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2012年3月16日 (金)

八味地黄丸とその派生処方 その1

日本でいちばん有名な補腎剤
八味地黄丸
腎陽虚と腎陰虚について

 六味丸を補腎剤の基本処方とすることが多い。構成的にはそうだ。しかし時代的には八味地黄丸の方が古い。ゆえに八味地黄丸を基本処方としている。

【基本処方:八味地黄丸】
 「腎」は「精力」と考える。ゆえに生理的な腎虚とは、いわゆる老化現象のことだ。具体的には夜間尿、小便不利、腰や下肢がだるくて力が入らない、老年性喘息、白内障、認知症などである。また病理的な腎虚もある。こういう状態を補うのが補腎剤だ。その中でも八味地黄丸は特に有名だ。

No.7(八味地黄丸):地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、茯苓、桂枝、附子

 
 適応:腎陽虚

 地黄(主薬)、山薬、山茱萸はいずれも補腎薬である(「三補」)。いっぽう、沢瀉、牡丹皮、茯苓は「三瀉」といわれ、補腎薬をサポートしている。ここまでで全体の性質は寒性・補性・潤性となっている(ここまでで六味丸になっている)。これに桂枝、附子を加えることで、全体の性質が寒性から熱性となる。

 ここで腎虚について。腎虚には腎陽虚と腎陰虚がある。八味地黄丸は腎陽虚に用いる。陽が不足すると相対的に陰が優位になる。つまり腎陽虚とは、腎虚で四肢の冷えや寒がり、夜間頻尿、インポテンツなどを伴うような状態と捉えるとよい。
 
 * 蛇足 : 夜間尿は腎虚である。50~60代なら夜間に1回、70代なら2回、80代なら2~3回は腎虚、つまり老化によるもので、いわば普通である。それ以上になると夜間頻尿となり、これは腎陽虚である。

 臨床応用は多岐に渡る。腰痛や前立腺肥大症、慢性前立腺炎、白内障はもとより、糖尿病や甲状腺機能低下症、膝関節炎、気管支喘息、男性不妊症、腎炎、男性の更年期障害、骨粗鬆症、老人性膣炎、老年性認知症、歯の動揺などなど。しかしこれらの病名に対して、いわゆる病名処方をしてはならない。そこに腎陽虚の状態を認めることが必須である。

【八味地黄丸の派生処方】

 No.87(六味丸):地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、茯苓

 適応:腎陰虚

 八味地黄丸が考案されたのが漢の時代。その後、「熱性の強い桂枝、附子が入っていると子どもには使いにくい」との理由で、宗の時代に六味丸が考案された。

 八味地黄丸から桂枝、附子を除くと六味丸となる。三補三瀉の生薬で構成され、その適応は腎陰虚となる。陰虚になると相対的に陽が優位になる。つまり腎陰虚とは、腎虚でほてりやのぼせ、潮熱、寝汗などを伴うような状態と捉えるとよい。

 こちらも臨床応用は多岐に渡る。糖尿病や甲状腺機能亢進症、膝関節炎、気管支喘息(とくに小児)、腎炎、男性不妊症、慢性前立腺炎、男性の更年期障害、小児の発達遅延、小児のアトピー、夜尿症などなど。小児や腎陰虚のものに用いる。

【投薬時の注意点】

 共通する注意点:胃腸虚弱や軟便・下痢などには慎重に。食後投与を基本とする。食後服用でもムカムカするなら、胃薬を併用するか量を減らす。

 No.7(八味地黄丸):手足のほてりやのぼせ、口や咽頭部の乾燥感のあるものには避ける。

 No.87(六味丸) :寒がりや四肢の冷えのあるものには避ける。

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