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2012年12月28日 (金)

2012年のふりかえりと2013年の抱負

2012年のラスト。ということで、ふりかえりと抱負。
このブログも5年目に突入しました。
みなさまの応援ならびにコメントに感謝します

【ブログの内容について】

 内容はともかくも週一回の更新を続けることができました。拍手。パチパチ。じぶんで決めたことをやり遂げるのも、なかなかにたいへんでした。なんせ誰からもお叱りをうけるわけでもなく、なにをもらえるわけでもない。有言実行。いやただ実行あるのみです。

 さて内容としては、本棚(今月の一冊)と漢方が月に一回ずつと症例が月に二例。

 まず漢方は基本8処方が完成までもう少し。これはもう少しだけ継続。

 本棚は引用文の一つひとつをじぶんにひきつけて考えるようにしています。それに対して症例では、具体的な内容から不純物を取りのぞき、その考察において抽象化を図るつもりでした(たんに感想に終始した感も否めないことも・・・)。

 だから、いやむしろ、新薬や時事ネタ的なものには飛びつかないようにしています。じぶんの中でひっかかった症例をとくに脈絡もなく、来年も取り上げていきたいと思います。

 

【2013年の予定】

 2012年は出会いの年となりました。とくに日薬の前夜祭。浜松某所で行われた川添祭りでは、そのお人柄や薬学知識、行動力などにあやかりたいと、川添師匠の頭を我先にと・・・。

Photo

 川添師匠の頭を争っている男性がぼくと熊谷兄貴です。
 

 そして、この写真を撮ってくれたのが、ジョブズ原崎氏。その原崎氏が、薬局のオモテとウラの熊谷兄貴とひのくにノ薬局薬剤師で、なにやら企画してくれているとのことで、とても楽しみにしています。これが予定その一。

 もうひとつ、予定その二。2013年11月23・24日に東京で行われる第3回服薬ケア研究会学術大会でお話をさせていただくことになりました。もうこれは岡村会頭のご指名ですから断れません。

 せっかくの機会ですから、さらなる抽象化を図ってみたいと思っています。

【薬局薬学のエディタ】

 いまはただただじぶんの勉強のため、じぶんの人間力アップのために思考をまとめています。でも、そのことが逆説的に、どこかの薬剤師の役に立つことがあるのなら、こんなにうれしいことはありません。

 なぜこんなブログをしているのか。目指す薬剤師像に近づくため。もちろんそれもあります。でもいちばんの動機は、ぼくの目標が「薬局薬学のエディタになる」ことだからです。この目標はもう何年も変わることがありません。

 いろんな薬学知識を現場で使える形にする。いまはただただ公開しているだけですが、もっともっと一般化していきたい。そして薬局薬剤師の視点から、新たな医薬品情報を創っていくことができれば、と思っています。

 それでは、来年もよろしくお願いいたします。

 

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2012年12月21日 (金)

四物湯とその派生処方 その3

補血剤の基本処方は四物湯
四物湯を含む「かゆみ」への方剤
血虚と風、熱について

 四物湯は血を補い、循環を改善だけでなく、女性ホルモンの調整作用もある。
  ゆえにシミも消え、女性は美しくなる。この四物湯を皮膚疾患用に変化させた方剤。

【基本処方:四物湯(詳細は四物湯とその派生処方 その1参照)

 血が不足したものを血虚といい、これを補うものを補血剤という。その基本処方が四物湯。漢方では「四物湯を忘れると、女性疾患の治療はできない」といわれている。

 No.71(四物湯) : 地黄、当帰、芍薬、川芎
 
 適応 : 血虚

 血虚になると「かゆみ」が生じる。ゆえに、四物湯をベースに皮膚掻痒症に対して方剤が作られている。
 

【四物湯の派生処方】

 No.86(当帰飲子):地黄、当帰、芍薬、川芎、荊芥、防風、何首烏、黄耆、蒺藜子、甘草

 適応 : 血虚生風

 四物湯に荊芥以下をくわえると「当帰飲子」となる。荊芥・防風は皮膚疾患の要薬で去風薬ともいわれる。蒺藜子も去風薬で、特にかゆみに効果がある。何首烏は皮膚に潜伏した風毒を除去する。黄耆はその補気作用で慢性皮膚疾患の回復に寄与し、甘草は諸薬を調和している。

