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2011年9月30日 (金)

「四物湯+四君子湯」(八珍湯)とその派生処方 その1

補血剤の基本処方は四物湯
補気剤の基本処方は四君子湯
気血両虚の代表方剤とその特徴について

 虚証という概念は西洋医学にはない。血虚には補血剤、気虚には補気剤。
 では気血両虚には? もちろん、その
両方を用いる。

【基本処方:四物湯+四君子湯(八珍湯)

 血が不足したものを血虚といい、これを補うものを補血剤という。四物湯は補血剤の基本処方。「四物湯を忘れると、女性疾患の治療はできない」といわれている。

 No.71(四物湯): 地黄、当帰、芍薬、川芎
 
 適応:血虚

 気が不足したものを気虚といい、これを補うものを補気剤という。四君子湯は補気剤の基本処方。胃腸を整えて気を補う、補気健脾の効果がある。

 No.75(四君子湯):人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗
 
 適応:脾気虚

 四物湯と四君子湯の合方剤を「八珍湯」といい、その適応はもちろん、気血両虚である。しかし、エキス製剤には存在しない。

【八珍湯の派生処方】

 No.48(十全大補湯):地黄、当帰、芍薬、川芎人参、白朮、茯苓、甘草黄耆、桂皮

 適応:気血両虚、虚寒

 四物湯(補血剤)四君子湯(補気剤)をあわせると八珍湯になる。これに黄耆(補・温薬)と桂皮(温薬)をくわえると「十全大補湯」となる。まさしく「十全」な「大補剤(湯)」といえる。

 適応は、気血両虚に寒がりや四肢の冷え(虚寒症状)を伴うものに適している。ポイントは、疲労倦怠感、疲れやすい、食欲不振、四肢の冷え、寒がりなどであり、病後などの回復期に汎用されている。

 No.108(人参養栄湯):地黄、当帰、芍薬、人参、白朮、茯苓、甘草黄耆、桂皮、五味子、遠志、陳皮
 
 適応:気血両虚、虚寒、安神、止咳

 十全大補湯から川芎をのぞき、五味子(鎮咳・強壮・鎮静)、遠志(去痰・強壮・鎮静)、陳皮(去痰・理気・健胃)をくわえると「人参養栄湯」となる。

 十全大補湯の症状にくわえ、精神不安や不眠、咳など(自律神経失調症やカゼの症状が残る)を伴うものに適している。

 

【投薬時の注意点】

 地黄を含む方剤に共通する注意点:胃弱体質には注意。食後服用をすすめる。

 No.48(十全大補湯)、No.108(人参養栄湯)

 : インフルエンザやかぜによる発熱時はいったん中止する(邪気が出ていかなくなる!)。また、手足のほてりやのぼせなどの症状がある場合は慎重に投与し、高血圧症のコントロール不良時はさけたほうがよい。

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2011年9月23日 (金)

カルデナリンで一石三鳥

α-ブロッカーで一石二鳥(三鳥)
お得感を持ってもらうことも
服薬モチベーションに寄与する

CASE 102

60歳 男性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)ミカルディス錠20mg 1T / 1x朝食後 28日分
 2) ユリーフ錠4mg 2T / 2x朝・夕食後 28日分
 3) プロテカジン錠10mg 1T / 1x夕食後 28日分
 4) カルデナリン錠1mg 1T・デパス錠0.5mg 1T / 1x就寝前 28日分

* 前回よりモーニングサージにて、カルデナリン錠が追加

前回の薬歴内容:
① 早朝高血圧の薬を寝る前に服用する
② 飲み始めは立ちくらみが起きやすいのでゆっくり立ち上がること
③ 採血の結果、LDL-C:148で心配→食事指導

