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2012年11月23日 (金)

シベノールの300mg/dayからのスタートには高いハードルがある

シベノールを300mg/日でスタート
このDoseでのスタート、じつは高いハードルです
高齢者や腎機能低下患者では疑義照会を!

CASE 130

72歳 男性 
他科受診(-) 併用薬(-)

定期処方:
Rp1) シベノール錠100mg 3T / 3x毎食後 14日分
  2) ミカルディス錠40mg 1T・メインテート錠2.5mg / 1x朝食後 14日分
  3) ソラナックス錠0.4mg 2T / 2x朝・夕食後 14日分
   4) アダラートCR錠20mg 1錠 / 1x夕食後 14日分

患者のコメント: 「体調は変わりないよ。採血はもうずっとしてないな~」

薬歴から得られた情報:
① 血圧と動悸のコントロールに苦戦。3月に現在の処方でやっと落ち着く。
② 3月に外来にてシベノール300mg/日がスタートしている。
③ 採血データの聞き取りは5月が最後 → S-Cr:0.97、eGFR:58.8

患者から得られた情報:
① 身長:170、体重:70
② ふらつきや低血糖と思われる症状はない

□CASE 130の薬歴
#1 シベノールが過量と思われる
  S)採血はもうずっとしていない。
   ふらつきや低血糖と思われる症状はなく、体調は良好。
 O) シベノール 300mg/dayを3月より継続中
    72歳、70kg、5月時点での腎機能 S-Cr:0.97 eGFR:58.8(現在不明)
 A) シベノールが過量かも? 
    蓄積による重篤な副作用が心配
 P) 採血して腎機能や不整脈の薬の量をチェックする必要があります。
    こちらからもDrに報告しておきますので、
    次回はかならず受診して採血も受けるように。
    トレースレポート提出。
 
□解説
 シベノールは腎排泄型の薬剤のため、その用量がいつも気になっている。ひさしぶりにお会いした今回の患者は300mg/日にてシベノールを継続中。ふらつきや低血糖(CASE 111 シベノールによる低血糖を参照)などはなく、体調に問題はなさそうだ。

 しかし肝心の腎機能のデータが5月のものしかない。患者に採血状況をうかがうと「ずっとしていない」という。

 患者の体格は大きいが72歳。300mgは適量なのか? 

参考:腎機能別薬剤使用マニュアル

コハク酸シベンゾリン 
300mg~450mg 8時間
高齢者200mg 12時間又は150mg 8時間

Ccr≧70      300~450mg 8時間
30<Ccr<70 1回100~150mg 12~24時間
Ccr≦30     100mg 24時間

 年齢からいっても、Ccrからも過量のはずだ。5月の時点から、もっと腎臓が弱っていることも考えられる。このままではシベノールが蓄積して重篤な副作用につながりかねない。そう考え、服薬支援を行っている。

 蓄積性の副作用であることと患者の状態が良好なことを考慮して、トレースレポートにて対応した。

□考察
 実際はトレースレポートにて対応したが、やはりその場で疑義照会をすべきだった、と今は考えている。次の来局までの2週間のあいだに何も起こらないとは言い切れない状況だったからだ。いくら薬剤の蓄積による副作用とはいえ、やはりリスキーだったと感じている。

 さて、ここからはトレースレポートを書く段階でのお話。

 「患者の体格は大きいが72歳。300mgは適量なのか?」「過量ならば、どのくらいが適量なのか?」トレースを書くとなれば、この問いに自分である程度は答えたうえで、提案をしなければならない。

 2012年7月に、適正使用のお願い「シベノール錠50mg/100mgの用法・用量の調整と臨床検査および血中濃度測定について」が製造販売メーカから出されている。

 その中に「腎機能(Ccr)を指標としたシベンゾリン初期投与ノモグラム」というものがある。

Photo

 患者の身長、体重、5月の時点のS-Crから、Ccrは68(mL/min)。体重は70kg。このノモグラムでいくと初期投与量はギリギリ200mg/日となる。もちろんこれは初期投与量であって、固体間に差はあるので、その後は血中濃度を管理していれば、これ以上の用量になっても問題はないだろう。

 しかし今回のケースではずっと採血をしていないので、この初期投与量の200mg以下、分3であれば1回50mgで提案することにした(まあ結局は、「高齢者200mg 12時間又は150mg 8時間」と同じなんだが、説得力が違うでしょ。でも、もしCcrが50以下だとすると話はうんと変わってくる)。

 そして2週間後、この患者のシベノールは150mg/日(分3)に減量されていた(もちろん採血も受けていた)。

 それにしても、この初期投与ノモグラムを眺めていると、高齢者でなくとも、シベノールを300mg/日で始めなければならない患者がどのくらいいるというのだろうか? と思ってしまう。

 Ccrが80以上でかつ体重が70kg以上。これはかなり高いハードルだと思う。だって体重が70kg以上なければ300mgのオーダーが出てこないわけだから。いっそ用法・用量を150~200mg/日とし、必要に応じて適宜増減としたほうがいいのではないだろうか。

 この適正使用のお願いは「高齢の腎機能障害患者様において本剤の血中濃度上昇を伴う心停止が発現し、致命的な経過をたどった症例が新たに2例発生」したことをうけて出されている。

 症例を見ると、300mg/日を7年も服用したのちに、食欲不振や全身倦怠感、ふらつきから始まって心停止に至っている。この症例は「もう何年もこの量を飲んでいるから大丈夫」ではないことを物語っている。なぜならこの副作用は、薬剤の蓄積による副作用なのだから。
 

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