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2012年3月30日 (金)

漢方薬を学ぶ 「基本8処方とその派生処方」

漢方薬を系統立てて学ぶ方法
基本8処方とその派生処方
そのイントロと目次

【証とは「人間の分類」である】

 漢方薬の選択や理解には証の概念が欠かせない。つまり病名処方ではないということだ。

 同じ病名であっても証が違えば薬も違う。逆に証が同じなら、違う西洋病名でも同じ薬が使われることになる。これを「同病異治」「異病同治」と呼ぶのだが、漢方はあくまでも証に基づいて使う。 

(渡辺賢治『日本人が知らない漢方の力』祥伝社新書 P.28)

証はさまざまな症状を統合したもので、その症状の現われ方や、平常時の体質や体格も含めて決定する。いわば「人間の分類」である。 (中略) 漢方では診察して証が決まれば、治療法(薬方指示)も決まることになる。こうした診断方法は「方証相対」と呼ばれ、「証」と「治療方法」とが一体となっているのである。

(同書 P.68-69)

 それでは、各方剤ごとに証を覚えていかないとダメなのか? 答えはもちろんYESだ。分類した人間、つまりその証に対して効くように生薬を組み合わせたものが方剤だからだ。

 しかし方剤の1つひとつが脈絡もなく、つながっていないわけではない。

【基本8処方をマスターしよう】

 基本処方というものが8処方ある。その基本8処方とその派生処方を押さえておけば、医療用エキス製剤の70%はカバーできる、とわたしの漢方の師、趙基恩先生はおっしゃっている。

 もうひとつ、先生の言葉を受け売りで紹介するならば、「漢方は方剤名だけではなく、中身もわかっていないと、どうして効く? どうして効かない? と迷うことになる」そうだ。

 なるほど。実際、漢方の方剤を西洋薬のように薬理作用で説明することは難しい。迷っている人は漢方に興味のある方で、迷っていない人は漢方を理解しているかもしくは思考停止のどちらかだと推測する。

 さて、基本8処方とその派生処方をマスターすると医療用エキス製剤の70%の方剤をイメージできる。つまり、より適切な薬剤の選択ができるようになるわけだ。だが現状、われわれ保険薬局の薬剤師は、漢方を選択するよりも、それを処方せんの指示に従って投薬するケースの方がはるかに多い。

 しかしそれでも、基本8処方は役に立つ。まず、患者さんにわかりやすい説明ができる。つぎに証の合わない患者、つまり副作用の出やすい患者を見分けることができる。そして、投薬時に必要な注意事項。そういったものを系統的に学ぶことができるからだ。

【目次】

1、基本処方① : 小柴胡湯

  1-1)小柴胡湯とその派生処方 その1

      小柴胡湯(9)、大柴胡湯(8)、柴胡桂枝湯(10)

  1-2)小柴胡湯とその派生処方 その2

      柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、柴胡桂枝乾姜湯(11)

  1-3)小柴胡湯とその派生処方 その3

      柴朴湯(96)、柴苓湯(114)

2、基本処方② : 二陳湯

  2-1)二陳湯とその派生処方 その1

      二陳湯(81)、半夏白朮天麻湯(37)、竹笳温胆湯(91)

  2-2)二陳湯とその派生処方 その2

      六君子湯(43)、抑肝散加陳皮半夏(83)

  2-3)二陳湯とその派生処方 その3

      苓甘姜味辛夏仁湯(119)、清肺湯(90)

  2-4)二陳湯とその派生処方 その4

      釣藤散(47)、二朮湯(88)

3、基本処方③ : 四君子湯

  3-1)四君子湯とその派生処方 その1

      四君子湯(75)、六君子湯(43)、補中益気湯(41)

  3-2)四君子湯とその派生処方 その2

      人参湯(32)、苓桂朮甘湯(39)

  3-3)四君子湯とその派生処方 その3

      帰脾湯(65)、加味帰脾湯(137)

  3-4)補中益気湯とその派生処方

      補中益気湯(41)、清暑益気湯(136)

4、基本処方④ : 四物湯

  4-1)四物湯とその派生処方 その1

      四物湯(71)、当帰芍薬散(23)、芎帰膠艾湯(77)

  4-2)四物湯とその派生処方 その2

      七物降下湯(46)、疎経活血湯(53)