患者のコメント: 「もう朝の血圧もいいし、(カルデナリンを)やめてもいいんじゃない?」

患者から得られた情報:
① 飲み忘れはなく、服薬状況は良好
② 立ちくらみなど起立性低血圧はなく、気になる症状もない
③ 排尿状況:出はよいが残尿感あり

□CASE 102の薬歴
#1 カルデナリンをお得感を持って続けてもらう
  S) もう朝の血圧もいいし、(カルデナリンを)やめてもいいんじゃない?
 O) 服薬状況は良好、起立性低血圧などのSE(-)
    前回歴よりLDL-C:148、BPHにて残尿感(+)
 A) α-ブロッカーは積極的適応
    お得感を持ってもらおう
 P) 飲んでいるからコントロールできている。
    さらに、この薬は前立腺肥大症にもコレステロールにもいいんです。
    ○○さんの場合は一石三鳥です。
 R) なら続けとこう(笑)

 
□解説
 カルデナリンの服用によって、モーニングサージをコントロールできている症例。そのカルデナリンをいかに続けていただくかがテーマだ。
 
 もちろん正攻法なら「服薬しているからこそコントロールできていて、それが脳卒中予防につながるんです」と説得するところだろう。

 しかしこの患者は、前立腺肥大症のコントロールがイマイチで、かつLDL-Cの問題も浮上してきている。ならば、高血圧ガイドラインの「積極的な適応」の話題を持ち出さない手はない。α-ブロッカーは前立腺肥大症の症状を軽減し、脂質代謝も改善する。ちなみにカルデナリンは、海外において前立腺肥大症の適応も有している。

 「一石三鳥」で患者にお得感を持ってもらい、服用意欲を高めることを狙っている。

 
□考察
 医師は患者の状況を踏まえ、最適な処方をきっている。

 その処方に込められた情報、それは薬歴があれば解凍できる。そして患者に有益な情報はしっかりと伝えていきたい。

 
 *参考:α-ブロッカーの降圧効果

  ミニプレス錠3mg=カルデナリン錠2mg=デタントールR錠6mg

 

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2011年9月16日 (金)

四物湯とその派生処方 その1

女性には生理があり、血虚になりやすい
補血剤の基本処方といえば、四物湯
血液をつくる栄養(補血)で、血液の流れもよくする(活血)

 漢方では「四物湯を忘れると、女性疾患の治療はできない」といわれている。女性疾患に用いる方剤の8割くらいは、四物湯からの派生といわれている。

【基本処方:四物湯】

 虚証という概念は西洋医学にはない。血が不足したものを血虚といい、これを補うものを補血剤という。補血剤の基本処方が四物湯だ。

 No.71(四物湯) : 地黄、当帰、芍薬、川芎
 
 適応:血虚

 主薬は地黄。厳密にいえば、製法の違いであるが熟地黄に補血作用があり、生地黄は血の熱をさます作用がある。四物湯では熟地黄が原則とされている。

 四物湯は4つの生薬(モノ)からなる。構成生薬はすべて補性薬で補血作用がある。そしてその多くが温性薬(からだを温める)かつ潤性薬(からだを潤す)から構成されており、血液の循環をよくする(活血作用)。

「当帰+川芎」の配合法則 : 裏虚証で貧血ないし血液循環不全のある場合に広く用いられる。

健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック新版 P.54参照)

 また四物湯は、月経調整の重要な方剤でもある。顔色が悪い虚弱体質で、貧血やそれに伴うめまい、月経不順や生理痛に効果がある。

【四物湯の派生処方】

 No.77(芎帰膠艾湯):地黄、当帰、芍薬、川芎、艾葉、阿膠、甘草

 適応:血虚の出血

 四物湯に止血作用のある艾葉と阿膠、さらに緩和の甘草を加えると芎帰膠艾湯になる。この方剤は、不正出血や安胎のために設計されたといわれている。

 ちなみに「芍薬+甘草」の配合法則も含まれており、痛みや筋肉のけいれんにも期待できる。

 保険上の適応は痔出血だけのものが多いが、不正出血や月経過多、妊娠中の出血や腹痛など切迫流産の兆しのあるものなどに広く用いられる。

 No.23(当帰芍薬散):当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、沢瀉

 適応:血虚、脾虚湿滞

 
 四物湯から地黄をのぞき、燥性の(体内の水分を排泄する)白朮・茯苓・沢瀉をくわえると当帰芍薬散となる。

 主薬は当帰(女性に用いる方剤には100%当帰が入っている。補血剤の中心生薬はこの当帰なのだ)。「当帰+川芎」が月経を整える。芍薬は鎮痛・鎮痙に。白朮・茯苓は脾虚に(四君子湯の構成生薬)。沢瀉は利尿に働く。そして沢瀉以外は温性・補性薬である。

