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2011年8月26日 (金)

BP系による顎骨壊死

BRONJ(BP系薬剤関連顎骨壊死)
リスクが上昇する条件は?
歯科受診の有無の確認を

CASE 100

80歳 女性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)カルデナリン錠1mg 1T / 1x就寝前 28日分
 2) ディオバン錠80mg 1T / 1x朝食後 28日分
 3) ムコスタ錠100mg 3T・メリスロン錠6mg 3T / 3x毎食後 28日分
 4) ベネット錠17.5mg 1T / 1x起床時 4日分

患者のコメント: 今度、歯医者に行くつもり。歯を抜くかも。

薬歴から得られた情報: H20年10月よりベネット開始

□CASE 100の薬歴
#1 ベネット服用中のカードを歯科医に見せる
  S)今度、歯医者に行くつもり。歯を抜くかも。
 O) H20年10月よりベネット開始、併用薬(-)
 A) 3年を超えていないので顎骨壊死のリスクは低いが、
   BP系服用中であることを歯科医に伝える必要あり
 P) メーカ資材に「H20年10月より開始」を記載し提供。
   このカードとお薬手帳をいっしょに歯科医に見せるように。

 
□解説
 他科受診の確認の際に、「歯医者に行くつもり」との情報を得る。さらに「歯を抜くかも」と。BP系と抜歯といえば、顎骨壊死が頭をよぎる。ステロイドは併用してないし、さて何年以上でリスクが上昇するんだったかな? と確認すると

(2)BP系薬剤(経口)投与中に抜歯等の侵襲的歯科処置が必要となった場合のBP系薬剤の投与
 
経口BP製剤での臨床試験に基づいた確固たるエビデンスはありませんが、臨床医の経験に基づき、米国口腔外科学会より以下のように提言されています。
 
経口BP製剤によるBRONJ発生のリスクは非常に低いものの、経口BP製剤による治療期間が3年を超えると上昇する。ただし、コルチコステロイドを長期併用している場合には、経口BP製剤による治療期間が3年未満でもBRONJ発生のリスクは上昇すると考えられる。

①経口BP製剤投与期間が3年未満でコルチコステロイドを併用している場合、あるいは経口BP製剤投与期間が3年以上の場合

患者の全身状態から経口BP製剤を投与中止しても差し支えないのであれ
ば、歯科処置前の少なくとも3ヵ月間は経口BP製剤の投与を中止し、処置
部位の骨が治癒傾向を認めるまでは、経口BP製剤を再開すべきでない。

②経口BP製剤投与期間が3年未満で他に危険因子がない場合

予定された侵襲的な歯科処置の延期・中止や経口BP製剤投与中止の
必要はない。

ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死~理解を深めていただくために~
監修 社団法人 日本口腔外科学会

 「BP系を3年以上服用しているとBRONJのリスクが上昇する」 これは私が調べた薬の情報だ。患者の情報ではないので(O)には書かない。その情報は(A)において、私の考えの一部として反映されている。

 歯科医に伝えてほしい情報は、BP系を服用中であることとその服用期間、そしてステロイドなどの併用薬がないかどうかといった情報だ。これらを伝えるために、メーカ資材のカードとお薬手帳を歯科医に見せるようにアナウンスしている。

 
□考察
 「他に飲んでいる薬はありませんか?」の問いでは、歯科受診の有無を確認することはできない。考えてみれば当たり前ではあるが、忙しさを理由にそれだけで済ませてしまうことがある。

 BP系の服用患者に対しては、一度はメーカが作成している資材(カード)を提供しておく。

 そして定期的に歯科受診の予定がないか、抜歯の予定がないかをチェックしていく必要があるだろう。

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2011年8月19日 (金)

四君子湯とその派生処方 その1

補気剤の基本処方は四君子湯
「気を補うときは、まず胃腸から」
三大処方はNo.75、43、41

 むかしは点滴や注射がなかった。ということは、薬を飲んでも胃腸がよくないと吸収しないからダメだ、となる。そこで「気を補いたいときは、まず胃腸から」というのが中医学の基本となる。胃腸をよくして薬を入れるわけだ。

