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2012年5月11日 (金)

ナウゼリンと妊娠?

知識と情報をどう使うか?
いちばんたいせつなことは何なのか?
迷いや後悔とならないための方針

CASE 117

20歳 女性  

他科受診: 耳鼻科

併用薬 (お薬手帳より) :
Rp1) クラリチン錠10mg 1T/1x夕食後 28日分
  2) アラミスト点鼻液27.5μg 1本

今回(5月9日来局)の処方:
Rp3) ガスターD錠10mg 2T/2x朝・夕食後 3日分
   4) ナウゼリン錠10mg 3T/3x毎食前   3日分

薬歴から得られた情報:
① 2回目の来局(CASE 116 の患者)
② Rp3) 4)は前回Do

患者から得られた情報:
① 吐き気(+)、食欲(-)
② 「妊娠はしてないと思うけど・・・」
③ 生理予定日は月末の30日くらい。

□CASE 117の薬歴
#1 無影響期のナウゼリンと残薬
  S) 妊娠はしてないと思うけど・・・
 O) 吐き気(+)食欲(-)→ナウゼリン処方
    生理予定日は月末30日くらい
 A) 無影響期なので3日間はNP
    ナウゼリンには催奇形性があるので残薬が心配
 P) ナウゼリンは生理予定日以降はぜったいに飲んではいけない。
    3日経過したら、余っていても捨ててしまうこと。
 
□解説
 最終月経初日からの日数が28日未満は無影響期とよばれ、薬の影響を受けることはない(半減期が長い場合は考慮が必要になる場合もある)。

 このことはあのサリドマイドが証明している。

 また、サリドマイドの服用時期とそれによって生じた奇形の間には明確な因果関係が知られている。最終月経から32日以前、あるいは52日以降の服薬では奇形が発生していない。このことはサリドマイドであっても受精後2週間は先天異常を引き起こさなかったことを示している。 
(林昌洋『高リスク患者への薬学的ケア 研修用テキスト』日本薬剤師研修センター  P.18)

 今回のケースでは、次回の生理予定日を30日として今が9日だから、無影響期で間違いない。

 ナウゼリンは動物実験において催奇形性が確認されている。ゆえに妊婦には禁忌となってはいるが、無影響期においては当てはまらない(だって無影響期だから)。むしろ問題は残薬だ。

 吐き気止めの類は症状が改善してしまうと、服薬を中断することが多い。つまり、リスクのある薬が手元に残ってしまうことになる。そのリスクを回避するために、処方日数の3日が過ぎたら、破棄するようにアナウンスしている。

 
□考察
 投薬後に後悔した。やっぱり疑義照会をしてプリンペランなどに変更してもらえばよかった、と。

 たしかに理論上は問題ない。スケジュール的にはまだ受精すらしていないかもしれない。でも残薬というリスクは残ることになる。そして疑義照会さえしておけば、そのリスクすら雲散する。

 「妊娠しているかもしれない」そして「より安全な薬がある」。であるならば、すぐに疑義照会へと行動を移すべきだ。

 無影響期なのかどうかといった情報を用いるのはそのあとだ。今回のケースなら、患者に安心を与えるようにその情報を使えばいい。そのための知識であるべきだった。

 知識の使い方を誤ったケースとして記しておく。

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