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2012年12月21日 (金)

四物湯とその派生処方 その3

補血剤の基本処方は四物湯
四物湯を含む「かゆみ」への方剤
血虚と風、熱について

 四物湯は血を補い、循環を改善だけでなく、女性ホルモンの調整作用もある。
  ゆえにシミも消え、女性は美しくなる。この四物湯を皮膚疾患用に変化させた方剤。

【基本処方:四物湯(詳細は四物湯とその派生処方 その1参照)

 血が不足したものを血虚といい、これを補うものを補血剤という。その基本処方が四物湯。漢方では「四物湯を忘れると、女性疾患の治療はできない」といわれている。

 No.71(四物湯) : 地黄、当帰、芍薬、川芎
 
 適応 : 血虚

 血虚になると「かゆみ」が生じる。ゆえに、四物湯をベースに皮膚掻痒症に対して方剤が作られている。
 

【四物湯の派生処方】

 No.86(当帰飲子):地黄、当帰、芍薬、川芎、荊芥、防風、何首烏、黄耆、蒺藜子、甘草

 適応 : 血虚生風

 四物湯に荊芥以下をくわえると「当帰飲子」となる。荊芥・防風は皮膚疾患の要薬で去風薬ともいわれる。蒺藜子も去風薬で、特にかゆみに効果がある。何首烏は皮膚に潜伏した風毒を除去する。黄耆はその補気作用で慢性皮膚疾患の回復に寄与し、甘草は諸薬を調和している。

「荊芥+防風」の配合法則

荊芥+防風→ ともに発散性が強く、皮膚病を治すには欠くことのできない組み合わせ。十味敗毒湯、清上防風湯、荊芥連翹湯など。

 (健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック増補改訂版 P. 48)
 

 大まかに言えば、補血と去風の方剤である。

 ここで難しいのは「風(ふう)」の概念だ。これは身体に急に出る症状のことで、さまざまな症状を示すことになる。ここでは「かゆみ」と考えることにする。

 すると、適応の「血虚生風」という概念は、血虚の状態だと「かゆみのような風に属する症状」が出る、と考えればいい。さらに生じた風は燥を生む。つまり皮膚を乾燥させる。皮膚がカサカサしていている、白い、乾燥している、といった状態のかゆみを生じることになる。

 当帰飲子は乾燥した肌を潤し、かゆみをとる方剤で、老人性掻痒症に汎用されている。

 No.57(温清飲):地黄、当帰、芍薬、川芎、黄芩、黄連、黄柏、山梔子

 適応:血虚、血熱

 この方剤は四物湯と黄連解毒湯の合剤だ(71+15→57)。よって、その効能は補血と清熱解毒となる。

 当帰飲子が血虚だけのかゆみなのに対して、温清飲は血虚と血熱を同時に治療する。血虚プラス血熱となると、皮膚に熱感がある、赤い、湿疹、風呂上りや酒、とうがらしで赤くなる、といった症状がみられる。そのような血虚・血熱の症状には温清飲を用いる。

 【まとめ】 かゆみには二つのパターンがあって、皮膚がカサカサしているなら(高齢者に多い)、当帰飲子。乾燥はなくかゆみやフロ上がりに赤くなるなどは温清飲(温清飲が効かないなら黄連解毒湯を考慮する)。

【投薬時の注意点】

 地黄を含む方剤に共通する注意点 : 胃弱体質には食後服用をすすめる。

 No.86(当帰飲子):皮膚の炎症が強い時や滲出物が多い場合は不適。

 No.57(温清飲) : 胃腸障害を起こしやすい(食後服用をすすめる)。
  手足の冷えや寒がりには不向き(黄連解毒湯が寒性だから)。
  気虚による出血には使わない。
 
 

 

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