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2011年12月 2日 (金)

仕事以外のものを人生に位置づける

人間が続けている行為にはどんなものでも意味がある。
それを積極的に位置づけ、そしてコントロールすれば、充実した人生になるのではないだろうか。

村上春樹「走ることについて語るときに僕の語ること」文春文庫

 村上春樹にとって書くことと走ることは切り離せないもののようだ。この本を読むとよくわかる。じゃあ、書きたい人は走ったほうがいいのか。そんな理由ではつづくはずがない。

【走り続けることと意思の強弱には相関はない】

 人間というのは、好きなことは自然に続けられるし、好きではないことは続けられないようにできている。(中略) 思うところあって小説家になった。それと同じように、人は誰かに勧められてランナーにはならない。人は基本的には、なるべくしてランナーになるのだ。(P.70)

 意思の強い人が走り続けているのではない。好きだからそうしているだけなのだ。

 「仕事はできて当たり前。仕事以外で人間を成長させるものを持っておかないといけない。なければ人間はすぐ枯れる」。在宅訪問時に患者さんに言われた言葉だ。それで一時期、趣味について考えた。娯楽ではない。人間を成長させるもののことだ。

 この村上春樹の意見は参考になる。まず、自分の好きなことはなんだろうか。

【忙しいからというだけで走るのをやめたら、一生走れなくなる】

 走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ。僕らにできるのは、その「ほんの少しの理由」をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。暇をみつけては、せっせとくまなく磨きつづけること。(P.111)

 走ることをいったんやめたら、もう二度と走れない。この感覚はよくわかる。わたしもいまサッカーをやめたら、もう二度とできない。ボールを蹴ることすらなくなるだろう。

 いままではこの恐怖から逃れるだけにサッカーを続けている側面が強かったように思える。あのゴールネットに突き刺す感覚。ボールがゆっくり奇跡を描く、ほんとうに時間がスローになる感覚。そういうものがもう二度と体感できなくなるのが惜しいのだ。

 でも続けるための理由としては弱いのかもしれない。そもそも体力は低下していくものだし、参加できない回数も増えている。もっと積極的に「ほんの少し」の理由を見出し、磨いていくことをしなければ。

【優先順位とは人生の焦点を定めること】

 ただ僕は思うのだが、本当に若い時期を別にすれば、人生にはどうしても優先順位というものが必要になってくる。時間とエネルギーをどのように振り分けていくかという順番作りだ。ある年齢までに、そのようなシステムを自分の中にきっちりとこしらえておかないと、人生は焦点の欠いた、めりはりのないものになってしまう。(中略) 「みんなにいい顔はできない」、平たく言えばそういうことになる。(P.62)

 たとえそれが実際、底に小さな穴のあいた古鍋に水を注いでいるようなむなしい所業に過ぎなかったとしても、少なくとも努力したという事実は残る。効能があろうがなかろうが、かっこよかろうがみっともなかろうが、結局のところ、僕らにとってもっとも大事なものごとは、ほとんどの場合、目には見えない(しかし心では感じられる)何かなのだ。そして本当に価値のあるものごとは往々にして、効率の悪い営為を通してしか獲得できないものなのだ。(P.252)

 ある年齢になると、自分の能力を特定の分野に集中させることが必要だ、とよく言われる。たしかに「焦点の欠いた人生」なんてまっぴらだし、時間は有限だ。わかってはいるけど「みんなにいい顔はできない」という態度は難しい。ここは今後の課題だ。

 そして人生の棚卸をする際に、取扱いの難しいものさしのひとつが「効率」だ。情報社会の現代、効率の善し悪しはものごとを採択する際の重要なものさしの1つではある。しかし、こと人生については考えないほうがいいのかもしれない。「僕らにとってもっとも大事なものごと」が目には見えないのなら、効率なんて測定のしようがないからだ。

 長い目で見てみないとわからないことなんてたくさんあるし、近すぎて見えないこともある。

 人間が続けている行為には何かしらの意味が必ずある。そもそも同じ人間がしていることなのだから、仕事にも人生に対しても何かしらの影響を及ぼしているはずだ。仕事以外のことにも積極的な意味を見出し、人生に位置付ける。そうすれば、充実した日々を手にできるかもしれない。

 これからの人生のバランスシートに並ぶ項目を真剣に考えてみることにしよう。

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コメント

私も同じく、サッカーやジムに行く理由は辞めてしまうことへの恐怖がほとんどでした。(笑)
こんな下手くそで続けていいもんかなとマイナスに思うこともありました。
でも続けていくことって大事であり、今まで継続してきた自分を評価してあげてもいいのかなとも思えました。
趣味≒人間を成長させるもの また新たに、違う角度を持ちながらサッカーに対して取り組んでいこうかなと思います。

投稿: blanco #8 | 2011年12月 6日 (火) 20時23分

#8さんはなんにでも真剣で、それがいいところだと思います。

私からみれば、かなり上手いと思うのですが、やはり評価は相対的なものですね。

走ることならタイムは関係ないのと同じように、昔のようにはプレーできないことは関係ない。練習もままならないし、歳もとるわけで。でも相応のプレーやいままでのものを超越したこともできるかもしれないわけで。

ただ「できない」と思考停止に陥らないような訓練になるかもしれないし、と私もいろいろ考えています。

投稿: blanco #9 | 2011年12月 6日 (火) 23時30分

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