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2011年12月23日 (金)

抗コリン剤と細菌性膀胱炎

頻尿で抗コリン剤を服用中
細菌性膀胱炎を罹患
抗コリン剤をどうする?

CASE 108

81歳 女性 

定期処方:
Rp2) アムロジン錠2.5mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T・バップフォー錠20mg 1T / 1x朝食後 21日分
 3) ムコスタ錠100mg 2T・マグミット錠330mg 2T / 2x朝・夕食後 21日分
 4) メバロチン錠5mg 1T・タケプロン錠15mg 1T / 1x夕食後 21日分
臨時処方:
  5) バナン錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 7日分

薬歴より (1週間前)
◇前回の処方:

  1) クラビット錠250mg 1T / 1x朝食後 5日分
◇服薬支援要点:
 ① 抗生剤を5日分飲みきり
 ② マグミット錠は朝を避けて昼・夜にて服用を

患者のコメント: 「尿が出にくいし、痛い」

患者から得られた情報:
① クラビットはきちんと飲んでいるし、キレート回避もOK
② 尿検査→菌(+)
③ Drには「膀胱炎が治っていない」と相談

疑義照会:
(内容)尿が出にくいとの訴えがあるので、バップフォーの中止を提案。
    また、同薬は尿路感染症の除外診断をするようになっている。
(回答)診察室では「尿が出にくい」との訴えはなかったから、中止で。
    バップフォー開始時は神経因性膀胱だった。

□CASE 108の薬歴
#1 尿閉傾向と尿路感染症なのでバップフォーを中止する
  S)尿が出にくいし、痛い
 O) 尿検査→菌(+)
   クラビット→バナン
 A) 尿閉傾向と尿路感染症→バップフォー不適
 P) 疑義照会にてバップフォー中止。
   尿が出やすくなると思うので、抗生剤と水分をしっかり摂って、
   おっしこも出して膀胱の中をきれいにしましょう。

#2 症状をDrに伝え忘れないように事前のメモをすすめる
 S) あと口の渇きがひどいことも相談し忘れた
 O) 尿閉傾向もDrに伝えていない
 A) 口渇自体はバップフォーが原因だろう。
   Drに症状をしっかり伝えられていないことのほうが問題
 P) 口の渇きもバップフォーのせいでしょう。様子を見てください。
   次回からはDrに伝えることをメモして受診するようにしましょう。 
 
□解説
 まず、バップフォーの添付文書より下記抜粋。

効能又は効果に関連する使用上の注意

1. 本剤を適用する際、十分な問診により臨床症状を確認するとともに、類似の症状を呈する疾患(尿路感染症、尿路結石、膀胱癌や前立腺癌等の下部尿路における新生物等)があることに留意し、尿検査等により除外診断を実施すること。なお、必要に応じて専門的な検査も考慮すること。

2. 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、それに対する治療を優先させること。

* 注意2についてはCASE 60を参照

 バップフォーを処方する際には、尿検査等で尿路感染症を除外診断するようになっている。それにくわえて尿閉傾向まである。ゆえにバップフォーは不適と考えて、疑義照会を行っている。その疑義照会までの流れと服薬支援を#1に記録している。

 また、疑義照会時の「尿が出にくいとの訴えはなかった」を踏まえ、症状をしっかり伝えるようにアナウンスを行った。すると、口渇も相談するつもりだったと。

 幸いというか口渇もバップフォーの抗コリン作用による副作用の可能性が高いので、それ自体はすぐに対応できる。しかし受診時に肝心なことをほとんど伝えることができていない。ここを新たなプロブレム#2としてとりあげている。

 
□考察
 神経因性膀胱や過活動膀胱などで抗コリン剤を継続服用する。そして、服用しているあいだに細菌性の膀胱炎になる。そういうこともままあるだろう。

 今回のように尿閉傾向があったり、なかなか治らないようなら、ためらわず疑義照会もできる。だが、ちょっとした膀胱炎で尿閉傾向などもなく、抗生剤が初回の5日分の処方などでは判断に悩むところだ。高齢者では一包化している方も多いし、最初はそのまま流して、様子を見るような気もする。

 このようなケースではどう対応すべきか。メーカに相談してみた。

 「感染症の治療を優先させ、抗コリン剤をいったん中断するのがベターです。ただ実際は併用されているケースが多いと思われます。データはありませんが、感染症の罹患期間が長くなるおそれがあります」

 との回答だった。やっぱりというか、そんなに感覚はズレてはいない感じかな。

 細菌性膀胱炎が長引くときには、いったん抗コリン剤を中止する。

 これが現実的な対応だろう。そして、そもそもその抗コリン剤はずっと必要なものなのか、といったところも考えていく必要があるだろう。

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