【基本処方:四君子湯】

 虚証という概念は西洋医学にはない。気が不足したものを気虚といい、これを補うものを補気剤という。四君子湯は補気剤の基本処方。胃腸を整えて気を補う、補気健脾の効果がある。

 No.75(四君子湯):人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗
 
 適応:脾気虚

 主薬はもちろん人参。これは補気剤にはすべて入っている。白朮が脾を強くし(ここは蒼朮ではダメ、蒼朮は利水)、茯苓が脾の水をさばき、甘草が諸薬を調和する。これら4つの生薬が君子のようにすばらしいから「四君子湯」というわけだ。ちなみに、「生姜+大棗」は副作用防止と作用緩和のためで、本処方を含め、多くの方剤に含まれている。

 顔色が悪い、食欲不振、軟便や下痢などの病態に適している。

【四君子湯の派生処方】

 No.43(六君子湯):人参、白朮、茯苓、甘草半夏、陳皮生姜、大棗

 適応:脾気虚、湿痰

 四君子湯に半夏・陳皮を加えると六君子湯となる。半夏・陳皮も君子ようにすばらしいから、四君子湯の4つに2つ足して「六君子湯」となる。ところで、半夏・陳皮といえば二陳湯の主薬だ。じつは四君子湯と二陳湯の合方剤が六君子湯。とうぜん、その適応は脾気虚(四君子湯)と湿痰(二陳湯)となる。

 疲れやすい、食欲不振、下痢や軟便、胸やけ、吐き気、悪心、咳、薄くて多い痰などに適している。

 No.41(補中益気湯):黄耆、当帰、人参、白朮、甘草、陳皮、升麻、柴胡、生姜、大棗
 
 適応:脾気虚、気虚下陥

 四君子湯から茯苓を除き、黄耆、当帰、陳皮、升麻、柴胡をくわえると「補中益気湯」となる。その名のとおり、「からだの中を補い、気を益す薬(湯)」になる。
 
 気虚下陥は「ききょげかん」と読む。下陥はその字の通り、下に陥ちる、下がることを意味する。胃下垂のような内臓下垂には西洋薬は打つ手なしだが、漢方なら対応できる。「気虚+内臓下垂」とくれば、補中益気湯しかない。

 気虚下陥に効き目のある生薬といえば黄耆だ。黄耆には補気とともに気を上昇させる作用がある。補中益気湯の主薬はこの黄耆である。人参と黄耆は補気薬の王様だ。気虚がひどいときは、四君子湯でもなく六君子湯でもなく、黄耆と人参を含んだ補中益気湯がよい。

 さらに、疲れると熱が出る、夕方になると熱が出るといったタイプで自汗にもよく効く。「気虚+発熱」も補中益気湯を用いるポイントだ。

【投薬時の注意点】

 共通する注意点: 手足のほてりやのぼせなどの陰虚の症状には用いない。
          
            高熱時(外因の発熱)は休薬する。熱が下がりにくい。

 補中益気湯: いきなり強い補気剤だと胃腸虚弱の方には受けつけないもある。
          そういった場合はまず六君子湯で胃腸を強くしてから用いる。

 夏バテに補気剤はぴったり。うまく使いこなしたい。

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2011年8月15日 (月)

ご案内【医療統計学と疫学研究の基礎(第2講座)】

服薬ケア研究会からのご案内です。

第2回 統計学と疫学。いっしょに学んでみませんか。

8/28 鹿児島でお会いしましょう。

医療統計学と疫学研究の基礎
~薬のパンフレットを読めるようになろう!~

 本年2 月、大好評のうちに開催されました、服薬ケア実践講座、待望の第2講座が、いよいよ開催されます!
この講座の目指すところは、「薬のパンフレットや添付文書、あるいは文献などを読んだときに、そこに書いてある意味がわかるようになる」というところにあります。これらの文書を読みこなすには、統計学や疫学の知識が欠かせません。たとえば、「相対危険」「リスク」「ハザード比」など、よく出てくる言葉の意味がわからないと、なんとなくわかったような気になったとしても、本当には理解できないものです。
今回は、前回の続きから、統計学的推定、そして、効果やリスクを考える上で必要な疫学的な基礎知識を学びます。前回の第1講座を惜しくも逃してしまった方も、心配ありません。少し間が空いておりますので、はじめに第1講座の復習をしてから新しい内容に入りますので、安心してご参加下さい。多くの方のご参集をお待ちしております。
※この講座は超入門編のため、内容は初歩的なものになります。全くの初心者大歓迎!