「荊芥+防風」の配合法則

荊芥+防風→ ともに発散性が強く、皮膚病を治すには欠くことのできない組み合わせ。十味敗毒湯、清上防風湯、荊芥連翹湯など。

 (健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック増補改訂版 P. 48)
 

 大まかに言えば、補血と去風の方剤である。

 ここで難しいのは「風(ふう)」の概念だ。これは身体に急に出る症状のことで、さまざまな症状を示すことになる。ここでは「かゆみ」と考えることにする。

 すると、適応の「血虚生風」という概念は、血虚の状態だと「かゆみのような風に属する症状」が出る、と考えればいい。さらに生じた風は燥を生む。つまり皮膚を乾燥させる。皮膚がカサカサしていている、白い、乾燥している、といった状態のかゆみを生じることになる。

 当帰飲子は乾燥した肌を潤し、かゆみをとる方剤で、老人性掻痒症に汎用されている。

 No.57(温清飲):地黄、当帰、芍薬、川芎、黄芩、黄連、黄柏、山梔子

 適応:血虚、血熱

 この方剤は四物湯と黄連解毒湯の合剤だ(71+15→57)。よって、その効能は補血と清熱解毒となる。

 当帰飲子が血虚だけのかゆみなのに対して、温清飲は血虚と血熱を同時に治療する。血虚プラス血熱となると、皮膚に熱感がある、赤い、湿疹、風呂上りや酒、とうがらしで赤くなる、といった症状がみられる。そのような血虚・血熱の症状には温清飲を用いる。

 【まとめ】 かゆみには二つのパターンがあって、皮膚がカサカサしているなら(高齢者に多い)、当帰飲子。乾燥はなくかゆみやフロ上がりに赤くなるなどは温清飲(温清飲が効かないなら黄連解毒湯を考慮する)。

【投薬時の注意点】

 地黄を含む方剤に共通する注意点 : 胃弱体質には食後服用をすすめる。

 No.86(当帰飲子):皮膚の炎症が強い時や滲出物が多い場合は不適。

 No.57(温清飲) : 胃腸障害を起こしやすい(食後服用をすすめる)。
  手足の冷えや寒がりには不向き(黄連解毒湯が寒性だから)。
  気虚による出血には使わない。
 
 

 

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漢方診療ハンドブックが30年ぶりに増補改訂されました。

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2012年12月14日 (金)

口腔内崩壊錠を歓迎するOAB患者

口腔内崩壊錠(OD錠)はあなたの中でどんな位置付けですか?
メーカサイドの視点ではなく、薬剤師サイドの視点を持つ
OD錠は嚥下困難だけではなく、アドヒアランス的にも有用だ

CASE 131

70歳 女性 
他科受診(-) 併用薬(-)

前回の処方:
Rp1) アルファロールカプセル0.5μg 1T/1x朝食後 28日分
 2) バップフォー錠10mg 1T・ガスター錠10mg 1T /1x夕食後 28日分

今回の処方:
Rp1) アルファロールカプセル0.5μg 1T/1x朝食後 28日分
  3) ステーブラOD錠0.1mg 2T/ 2x朝・夕食後 28日分
  4) ガスター錠10mg 1T/ 1x夕食後 28日分

患者のコメント: 「口が渇くと申し上げたら、薬を変えておきましょうと」
        「(ステーブラOD錠は)水なしで飲めるんですね。それは助かります」

薬歴から得られた情報:
① バップフォーとガスターの服薬状況はよくなく、その理由もはっきりとはわかっていない。夕食後に忘れたときは、寝る前でもよいとのアナウンスが繰りかえされている。
② 口渇の訴えはときどきあるが、少量の冷水や氷などで対応している。
  (*参考 : 「口渇」 →CASE 74CASE 75
③ ジェネリック(GE)へのスタンス「どっちでもかまわない」