  4-3)四物湯とその派生処方 その3

      当帰飲子(86)、温清飲(57)

  4-4)温清飲とその派生処方

      温清飲(57)、荊芥連翹湯(50)、柴胡清肝湯(80)

5、番外編 : 八珍湯

  5-1)「四君子湯+四物湯」(八珍湯)とその派生処方 その1

      十全大補湯(48)、人参養栄湯(108)

  5-2)「四君子湯+四物湯」(八珍湯)とその派生処方 その2

      大防風湯(97)

  5-3「四君子湯+四物湯」(八珍湯)とその派生処方 その3

      抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)

6、基本処方⑤ : 麻黄湯

  6-1)麻黄湯とその派生処方 その1

      麻黄湯(27)、麻杏甘石湯(55)、越婢加朮湯(28)

  6-2)麻黄湯とその派生処方 その2

      葛根湯(1)、葛根湯加川芎辛夷(2)、小青竜湯(19)

  6-3)麻黄湯とその派生処方 その3

      麻杏薏甘湯(78)、薏苡仁湯(52)

7、基本処方⑥ : 桂枝湯

  7-1)桂枝湯とその派生処方 その1

      桂枝湯(45)、葛根湯(1)、柴胡桂枝湯(10)

  7-2)桂枝湯とその派生処方 その2

      桂枝加朮附湯(18)、桂枝加竜骨牡蛎湯(26)

  7-3)桂枝湯とその派生処方 その3

      桂枝加芍薬湯(60)、小建中湯(99)

8、基本処方⑦ : 八味地黄丸

  8-1)八味地黄丸とその派生処方 その1

      八味地黄丸(7)、六味丸(87)

  8-2)八味地黄丸とその派生処方 その2

      牛車腎気丸(107)

9、基本処方⑧ : 四逆湯

  9-1)四逆湯とその派生処方 その1

      四逆湯、附子理中湯(401)、人参湯(32)

  9-2)四逆湯とその派生処方 その2

      桂枝加朮附湯(18)、真武湯(30)、大建中湯(100)

  9-3)人参湯とその派生処方

      人参湯(32)、桂枝人参湯(82)

10、参考① : 参考図書

   10-1)配合法則
  (桑木崇秀『健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック増補改訂版』)

  10-2)日本の伝統医学「漢方」存続の危機
  (渡辺賢治『日本人が知らない漢方の力』)

11、参考② : 特徴のある生薬

  11-1)副作用に注意すべき生薬

  11-2)漢方薬の新しい副作用(山梔子)

  11-3)温める生薬と冷やす生薬

  11-4)ユニークな生薬

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2012年3月23日 (金)

セロクエルと糖尿病

眠剤と表現したその薬剤は?
その名称の、その括り方の意味は?
定型薬と非定型薬の違い

CASE 114

60歳 女性  

他科受診 : 精神科
併用薬    : 眠剤2種

前回の処方(初来局):
Rp1) アバプロ錠50mg 1T / 1x朝食後 14日分

今回の処方(2回目):
Rp2) アバプロ錠50mg 1T・グラクティブ錠50mg 1T / 1x朝食後 14日分

薬歴から得られた情報:
① 前回、血圧160で初来局
② 併用薬は「眠剤2種を2年飲んでいる」との記載のみで薬剤名なし
   →次回持参依頼

患者から得られた情報:
①「血糖まで言われちゃった。そんなに食べたりしないけど」
 →DM指摘初、食事で思い当たることはない
② HbA1c:7.0%、自覚症状(-)
③ 眠剤2種持参→マイスリー錠5mg、セロクエル錠100mg

□CASE 114の薬歴
#1 セロクエル-DM
  S)DM指摘初、食事で思い当たることはない
 O) HbA1c:7.0%、自覚症状(-)
   併用薬:マイスリー錠5mg、セロクエル錠100mg
 A) 血糖上昇はセロクエルが原因かも
   DM-セロクエルは病態禁忌
 P) 血糖は眠剤の影響と思われます。
   早めに精神科のDrにDMと診断されて薬をもらったと相談してください。
   内科のDrにはこちらから伝えておきます(トレースレポート提出)。

