予想はできないが予防はできる外用剤の光線過敏症
春から夏にかけて、紫外線量がもっとも多い季節
ふたたびモーラステープによる光線過敏症(CASE 59もどうぞ)
ショートパンツの女性を守れ
CASE 119
25歳 女性
処方:
Rp1) マイスリー錠5mg 1T / 1x就寝前 28日分
2) モーラステープ20mg 35枚
* 当局からはRp2)は初めて
患者から得られた情報:
① モーラステープ使用歴(+)、患者から医師に銘柄を希望した。
② ふくらはぎや足首にときどき使う。昨日まで使っていてなくなった。
③ 光線過敏症の注意は受けたことがあり、夜だけの使用にしている。
④ 来局時はショートパンツにサンダル。いつもこんな感じ。
⑤ 海水浴にほぼ毎年行く。
疑義照会:
(内容)容姿、時期的に光線過敏症のリスク(+)、ロキソニンテープを提案。
(回答)患者がよければ、そちらでお願いします。
RP2)→3)ロキソニンテープ50mg 35枚へ変更。
□CASE 119の薬歴
#1 モーラステープによる光線過敏症を回避する
S)(モーラステープの光線過敏症は)知っているので、夜だけにしている。
O) モーラステープはふくらはぎや足首にときどき使用。昨日も使用。
紫外線量↑、ショートパンツにサンダルでいつも素足を出している。
海水浴にもほぼ毎年行っている。
A) 容姿・時期的に光線過敏症が心配。
P) 疑義照会にてロキソニンテープへ変更。
こちらは使い方は同じだが、光かぶれの心配はいらない。
ただし、昨日までモーラステープを使っているので、あと4週間は
貼付部を紫外線に当てないこと。できないときはPA+++の日焼け止めを。
□解説
「モーラステープの光線過敏症は知っているので、夜だけにしている」この誤解は多い。むしろ貼付しているときは、それによって紫外線が遮られることが多く、光線過敏症の発症は少ない。つまり、この誤解はリスクを増しているようなものだ。
しかしその誤解がなくとも、年ごろのおしゃれな女性が肌の露出部分にシップを貼っていることは考えにくい。結果、同様の状態になっていただろう。
使用部位、ファッションそして紫外線の多い季節。また使用頻度的に海水浴シーズンにも影響しそう。さらには患者からの希望による処方で、そういうリスクを考慮した形跡がないこと。これらの(O)情報から、モーラステープはあきらめてもらったほうがよいと判断した。
患者のモーラステープの薬識を是正し、疑義照会の承諾をもらう。医師もすんなり「患者がよければ」とのことだった。
残る問題は「使用後4週間」という期間だ。対策は2つ。ひとつは物理的防御、つまり衣類。もうひとつは化学的な防御手段としてのサンスクリーン剤だ。できれば紫外線の防止効果のいちばん強いPA+++のものを使用したい。
参考:久光製薬HP
□考察
「いままでになったことないよ」そんな反論も予想される。
そう、誰もが起こす副作用ではない。ケトプロフェンによる光線過敏症は「光アレルギー性接触皮膚炎」とも呼ばれる。アレルギー性の副作用であり毒性の機序ではない。つまり誰もが起こすわけではない。しかし、誰に起こるかはわからない。
「いままで起こしたことがない」が今後もおこさないとは限らない。たとえば同じアレルギーが関与するもので、実感できるものに花粉症がある。「いままで花粉症なんてなかった」のに、急に発症する例を毎年毎年、僕らは目にしている。
さらに付け加えるなら、光アレルギー性接触皮膚炎(光線過敏症)は通常の接触性皮膚炎にくらべて重症のものが多い。治療も難航しやすい。
だけど、その予防はいたって単純だ。紫外線に当てなければいい。
だから、予想はできないけど予防はできるから、アナウンスを繰りかえすべきだ。そしてリスクが高いと踏んだら、他剤を提案すればいい。
最後にサッカーチームの仲間から症例提供。
30歳男性。サイドバック。
ゴールデンウィークより腰痛のためモーラステープLを使用。5月20日ごろ発症。
サッカーの着替えのときに紫外線にあてたのかと思いきや、農繁期で家の手伝いのときにちょっと上着を脱いだとのこと。
見事にシップの形。まだ貼ってるみたいだね。
ご協力ありがとうございました<m(__)m>
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「(04) 薬理学(副作用学を含む)」カテゴリの記事
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コメント
いつも興味深く拝見しています。
変形性股関節症でモーラステープを愛用しています。
光に当ててはいけないというのはいつも聞いて知っていますが、別に光に当てなくても写真のように痕になります。一ヶ月も張らずに置けばだんだん薄くなっていくのですが。
これも過敏症なんですか?
モーラステープは貼ったら絶対皮膚が変色するものだと思っていました。(痛みをとるということでは結構効くので、バーターなんだなと(笑))
皮膚が変色する場合は薬剤を変えるべきなのでしょうか?
投稿: rainsong | 2012年6月 8日 (金) 14時56分
紫外線曝露の有無にかかわらず、接触皮膚炎を発現することがあります。色素沈着も報告があります。皮膚の変色だけなら、刺激によるものかアレルギーによるものかは検査しないとわからないと思います。
似たような商品は他にもあるので変えてみてはどうでしょう。
写真の症例は皮膚科に通い、かなりよくなってきている状態です。まだ、かなりかゆいようでした。
投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2012年6月 8日 (金) 16時33分
早々にご回答いただき、ありがとうございました。
痕にならないものがあるなら、試してみたいと思います。
次回診察時にお医者様に相談してみます。
副作用といえど皮膚に色がつくくらいは仕方ない、あたりまえなんだろうなと勝手に判断していたことは、今後気をつけていきたいと思いました。
結構いろんな薬で副作用が出るタチなので(笑)
投稿: rainsong | 2012年6月11日 (月) 10時02分
初めまして~
m(__ )m m( __)m
日本ブログ村から拝見させてもらいました
m(__)m
当方家庭もモーラスパップユーザなのでよく解りますね~
(o^o^o)`
ただ、光線過敏症には気を付けているので誤解、過敏症、無く使えています
(^_^;)`
これから宜しければお見知りおきを
m( __)m
投稿: 薬に詳しい一般人 | 2012年6月11日 (月) 20時15分