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2012年1月27日 (金)

麻黄剤による不眠

カゼ薬は眠くなる?
葛根湯、小青竜湯、麻黄湯
漢方のカゼ薬による不眠

CASE 110

83歳 女性 

定期処方:
Rp1) ワーファリン錠1mg 2.5T・ガスターD錠10mg 1T・イルベタン錠50mg 1T / 1x朝食後 21日分
 2) ムコスタ錠100mg 2T・サンリズムカプセル50mg 2C / 2x朝・夕食後 21日分
 3) マイスリー錠5mg 2T / 1x就寝前 21日分
  4) ツムラ葛根湯エキス顆粒 7.5mg / 3x毎食前 7日分

患者のコメント: 「カゼ薬は眠くなるから、寝る前に飲んでいる」

薬歴から得られた情報:
① 定期処方は前回Doでここ数か月変更なし
② マイスリーは1錠でよいときも追加して2錠になることもある。
③ 葛根湯は頭痛時に服用

□CASE 110の薬歴
#1 葛根湯による不眠悪化
  S)カゼ薬は眠くなるから、寝る前に飲んでいる
 O) 葛根湯→カゼ薬→眠くなると思い込み(+)
    寝つきが悪く、マイスリーを1~2錠服用中
 A) 麻黄剤が不眠を悪化させているのでは?
 P) 葛根湯は眠くなるどころか寝つきを悪くしてしまう。
    寝る前は避けておきましょう。
 R) 知らなかった~
 
□解説
 葛根湯や小青竜湯、麻黄湯といった麻黄剤とよばれる漢方に共通する注意点のひとつに「不眠」がある(麻黄湯とその派生処方 その2参照)。

 症例の患者は頭痛薬として葛根湯を使用しているとの記載はあるが、実際にどのタイミングで服用しているかまでの記載が薬歴にはない。

 この点を確認してみると、「カゼ薬は眠くなるから、寝る前に飲んでいる」という。ここにフォーカスする(S)。頭痛薬としてはじめた薬をカゼ薬と認識しているのも、葛根湯なら充分にあり得る。なんせ有名だ。

 患者情報をみると「眠れない」とあり、マイスリーを服用している。しかも2錠必要になることもあるとの記載がある(O)。

 これは葛根湯がいたずらしているのでは? と考え(A)、寝る前の服用は避けるようにと服薬支援を行っている(P)。

 
□考察
 この症例では、次回来局時にはすでにマイスリーを2錠飲むことはなくなっていた。似たようなケースを小青竜湯でも麻黄湯でも経験している。その原因はもちろん薬剤師サイドのアナウンス不足。これは間違いない。

 そしてもう一つ垣間見える傾向に、患者の思い込みがある。「カゼ薬やアレルギーの薬は眠くなる」。だから、寝る前に飲んでおけば問題ない、となるわけだ。

 漢方のカゼ薬やアレルギーの薬は眠くなりません。寝つきを悪くすることもある。

 麻黄剤が続けて処方されるようなときには忘れずにアナウンスしておきたい。

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2012年1月20日 (金)

麻黄湯とその派生処方 その2

麻黄剤といえば、
No.1,2,19,27あたりが有名
基本骨格はすべて「麻黄+桂枝」

 麻黄剤といえば有名どころの漢方がすぐに思いつく。基本骨格は「麻黄+桂枝」で水を汗としてさばく、表寒の方剤だ。

【基本処方:麻黄湯(詳細は麻黄湯とその派生処方 その1参照)
 麻黄湯といえば、有名な発汗剤だ。つまり表証用の方剤である。そして、咳にもよく奏効する。

 
 No.27(麻黄湯):麻黄、桂枝、杏仁、甘草
 

 適応:外感風寒表実証

 「麻黄+桂枝」で発汗を促し、「麻黄+杏仁」で鎮咳・平喘作用をあらわす。そして甘草は発汗過多による消耗を防止するため、つまり緩和の目的で配合されている。

 インフルエンザやカゼなど(外感)で、急に悪寒(風寒)や発熱、頭痛、咳、鼻汁など(表証)が生じ、無汗(実証)の症状に適している。

 もっとも大事な点は「汗」である。自汗なら麻黄湯ではなく桂枝湯が適応となる。そして、麻黄湯は強力な発汗剤であるので、汗が出たら中止し、長期間使わないようにしたい。また、汗の出やすい虚弱体質者への使用は避けるべきである。

