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2012年10月26日 (金)

アダラートCR錠は不完全がゆえに価値がある

アムロジピンとアダラートCR
同じ1日1回タイプのカルシウム拮抗薬
どこがどう違う? 時間降圧療法について

CASE 128

60歳 女性 
他科受診(-) 併用薬(-)

前回の処方:
Rp1) ブロプレス錠8mg 1T/1x朝食後
  2) アムロジピン錠5mg 1T/1x就寝前 28日分

今回の処方:
Rp1) ブロプレス錠8mg 1T/1x朝食後
  2) アダラートCR錠20mg 1T/1x就寝前 14日分

患者のコメント: 「朝が高くてね~。薬かえておくって。強くなってるの? 下がりすぎないかしら?」

患者から得られた情報:
① 朝の血圧:150/90、病院では(11時):130/80
② GFJ(‐)

□CASE 128の薬歴
#1 アダラートCRの薬識形成による不安解消
  S) 朝が高くてね~。薬かえておくって。強くなってるの。下がりすぎないかしら?
 O) 朝の血圧:150/90、アムロジピン錠5mg → アダラートCR錠20mg
 A) アダラートCRの薬識形成により不安に対してアプローチする
 P) まんべんなく下げるタイプから、夜飲んで朝を下げることが得意なタイプに。
   血圧を下げる力自体はほとんど変わらないから、下がりすぎの可能性は低いですよ。
 
□解説
 アムロジピン錠5mgとアダラートCR錠20mgの降圧力はほぼ同等と言われている。ということは患者の過降圧に対する不安はそれほど心配はいらないだろう。しかしそれではモーニングサージのコントロールはだいじょうぶなのだろうか? これが今回のテーマだ。

 アムロジピンの半減期は33~39時間と長い。定常状態になれば血圧変動をおこしにくい、非常に優秀な降圧剤といえる。だがそれゆえに、朝飲もうが夜飲もうが変わらない、ということになる。

 それに対してアダラートCRはとても優秀とはいえない。アダラートCRは二層構造の製剤技術を駆使して1日1回の用法を実現している。しかし現実にはアダラートCRの2錠/2xの処方が出回っているように、1日1回製剤として、その不十分さは否めない。

 しかしその不完全さが「時間降圧療法」を考えたときにメリットとなる。ターゲットとする時間というものがあるときにはアダラートCRが武器となる。

 以上のような、各薬剤の特性を伝えることで、患者の不安に対してのアプローチを試みている。

□考察
 アムロジピンはたいへん優秀な降圧剤だ。ほとんど完成形といってもいい。いまだにこれを超えるCa拮抗剤は出ていない。ARBが合剤の相手に選ぶのも頷ける。降圧力という問題もアムロジピンを10mgまで使えるようになったことで、アダラートCR40mgにひけをとらなくなった。

 しかしアダラートCRはその不完全さを活かすことができる。

 これらの要因として、ニフェジピンは服薬2時間後と10時間後に血中濃度がピークに達する二峰性の推移を示すことに起因し、就寝前(午後10時前後)に服用した本剤の降圧効果の二次ピークが早朝血圧上昇時に一致したと考える。

<宮川政昭(2008). 服薬タイミングの工夫による早朝高血圧の治療 -ARBとの併用療法に最適なCa拮抗薬の比較検討- 血圧 vol. 15 no. 12 1093-1094> より引用

 
 同種同効薬の薬剤特性、つまり差異をおさえておく。それが服薬指導を円滑にする。

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2012年10月19日 (金)

「四物湯+四君子湯」(八珍湯)とその派生処方 その3

BPSDやDLBなど使用頻度が増えている抑肝散
じつは八珍湯からの派生と考えることができる

これに陳皮・半夏を加えると・・・ 

【基本処方:四物湯+四君子湯(八珍湯)

