフルを提案し、採用となる。

 あとは経緯を説明し、医師の説明と異なる結果になったことを理解してもらっている。

 

□考察
 用法・用量やメーカの謳い文句が異なれば、医師は「違う」薬と認識するだろう。

 ところが薬剤師は「薬の構造」からの視点を持つ。

 一方は1日2回で5日間。もう一方は1回だけで5日間持続。だが、その構造式の違いは、たったのメチル基ひとつだけ。そういう意味では、ほとんど「同じ」薬なのだ。

 今回の症例の患者にタミフルの服用歴がなかったらどうしていただろう。

 薬疹を考えるうえで、注目すべきは母核、そして側鎖。皮疹もたいしたことなかったことを考慮すると、症状にもよるが、その場合もタミフルをすすめたかもしれない。

 もちろんアナフィラキシーやショックなら話は別。迷わず、抗インフルエンザ薬は却下。君子危うきに近寄らず。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2013年1月20日 (日)

第2回フットサル大会

日時 : 2013年 1月20日(日) 19時~21時
場所 : 熊本大学薬学部体育館

【参加チーム】

1、熊薬サッカー部(現役・OB混成)

20130120

2、チームアップル

20130120_2

3、熊大薬剤部

20130120_3

 昨年の第1回大会は、熊薬サッカー部とチームアップルの一騎打ち。結果は、16対17で、チームアップルの逆転勝利でした。

 今年は、新たに熊大薬剤部が参戦し、三つ巴に。そして、試合は接戦、混戦、なぜか笑い・・・。

【試合結果】

第一試合  チームアップル VS 熊薬サッカー部

    前半      1    -    0
    後半      0    -    2

    Total      1    -    2

第二試合  熊薬サッカー部 VS 熊大薬剤部  

    前半      1    -    3
    後半      2    -    2

    Total      3    -    5

第三試合  熊大薬剤部   VS チームアップル

    前半      0    -    4
    後半      0    -    0

    Total      0    -    4

Photo_14

 3チームとも1勝1敗。得失点差にて順位を決定。とても楽しい時間でした。

【第3回大会は・・・】

 次回は、2013年7月14日の予定です。

 みなさん、予定をあけておいてください(^_^)/

20130120_4

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年1月18日 (金)

麻黄湯とその派生処方 その3

麻黄湯ベースに薏苡仁が加わった派生処方
キーワードは「風湿」と「薏苡仁」

薏苡仁はイボだけの生薬ではない

 
 麻黄湯からの派生処方に「風湿(急な水分代謝の異常)」に対する方剤がある。今回の主役(主薬)は「薏苡仁」。急性期の軽い症状には麻杏薏甘湯、慢性期の水がたまった症状には薏苡仁湯を。
 

【基本処方:麻黄湯(詳細は麻黄湯とその派生処方 その1参照)】
 麻黄湯といえば、有名な発汗剤だ。つまり表証用の方剤である。そして、咳にもよく奏効する。

 No.27(麻黄湯): 麻黄、桂枝、杏仁、甘草

 
 適応:外感風寒表実証

 インフルエンザやカゼなど(外感)で、急に悪寒(風寒)や発熱、頭痛、咳、鼻汁など(表証)が生じ、無汗(実証)の症状に適している。

 麻黄湯は強力な発汗剤であるので、汗が出たら中止し、長期間使わないようにしたい。また、汗の出やすい虚弱体質者への使用は避けるべきである。

【麻黄湯の派生処方】

 No.78(麻杏薏甘湯): 麻黄、杏仁薏苡仁甘草

 適応:風湿表証

 麻黄湯の桂枝の代りに薏苡仁が入ると麻杏薏甘湯となる(各生薬名が1文字ずつで覚えやすい)。

 主薬の薏苡仁はイボに効く生薬として有名だが、風湿(急な水分代謝の異常)を除くことができる生薬である。

 ここで水の代謝について。漢方では水の代謝には、肺、脾、腎が関与していると考えられている。そして脾(消化器系)の水分代謝の異常(湿)は痛みにつながる。

 薏苡仁はこの湿脾を治療する要薬である。

 さらに、「麻黄+薏苡仁」になると、「麻黄+桂枝」とも「麻黄+石膏」とも、違う薬効に方向転換する。

配合法則:「麻黄+薏苡仁」 → 汗とは関係なく、鎮痛・利尿効果をあらわす

 そして、「麻黄+杏仁」は鎮咳・平喘作用のある組み合わせだが、肺気の流れをよくし、表面の浮腫にも効果がある。最後に甘草は、筋肉のけいれんをやわらげ(芍薬が入っていないので強くはない)、脾の水分代謝を助けている。