 ゆえに胃腸虚弱で色白、冷え症でむくみやすいものに適しており、不妊症や流産予防、妊娠中毒症、月経痛、更年期障害、不正出血、貧血、冷え症などに用いられ、「婦人の聖薬」ともいわれている。

 最近では、このタイプの方の物忘れにも用いられている。
 

【投薬時の注意点】

 No.71(四物湯) :地黄を含むので、胃弱体質は注意する(食後服用をすすめる)。また、造血剤ではないので、貧血や出血には補気剤を併用したほうがよい。

 No.77(芎帰膠艾湯):地黄を含むので、胃弱体質は注意する(食後服用をすすめる)。冷えを伴う出血に適しており、血熱による出血には不向きである。

 No.23(当帰芍薬散):手足のほてりやのぼせなどの陰虚の症状には用いない。インフルエンザや風邪などの発熱時には中止する。

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2011年9月 9日 (金)

イトリゾールは強い薬?

イトリゾールのパルス療法
初回投薬時には
注意することがたくさんある
患者はその状況をそのまま受け取っている

CASE 101

70歳 女性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)ミカルディス錠20mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 28日分
 2) ムコスタ錠100mg 3T・コメリアンコーワ錠100mg 3T / 3x毎食後 28日分
 3) ベネット錠17.5mg 1T / 1x起床時 4日分
 4) イトリゾールカプセル50mg 8C / 2x朝・夕食後 7日分

*今回がパルス療法の2回目

前回の服薬支援内容:
① 爪白癬の薬は1週間服用のち3週間休みを3回繰り返す
② 食後すぐに服用する
③ むくみや息苦しさ→すぐ受診
④ 一緒に飲めない薬がたくさんあるので、急に他科にかかるときは必ずイトリゾールを飲んでいることを伝える

患者のコメント: この薬(イトリゾール)は強いんですよね?

患者から得られた情報:
① むくみや息苦しさなど気になる症状はない
② 用法・用量の理解OK、飲み間違いもない
③ 併用薬(-)
④ 注意事項が多くて心配だった

□CASE 101の薬歴
#1 イトリゾール服用への漠然とした不安への対応
  S)この薬(イトリゾール)は強いんですよね
     注意事項が多くて心配だった
 O) 用法・用量の理解OK、併用薬(-)
      むくみ・息苦しさなどSE(-)
 A) 漠然とした不安を和らげる
 P) 飲み方は間違ってないし、副作用も出てないので大丈夫。
   ただこの薬は他の薬とガチンコしやすいので、
   飲み合わせだけは注意しておく必要があります。
 R) 大丈夫なんですね(笑)

 
□解説
 開口いちばん「この薬は強いんですよね?」というコメント。患者の話を聞いていくと、用法・用量に問題はないし、副作用も併用薬もない。

 どこからきた不安なのか。「どうしてそう思われますか?」と率直にきいてみる。すると「この薬をもらった時に、いろいろ言われたのでそう思った」「注意事項が多くて心配だった」と。つまり、実際に不都合があったわけでないのに、ただ漠然と不安を感じている。それがなにか「よくわからない」から「不安」になるわけだ。

 とにかくこの不安を和らげるしかない。言葉を尽くすしかない。

 こういうケースの薬歴の(A)は抽象的になり、(P)は具体的な説明の羅列となることが多い。そしてそこはあまり重要ではない。患者の反応(R)だけが頼りの局面だと考えている。

 