 血が不足したものを血虚といい、これを補うものを補血剤という。四物湯は補血剤の基本処方。「四物湯を忘れると、女性疾患の治療はできない」といわれている。

 No.71(四物湯): 地黄、当帰、芍薬、川芎
 
 適応:血虚

 気が不足したものを気虚といい、これを補うものを補気剤という。四君子湯は補気剤の基本処方。胃腸を整えて気を補う、補気健脾の効果がある。

 No.75(四君子湯):人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗
 
 適応:脾気虚

 四物湯と四君子湯の合方剤を「八珍湯」といい、その適応はもちろん、気血両虚である。しかし、エキス製剤には存在しない。

【八珍湯の派生処方】

 No.54(抑肝散):柴胡、釣藤鈎、当帰、川芎白朮、茯苓、甘草

 適応:抑肝健脾、清熱解痙

 抑肝散は四逆散や加味逍遥散からの派生と見ることもできるが、八珍湯からの派生ともいえる。

 まず、人参があるとよけいにカッカするのでこれを除く。次に地黄も胃にくるのでこれも外す。さらに芍薬があると筋肉のひきつりにはいいけど、ピクピクには効かなくなるので抜く。すると5つの生薬が残る。

 これに肝への案内人の柴胡を加え、鎮静・鎮痙の釣藤鈎を加えると「抑肝散」になる。つまり気血両虚で肝熱(神経の高ぶり)のあるものに対しての方剤となっている。

 認知症の患者によく処方されているが、その中核症状には効果がない。しかし周辺症状にははっきりと効果が見られる。イライラや徘徊、幻視などさまざまな症状に効き目がある。また、抗精神病薬のように効きすぎて過鎮静になることはほとんどない。

No.83(抑肝散加陳皮半夏):柴胡、釣藤鈎、当帰、芍薬、白朮、茯苓、甘草陳皮、半夏

 
 適応:抑肝健脾、清熱解痙、湿痰

 抑肝散に陳皮・半夏を加えると、その名の通り「抑肝散加陳皮半夏」となる。適応も抑肝散の適応に湿痰をくわえたものになる。抑肝散を用いるような患者で胃腸の弱いものや痰の症状がある場合には、抑肝散ではなく抑肝散加陳皮半夏が適している。

 じつはこの抑肝散加陳皮半夏はメイド・イン・ジャパンなのだ(抑肝散はとうぜん中国)。日本人の胃腸の弱さがこの方剤を生み出したと言われている。

 また脳血管障害のある人は、いつも痰がゴロゴロしていることが多い。そしてこの状態に対して、西洋薬の去痰剤の効果はイマイチだ。

 ところが二陳湯陳皮・半夏)はそのような西洋薬の効かない痰への効果が期待できる。抑肝散に陳皮・半夏をくわえた方剤が必要な疾患背景をもつ患者は案外多い。

【投薬時の注意点】

 No.54(抑肝散)、No.83(抑肝散加陳皮半夏):

 健脾作用があるので長期に服用できる。しかし、胃腸の弱いものには抑肝散加陳皮半夏の方がより適している。

 また、高齢の認知症患者に多く使われているためか、甘草はそんなに多くないのに低K血症が散見されている。

 ピクピクするようなけいれん、例えば目のチックなどには効果がある。一方、からすまがりなどにはあまり効かない。これは芍薬甘草湯と真逆の関係にある。ここで大事な点は芍薬の存在だ。

 抑肝散ではその構成段階で芍薬を除いている。ところが芍薬甘草湯を同時併用すると、芍薬の存在がゆえに、抑肝散の期待する効果が得られなくなってしまう。

 抑肝散と芍薬甘草湯を併用する場合には30分~1時間程度服用間隔をあけるようにしたい。

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2012年10月12日 (金)

最も起こり得る副作用を患者はどのように表現しているのか

降圧にともなう副作用
最も起こり得る、薬理作用に起因する副作用
患者の表現、その言葉の中身を確認する

CASE 127

48歳 女性 

前回の処方(初来局):
Rp1) ブロプレス錠8mg 1T・ダイアート錠30mg 1T / 1x朝食後 7日分

今回の処方(二回目):
Rp2) ブロプレス錠8mg 1T・ダイアート錠30mg 1T / 1x朝食後 28日分

患者のコメント: 「この薬で眠くなったりすることあります? 仕事があるので眠気の少ない薬がいいのですが・・・」

薬歴から得られた情報:
① 両足の浮腫、心肥大、BP170/110にて受診
② 浮腫以外は自覚症状なし

患者から得られた情報:
① 二日前まではBP160台、今は140台まで下がっている。
② 両足の浮腫は改善。
③「薬を飲んでからしばらくして、ボーっとなることがあるので、眠くなるのかなと思って。眠気が出るのなら、仕事があるから困るなと思って」

