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2012年2月10日 (金)

シベノールによる低血糖

抗不整脈薬での低血糖
Ia群で腎排泄型のシベノールとリスモダン
用量と患者背景でリスクを勘定する

CASE 111

65歳 男性 

処方:
Rp1) グラクティブ錠50mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T・メインテート錠2.5mg 1T・アマリール錠0.5mg / 1x朝食後 14日分
 2) シベノール錠100mg 3T・マグミット錠330mg 3T / 3x毎食後 14日分
 3) クレストール錠5mg 1T / 1x夕食後 14日分

<*前回の処方との変更点>
 ① アマリール錠1mg 1T → アマリール錠0.5mg 1T
 ② シベノール錠100mg 3T/3x 追加

患者のコメント:
「今まではなかったんだけど、さいきん食事が遅れると、低血糖のような症状が出るんだよ」

患者から得られた情報:
① 倦怠感・空腹感・あくび(+)、発汗・ふるえ・動悸(-)
② 2週間前に不整脈で救急病院へ。シベノール300mg/日追加となる。
③ 腎機能は正常 S-Cr:0.7 BW:70kg
④ 血糖値「測ったけど忘れた。そんなに低くはなかったよ」

□CASE 111の薬歴
#1 シベノールによる低血糖
  S)今まではなかったんだけど、さいきん食事が遅れると、低血糖のような症状が出るんだよ
   倦怠感・空腹感・あくび(+)、発汗・ふるえ・動悸(-)
 O) アマリール減量(1mg→0.5mg)にて対応。血糖値不明「そんなに低くない」
     2週間前から不整脈で、シベノール300mg/Dayスタート 
 A) シベノールによる低血糖かも
 P) 今回はアマリールが減量になっているので様子を見て。
   不整脈の薬で糖が下がりやすくなっている可能性あり。
   ブドウ糖を提供。食事の時間にも注意を。
     Drにも伝えておきます(トレースレポート提出)。
 
□解説
 低血糖の聞き取りに対して不思議そうに答える患者。「いままでと食事も生活も変わらない。不整脈の薬を飲みだしたくらい」と。

 抗不整脈薬のシベノールとリスモダンには、薬理作用の過剰発現による副作用の「低血糖」がある。そのリスクは用量依存的で、飲み始めや増量時に発現しやすい。

 一方、単純な過剰効果ではなく、増量により治療の目的となる臓器とは別の臓器に薬理作用が発現し、患者さんにとって有害な反応が起こることもある。たとえば、抗不整脈薬のコハク酸シベンゾリンは、心筋における各種Kチャネル遮断作用により不整脈を治療するが、そのKチャネル遮断作用が膵β細胞に現れた場合、インスリンの分泌を促進し低血糖が発現する。特に増量時や腎機能の低下した高齢者に現れやすい事象だけに、その時期には注意が必要である。(虎の門病院・林昌洋(2007). Quality Pharmacy 2007 No.11)

 適正な血中濃度ならば、それらの薬は心臓で期待された薬理作用を発揮する。しかし過量になると、膵臓にも分布して低血糖をひきおこしてしまう。

 また用量以外のリスク因子には、低体重、腎機能低下、心不全、高齢者そして糖尿病がある。

 今回のケースでは、腎機能には問題がないものの糖尿病で300mg/Dayなので可能性は高い。しかし医師はアマリールの減量で対応しているので、患者へのアナウンスとトレースレポートにて経過観察を行うことにした。

□考察
 シベノールとリスモダンはともに腎排泄型の薬剤なので、用量だけでなく、腎機能にも注意払う必要がある。そして、糖尿病ではない方にも起こり得ることにも。糖尿病もリスク因子の一つにすぎない。

 Vaughan Williams分類でClassⅠa抗不整脈薬の低血糖は,膵β細胞KATPチャネルのサブユニットKir6.2に直接結合してチャネル活性を抑制することが判明(SU薬は,もう1つの膵β細胞KATPチャネルのサブユニットSUR1に直接結合してチャネル活性を抑制する)しています。併せて,膵外組織においてもKATPチャネル活性低下を介した作用が想定され,低血糖症に関しては,骨格筋における糖取り込みの亢進や視床下部腹内側核を介したグルカゴン分泌低下などが誘発や遷延の原因と考えられています。このため,低血糖症の副作用は耐糖能異常のない場合でも発生する可能性があり,注意が必要です。 (日病薬誌 第45巻9号(1191‒1194)2009)

 とくに高齢者では、潜在的な腎機能の低下にくわえ、無自覚性低血糖の問題もある。さらに、β-ブロッカーを服用していると低血糖症状がマスクされてしまうこともある。

 今回のケースでも、倦怠感・空腹感・あくびの自覚はあるものの、発汗・ふるえ・動悸といった症状はなかった。血糖値の下がり具合かもしれないが、メインテートの影響もなきにしもあらず、かな。

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(04) 薬理学(副作用学を含む)」カテゴリの記事

コメント

上記のシベノールによる低血糖による心肺停止で厚労省に副作用の報告をしましたが、認められるまで4年の月日がかかりました。

投稿: | 2014年4月27日 (日) 02時00分

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