 
□解説
 二回目の受診で糖尿病の指摘を受けた患者さん。さらに併用薬がセロクエルと判明。

 糖尿病とセロクエルは病態禁忌だ。

Photo_2

 こうなるとセロクエルは処方変更をしてもらうしかない。勝手に中止指示するわけにもいかないので精神科を早めに受診するように促している。

 また、この方の血糖上昇の原因は、セロクエルの可能性が非常に高い。今後の内科の治療にも影響すると考え、トレースレポートにて情報提供を行っている。
 

□考察
 この患者は併用薬を「眠剤を2種類」と表現している。そう認識している。

 セロクエルの臨床的特徴を見てみると

 クエチアピンは、抗不安・抗うつ効果を有するほか、適度な鎮静作用をもつため、急性期の激越症状(敵意や攻撃性)に有用である。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に反応しない睡眠障害にも有効である。

石郷岡純/岡崎祐士『統合失調症治療の新たなストラテジー』先端医学社 P.134

 なるほど。患者が眠剤というのも頷ける。ということは「眠剤」ときいて、いわゆる一般の眠剤をイメージをして、「大丈夫ですよ」と必ずしもいえないわけだ。

 こういう場面において、患者が薬をどのように認識しているか、つまり患者の薬識を確認する場面において、お薬手帳が活躍することになるだろう。

 もう一点。これは後日談。

 この患者のセロクエル錠100mgはコントミン錠50mgへ処方変更となった。非定型抗精神病薬のどれかに変更になるものと思っていたわたしは、うかつにも意外に感じてしまったわけだ。

 非定型薬だから非定型薬に変わるわけではない。鎮静や催眠効果を期待するのであれば、それぞれアドレナリン受容体とヒスタミン受容体の遮断作用が重要になってくる。そういう作用プロフィールを持つ非定型薬のセロクエルやジプレキサは、ともに糖尿病には禁忌である。

 なるほど、コントミンならば、定型薬なので錐体外路症状への注意が必要ではあるが、作用プロフィール的には近い。そして低力価だ。コントミンの副作用を少なくしたものがセロクエルといった感じなのだろうか。

 そもそも定型、非定型の分類は副作用の出現の仕方に関するものであって、作用プロフィール的な分類ではない。

 当時の薬は皆、抗精神病作用と錐体外路系の副作用の両方を持っている。中脳辺縁系に作用する薬は、どうしても黒質線条体系にも作用する、それが定型的なパターンということで定型抗精神病薬と呼ばれていたわけです。

定型抗精神病薬は優れた抗精神病作用を持って、われわれの日常診療を非常に進展させましたが、やはり副作用の問題がなかなか解決できませんでした。また、陰性症状に対する効果が今ひとつ不十分で、 さらに認知機能障害などを悪化させる可能性もありました。ここまでの薬が定型抗精神病薬の第一世代だったわけです。

1962年に開発されたクロザピンは、臨床試験において高熱、流涎、ときに痙攣発作を起こす自律神経系の強烈な副作用を呈しながらも、陽性症状にも陰性症状にも効き、錐体外路症状を起こさず、 プロラクチンも上昇させなかったため大いに注目されました。それまでの定型抗精神病薬と違い、効果と副作用が分離できるために非定型抗精神病薬と呼ばれ、1972年にヨーロッパの国々で承認されました。

大日本住友製薬 CONSONANCE ~統合失調症治療を考える~
VOL.1 統合失調症薬物治療の新しい流れ ~世界的動向と日本の課題~ <前編>

 定型抗精神病薬は主にドパミン受容体遮断作用を有する。それは統合失調症の治療に有効ではあるが、錐体外路症状の惹起作用を併せ持つことになる。避けがたい「定型」の副作用を示すことになる。それを「定型薬」と呼ぶことにした。

 いっぽう、のちに開発される非定型抗精神病薬、いわゆるSDAは、セロトニン受容体の遮断作用がドパミン受容体に対するそれよりも強い。その結果、定型の副作用である錐体外路症状を抑えつつも効果を得ることができた。それを「非定型薬」と呼ぶことにした。

 そう、ただその分類のための名前であって、それ以上のものではない。

 それなのに非定型薬から定型薬への変更が意外に感じるなんて、ものの名称を覚えることで、安心して、思考を止めてしまって、バカになってしまっていた。

 言葉にしたことで、意味の大半が失われる場合が多い。名前をつけることで、理解が遠退くのと類似している。(中略) 言葉にすることで、みんながわかった気になって、すっかり安心して大事なことを忘れてしまうのである。 

