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2011年12月 9日 (金)

タナトリルによる空咳

ACE‐IとARB
空咳の説明の仕方とその対応
薬剤師の守備範囲について

CASE 107

患者情報: 87歳 女性 新患

処方: Rp1) フラベリック錠20mg 3T / 3x毎食後 7TD

お薬手帳持参(併用薬):
バイアスピリン錠100mg 1T・タナトリル錠5mg 1T・アーチスト錠10mg 1T・リピトール錠10mg 1T / 1x朝食後 (*タナトリル錠に赤ラインが引いてある)

患者のコメント: 「咳がときどき出るので診てもらった。薬のせいだから、向こうの先生に相談するようにと」

患者から得られた情報:
① 心筋梗塞後、ずっと併用薬を飲んでいる。
② 咳は空咳。とくにきつくもなんともない。
③ レントゲン→異常なし
④ Drがお薬手帳の「タナトリル」に赤ラインを引いてくれた

□CASE 107の薬歴
#1 タナトリルによる空咳の不安への対応
  S)咳がときどき出るので診てもらった。薬のせいだから、向こうの先生に相談するようにと
 O)タナトリルによる 空咳→フラベリック処方
   からだのきつさなど(-)
   心筋梗塞再発予防にてタナトリル服用中
 A) 不安感を払い、ACE-Iの重要性を理解してもらう
 P) タナトリルは心臓を守ってくれる大切な薬。
   咳が出ても気管支や肺は心配はいらない。
   しっかり続けながら、咳が気になるときは咳止めで対応を。
 
□解説
 患者は新患さん。かぜをひいたわけでもないのに「ときどき咳が出るので」と受診される。その原因はタナトリル。ACE-Iによる空咳だ。主治医に相談するように指示され、咳止めが処方されている。

 空咳の程度はひどくもなく、ほとんどQOLに支障がなさそうだった。Drも原因だけを指摘し、主治医にその判断を委ねている。

 ここで薬剤師はあらぬことをしゃべりすぎてはいけない。「空咳の出ないタイプもありますよ」とARBの存在をにおわせてはいけない。それは守備範囲を超えるだけでなく、時代遅れの対応でもある。

 そちらの方向ではなくて、患者の不安感へと目を向ける。「臓器保護薬として価値が高い」「空咳で肺などにダメージはない」、軽微な副作用をこえるメリットについての服薬支援を行っている。
 
□考察
 心臓に対するACE-I vs ARBの問題。この問題は決着がついていないとの見解の記事が多い。個人的には効果の面ではACE-Iの方に軍配があると認識している。ただ忍容性の問題があるので、なんでもかんでもACE-Iというわけにはいかない。

 しかし「ACE-Iの空咳」がただちに「ARBへの変更」となるような画一的な対応だけは避けたい。そこには薬の一面しか見えていない。

 患者は高齢でARBを上回る臓器保護だけでなく、誤嚥性肺炎予防の恩恵にもあずかれるかもしれない。逆に、高齢なんだから咳のないARBを、となるかもしれない。どちらにしろ、それはDrが判断することだ。もっと言えば、患者とDrの人間関係によって決まることなのかもしれない。

 与えられた役割、その範囲の中で、薬剤師としての知識を活かす。まずそのことに傾注したい。

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(04) 薬理学(副作用学を含む)」カテゴリの記事

コメント

誤嚥性肺炎目的でACE阻害剤の服用をしている患者さんは、私の勤務先では、空咳の副作用予防で寝る前に投与されています。

投稿: | 2011年12月10日 (土) 11時27分

コメントありがとうございます。

そうでした。夜投与で空咳の頻度が減るんでしたね。
思い出しました。忘れてましたよ。

私が見直さないとですね。
ありがとうございます。

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2011年12月10日 (土) 14時23分

いつも勉強させて頂いております。

ACE-1とARB 心臓に対してはACE-1の方が効果があるとの見解。
私も、ACE-1阻害の方が 誤嚥性などの利点がありますし
高齢の方には適していると思います。薬価の面でも。


腎保護作用に対しては どちらが良いかという見解はでているので
しょうか?