【麻黄湯の派生処方】

 No.1(葛根湯):葛根、麻黄、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草

 適応:外感風寒

 麻黄湯からの派生とも、桂枝湯からの派生ともいえる葛根湯はちょうどその中間のイメージで捉えるとよい。詳細は桂枝湯とその派生処方 その1を参照。

 比較的体力がある人の熱性疾患の初期にむいているが、杏仁が抜けているので咳にはあまり効かない。鼻閉にはよいが、葛根湯加川芎辛夷のほうがなおよい。

 No.2(葛根湯加川芎辛夷):葛根、麻黄、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草川芎、辛夷

 適応:外感風寒・鼻不通

 その名の通り、葛根湯に川芎と辛夷を加えると葛根湯加川芎辛夷となる。血のめぐりをよくする川芎と鼻をひらく辛夷。組み合わせることで排膿・鎮痛・消炎効果を発揮する。

 さらに辛夷には他の生薬をひきつれて鼻に向かう性質がある。鼻閉を主症状とするアレルギー性鼻炎や蓄膿症の鼻閉や後鼻漏に効果がある。

 No.19(小青竜湯):麻黄、桂枝、甘草、芍薬、半夏、五味子、細辛、乾姜

 適応:外感風寒・水飲内停、寒痰の喘咳、風水

  麻黄湯から杏仁を除き、芍薬以下の生薬を加えると小青竜湯となる。加えられたものの多くは温性かつ燥性で、除かれた杏仁は潤性。つまり全体として表寒証・湿証向きの方剤となっている。

 風寒(急に悪寒)により水飲(胃内停水)が生じると肺の働きをにぶくしてしまう。風寒を除かなければ水飲の生産は止まらない。ゆえに水飲だけでなく風寒にもアプローチをする必要がある。

 表寒証・湿証向きの小青竜湯は、表寒を伴う喘息・呼吸困難に対する代表処方となる。

 小青竜湯といえばアレルギー性鼻炎に汎用される方剤だが、薄くて色い痰を伴う喘息様の咳や呼吸困難には適している。

【投薬時の注意点】

 麻黄を含む方剤に共通する注意点: 麻黄には交感神経や中枢神経の刺激作用があるので、興奮、不眠、血圧上昇、動悸、頻脈、発汗過多、排尿障害を引きおこすことがある。とくに、証が異なる場合(不適応)や麻黄の量が多い場合には要注意。

 「麻黄+桂枝」に共通する注意点(No.1、2、19、27):虚弱の汗をかきやすい体質には適さない。

 No.2(葛根湯加川芎辛夷):鼻に熱感がある場合や黄色の鼻汁の場合は適応ではない(辛夷清肺湯が適)。

 No.19(小青竜湯):肺陰虚(空咳や咽喉部の乾燥感)や肺熱証(黄色い痰、喀血)などには適さない。
 

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2012年1月18日 (水)

ご案内【医療統計学と疫学研究の基礎(第3講座)】

服薬ケア研究会からのご案内です。

第3回 統計学と疫学。いっしょに学んでみませんか。

1/29 鹿児島でお会いしましょう。

医療統計学と疫学研究の基礎
~薬のパンフレットを読めるようになろう!~

 服薬ケア実践講座、いよいよ第3 講座の開講です!
 この講座の目指すところは、「薬のパンフレットや添付文書、あるいは文献などを読んだときに、そこに書いてある意味がわかるようになる」というところにあります。これらの文書を読みこなすには、統計学や疫学の知識が欠かせません。たとえば、「相対危険」「リスク」「ハザード比」など、よく出てくる言葉の意味がわからないと、なんとなくわかったような気になったとしても、本当には理解できないものです。
 今回は、1 回目2 回目の重要部分の復習から、疫学の基礎的な語句、考えを中心に、統計学的推定に関しても、もう少し詳しく、例題を用いて学んでいきます。
※この講座は超入門編のため、内容は初歩的なものになります。全くの初心者大歓迎!

