« 2012年8月 | トップページ | 2012年10月 »

2012年9月28日 (金)

キネダックによる尿の変色

質問にそのまま答えることが解決にならない
不安がどういう形で表出されているか?
‘質問の形をとる不安’

CASE 126

62歳 女性 

処方:
Rp1) バイアスピリン錠100mg 1T・アマリール錠1mg 1T・グラクティブ錠50mg 1T / 1x朝食後 28日分
 2) キネダック錠50mg 3T・メチコバール錠500μg 3T / 3x毎食前 28日分
 3) メトグルコ錠250mg 2T / 2x朝・夕食後 28日分
 4) リバロ錠1mg 1T・タケプロンOD錠15mg 1T / 1x夕食後 28日分
 5) デパス錠0.5mg 1T / 1x就寝前 

患者のコメント: 「こんなに薬を飲んで大丈夫なのかしら?」

薬歴から得られた情報:
① 半年前からリバロ、2か月前からキネダックが追加となっている。
② 腎機能は問題ない。

患者から得られた情報:
① 体調的にはNPで、脱力感や筋肉痛、動悸、めまいなど気になる症状はない。
② 「さいきん、尿の色がおかしい」ことが気になっている。
③ いつからかはわからないが尿が赤っぽい。

□CASE 126の薬歴
#1 尿の変色(キネダック)による不安
  S)さいきん、尿の色がおかしい。赤っぽい。
 O) キネダック服用中、脱力感・筋肉痛(-)、腎NP
 A) キネダックによる尿の変色だろう(スタチンSEではない)。
 P) 尿が赤っぽいのはしびれの薬のためで心配はいらない。
   脱力感を伴うようなときは申し出て。
 
□解説
 「こんなに薬を飲んで大丈夫なのかしら?」こんなセリフを口にする患者は多い。いちばんまずい対応は「大丈夫ですよ」と、その表面的な問いに対して、そのまま対応してしまうことだろう。それは問いの形こそしてはいるが、端に不安の表れでしかない場合が多い。

 もちろんその不安が、ほんとうに薬の数の多さに起因していることもある。また漠然としたものであることもある。しかしまずはその不安がどこからきているのか、気になっていることがあるのではないか、とモニタリングしていくことが必要だろう。質問の形をとる不安というものは案外多いものだ。

 いつからだろう。おしっこが赤っぽい。どこか悪いのかしら。薬をたくさん飲んでいるからでは? となることは想像に難くない。

 尿を変色させた犯人はキネダックだ。関連個所をIFより引用する。

15.その他の注意
本剤の投与により、黄褐色又は赤色の着色尿があらわれることがある。〔本剤及び代謝物の影響による。〕
(解説)
キネダックは黄色を呈するロダニン骨格を基本にした誘導体で、代謝された尿中排出物もロダニン骨格を有しており、これが尿を黄褐色や赤色にするため設定した。代謝物では尿がアルカリ性のときはより赤く現れる。

 またリバロを服用中なので、念のため、筋症状がないこと確認している。横紋筋融解症の可能性を排除したうえで患者の不安の原因に対してアプローチを行っている。

□考察
 キネダックのように尿の色を変える可能性のある薬剤を投薬する際は、初回投薬時だけではなく、ときどきはそのことを理解しているかを確認しておいたほうがいいだろう。患者はそんなに何でも覚えているものでもないし、薬情だって読んでいるとは限らない。

 この患者応対のあと、最低なケースを想定してみた。

 キネダックを投薬の際に、尿の変色についてアナウンスを怠る。つぎにスタチンを投薬し、横紋筋融解症の初期症状のストックフレーズを垂れ流す。オシッコが赤いことに気がつき、薬を中止して受診(筋症状なし)。採血してもCPKの異常はとうぜんない。

 こんなことになったら恥ずかしいね。

 

 にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月21日 (金)

桂枝湯とその派生処方 その3

構成生薬はほとんど同じ
違うのは芍薬の量と膠飴
さて主薬はどれでしょう?