 麻杏薏甘湯が合う証は臨床上少ない。梅雨の時期やカゼを引いたときに(風湿の邪気)、全身にむくみや痛みがあるような症例に適している。急性期の軽い症状と考えてよい。

  No.52(薏苡仁湯): 薏苡仁、蒼朮、当帰、芍薬、麻黄、桂枝、甘草

 適応:風湿侵入、血脈不通

 麻黄湯から杏仁を除き、薏苡仁、蒼朮、当帰、芍薬を加えると薏苡仁湯になる。薏苡仁と蒼朮はともに湿を除去する生薬で主薬となる。

 また、この方剤も「麻黄+薏苡仁」の組み合わせで、鎮痛・利尿にはたらく(「麻黄+桂枝」も残っているので汗かきには不適)。

 さらに当帰で血液の循環を良くし、「芍薬+甘草」の配合法則で痛みや筋肉のけいれんを改善する。

 風湿がひどくなると水がたまり、関節に冷え、腫れ、痛みがあらわれる。そのような症状の慢性関節リウマチや変形性膝関節症などに用いる(リウマチは漢方で風湿とよばれる)。

【投薬時の注意点】

 No. 78(麻杏薏甘湯): 麻黄が入っているので汗かきには不向きである。

 No.52(薏苡仁湯): 「麻黄+桂枝」なので汗かきには使わない。また、関節の発赤・熱感が見られる場合は投与しない(越婢加朮湯が適)。 

 * イボに用いる場合は、薏苡仁湯より麻杏薏甘湯が適している。ただし、長期に連用するならば、薏苡仁のみがより安全である。
 

 

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年1月11日 (金)

薬識不足が原因でアドヒアランスに問題のある患者へのアプローチ

薬識不足が原因でアドヒアランスに問題あり
いったい薬識のどこに、どんな問題があるのか
一言で書こうとするから「同じ」になってしまう

CASE 132

70歳 男性 
他科受診(-) 併用薬(-)
平成22年4月に脳梗塞(+)、後遺症(-)

定期処方:
Rp1) ミカルディス錠40mg 1T・プラビックス錠25mg 2T/1x朝食後 28日分
  2) セロクラール錠10mg 3T・レバミピド錠100mg 3T/3x毎食後 28日分
  3) リバロ錠2mg 1T・ファモチジンOD錠20mg 1T / 1x夕食後 28日分

患者のコメント:
「さいきん血圧が低くて110台。
 気色悪いから、半分しか飲んでいない。いかんかな?」

患者から得られた情報:
① ミカルディスは半錠に自己調整中で、今朝の血圧140/90
② 血圧が110台のときに自覚症状はない
③ サラサラの薬(プラビックス)は「一生飲まないといけない」と理解している
④ 血圧やコレステロールの薬を脳梗塞再発予防のために必要なことは理解していない

□CASE 132の薬歴
#1 血圧やコレステロールの薬を脳梗塞再発予防薬と位置付ける
  S)さいきん血圧が低くて110台。
 気色悪いから、半分しか飲んでいない。いかんかな?
 O) 今朝の血圧:140/90、110台のとき→自覚症状(-)
 プラビックスの生涯服用は理解OK、ミカルディスやリバロについては理解なし。
 A) ミカルディスやリバロを脳梗塞の再発予防薬と認識してもらう。
 そのうえで血圧の110台は問題ないことを伝える必要あり。
 P) 脳梗塞は再発をしやすい病気。
 サラサラの薬だけでなく、血圧やコレステロールのコントロールも一生続く。
 ○○さんにとっては血圧の薬もコレステロールの薬も脳梗塞の再発予防薬。
 血圧は100以上あれば大丈夫。再発しないように指示通りに続けましょう。
 R) わかった。関係あるんだね。

 
□解説
 「さいきん血圧が低くて110台。気色悪いから、半分しか飲んでいない。いかんかな?」

 この問いに対して、「110台ならだいじょうぶ。勝手に減らさずに先生の指示通りに一錠ずつ飲んでおきましょう」と答えていたら、どうなっていただろう。

 案外、血圧の下がりすぎではないことがわかり、安心して、ちゃんと飲んでくれたかもしれない。でも、このR)を聞くことはできなかっただろう。

 脳梗塞は再発をしやすい病気の一つだ。一年以内に10人に1人、十年以内に2人に1人が再発するといわれている。その予防のためには抗血小板剤(や抗凝固剤)の一生涯の服用が必要となる(ある調査では脳梗塞患者の3人に1人が、このことを理解していないという)。ここに問題はない。

 再発リスクを上げないためには、血圧やコレステロール、血糖値などのコントロールが欠かせない。ところが、何のためにミカルディスやリバロを飲んでいるのかを理解していない。このことが問題なのだ。