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《 服薬ケア研究会第6回服薬ケア実践講座開催要項 》

    日本薬剤師研修センター認定研修(3 単位)

日時:平成24 年1 月29 日(日) 10:00~16:00

場所:鹿児島市勤労者交流センター(よかセンター) 第1会議室 (キャンセ7階)
            〒890-0053 鹿児島市中央町10番地 tel:099-285-0003

内容:医療統計学と疫学研究の基礎(第3 講座)

講師:服薬ケア研究会会頭 岡村祐聡 先生

本講座は講義(90 分×3コマ)のみとなります。
グループワークや発表はありません。

参加費: 服薬ケア研究会会員4,000 円 非会員6,000 円
(※同時入会で参加費は会員料金になります)

募集人数:50 名(参加費入金をもって正式受付となります。)
問合せ先:服薬ケア研究会事務局
〒305-0042 茨城県つくば市下広岡410-78
FAX 03-6368-6058 E-MAIL:jimukyoku@fukuyaku.net

案内・申し込み用紙:http://www.fukuyaku.net/news/J006kouza.pdf

今回の前夜祭は黒豚しゃぶしゃぶとのことです(*^_^*)

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2012年1月13日 (金)

キュバールが空になっていることに気がつかない

そのキュバールはいつ使い始めました?
いつ終了予定ですか?
出ているガスに薬は含まれていますか?

CASE 109

70歳 男性 

定期処方:
Rp1) キュバール100エアゾール 15mg8.7g  1瓶(1日2回 1回1吸入)
 2) メプチンエアー10μ100回吸入    1瓶(発作時 1回2吸入)
 

患者のコメント : 「(キュバールが)空になっているのに気がつかないことがある」

薬歴・患者から得られた情報:
① ステロイド吸入導入後、大きな喘息発作はなくコントロール良好
② 1日2回の吸入:問題なし
③ 吸入後のうがい:問題なし
④ 残薬の確認方法:ふって音で確認しているが、いつもしているわけではない

□CASE 109の薬歴
#1 キュバールの交換をカレンダー管理にする
  S)(キュバールが)空になっているのに気がつかないことがある
 O) 残薬の確認はふって音で確認→いつもしているわけではない
 A) いまの方法では、またガスのみを吸入して悪化させるかも。
   カレンダー管理を勧めた方がいいだろう
 P) キュバールは1本で50日分です。終了予定日をカレンダーに書き込むか、
   キュバール本体に記入しておいて、交換するようにしましょう。
 R) そうしようかね。じゃあ、これを明日から使おう。
   キュバール本体に50日後の日付け(2/14)を記入。

□解説
 キュバールエアゾールには、メプチンのようにカウンターが付いていない。そのため残量の確認にはひよこ? のデザインの残量計を用いるか、ふって音を確認するかもしくは水に沈めてみるといった古典的なやり方しかない。

 そしてこれがまた紛らわしいのだが、薬がなくなってもガスだけはちゃんと出る。だから患者も気がつかない。つまり、ガスだけをまじめに吸っているわけだ。そうなってもすぐに発作が出るとは限らない。しかし何日もガスだけなら、コントロール良好の患者も「なんとなく調子が悪い」となってくる。当然だ。

 そこでカレンダー管理を勧めることにしている。使いはじめや交換予定日をカレンダーに記入するか本体自体に書き込んでおく。そうすれば間違いない(もちろん計算ミスは除く)。

 
□考察
 ガスだけを吸っていることにいつ気がつくのか? それはたいてい「なんとなく調子が悪い」時なのだそうだ。じつはこれ、かなり共感できる。

 私には喘息の娘がいる。毎日ピークフローをつけて、キュバールを吸入している。そのピークフローの値が下がってきたときには、慌ててキュバールの残量を確認する。カレンダーを見て、本体をふって音を確認する。過去に何度かガスのみの状態に気がつかず、喘息を悪化させてしまったことがあるからだ。子どものせいにするわけにはいかない。