 桂枝湯の構成生薬が言えるのなら桂枝加芍薬湯も小建中湯も言えたも同然。しかし主薬は異なる。主薬が違えば方剤の役割も変わってくる。

【基本処方:桂枝湯(詳細は桂枝湯とその派生処方 その1参照)

 No.45(桂枝湯):桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草

 
 適応:外感風寒表虚証

 主薬は桂枝で、経絡を温めて風寒を発散させる。芍薬は風邪を治す要薬で、鎮痛・鎮痒作用がある。これに「生姜+大棗」が副作用防止・作用緩和の目的で配合される。最後に諸薬の調和の目的に甘草を入れると桂枝湯のできあがりだ。

【桂枝湯の派生処方】

 No.60(桂枝加芍薬湯):桂枝、芍薬↑、生姜、大棗、甘草

 適応:中焦虚寒、腹痛

 桂枝湯にもっと芍薬を加えると桂枝加芍薬湯になる。すると主薬は芍薬になり、その鎮痛・鎮痙作用が主役となる。もちろん「芍薬+甘草」の組み合わせもある。甘草、大棗は甘温の性質で温中補虚、つまり中(中焦、消化器のこと)を温め、虚を補う作用がある。さらに桂枝、生姜で温め、寒を除く。

 臨床では胃痙攣や腸痙攣など「急に痛くなる」ような場合に用いられる。西洋薬では奏功しにくい、すい臓がんの腹痛などにも効果を示すこともある。ただし、手足の冷えなどの虚寒に用いる方剤のため、熱証には避けたい。

 No.99(小建中湯):桂枝、芍薬↑、生姜、大棗、甘草、膠飴

 適応:中焦虚寒、腹痛

 桂枝加芍薬湯に膠飴を加えると小建中湯になる。たかがアメ、されどアメ。なんと主薬なのだ。

 膠飴にも温中補虚の作用がある。甘草、大棗は温中補虚の作用をさらに強める。芍薬+甘草で鎮痛、鎮痙に。桂枝、生姜で温め、寒を除く。

 ゆえに小建中湯はその名の通り、弱った中(消火器)を建てなおす方剤となる。

 虚寒性の(温めると軽くなるような)胃痛・腹痛に用いる。桂枝加芍薬湯よりもさらに鎮痛・鎮痙、温補の働きが強くなっており、腹痛が「持続的でつよい」場合に用いられる。

 この小建中湯と桂枝加芍薬湯の使い分けのポイントがもう一つある。それは膠飴がある方がよいかどうかとも言える。それは腹部膨満感があるかどうかだ。膠飴があるとガスがさらに発生してしまう。よってガスによる腹部膨満感がある場合は、小建中湯ではなく桂枝加芍薬湯の方が適している。

 

【投薬時の注意点】

 No.60(桂枝加芍薬湯):手足のほてりやのぼせがある方には避ける。

 No.99(小建中湯):手足のほてりやのぼせがある方には避ける。また甘味が強いので、ガスによる腹部膨満感のある方や糖尿病の方には避ける。
 

 

 にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月14日 (金)

ユリーフによる逆行性射精

ユリーフによる逆行性射精
ユリーフの特性つまり薬理作用に起因する
デリケートな問題にどう対応していくか

CASE 125

60歳 男性 

処方:
Rp1) プレミネント配合錠 1T・フェブリク錠20mg 1T / 1x朝食後 28日分
 2) ユリーフ錠2mg 2T / 2x朝・夕食後 28日分

 * 前回は ユリーフ錠4mg 2T/2x朝・夕食後

 

患者のコメント: 「会社で立ちくらみがするからユリーフを変えてほしい、って言ったら、量を減らしてみようって・・・」

患者から得られた情報:
① 「立ちくらみはたいしたことはない」と減量による対応に不満な様子
② 以前、泌尿器科でユリーフの処方を受けたことがあり、逆行性射精の説明を受けたことがある
③ 当局から逆行性射精の服薬指導を行ったことはない(薬情にも記載はない)
④ 実際に精液の量が少ない
⑤ 医師には②~④については話していない
  「ついしゃべっちゃたけど、ほんとは(薬剤師にも)言うつもりはなかった」
⑥ 他剤変更への申し出→「先生に悪い」と拒否