患者から得られた情報:
① 夜間頻尿がイヤなので、夜は水分を摂らないようにしている。

GE変更: ガスター錠10mg→ガスポートD錠10mg

□CASE 131の薬歴
#1 口腔内崩壊錠で夜の服薬状況を改善する
  S)(ステーブラOD錠は)水なしで飲めるんですね。それは助かります。
   夜間頻尿がイヤなので、夜は水分を摂らないようにしている。
 O) 口渇のため、バップフォー→ステーブラODとなり、OD錠を歓迎
   1x夕の服用状況がよくない。
  
 A) 夜間の水分制限がRp2)の飲めていない理由だったのでは?
    であるならば、ガスターもD錠にすれば解決する。
 P) ガスポートDを紹介→変更となる。
    夜は二つとも水なしでOKです。
    夕食後に飲み忘れたら、寝る前になってもOKですよ。

 
□解説
 夕食後の服薬状況がよくない患者。寝る前でもよいというアナウンスも効果がなく、いま一つ打つ手がない状況にあった。

 そんなおり、患者の口渇の訴えによって、バップフォーがステーブラODに変更となった。口渇が少ない新しいタイプの薬と紹介するも、その点よりも「水なして飲むことができる」という製剤的な特徴に、患者は関心を示す。ここにフォーカスした。

 さらにお話を伺うと、夜間頻尿がイヤで、夜の水分摂取を控えているという。

 つまり、夜の服薬状況が悪い原因はここにあったのだ。であれば、ガスターもD錠にしてしまえばいい。

 疑義照会でもよかったのだが、GE変更で対応できれば、医師を通さずに話はすぐに片がつく。案の定、二つ返事で変更となった。

 これで「夕食後に飲み忘れたら、寝る前になってもOKですよ」というアナウンスがほんとうに活きてくることになるだろう。

 
 

□考察
 さいきん、OD錠への考え方を改めている。以前は、薬局の在庫の問題やGE対策としか思えないタイミングでの発売など、あまりよいイメージを持っていなかった。

 もちろん、嚥下困難のある患者にとっては望まれる剤型であることは間違いない。さらに、ハンドリングを考えるうえでも有用な場合も多い(CASE 122 ハンドリング問題を解決するジェネリック 参照)。しかし、一律にすべての患者にOD錠である必要はない。もっと言えば、一剤だけOD錠だったとしても仕方がないのではないか。簡易懸濁法もあるし・・・。そう考えていた。

 だが、そういう否定的な考えからは何も生まれない。それは思考停止となんら変わりがない。GE対策なんでしょ、と思っているだけでは、それをどう役に立てようかなんて、嚥下困難の患者以外に思いつくはずもない。

 そんなことを再認識させてくれる症例だった。

 OD錠を含めた製剤学的知識こそ、薬剤師の中心技術の一つのはず。そのラインナップが増えることは、薬剤師にとって、ほんらい歓迎すべきことだ。そうであってこそ、患者にとっても喜ばしい状況につながるはずである。そう考えるようになった。
 

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2012年12月 7日 (金)

日本語の特性とコンテクストを理解しようとする態度

話し言葉の構造と性差
そしてコンテクストを理解する能力

【語順は決定的な意味を持つ】

 日本語の最大の特徴は、語順が自由だという点にある。また、日本人自身はあまり気がついていないが、特に話し言葉では、単語の繰り返しをいとわないという特徴を持っている。(中略)日本語は強調したいものを語頭に持ってきて、何度も繰り返し言うという特徴的な表現形式を持っている。だから、「竿」を強調したければ、私たちはおそらく、次のように言うだろう。

 竿、竿、竿、竿、その竿立てて、

あるいは、「立てろ」を強調しなければならないなら、

 立てて、立てて、立てて、その竿、

と言うのではないか。

   (中略)

  その、竿、立てろ

  という台詞があったとしたら、「竿」や「立てろ」を強調することはできない。もしも強調しなければならないとしたら、それは、別の語順で書かれていたはずだから。

 (平田オリザ『わかりあえないことから』講談社現代新書 P. 80-84)

  これは重要な指摘だ。ともすれば、患者応対の中でわれわれは、じぶんたちがとかく気にしていることを拾いがちになる。薬剤師として、どこにフォーカスすれば、その患者の役に立てるかと自分本位になる。

 しかし、患者がもっとも気にしていることをクリアしなければ、どんな服薬指導も届かない。それは服薬支援にはならない。だから患者が何を強調しているかを、何を伝えようとしているかを見極めることは重要だ。