 
□考察
 不安が「強い(薬)」という表現をとることは多い。こういう場合、強いか弱いかを答えることに意味はない。

 またイトリゾールを投薬する際に注意したいことがある。それはその投薬状況だ。

 イトリゾールのような強力なCYP3A4阻害剤かつP-糖蛋白阻害剤、そしてパルス療法、さらには食直後服用といった吸収の問題、と伝えるべき内容はわんさとある。だから、こちらも身構える。併用禁忌もたくさんあるから、飲み合わせにも細心の注意を払う。

 そういった緊張というか雰囲気というものが伝わってしまうのだろう。患者の安全を確保しつつ、安心してもらうのも大変だ。
 
 まずはテンパらないようにツールを準備したい。余裕があれば患者もみえる。そうすれば患者の感情といった非言語情報まで視野にいれた服薬支援に一歩近づけるだろう。

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2011年9月 2日 (金)

「医療とは」を考える

この本で提案されていることこそ、ほんとうの医療だと思う。
その実践とは、言葉を大事にし、対話を大事にし、よい人間関係を築くこと。
世界の相対性を踏まえ、対立構造を認識し、振る舞い方を工夫することである。

岩田健太郎「『患者様』が医療を壊す」新潮選書

【送料無料】「患者様」が医療を壊す

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価格:1,155円(税込、送料別)

 著者はだんだんおかしなことに気がつきだす。「アメリカ的な、『患者中心の医療』が日本に普及すればするほど、みんな不満そう」なことに。そして「お医者さんごっこ」を提案する。

 お医者さんごっこにおいて、患者は「『何が正しいか』『何が真理か』とは無関係に自分がもっとも得をするであろう選択肢を取る態度」をとる。これは目先の利益のことではない。そして、医者は「プロとして、一所懸命弁証法的に『俺はこれで正しいか?』と問い続ける」。

 これこそ、理想の医療ではないだろうか。

 ガイドラインを絶対視する医療や訴訟対策重視の医療、そしてガイドラインのすべてを否定するようなあるNPOが提案する医療。私はそのどちらにも賛同できない。

 岩田先生はドキッとする言葉を投げかける。

「病気なんて、所詮人生の一要素に過ぎない」
「世界は相対的なもので、絶対的な正しさは存在しません」
「医者患者関係と言っても普通の人間関係の延長線上にしかありません」

 医療とは何か。どこを目指すべきなのか。そんなことを考えさせる1冊だ。

【医療とはこれ言葉なり】

 岩田先生は言葉狩りをしているわけではない。患者をどう呼称しようが、「いいじゃん、言葉なんて所詮道具なんだから」という。

 「患者」「患者さん」もそのときの文脈でもっともしっくりくる言葉を選択すればよい。もっとも「患者様」がしっくりくるシチュエーションってそんなにないのだけれど。それでも相手が「患者様という言葉を使ってください。是非使ってください。何が何でも使ってください」とにじり寄ってくれば、別にそれをことさらに拒むものでもありません。(同書 P.23)

 「患者様」には市場原理主義の、グローバリゼーションのニュアンスがこびりついている気がする。それでも患者が求めるなら使えばよい。言葉は道具。だからうまく使えばいい。呼称そのものよりも、決められた言葉だけを使うというその姿勢自体が問題だ。

 通常はコミュニケーションを通じてその人と別の人との関係性が構築され、その「結果」として呼称のあり方が決定されていくのです。
 言葉が道具であることに気がつかず、その「しっくりくる感じ」、いわば言葉の身体性みたいなものに鈍感になってしまうと、このへんの大切なことが分からなくなってしまいます。自分の耳で、言葉を聞き取り、感じ取り、そして「しっくり」くる言葉を探す。この身体性が失われると、「体系としての言葉」「決まり事としての言葉」をなぞるだけになってしまいます。
 これは危険だ。
 こういう言葉の使い方をしていると、「正しい言葉」とか「間違った言葉」という定型性にはまり込みます。(同書 P.24)

 なにが危険なのか? それはマニュアル的な言葉を使うことによって、思考停止に陥ってしまうからだ。そして「正しい私、間違ったあなたという世界観」に浸ってしまうことになる。当然、そのような世界観では、正しい医療者側と間違っている患者という構図が前景化してくることになる。だから言葉は大切なのだ。