□CASE 127の薬歴
#1 降圧による副作用に注意しながら継続する
  S) 薬を飲んでからしばらくして、ボーっとなることがあるので、眠くなるのかなと思って。眠気が出るのなら、仕事があるから困るなと思って。
 O) 血圧推移:前回170/110→二日前まで160台→現在140台
   両足の浮腫は改善(もともと浮腫以外の症状はない)
 A) 降圧にともなう症状だろう。薬識是正が必要。
 P) もともとむくみ以外に症状がなかったということは、
   つまり血圧の高い状態に身体が慣れていたということ。
    それが血圧が下がってきたために、ボーっとなることがあるのでしょう。
   慣れてくればなくなるので、しばらくは運転や仕事などに気をつけて。


□解説

 このケースでも、質問にたいしてまっすぐに答えることはさけたい。

 その質問は何を意図しているのか? どういった状況からその質問が出てきたのかを確認する。この「確認」という作業がポイントだ。患者が訴える「眠気」はぼくらがいつも想定しているそれとは限らない。

 そしてもっとも大事な点は、降圧剤が始まったばかりである、ということだ。降圧にともなう何らかの症状が起きているかもしれない。であるならば、それは薬理作用と表裏一体のもので、それは仕方がない問題なのだ。

 確認すると案の定、降圧にともなうものであった。とうぜん、そこにフォーカスする。そして、それは慣れてくるものであって、気をつけるしかない。薬識を補正しながら、不安に対して服薬支援を行っている。

□考察
  「この薬で眠くなったりすることあります? 仕事があるので眠気の少ない薬がいいのですが・・・」と質問され、処方薬を眺める。ARBと利尿剤。う~ん。薬理作用から導くことはできそうにない。

 そこで、文字通り「眠気」で処方薬を検索してみる。するとブロプレスがヒットする。

 精神神経系(0.1~5%未満):頭痛、頭重感、不眠、眠気、舌のしびれ感

 しかしこの情報をこねくり回したところでなにもならない。患者の発した「眠気」という言葉に振り回された格好だ。それもこれも薬剤師の確認不足が原因なのだ。

 患者が訴える症状、その言葉を文字通りに受け取ることには注意が必要だ。たとえば、「フラッシング」のことを「掻痒感」と表現した患者もいた。つまり患者が訴える言葉(副作用)をそのまま使って話をすすめると本質からどんどん離れていくことになる。だから、その言葉の中身を確かめる作業が必要となるわけだ。

 患者の訴えは具体的にどんな状態なのか? これを確認し、フォーカスする。

 同じ足場に立たなければ、ぼくらの知識はただただ空回りする。

 

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2012年10月 5日 (金)

概念を捉える、伝える

「リスク」という概念とカタカナリテラシー
概念をいかに伝えるか?

【「リスク」とはそもそも何か?】
 

 そもそもこの単語を「リスク」という外来語のまま使っていること自体、日本人がこの概念を消化し切れていないことの表れかもしれません。「危険性」などの単語とは、ちょっと意味合いが異なります。

 辞書を見れば、リスクとは、
 「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する」
 などと定義が載っています。可能性っていう言葉が入っているところがこの定義のミソです。(中略)

 リスクの高低は、
 「(起きた時の影響の大きさ)x(起きる確率の高さ)」
 で表すことができます。 

(佐藤健太郎『「ゼロリスク社会」の罠』光文社新書 P. 22-24)