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《 服薬ケア研究会第4回服薬ケア実践講座開催要項 》

     日本薬剤師研修センター認定研修(3 単位)

日時:平成23 年8 月28 日(日) 10:00~16:00

場所:鹿児島市勤労者交流センター(よかセンター) 第1会議室 (キャンセ7階)
    〒890-0053 鹿児島市中央町10番地 tel:099-285-0003

内容:医療統計学と疫学研究の基礎(第2講座)

講師:服薬ケア研究会会頭 岡村祐聡 先生

本講座は講義(90 分×3コマ)のみとなります。
演習や発表はありません。

参加費: 服薬ケア研究会会員3,000 円 非会員5,000 円
(※同時入会で参加費は会員料金になります)

募集人数:50 名(参加費入金をもって正式受付となります。)
問合せ先:服薬ケア研究会事務局
〒305-0042 茨城県つくば市下広岡410-78
FAX 03-6368-6058 E-MAIL:jimukyoku@fukuyaku.net

申し込み用紙 : http://www.fukuyaku.net/news/J004kouza.pdf

ちなみに前夜祭が天文館であります。
そちらも楽しみです。

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2011年8月12日 (金)

ブドウ糖をいつ使うのかわからない

ブドウ糖は持っているけど、低血糖症状がわからない
アナウンスを続けていくしかない
そして、具体的な行動をイメージしてもらおう

CASE 99

75歳 男性 
他科受診:なし 併用薬:なし

定期処方:
Rp1)アマリール錠3mg 1T / 1x朝食後 28日分
  2) ベイスンOD錠0.3mg 3T / 3x毎食直前 28日分
  3) ハルナールD錠0.2mg・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 28日分
  4) ガスターD錠10mg 1T / 1x夕食後

患者のコメント: ブドウ糖をいつ使ったらよいかわかりますか? に対して
             「わからん。持ってはいるけど」

患者から得られた情報:
① 「HbA1cは6%台だよ」と良好
② 低血糖の症状をよくわかっていない
③ ブドウ糖を服用した経験なし

□CASE 99の薬歴
#1 低血糖を理解し、ブドウ糖で対応する
  S) ブドウ糖をいつ使っていいのか、わからん。
 O) 低血糖症状をわかっていない
    ブドウ糖は指示通りに携帯(使ったことはない)
 A) 低血糖の症状とブドウ糖の必要性を理解してもらおう
 P) パンフにて低血糖の症状を伝える。
    糖の吸収を遅らせる薬を飲んでいるので
    ブドウ糖にて対応する必要があることを説明。
 R) あ~、そういうときに使うのね。
    いつも持ってはいたけどね。
 

 
□解説
 2011年2月のDEMにて、低血糖を理解していない患者が多くいることがわかった。そこで、地道にアナウンスを続けてきた。が、まだいた。しかも、ブドウ糖はちゃんと携帯している。

 こういう患者は、いわゆる真面目な患者であることが多い。その為、薬剤師の質問事項にもちゃんと答えてくれる。

 そして、「低血糖はなかった」し、「ブドウ糖は持っている」のだ。しかし、「ブドウ糖をいつ使っていいのかわからない」というから、落胆してしまう。

 患者が理解していないものを、ただただ画一的にチェックしていても意味がない。

 ブドウ糖をちゃんと所持しているから、医療者の言うことを守っているから、低血糖を理解しているとは限らない。そう教えられた症例だった。

 
 
□考察
 病院の薬剤師は入院患者の人生に点でコンタクトする。たいして薬局薬剤師は患者の人生に寄り添うように関わっていく。そこには「時間」というファクターがある。

 患者は歳を重ねていく。いったん理解しても、もう次には忘れているかもしれない。また、病気も含めて、あらゆる関心事はすべて相対的なものだ。その時々の患者の出来事に対して、薬物治療は相対的に重要度が小さくなっているかもしれない。

