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2012年10月19日 (金)

「四物湯+四君子湯」(八珍湯)とその派生処方 その3

BPSDやDLBなど使用頻度が増えている抑肝散
じつは八珍湯からの派生と考えることができる

これに陳皮・半夏を加えると・・・ 

【基本処方:四物湯+四君子湯(八珍湯)

 血が不足したものを血虚といい、これを補うものを補血剤という。四物湯は補血剤の基本処方。「四物湯を忘れると、女性疾患の治療はできない」といわれている。

 No.71(四物湯): 地黄、当帰、芍薬、川芎
 
 適応:血虚

 気が不足したものを気虚といい、これを補うものを補気剤という。四君子湯は補気剤の基本処方。胃腸を整えて気を補う、補気健脾の効果がある。

 No.75(四君子湯):人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗
 
 適応:脾気虚

 四物湯と四君子湯の合方剤を「八珍湯」といい、その適応はもちろん、気血両虚である。しかし、エキス製剤には存在しない。

【八珍湯の派生処方】

 No.54(抑肝散):柴胡、釣藤鈎、当帰、川芎白朮、茯苓、甘草

 適応:抑肝健脾、清熱解痙

 抑肝散は四逆散や加味逍遥散からの派生と見ることもできるが、八珍湯からの派生ともいえる。

 まず、人参があるとよけいにカッカするのでこれを除く。次に地黄も胃にくるのでこれも外す。さらに芍薬があると筋肉のひきつりにはいいけど、ピクピクには効かなくなるので抜く。すると5つの生薬が残る。

 これに肝への案内人の柴胡を加え、鎮静・鎮痙の釣藤鈎を加えると「抑肝散」になる。つまり気血両虚で肝熱(神経の高ぶり)のあるものに対しての方剤となっている。

 認知症の患者によく処方されているが、その中核症状には効果がない。しかし周辺症状にははっきりと効果が見られる。イライラや徘徊、幻視などさまざまな症状に効き目がある。また、抗精神病薬のように効きすぎて過鎮静になることはほとんどない。

No.83(抑肝散加陳皮半夏):柴胡、釣藤鈎、当帰、芍薬、白朮、茯苓、甘草陳皮、半夏

 
 適応:抑肝健脾、清熱解痙、湿痰

 抑肝散に陳皮・半夏を加えると、その名の通り「抑肝散加陳皮半夏」となる。適応も抑肝散の適応に湿痰をくわえたものになる。抑肝散を用いるような患者で胃腸の弱いものや痰の症状がある場合には、抑肝散ではなく抑肝散加陳皮半夏が適している。

 じつはこの抑肝散加陳皮半夏はメイド・イン・ジャパンなのだ(抑肝散はとうぜん中国)。日本人の胃腸の弱さがこの方剤を生み出したと言われている。

 また脳血管障害のある人は、いつも痰がゴロゴロしていることが多い。そしてこの状態に対して、西洋薬の去痰剤の効果はイマイチだ。

 ところが二陳湯陳皮・半夏)はそのような西洋薬の効かない痰への効果が期待できる。抑肝散に陳皮・半夏をくわえた方剤が必要な疾患背景をもつ患者は案外多い。

【投薬時の注意点】

 No.54(抑肝散)、No.83(抑肝散加陳皮半夏):

 健脾作用があるので長期に服用できる。しかし、胃腸の弱いものには抑肝散加陳皮半夏の方がより適している。

 また、高齢の認知症患者に多く使われているためか、甘草はそんなに多くないのに低K血症が散見されている。

 ピクピクするようなけいれん、例えば目のチックなどには効果がある。一方、からすまがりなどにはあまり効かない。これは芍薬甘草湯と真逆の関係にある。ここで大事な点は芍薬の存在だ。

 抑肝散ではその構成段階で芍薬を除いている。ところが芍薬甘草湯を同時併用すると、芍薬の存在がゆえに、抑肝散の期待する効果が得られなくなってしまう。

 抑肝散と芍薬甘草湯を併用する場合には30分~1時間程度服用間隔をあけるようにしたい。

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