 これはカタカナリテラシーを考えるうえでたいせつな指摘だ。似たような意味の日本語があるにもかかわらず、カタカナのまま用いられている言葉すべてに言えることだろう。

 なぜ「危険性」ではなく「リスク」とするのか。その違いを考えることがすなわち「リスク」という概念を理解することにつながるわけだ。

 ちょっと脱線。

 「リスク」という概念は日本語には存在しない。だからカタカナを使うわけだが、日本語ではその概念を作れないのだろうか。

 
 ものを考える道具である概念のことを考えてみても、日本ではこれがまた橋の構造をしてるんですね。(中略) 日常語でがっしりとした概念をつくれない。だから「絶対矛盾的自己同一」とか訳のわからないことを言わざるを得ない。「自分はいるんだけど、私という存在は矛盾で、いつも外からの要素が入り込んできている」という概念。

(内田樹、中沢新一『日本の文脈 』角川書店 P. 87-88)

 ここではアイデンティティの話がとりあげられているが、カタカナリテラシーを考えるうえでは参考になる。つまりそれらの概念は、日本語で一言では言い表せない。その言葉で表現される中身は架橋され説明される。

 それは仕方ない。もともと日本にはない概念なのだし、それが日本語の構造でもあるわけだ。

【リスクの性質】
 

 リスクというのは、何ともつかみどころのない厄介な概念です。
 たとえばリスクというものは、放っておくと勝手に拡大し、とめどなく膨張していく性質があります。(中略)
 虫歯を放置すれば、悪くなることはあってもよくなることはないのと同じで、リスクというものは自然に高まることはあっても、下がることはほとんどないという性質があります。
 ですから、リスクを下げる、あるいは一定に保つためには、それなりのエネルギーや労力をつぎ込む必要があります。(中略)

 
 しかしこうしたリスク削減をいくら続けても、リスクというものは決してゼロになりません。(中略) 当然コストを無制限にかけるわけにはいきませんし、莫大な費用を投じたところで、リスク削減には結局限度があります。
 あるリスクを避けようとすると、別種のリスクが発生してくるという、「トレードオフ」が起こるからです。

(佐藤健太郎『「ゼロリスク社会」の罠』光文社新書 P. 52-53)

 
 なるほど、リスクは虫歯か。虫歯を防ぐためには毎日の歯磨きが、つまりそれなりのエネルギーや労力が必要なわけだ。薬局業務ではヒヤリ・ハット対策などがまさしくそれだ。

 しかしあらゆるリスクはゼロにならない。なぜなら、すぎた対策はリスクのトレードオフを引き起こすからだ。妙に得心のいくところでもある。

【「概念」の取り扱い】

 大きな河には河川敷があり、堤防が備わっていますので、ある程度までの増水なら周囲の家に被害は出ません(「閾値」)。ただし、水かさが堤防のラインを越えてしまえば、それ以降は水量の増加に比例して被害が拡大することになります(「用量依存性」)。(中略)

 要するに、「危険なものを身体に取り入れる」イコール「アウト」ではないのです。危険かどうかはあくまでも量によるものであり、極めて少量ならばどんなものでも大丈夫、量を過ごせばどんなものでも毒です。このことは、何度強調しても足りないほど重要です。
(なお、毒性のうちでも発がん性についてだけは、この「閾値」の考え方が通用しないといわれます。)

(佐藤健太郎『「ゼロリスク社会」の罠』光文社新書 P. 114-115)

 閾値や用量依存性といった概念は、僕らにはとても馴染みのある概念だ。この考え方をさまざまな報道を見聞きするときに援用すればいい。いかに、考えもせずに情報をただただ受信していただけだったことか。この書籍を読んで痛感した。

 もうひとつ。

 概念を伝えることはとても難しい。しかし、この引用の表現はとてもわかりやすい。専門用語ではなく、このような身近にある例で説明できれば理解は容易となる。

 先日、もっと基本的な概念である「血圧」を理解できていない患者に遭遇した。つまり「圧力」の概念。

 「上の血圧はわかるけど、下の血圧がわからないんだよ。上は脳卒中とかでしょ? 下は? 足?」と。

 なるほど、そんなふうに考えていたんだ。これはホースで水をまくことを思い浮かべてもらい理解してもらった。薬剤師にはというより、理系には当たり前の概念がわからない患者が意外に多いのかもしれない。

 理解度を確かめながら、わかりやすく説明する。この基本的なことがけっこう難しい。

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