 もちろん患者のせいにするわけにもいかない。

 キュバールをいつ使い始めて、終了予定日がいつで、実際はどうなっているのか? といった事実の記載を積み上げていく。そんなファクトベース的な薬歴を残していきたい。

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2012年1月 6日 (金)

「考えるな。考えろ」

考えることと悩むことは違う
「いつも考えている」という人はおそらく考えているのではない
そんなときは「考えるな」、そして「考えろ」

風間八宏「日本サッカーを救う『超戦術』」ベースボール・マガジン社新書

 適確なサッカー解説者の風間氏、2010年の著作。
 「サッカーも人生も同じです。立ち止まってはいけないのです」の言葉で締めくくるこの1冊は、前書きにもあるように「サッカーの話であり、同時にサッカーの話ではありません」。

 言葉と考えることについて。

【間違った言葉の使い方】

 選手が、考えることを放棄して、与えられた「言葉」を言い訳に利用するサイクルを自然に持っていること。
 指導者が、自分のチームの選手が自由な発想でプレーすると自分の目がついていかないので「言葉」で縛ること。
 主にこの二つの不安が「言葉」を間違った方法で使う元凶でしょう。 (p.48)

 
 エクスキューズとしての言葉。これはストックフレーズの垂れ流し、この薬にはこの服薬指導といった「ひも付きの服薬指導」に通じるものがある。つまりは思考停止状態。

 はっきり言って厚労省がこう言っているとかいう医療者に会うと心底ガッカリするんだよな。プロのプライドどこ置いてきちゃったんだよ。自分の頭使えよ、と思う。(岩田健太郎 @georgebest1969 Twitter 2011.12.27 )

 これは岩田健太郎先生のツィートで、お気に入り登録をしている。厚労省が…、添付文書では…、あの先生がこう言っていたから…、だけで自分の頭を使っていないものはプロではない。そういうエクスキューズのサイクルは断ち切るべきだ。

 もう一つは、枠に当てはめるための、縛る言葉。こちらは、かなり自覚的にならないとこの手の言葉を発しているかわからない。いや、きっと発しているのだろう。

 価値観はさまざまだし、人の気持ちがわかるなんておこがましい。でも理解しようと努めたい。だから「言葉」で相手を縛っていないかを意識することが必要だと思う。

 理解できないことは気持ち悪いことなので、なんとか既成の枠に当てはめようとしてしまう。でもそれでは、ほんとうのプロブレムは見えてこない。ならば、理解できないことは理解できないまま、ペンディングしておく。そのうちにいい方向に向かうかもしれない。

【「考えるな。考えろ」】

 できることを知り、そのために周囲を見ておくこと。見て得た情報から適切なプレーを選択すること、それが「考える」ということなのです。
 ですから、考える前の準備として常に周囲を見て情報を集め、選択することです。それが自然に考えることを促し、あとは自ずと技術が考える時間を決めてくれます。
 もちろん、この一連の動作をこなせない場合もあります。それが「考えなくていいとき」です。そのときに、どうするか。もうおわかりですね。考えていないことに気づき、状況に応じて一度態勢を立て直し、「見る」「選ぶ」「時間を作る」を実行する。そうすればまた、新しい視野が開けるはずです。
 「なぜ考えてしまうんだ?」と私が言うのは、このように「本当に考える」前にやるべきことがあって、それを先にしなさい、という意味なのです。(P.130)

 技術がなければ発想は生まれません。考えていなければ何も起こりません。考えられるかどうかは、先ほども書いたように「何が見えているか」「いくつ見えているか」です。(P.161)

 サッカーにおいて、次の展開を考えずにパスを受け、そこから周囲を見たり、考えたりしたのでは遅い。だから見えていないときには、ボールを動かして、見るための時間を作ることを優先する。そして、そもそも「自分は考えていない」と気がつくことが大切。そのうえで「本当に考える」前にやるべきことをやる。そうすれば、たくさんのものが見えるようになるから、成功しやすくなる。

 物事の本質は分野を超える。「考える」ということの定義は? 本当に考えているか? 本当に考える前にやるべきことをやっているか? 考える道具となる「問い」を見出しているか? 

 煮詰まったり、進展のないような場面でつぶやいてみよう。「考えるな。考えろ」。

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