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2011年11月18日 (金)

麻黄湯とその派生処方 その1

インフルエンザなら麻黄湯!?
麻黄は水をさばく生薬、どうさばくのか?
寒熱は漢方ならではの重要な概念だ

 インフルエンザシーズンに品薄筆頭の漢方といえば麻黄湯だ。タミフルなどと併用すると罹患期間が短くなるそうだ。でも、漢方の概念からして病名から方剤が決まるはずがない。

【基本処方:麻黄湯】
 麻黄湯といえば、有名な発汗剤だ。つまり表証用の方剤である。そして、咳にもよく奏効する。

 No.27(麻黄湯): 麻黄、桂枝、杏仁、甘草
 
 適応:外感風寒表実証

 麻黄湯には2つの配合法則が含まれている。まず「麻黄+桂枝」で発汗を促す。麻黄は麻黄湯の主薬であり、桂枝と組み合わせることで、それぞれ単独で用いたときよりも発汗作用は強くなる。次に「麻黄+杏仁」で鎮咳・平喘作用をあらわす。最後に甘草。これは麻黄+桂枝の発汗過多による消耗を防止するため、つまり緩和の目的で配合されている。

 インフルエンザやカゼなど(外感)で、急に悪寒(風寒)や発熱、頭痛、咳、鼻汁など(表証)が生じ、無汗(実証)の状態に適している。

 もっとも大事な点は「汗」である。自汗なら麻黄湯ではなく桂枝湯などが適応となる。ここを理解できなければ、漢方でのカゼ疾患の治療は無理と考えていい。

 そして、麻黄湯は強力な発汗剤なので、汗が出たら中止し、長期間使わないようにしたい。また、汗の出やすい虚弱体質者への使用は避けるべきである。

【麻黄湯の派生処方】

 No.55(麻杏甘石湯): 麻黄、石膏、杏仁、甘草

 適応:外感風熱、肺熱咳喘

 麻黄湯の桂枝の代りに石膏が入ると麻杏甘石湯となる(各生薬名が1文字ずつで覚えやすい)。麻黄4g対して石膏は10gも入っており、主薬となる。石膏は大寒の生薬で、これがあるとその方剤も全体として寒性を示す。さらに「麻黄+石膏」の配合法則で、麻黄の発汗作用は方向転換し、むしろ止汗的に作用する。

 麻黄は「水をさばく」生薬である。組む相手によって、さばく方向が変わる。

 麻黄+桂枝 → 発汗、つまり表に水をさばく
 麻黄+石膏 → 止汗、つまり裏に水をさばく

 そのほかの生薬の配合目的は麻黄湯と同じ、つまり「麻黄+杏仁」で鎮咳・平喘に、甘草は諸薬の調和のために配合されている。

 インフルエンザやカゼなど(外感)で、急な発熱やのどの痛み(風熱)、急性気管支炎、発熱すると喘息発作が出る場合など(肺熱咳喘)に用いられる。

 「急性」かつ「熱証」がキーワードだ。具体的には、寒気はなく、汗は有汗(あるいは無汗)、口渇、黄色い痰などである。

 熱証には抗生剤の併用がおすすめ。また、肺熱がひどくなるようなら、清肺湯などを検討したい。

 この麻杏甘石湯からの派生処方に越婢加朮湯がある。

 No.28(越婢加朮湯): 麻黄、石膏白朮、甘草、生姜、大棗

 適応:風水

 
 麻杏甘石湯から杏仁を抜き、白朮と生姜、大棗を加えると越婢加朮湯となる。

 「麻黄+石膏」で裏に水をさばく(利水作用)。この方剤も石膏が入っているので、寒性を示す。また石膏は裏熱や口渇に効果がある。

 白朮は脾(消化器系)を強くし、甘草とともに体内に水湿(水分の代謝異常)が生じないように働く。水湿は痛みにつながるから、それを抑えることで鎮痛作用を示す。

 「生姜+大棗」の配合法則は、副作用防止、作用緩和の目的で配合されている。

 
 適応の風水は「急に腫れる」といったイメージだ。臨床で用いる場合には、関節の発赤・熱感・疼痛・腫脹がポイントとなる。

 

【投薬時の注意点】

 麻黄を含む方剤に共通する注意点: 麻黄には交感神経や中枢神経の刺激作用があるので、興奮、血圧上昇、動悸、頻脈、発汗過多、排尿障害を引きおこすことがある。とくに、証が異なる場合(不適応)や麻黄の量が多い場合には要注意。

 No.27(麻黄湯):温服】強力な発汗剤なので、汗の出やすい虚弱体質者にはさける。また、発汗が見られ解熱した場合には中止する。単独での長期服用も避ける。

 No.55(麻杏甘石湯):冷服】風寒による(急に寒くなると出る)喘息には用いてはいけない。 

 No.28(越婢加朮湯):冷服】手足の冷えや寒がりの方には単独では用いない。また服薬中に手足の冷えなどを訴える場合には中止する。

 * 寒熱は西洋薬にはない概念。ここを間違えると副作用が出やすいので注意したい。

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コメント

はじめまして。
インフルエンザに対する麻黄湯の有用性は、だいぶ周知されてきましたよね。
ただ、記事中にもあるように「虚弱者には向かない」点を見落としている人もそれなりにいるようで…

「補中益気湯は、インフルエンザの予防にも良い」というデータもあります。
私は、今シーズンは補中益気湯のみでこれを検証してみようと思っています。

投稿: sakura | 2011年11月19日 (土) 22時07分

sakura さん、こんばんは。はじめまして。

検証結果を楽しみにしています。ちなみに私は六君子湯をほぼ常用しています(*^_^*)

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2011年11月19日 (土) 22時28分

結果が出るのは来年の春と、結構長いですね…
その頃の記事へのコメントでご報告という事で。

私は、「補中益気湯」「当帰芍薬散」を併用しています。
一日1~2回(ほぼ1回・朝)ですが、調子が全然違うって位に良く効きますよ!!

あとは、眠れない日に「加味帰脾湯」、胃の不調には「安中散」を飲んでいます。

新見正則先生の著書に出合って以来、すっかり漢方信者です。
薬剤師なのに、自分では西洋薬を飲む気にはもうならないほどです。

投稿: sakura | 2011年11月19日 (土) 23時19分

報告お待ちしております(*^_^*)

漢方を使いこなしてますね。
私は「葛根湯加川芎辛夷」「六君子湯(ときに補中益気湯)」そしてお付き合いには「五苓散+黄連解毒湯」ですかね。
あっ、あとぎっくり腰とか定まらないときの「八味地黄丸」

漢方自慢大会みたい^_^;

漢方はまだまだ勉強中です。月に1回ですが、中医学の勉強会に参加しています。

新見先生、さっそくチェックしてみます。

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2011年11月19日 (土) 23時57分

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