 森博嗣『モリログ・アカデミィ(13) 』メディアファクトリー P.235

 その通りだ。抗精神病薬はレセプタープロフィールを通して、そのキャラクタを把握すべきなのだ。定型薬と非定型薬で括って認識することは、その一面を理解することにすぎない。

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2012年3月16日 (金)

八味地黄丸とその派生処方 その1

日本でいちばん有名な補腎剤
八味地黄丸
腎陽虚と腎陰虚について

 六味丸を補腎剤の基本処方とすることが多い。構成的にはそうだ。しかし時代的には八味地黄丸の方が古い。ゆえに八味地黄丸を基本処方としている。

【基本処方:八味地黄丸】
 「腎」は「精力」と考える。ゆえに生理的な腎虚とは、いわゆる老化現象のことだ。具体的には夜間尿、小便不利、腰や下肢がだるくて力が入らない、老年性喘息、白内障、認知症などである。また病理的な腎虚もある。こういう状態を補うのが補腎剤だ。その中でも八味地黄丸は特に有名だ。

No.7(八味地黄丸):地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、茯苓、桂枝、附子

 
 適応:腎陽虚

 地黄(主薬)、山薬、山茱萸はいずれも補腎薬である(「三補」)。いっぽう、沢瀉、牡丹皮、茯苓は「三瀉」といわれ、補腎薬をサポートしている。ここまでで全体の性質は寒性・補性・潤性となっている(ここまでで六味丸になっている)。これに桂枝、附子を加えることで、全体の性質が寒性から熱性となる。

 ここで腎虚について。腎虚には腎陽虚と腎陰虚がある。八味地黄丸は腎陽虚に用いる。陽が不足すると相対的に陰が優位になる。つまり腎陽虚とは、腎虚で四肢の冷えや寒がり、夜間頻尿、インポテンツなどを伴うような状態と捉えるとよい。
 
 * 蛇足 : 夜間尿は腎虚である。50~60代なら夜間に1回、70代なら2回、80代なら2~3回は腎虚、つまり老化によるもので、いわば普通である。それ以上になると夜間頻尿となり、これは腎陽虚である。

 臨床応用は多岐に渡る。腰痛や前立腺肥大症、慢性前立腺炎、白内障はもとより、糖尿病や甲状腺機能低下症、膝関節炎、気管支喘息、男性不妊症、腎炎、男性の更年期障害、骨粗鬆症、老人性膣炎、老年性認知症、歯の動揺などなど。しかしこれらの病名に対して、いわゆる病名処方をしてはならない。そこに腎陽虚の状態を認めることが必須である。

【八味地黄丸の派生処方】

 No.87(六味丸):地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、茯苓

 適応:腎陰虚

 八味地黄丸が考案されたのが漢の時代。その後、「熱性の強い桂枝、附子が入っていると子どもには使いにくい」との理由で、宗の時代に六味丸が考案された。

 八味地黄丸から桂枝、附子を除くと六味丸となる。三補三瀉の生薬で構成され、その適応は腎陰虚となる。陰虚になると相対的に陽が優位になる。つまり腎陰虚とは、腎虚でほてりやのぼせ、潮熱、寝汗などを伴うような状態と捉えるとよい。

 こちらも臨床応用は多岐に渡る。糖尿病や甲状腺機能亢進症、膝関節炎、気管支喘息(とくに小児)、腎炎、男性不妊症、慢性前立腺炎、男性の更年期障害、小児の発達遅延、小児のアトピー、夜尿症などなど。小児や腎陰虚のものに用いる。

【投薬時の注意点】

 共通する注意点:胃腸虚弱や軟便・下痢などには慎重に。食後投与を基本とする。食後服用でもムカムカするなら、胃薬を併用するか量を減らす。

 No.7(八味地黄丸):手足のほてりやのぼせ、口や咽頭部の乾燥感のあるものには避ける。

 No.87(六味丸) :寒がりや四肢の冷えのあるものには避ける。

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2012年3月 9日 (金)

プラザキサからワーファリンへの切り替え

プラザキサからワーファリン(WF)へ切り替える
どのくらいオーバーラップさせるのか?
プラザキサの効果はコンプライアンスに左右される

CASE 113

77歳 男性  

前回の処方:
Rp1) サンリズムカプセル25mg 3C / 3x毎食後 28日分
 2) プラザキサカプセル110mg 2C / 2x朝・夕食後 28日分
 3) タケプロンOD錠15mg 1T / 1x夕食後 28日分

