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2012年4月27日 (金)

NQとNSAIDsの併用

ニューキノロン(NQ)とNSAIDsの併用
疑義照会の基準
そしてその内容をどのように記録するか

CASE 116

20歳 女性  

他科受診:耳鼻科 

 
併用薬 (お薬手帳より) :
Rp1)シプロキサン錠200mg 3T・エンピナースP錠18000 3T・ムコダイン錠500mg 3錠 / 3x毎食後 7日分
 2) クラリチン錠10mg 1T/1x夕食後 28日分
 3) アラミスト点鼻液27.5μg 1本

初来局の処方:
Rp4) ガスターD錠10mg 2T/2x朝・夕食後 3日分
  5) ナウゼリン錠10mg 3T/3x毎食前   3日分
  6) ロキソニン錠60mg 1T/1x頭痛時    5回分

患者から得られた情報:
① お薬手帳を医師に見せた。一緒に飲んでよいと。
② 吐き気と頭痛で相談しました。
③ 今朝から何も食べていない。

初回問診票から得られた情報:
① 併用薬:アレルギーの薬など
② 副作用歴(-)、妊娠(-)、授乳(-)

□CASE 116の薬歴

疑義照会:
(内容)シプロキサンを600mg/日服用中のため、ロキソニンにてけいれん誘発の恐れあり。カロナール、ポンタールを提案
(回答)ロキソニンをカロナール錠200mg 2錠/1x 5回分へ変更

#1 胃薬の具体的な用法を理解する
  S) 吐き気と頭痛で相談。今朝から何も食べていない。
 O) 疑義照会にてロキソニン→カロナール
    併用薬(+)→飲み合わせNP
       妊娠(-)、授乳(-)
 A) 食事と用法について理解が必要
   カロナールなら空腹でも大丈夫だろう
 P) まずナウゼリンを服用。30分以上して落ち着いてから食事・他薬を。
    それでも食べれないときは他薬も水のみで服用可。
 
□解説
 疑義照会の内容をどこに書くか? もちろん薬歴に書く。ではSOAPで書くのか? 書くこともあれば書かないこともある。

 この場合の疑義はお薬手帳もあったので調剤時に済ますことができた。この時点で知り得た情報は「患者から得られた情報①」のみだった。書くとすればこんな感じだろうか?

#2 シプロキサン-ロキソニンの併用回避
 S) お薬手帳を医師に見せた。一緒に飲んでよいと。 
 O) ロキソニン処方(+)、お薬手帳よりシプロキサン 600mg/日服用中
 A) シプロキサン-ロキソニンの併用→けいれん誘発の可能性あり
    カロナールかポンタールで代案を提案してみよう
 P) 疑義照会→ロキソニンをカロナールへ変更
    併用しても安全な薬に変更しました。

 う~ん。疑義照会の内容と回答だけで事足りる。そもそも疑義照会は調剤料に含まれる技術であるわけだから、指導の要点につながらないことをわざわざSOAPで展開するのも二度手間なような気もするし。

 なにはともあれ、投薬時に疑義はすでに解消している。他にフォーカスすべき内容がないか問診をしていく。

 食前と食後の用法がある。そこで「今朝から何も食べていない」にフォーカスする。薬を飲むために無理に何かを詰め込む人が多いからだ。それは辛いことだし、効果的なこととは思えない。

 
□考察
 先日、同級生の医師と飲んでいるときに質問をうけた。

 「クラビットとロキソニンって併用ダメなの? うちの病院は薬剤部の方針でNQとNSAIDs(の併用)はダメなのよね」

 MRをやっているときにも同じような質問をよく受けていた。結論からいえば、この組み合わせはほとんど問題ない。

 NQとNSAIDsの組み合わせをぜんぶダメにする。これは楽だ。いわば思考停止。併用禁忌も併用注意もあったものじゃない。さらには患者の不利益につながることも充分にありえる。

 実際の併用禁忌の組み合わせは少ない。

 
 バクシダール、ロメバクト、スオード ⇔ フロベン、ロピオン

 シプロキサン ⇔ ケトプロフェン坐剤、筋注

      *フロベン、ロピオン、ケトプロフェンはプロピオン酸系

 そしてここに登場したNQは、NSAIDs併用によりけいれん誘発が高まることが知られている(フルマークは市場撤退。スオードは発売が比較的新しいので次のデータには含まれていない)。

Photo
  (福山大学薬学部 宇野勝次先生「抗菌薬を極める」講演資料より)

 
 つまり、こいつらをマークしていればいいということだ。たいしてクラビットはNSAIDsを併用してもしなくてもその差がないことがわかる。つまりクラビットとNSAIDsの併用でけいれんを起こしたのなら、それはクラビット単剤でもけいれんを起こした可能性が高いということだ。

 クラビットの添付文書の併用注意は類薬扱いと考えていいだろう。クラビットの場合に注意すべきは、NSAIDsとの併用よりむしろ、てんかんの既往や腎機能低下(と用量)だと考えている。

 またNSAIDs側にも差がある。添付文書で取り上げられているNSAIDsの種類はフェニル酢酸系とプロピオン酸系の2種類だ。カルボン酸系のバファリンやポンタールにおいては、併用が問題になることはほとんどない。

 たとえばフルマークを用いたマウスのある試験では、インドメタシンやイブプロフェンではけいれん活性が高まるのに対して、アスピリンやポンタール、ボルタレンではその活性がほとんど高まることがなかったとされている。

 *蛇足  ボルタレンはフェニル酢酸系。NQ-NSAIDsのけいれん誘発のマウスでの試験はいくつかあり、必ずしも理論通りにはなっていないことがある。シプロキサンとプロピオン酸系でけいれんを誘発するというデータもあれば、しないというデータもある。だから現場での基準はバラバラになるのだろうか。

 まとめると、NQ-NSAIDsの併用を、つまり疑義照会をするかどうかを以下のように考えている。

1)てんかんの既往歴、腎機能低下(と用量) *これはNQ単剤の問題でもある

2)けいれん誘発活性の高いNQかどうか?
   つまり、バクシダール、ロメバクト、スオード、シプロキサン

3)けいれん誘発活性の高いNQを他剤に変更できない場合、NSAIDsを変更
   例:カロナール、ソランタール、ポンタール、バファリンなど

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