投稿: hiro | 2011年12月20日 (火) 00時45分

hiroさん、こんばんは。

腎保護作用。ARBメーカは最近言わなくなった気がしますね。

ARBの腎保護作用についてはいろいろな人がいろいろなことを言っていて、わたしもよくわかりません。

□ARBには臓器保護はあるが総死亡は変わらないという見解があります。

□DM腎症に対して、適応の取れているARBと取れなかったARBがある。

□いわゆるpreCKDに対して高用量ARBを投与するとCKDの発症が防げるとアナウンスする専門医がいる。

□ACE-Iは非ACE-Iを相手に確実なデータがあります。対して、ARBの試験は勝ったり負けたり。

 VALUE試験(だったかな?)、これはアムロジピン相手にARBが敗け。TRANSCEND(だったかな?)、これは高用量のARBがプラセボに腎保護で負けかけたし、ORIENTやロードマップ(あ~、ついに試験名がカタカナに…)なんかだと腎は守れないは、心イベントは増えるは。

試験名と結果があやふやなので、申し訳ないのですが、それもそのはずで、つまり誰がスポンサなのか? ということです。

うまくいかないものは発表されない。途中経過までHPで公表していたくせに、いつの間にか存在自体なくなる。敗ければ論文にならないわけだし、メーカも資材にするはずがないわけで…。

といろいろ詮索する前に、RA系の臓器保護なるものは、まずは血圧を下げてなんぼで、下げなければ非RA系で下げた群にも勝てないわけですので、まずCKDの人はしっかり血圧を下げましょう、ということで。

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2011年12月20日 (火) 21時00分

丁寧にご返答ありがとうございます。
なるほどです。極論を言えば、血圧下げてなんぼ ですよね。
下げることで、腎臓に負担がかからない=腎保護。

海外では、ARBはあまり使われていないと聞いたことあります。

ラジレス錠は、どうなんでしょうか?
MRさんの話を鵜のみにしてる僕・・・
腎を保護する作用がある信じているのですが。

投稿: hiro | 2011年12月23日 (金) 19時58分

遅くなりました。

ラジレスはあまり投薬の機会もなく、わかりません。
製剤的には欠点の多い薬だな、という印象です。

RA系だからありそうですけど、まあそれも血圧コントロールできての話なんでしょうね。

あんまり忙しいのとカゼで手抜きの回答すみません。

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2011年12月27日 (火) 18時00分

 私が今悩んでいる話題があり読ませていただきました。
 アドバイスいただければ幸いです。(長文ですみません)
 半年くらい前から血圧の薬を飲むようになり、アダラート ⇒ タナトリムを処方されました。タナトリムに代わって6週目くらいで、気管が胸焼けの様な気がして、空せきが続いていることに気付きました。

 薬の説明をよく見たら、から咳のことが副作用として書いてあり、先生に申告しました。
 高血圧の薬をノルバスクに変え、空咳処方の薬を2週間分処方をしてもらいました。飲み終わって症状が軽くなったのですが、その後1ケ月ほどたつのに、軽くなった症状のままで、気管の違和感(1日中)と空咳が続いています。

 今日、薬をもらいに行ったときに、先生に話しましたが、
「ほかの原因かもしれない」「タナトリムをやめたんだから症状はなくなるはずだ」・・・などなど聞き入れてくれませんでした。
 医院で、内部で薬を出しているので、薬剤師さんの意見を聞く環境にありません。
 一般論で結構ですから、私はどのように対応すたらいいでしょうか?
お教え下さい。 長文ですみません

投稿: yama | 2012年8月 7日 (火) 18時03分

一般的には、タナトリルを中止して2~3日で空咳やのどの違和感は消失します。

完全によくなるまで1カ月かかった症例もあるようです。

現状としては空咳に対しての対症療法を行うしかないと思います。症状的には麦門冬湯がおすすめです。

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2012年8月 8日 (水) 15時10分

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