 「低血糖はなかった」 それは事実ではなく、患者の意見なのだとしたら、ただ低血糖の有無をチェックすることに意味はない。

 ファクト・ベースで服薬支援をすすめていく。そのためには、患者に具体的な行動を尋ねていくのが効果的なのかもしれない。

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2011年8月 5日 (金)

まじめに悩みぬく

2011年の日本医薬品情報学会の特別講演
姜尚中「情報化社会で考えること~信頼のきずなを求めて~」
ベストセラー「悩む力」とともにふりかえる

【送料無料】悩む力

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価格:714円(税込、送料別)

【「わからない」という態度】

 特別講演の内容は非常に考えさせられるものだった。たとえば、なぜ、いわゆる識者は「わからないという態度」がとれないのか? というテーマ。専門家だって、わからないことはある。原発の問題も時間軸をどのくらいとるかで、内部被爆の影響なんてわかるはずもない。

 多くの人が政府の言葉を信用できない。つまり専門家が、ただ「大丈夫です」と繰り返すと信用できないわけだ。プロの言葉が文字通りに受け取れない。

 この関係は普遍性があるのかもしれない(しかし、原発の問題は「わからない」ではなく「隠ぺい」なのかもしれないが・・・)。やはり、言葉を尽くす必要があるのだろう。

【自由の逆説】

 不自由だからこそ、見えていたものがあった。自由になったから見えにくくなったものがある。

(姜尚中「悩む力」集英社新書 P.136)

 本文では恋愛について語られているセンテンス。しかし、社会構造、人間関係などにもあてはまる。

 グローバリゼーションはリテラシーさえあれば誰もが情報にアクセスできるようにした。そして情報にも、いわゆる格差を生み出した。その結果、専門家ではない人は、結論だけを欲しがるようになった。

 どうしてそういうことになるのか、どういう考え方からそのようになったのかを自分で考えようとしない。難しいことは抜きに、言葉だけで、記号だけで処理しようとする。

 言葉だけで処理をすると、文脈が変わったとき、記号の意味が変わっていることにも気がつかなくなる。そういう危険性もはらんでいる。

【個人と中間集団】

 マスコミでも「個人」がキーワードになっていて、「個人の時代」「個人の自由」「個人情報」と、たいへんな個人ばやりです。それに従って、人びとの心も相当危ういところまできている気がします。ばらばらに切り離されて個人個人が、情報の洪水と巨大化したメディアにさらされ、何を信じたらいいのかわからない、何も信じるものがない、と無機的な気分になっているのではないでしょうか。 (同書 P.104)

 孤立した個人は弱い。人間はそんなに強くない。共同体(姜尚中先生は「中間集団」と呼んだ)が解体した日本や韓国での自殺者は、グローバリゼーションの本場であるアメリカやイギリスのそれよりもはるかに多い。アメリカやイギリスのほうがまだ共同体が機能している。

 情報も個人として付き合う前に、共同体によって、いったん濾過されていた。いまはダイレクトに情報を浴びる時代。情報リテラシーが大事なのは間違いないが、「どうやって、新たな機能的な中間集団を作っていくか?」 が日本の課題でもある。

【人は一人では生きられない】

 「人は一人では生きられない」とよく言います。それは経済的、物理的に支えあわねばならないという意味だけでなく、哲学的な意味でも、やはりそうなのです。自我を保持していくためには、やはり他者とのつながりが必要なのです。相互承認の中でしか、人は生きられません。相互承認によってしか、自我はありえないのです。

  (中略) 

 他者を承認することは、自分を曲げることではありません。自分が相手を承認して、自分も相手に承認される。そこからもらった力で、私は私として生きていけるようになったと思います。私が私であることの意味が確信できたと思います。 (同書 P.157)

  人間は「自分が自分として生きるために働く」。そして、そのためには働くことによって他者から「そこにいていい」という承認を得る必要がある。

 他者からの「承認のまなざし」、それが働くことの根源だ。夢ややりがいなどはその先にある。順序を間違えてはいけない。

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