今回の処方:
 1) Do  14日分
 2) Do  14日分
 3) Do 14日分
  4) メインテート錠2.5mg 1T / 1x朝食後 14日分
 5) ワーファリン錠1mg 1.5T / 1x朝食後 14日分

患者から得られた情報:
① 「不整脈が出てね~。救急病院で診てもらった」
② 「詳しいことはわからないけど、手紙を渡した」

薬歴から得られた情報:
① 心房細動にて治療中
② 以前はWFを服用していた。
③ 現在はプラザキサを服用し、ときどき納豆を食べている。
④ 腎機能は問題ない(S-Cr:0.9、eGFR:63)

疑義照会:
(内容)WFとプラザキサの長期併用は禁忌と考えてよい。
    プラザキサからWFへの切り替えであれば、3日間の短期併用を提案。
(回答)全処方を3日分とし、3日間のみ切り替えのため併用。
    3日後に受診して採血を受けるように患者に伝えて。

□CASE 113の薬歴
#1 プラザキサからWFへの切り替え
  S)不整脈が出てね~。救急病院で診てもらった
 O) プラザキサ→WFのため、3日間併用
 A) 切り替えに関する注意事項を理解する
 P) ハグキからの出血やアザなどの出血傾向→すぐに受診。
   納豆・クロレラ・青汁は禁止に戻る。
   「3日後に受診し採血を受けるように」とのDrの伝言を伝える。
 
 *次回、プラザキサが中止になっているかをcheck 

 
□解説
 af発作にて救急病院を受診。その手紙には、循環器の専門医からメインテートとWFの上乗せ併用が指示してあるという。かかりつけ医も迷いながらも処方をきったようだ。

 まずは時間をもらいメーカに確認する。併用なんてあり得るのか? またプラザキサからWFへの切り替えであれば、どのような手順を踏めばよいのか? の2点だ。

 WFからプラザキサへの切り替えであれば、「ビタミンK拮抗薬(ワーファリン)を投与中止し、INRが2.0未満になれば投与可能である」と明確に添付文書に記載されている。たいしてその逆、つまりプラザキサからWFへの切り替えとなるとそもそも想定されていないのか、プラザキサの添付文書にもインタビューホームにも、そして日本循環器学会が発表したステートメントにも記載がないのだ。

 メーカの答えは、まず「14日分のような長期併用はあり得ない。禁忌と考えてよい」とのことだった。ブルーレターも出たばかりだし、予想通りの回答だった。もう一方の切り替えに関しては「WFの立ち上がりには3日~5日を要するといわれているので、INRが1.6~2.6に入るまで、その程度の短期間の併用を」とのことだった。

 なるほど。まず併用がNGであることは自信を持っていえる。さて、WFとプラザキサを短期間併用するとして、どう提案したものか。メーカの答えのままだと、入院下にて管理してほしいくらいだ。

 ところが、アメリカの添付文書にはそこのところがしっかりと明記されている。

2.4  Converting from or to Warfarin
When converting patients from warfarin therapy to PRADAXA, discontinue warfarin and start PRADAXA when the INR is below 2.0.

When converting from PRADAXA to warfarin, adjust the starting time of warfarin based on creatinine clearance as follows:

•For CrCl ≥50 mL/min, start warfarin 3 days before discontinuing PRADAXA.
•For CrCl 30-50 mL/min, start warfarin 2 days before discontinuing PRADAXA.
•For CrCl 15-30 mL/min, start warfarin 1 day before discontinuing PRADAXA.
•For CrCl <15 mL/min, no recommendations can be made.
Because PRADAXA can increase INR, the INR will better reflect warfarin’s effect only after PRADAXA has been stopped for at least 2 days [see Clinical Pharmacology (12.2)].