 話し言葉における語順と繰り返しの意味。繰り返しはおそらく意識しなくても伝わりそうだ。となると、語順だ。話し言葉において、語順は決定的な意味を持つ。

 

【日本語は性差の激しい言葉の一つである】

  「これ、コピーとっとけよ」

 「これ、コピーとって頂戴」

 「これ、コピーとって」

  「これ、コピーとってください」

 さて、上司が部下に、コピーをとることを指示するときに、適切な言葉はどれだろう。
 男性の上司が、男性の部下に、「これ、コピーとっとけよ」と言っても、あまり違和感がない。(中略) 一方、女性の上司が男性の部下に、同じことを言ったらどうだろう。しかし、それは差別ではないか? 現代日本語はまだ、同じ言葉を使っても、女性が不利になるようにできている。

 (中略)

 では、このとき変わっていかなければならないのは誰だろう。一目瞭然、言葉遣いをもっとも改めなければならないのは、年長の男性だ。

 (平田オリザ『わかりあえないことから』講談社現代新書 P. 120-122)

 これまた実感。とくに差別意識なんてものはことさら無くても、言語文化的に根付いているわけだ。

 これは女性にとっては、たいへん不利な問題であって、とくに年配のかたを相手にする場合には意識しておく必要があるだろう。

 それはさておき、ぼくももう中堅のポジション。この先、歳を重ねていくなかで、女性の言葉に違和感を抱くことがないようにならないと。

 これからの時代にあるべき言葉遣いというものを考えると、やはり男性側が変わっていくしかないのだろう。

 

【コンテクストを理解する】

ホスピスに末期癌の患者さんが入院してきた。五〇代の働き盛りの男性で余命半年と宣告されている。奥さんが二四時間、つきっきりで看護をしている。

さて、この患者さんに、ある解熱剤を投与するのだけれど、これがなかなか効かない。奥さんが看護師さんに、「この薬、効かないようですが?」と質問する。(中略)奥さんはその場では納得するのだが、翌日も、また同じ質問をする。看護師さんは、また親切に答える。それが毎日、一週間近く繰り返されたそうだ。

  (中略)

 そんなある日、ベテランの医師が回診に訪れたとき、やはりその奥さんが、「どうして、この薬を使わなきゃならないんですか?」とくってかかった。ところが、その医師はひと言も説明はせずに、

 「奥さん、辛いねぇ」

 と言ったのだそうだ。
  奥さんは、その場で泣き崩れたが、翌日から二度とその質問はしなくなった。
  要するに、その奥さんが聞きたかったことは、薬の効用などではなかったということだろう。
  「自分の夫だけが、なぜ、いま癌に冒され、死んでいかなければならないのか」を誰かに訴えたかった、誰かに問いかけたかった。

 しかし、その問いかけへの答えを、近代科学、近代医学は持っていない。科学は、「How」や「What」については、けっこう答えられるのだけれど、「Why」についてはほとんど答えられない。

 (平田オリザ『わかりあえないことから』講談社現代新書 P. 178-180)

 ここまでの場面をじっさいに経験するは少ない。しかし、「質問がそのままの内容を意味するわけではない」場面にはまま遭遇する。

 訴えやすい人に対して、質問という形をとって、感情をぶつける。患者の薬剤師に対する質問には、そんなケースが散見される。なんせ薬剤師は、薬の質問をしていい人であるわけだし、医師よりも質問をしやすいというのもよく耳にする。だから、質問という形式をとり「わたしを理解して」となるわけだ。

 その人の、その時の文脈を理解し、患者のほんとうの訴えを想像する。ただし、それができたとしても、なにもできないことがいかに多いことか。ましてや、それを記録として残すのはほんとうに骨だ。

 「Why」に答えることは難しい。なぜなら、人間存在それ自体に、理由がないのだから。(同書 P. 180)

 ぼくもこれに同意する。答えがないことばかりだ。ただ傾聴するだけで、事足りてしまうこともある。そして、その多くは言語化することが難しい。しかし、どんな態度を選びうるかは個人の自由であり、それは個人の実力でもあると思う。

 

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