 まず脳梗塞は再発しやすい病気であることを伝える。つぎに血圧の薬やコレステロールの薬も「○○さんにとっては脳梗塞の再発予防薬」と認識してもらう。さいごに血圧の110は大丈夫です、と安心してもらっている。

 「わかった。関係あるんだね」とのコメントからアドヒアランスの向上が期待できるケースだった。

 
□考察
 「薬識不足が原因でアドヒアランスに問題のある患者へのアプローチ」と、こう書いてしまうと非常に抽象的になってしまう。やはり現場での個別の対応においては、ある程度、具体的に記録しておく必要がある。

 病識(じぶんがどんな病気であるのかを認識する概念)の確認は行っていないが、プラビックスの生涯服用の必要性を理解しているところをみると、「脳梗塞の罹患とサラサラの薬の継続服用が結びついている」ことはわかる。これがこの患者のプラビックスの薬識の一つだ。つまり薬識とは病識を含む概念だといえる。

 薬識とは、薬に対する認識のことであり、薬の知識ではない。その薬をどのように認識しているかということであり、病識もとうぜん関係している。

 では、ミカルディスやリバロの薬識はどうなっているのか。それらは端にそれぞれ血圧、コレステロールの薬としか認識されていない。脳梗塞という疾患背景とは結びついていない。

 今回の症例はこういう薬識を持った患者だと思われる(病識に関しては確認不足を否めないが)。

 血圧が110でミカルディスを半分にしてしまったことも、脳梗塞の再発予防薬として理解できていないことも、一言でいえば「薬識不足」になってしまう。

 薬識不足の一言で片づけてしまうと、薬歴はすぐに書けるかもしれないが、薬識のどこに、どんな問題があるのかが把握しづらくなる。とうぜん、服薬指導がヒットする確率も下がる。

 アドヒアランスがよくない原因はどこにあるのか? それを見つけるためには、「薬識」といった大きな括りのままの言葉を、概念のままを使いつづけないほうがいいのかもしれない。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年1月 4日 (金)

「音楽家が不眠で美しい曲を書くのなら、それは美しい不眠というものだ」

新年は美しい文章を
サン=テグジュペリ『夜間飛行』より

【じぶんでなにかを選び取る】

ひとは一度なにかを選び取ってしまいさえすれば、自分の人生の偶然性に満ち足りて、それを愛することができる。偶然は愛のようにひとを束縛する。(P. 12)

 この美しい詩的な文章は肯定的にも否定的にもとれる。だが、それはどちらでもかまわない。「なにかを選び取る」ことこそが大切なこと。

 じぶんの行為や仕事を選び取る。それは、とりもなおさず、じぶんに責任を感ずるということだ。そして、それこそが人間である証だと思う。

【じぶんを掘り下げる】

 必死の行動はのちのち記憶に残りにくい。周囲に渦巻いていたあの激烈な乱気流の記憶さえ、すでにペルランには残っていないのである。おぼえているのはただひとつ、灰色の焔のなかで狂ったようにあがいたことだった。 (P. 26)

 いったい、どうやったのか? 説明しようにもわからない。でも必死だったことだけは覚えている。こういう感覚は理解できる。

 この対策としては記録しかないだろう。ただ言語化できるものといったら、前後の環境や思考、そしてコンディションくらいだろうか。予兆や直観、そういったものはことばの壁を超える。これらは言語化できない。意識化できない。でも大事なことであることはわかる。

 サッカーや仕事を通して、じぶんを掘り下げ、じぶんを知る。それは言語化できるものとは限らない。だが、それは人間を成長させる。そうに違いない。

 

【責務を引き受けること】

 「わからないかね、ロビノー。人生に解決策などない。前に進む力があるだけだ。つまりその力を創りだすしかない、そうすれば解決策はあとからついてくる」 (P. 132)

 航空会社の社長のリヴィエールにとって、「ものごとが進みつづけることこそが重要なのだった」。この一夜の物語において、彼は慌てふためくこともなく、ただただおのれの道を前に進んでいく。

 そこには人間にとって価値の高い何かがある。

 「愛する、愛する、ひたすら愛する。それでは行き詰まるだけだ!」リヴィエールには、愛するという責務よりさらに重い責務があるという漠然とした感覚があった。 (P. 99)

 ひとはただ生きているから尊いのではない。リヴィエールはこうも言う。

 「音楽家が不眠で美しい曲を書くのなら、それは美しい不眠というものだ」 (P. 44)

 生きることより大事なこと。それはどう生きるかということだ。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年12月 | トップページ | 2013年2月 »