 言葉に鈍感になり、その身体性を失うことは、言葉のみならず、あなたのあり方そのものも変えてしまうことになる。

 

【患者に安易に共感しない】

 患者さんのことをきちんと理解するためには時間をかけて何度も患者さんに会って、それでだんだんに患者さんを理解していくのです。
 最初は僕らは患者さんのことがよく分からない。分からないときに分かったふりをしてはいけないのです。だから、のっけから「共感的な態度」を取ることなどできるわけがないのですね。(同書 P.70)

 少し前から、薬剤師のあいだでもカウンセリング技術を取り入れて患者応対に役立てよう、という動きがある。それ自体はとてもすばらしいことだと思う。患者のことを考えた前向きな姿勢だ。

 しかし大多数の患者は、カウンセリングを受けるために薬局を訪れているわけではない。患者はクライアントではない。そんな患者にのっけから、共感的繰り返しといった技法や安易な共感的な態度には疑問を感じる。

 スキルを用いるうえで、いちばん大切なこと。それはタイミングだ。共感的繰り返しもそれと相手に気づかれない自然な対話の流れの中で出てこないと意味がない。初対面でそのスキルを用いることは、むしろ逆効果なのではないだろうか。

 

【価値観の問題は、価値観の問題として扱う】

 構造上の正否の問題なのか、価値観を語る好悪の問題なのか。この二つを僕らはしばしば混同します。いや、ほとんどの議論では、正否の問題のつもりで語っていても、実は好き嫌いの問題なのです。論理構造的には、
「スパゲティとカレーライス、どっちが正しい?」
 というのと大差ない議論をしているのです。滑稽だと思いませんか?
 価値観とは「私の見解」であり、「必ずしも他人に押しつけてはいけない」見解です。

 (中略)

 いずれにしても、医療において「絶対的に」正しい行為や判断というのはだんだん減ってきており、「何が正しいか」という問いに対する簡単な答えは見つけにくくなっています。そこで、医療の現場を「正しい行為を行う場」というよりは「患者さんとの価値観の交換を行う場」として機能させたほうが健全なのではと思います。寿命を重視する人、仕事を重視する人、家族を重視する人、趣味を重視する人、それぞれの価値観に応じて「適切な」医療のあり方は異なってくるでしょう。 (同書 P.189)

 ここは難しい問題だ。まず自分の価値観がわからない人には、他人の価値観は想像できない。

 次に、いま自分がしている行為が「構造的な正否」の問題なのか「価値観」の問題なのかに自覚的でなければならない。

 そして、価値観を尊重する。

 なぜなら、患者の人生は患者のものだからだ。

 
 「先生にまかせている」という患者は納得しているわけだから、副作用など不利益さえなければそれでいいし、あとはアウトカムで判断するというのもありだと思う。たとえば、点鼻薬で目のかゆみがおさまるというなら、それでいいと思う(こういうこともあると、先日、仲間の薬剤師から聞いた)。

 健康のために禁煙することはいいことだ。しかし70歳や80歳で喘息やCOPDのない患者に、希望もしていない禁煙をすすめる必要はないだろう。

 しかし価値観を尊重するということは、なんでも患者の希望通りにすることではない。薬剤師として、アナウンスしなければならないことはたくさんある。いま扱っている問題が、正否の問題なのか価値観の問題なのか、どちらの問題なのかについて自覚的である必要があるのはこのためだ。

 そして価値観の問題に言及するなら、それは価値観の問題だと自覚しつつ、その上で「あくまでも僕の価値観だけど」と謙虚に主張すればいい。ただし、それは押しつけるものではない。

 ただ「『価値観の問題』を絶対善、絶対悪の問題と勘違いして声高に自説の正当性を主張」してはならない。

 言葉でつづるのは簡単だけど、ここは難しい。自覚的に行動できるだろうか。しがらみも多い。彼岸は遠い。

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