□CASE 125の薬歴
#1 ユリーフによる逆行性射精

  S) 以前、泌尿器科で逆行性射精の説明をうけたことがあり、(精液の)量が少ない。
   「会社で立ちくらみがするからユリーフを変えてほしい」と申し出るも、ユリーフ減量となる。
 O)  立ちくらみはたいしたことなく、Drには逆行性射精については話していない。
   ユリーフ錠4mg→2mgへの減量に不満な様子。
   
   疑義照会の申し出も「先生に悪い」と拒否。 「ほんとは(薬剤師にも)言うつもりはなかった」。
 A) 重大な副作用ではなく、急ぐ必要もないが、Drと患者の橋渡しをする必要がある。
 P) 減量で改善がなくても、ユリーフの代わりになる薬はまだたくさんあります。
   先生に会ったときにそれとなくお話ししておきます(トレースレポート提出)。
  R) なんかのついででいいよ。わざわざ時間をとることでもないから。
 
□解説
 患者の訴えが言葉通りには受け取れない、「ほんとうに言いたいこと」が別にあるケースだった。こういうのは患者の様子や言葉の端々から感じ取るしかない。

 つまり「立ちくらみ」は方便で、「逆行性射精」がほんとうに言いたいことである。ここにフォーカスする。

 ユリーフ減量での対応に不満な様子や疑義照会を拒否し、医師との関係を重視する姿勢などを(O)情報とした。

 そして緊急性はないものの、問題がデリケートであることも考慮して、橋渡しは必要と考え、服薬支援を行っている。

□考察
 まずはユリーフ錠の逆行性射精について、関連する記事をIFより抜粋。

シロドシン(カプセル)承認時までに実施された排尿障害患者対象臨床試験の総症例873 例中、副作用は391例(44.8%)で認められた。その主なものは、射精障害(逆行性射精等)150 例(17.2%)、口渇50 例(5.7%)、下痢35 例(4.0%)、軟便34 例(3.9%)、立ちくらみ31 例(3.6%)、鼻閉29 例(3.3%)、めまい23例(2.6%)、ふらつき22 例(2.5%)、頭痛19 例(2.2%)などであった。また、臨床検査値の異常変動は、総症例873 例中185 例(21.7%)で認められた。その主なものは、トリグリセリド上昇62 例(7.4%)、CRP 上昇21 例(3.9%)、ALT(GPT)上昇20 例(2.3%)、AST(GOT)上昇19 例(2.2%)、γ-GTP上昇19 例(2.2%)などであった。
なお、第Ⅲ相二重盲検比較試験では射精障害(逆行性射精等)が175 例中39 例(22.3%)で認められた。

2.重要な基本的注意
(1) 射精障害(逆行性射精等)が認められているので,本剤の投与にあたっては射精障害に関する説明を十分に行い,患者の理解を得た上で使用すること。(「副作用」の項参照)

解説: (1) 本剤による射精障害は、α1 受容体(特にα1A 受容体)遮断に基づく下部尿路組織平滑筋の弛緩により、射精時の膀胱頸部(内尿道口)の閉鎖不全が生じ、精液が膀胱内に逆流してしまう逆行性射精あるいは、α1 受容体(特にα1A 受容体)は精嚢や精管にも豊富に分布していることから、その遮断により、精嚢・精管内圧の低下、収縮の抑制が生じ、後部尿道に精液が出てこない射出障害である可能性が考えられる。

 なるほど。ユリーフの逆行性射精は他の副作用と比べるとやや多い。解説にもあるように、この副作用は薬理作用に起因している。ということは少なからず、解説にある現象は起きていて、用量によって、もしくは生活状況によって、射精障害が自覚されるかどうかが決まるのだろう。

 ならば今回の減量で、症状が改善される、つまり自覚されなくなるかもしれない。しかし、効果面や他剤変更の方が確実であることも考慮すると、やはり他剤へ変更するほうが無難だろう。

 他のα1遮断薬はどうなっているのか。ハルナールは2010年の添付文書改定にて、頻度不明にて射精障害が追加されている。また、フリバスの添付文書には射精障害は見当たらない。これはユリーフのα1 受容体(特にα1A 受容体)の選択性の高さに起因している。