 これによると患者の腎機能によって、WFとプラザキサをオーバーラップさせる期間が異なることがわかる。今回の患者の腎機能は問題なく、CrCl ≥50 mL/minなので、プラザキサ中止の3日前からWFをスタートさせればよいことになる。つまり3日間のみの併用だ。

 これを採用し医師へ提案する。そして医師からの伝言を患者に伝え、必要な服薬支援を加える。時間はかかったが、患者の安全は確保できた。
 

□考察
 専門医の指示の書き方が悪かったのか? その点は置いておく。気になるのは、なぜプラザキサからWFへ切り替える必要があったのか? という点だ。とくに出血傾向などの副作用もない。ここは今後のために知っておきたかったが、かかりつけ医にもわからないようだ。

 ひとつ思い当たることがあるとすれば飲み忘れ、いわゆるコンプライアンスだ。今回のaf発作もそれが原因かもしれない。そして発作がおきたときに怖いのが脳梗塞だ。

 その予防として、WFなら1日1回で済む。休薬期間などを考えればよくわかるが、納豆などを食べていなければ、その効果がすぐになくなることはない。たいしてプラザキサの半減期は短い。1日2回服用しないとその血中濃度は安定しない。飲み忘れがあるような患者では、たった1回の飲み忘れが命取りになる可能性もある。

 飲み忘れのある患者、とくに高齢者では、WFからプラザキサへの安易な切り替えは行わない方がいいだろう。ましてや薬剤師が、納豆が食べられるワーファリンもありますよ、なんてアナウンスを軽々しく絶対にすべきではない。

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2012年3月 2日 (金)

情報とSNS

多すぎる情報のフローと情報格差を生むSNS
情報の選択が人の選択となった時代
呼吸で大事なのは吐く方、情報も発信が大事だ

【送料無料】情報の呼吸法

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価格:987円(税込、送料別)

津田大介「情報の呼吸法」朝日出版社

【「情報」の定義】

「情報とは何か?」と問われたら、僕は「人々が動き出すきっかけを与えるもの」「人をドライブさせるためのガソリン」と答えます。その先に行動や変化があることが大前提です。(P.26)

 このフレーズがいちばん好きだ。津田大介氏にとっての「情報」とは、「思考のトリガー」であり、「行動のトリガー」なのだ。

 「情報とは何か?」、ここを「服薬支援とは何か?」と置き換えてみる。

 患者が前向きに動き出す、そのためのエネルギーとなる服薬支援。こう定義しよう。

【「自分の考え」の輪郭】

 そもそも「自分の考え」なんて結局はよく分かってない人のほうが多いわけです。なんとなくこれには違和感がある、なんとなくこれは好きだなあという漠然とした感情を持っていて、それをツイートしてそれに誰かが反応してくれるのを見て、「ああ自分はこういうことを考えていたのか」と初めて気づく。自分と違う人、似た人の考えに触れることで「自分の考え」の輪郭が浮かび上がる。(P.50)

 TwitterやFacebookの利点はここだと思う。もちろん情報格差の要因でもあるが、それ以上に「自分の考えの輪郭」、ここに価値がある。

 とくにTwitterにおいて、その傾向が顕著だ。なぜなら、そこは匿名性が高いためか、「生の情報」があふれている。本音も垣間見える。自分とは異なる考えにも多く触れることになる。とうぜん、そのツイートになんらかの感情を抱くことになる。不快感や嫌悪感なども少なくない。

 そこで感情を口にしない。なぜなら、口にした言葉のあとを思考が追うからだ。感情を増幅させる必要はない。それよりも自分を観察する。その感情を抱いた、いままで意識したこともなかった「自分の考えの輪郭」を捉える。そこに価値がある。

【「自分自身も他人の資本である」】

 資本を使うためには自分自身も資本でなくてはならない。そのために、まずは目先の損得勘定を抜きにする。有名な人にも無名な人にも分け隔てなく、他人の資本としての自分の価値を高めて提供していく。(P.163)

 本書には「ソーシャルキャピタル(人間関係資本)」という鍵概念が登場する。いろいろな人とのつながりこそが資本であり、それが自分の助けになる。そして、ソーシャルメディアがそれを可能にしてくれる。現代はそんな時代になっている。

 たとえば、Facebook上に巨大な薬剤師のグループが実際にある。毎日そこに質問や疑問が書き込まれる。そして面識のない薬剤師から、回答や励ましが寄せられる。そんな現実を目の当たりにしている。

 そんな時代の振る舞い方として、「自分自身も他人の資本でなくてはならない」わけだ。そして、みんながみんなの資本として、お互いを高めていく。そんな素敵な関係を築いていく。新たな可能性が開けている。

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