 その選択性の高さこそがユリーフの特徴。つまり血圧への影響は少ないままに、より高い効果を得ることができる。理想的に思えるが、やはり一長一短あるようだ。

 射精障害はデリケートな問題だ。いままでアナウンスがまったくできていなかったことは問題だった。おそらく多くの患者のQOLに影響したことだろう。量が少なかったり、いっても出なかったりしたら、さぞびっくりしたことだろう。メーカ指導箋などをうまく活用することを考えていきたい。

 にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 7日 (金)

「仕事」と「人生の意味」

ショートショートの代名詞、星新一の長編ファンタジー
愉快で不思議な冒険の中で考えたこと

【仕事とは】 

 「そこの道の石だたみに、小さな穴があいているだろう。いつごろからあいてたのだろうか。わたしの少年のころかもしれない。そこでけつまずく人もいたんだよ。これを、その穴にぴたりとはまるように仕上げようと彫刻しているのさ」 (中略)

 「どうして、そんなのを作る気になってしまったのですか。もっとすごいものを作ればいいのに」 (中略)

 「いいんだよ、これで。そこの道をいろんな人が、わたしに声をかけて歩いていった。声をかけてくれなかった人も、わたしの姿を目にとめていってくれたんだ。その人たちがいたからこそ、わたしはきょうまで熱心に石ととりくんでこられた。あっと声をあげさせ、目を丸くさせるようなものは、とうとうできなかったけれどもね。いまになって考えると、それらがありがたいことに思えてきた。いまとなってはお礼もできない。しかし、この道はこれからも多くの人が通ってゆくことだろう。その人たちの役には立つじゃないか。ころぶ人もなくなる・・・・・・」

 (星新一『ブランコのむこうで』新潮文庫 P. 183-184)

 ここには仕事論が凝縮されていると思う。その中でもとくに仕事そのものについてのことを取り上げたい。

 最後の文章を読んだとき、養老孟司の仕事に対する一節を思い出した。

 仕事というのは、社会に空いた穴です。道に穴が空いていた。そのまま放っておくとみんなが転んで困るから、そこを埋めてみる。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものであって、自分に合った穴が空いているはずだなんて、ふざけたことを考えるんじゃない、と言いたくなります。

 (養老孟司『超バカの壁 』新潮新書 P. 19)

 こうして引用してみると、まさに解説。「まず自分があるのはでなく、先にあるのはあくまでも穴の方」なのだ。

 そしてそれは他者のためのものであって、業績の大きさなどは二の次にすぎない。なぜなら、結果というものは物差ししだいなのだから。

【人生の意味】

 ぼくがこの場面にいあわせなかったのなら、話は別さ。赤ちゃんたちは、ワニってこわいものだと感じ、こわがることをおぼえるだけだろう。しかし、ぼくはここにいる。この場面にいあわせて逃げたとなると、これはいけないんだ。

 (星新一『ブランコのむこうで』新潮文庫 P. 194-195)

 ここで感じたことは「勇気」や「正義感」といったものではなく、「人生」そしてその意味の独自性だった。

 「どんな時も、人生には意味がある」
 「人間は、人生から問いかけられている存在である」

 これは『夜と霧』で有名なビクトール・フランクルの人生観だ。

 ここで言う「人生の意味」がさきの場面にある。つまり人生とは普遍的なものではなく、ぼく自身がまさに今、この場面でといった独自性をもったものなのだ。

 人間が刻一刻と出会う状況には、それぞれまったく異なる意味が存在している、とフランクルは言います。この状況にはこの意味が、あの状況にはあの意味が当てはまるのであり、決してそれらを統括することなどできません。「意味はその都度の『時の要請』」であり、「毎日、毎時が新しい意味を差し出してくる」のです。フランクルの言う「意味」はあくまでも「今・ここでの・この私の意味」なのです。それは「そもそも人生には、こうした意味があって」といった超・文脈的な性質のものではありません。これを超えたすべての人に当てはまり、人生のすべての状況をも貫き通っているような「人生の普遍的な意味というものは、存在しない」。だから、そんなものを求めても無駄だ、とフランクルは考えるのです。

 (諸富祥彦『人生に意味はあるか』講談社現代新書 P. 164)

 さあ、今日も僕自身の人生の意味を見つけに出かけるとしよう。

 にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中! クリックしてこの記事に投票

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2012年8月 | トップページ | 2012年10月 »