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2011年6月24日 (金)

手首式血圧計のエラー

降圧剤を飲まなくなる理由
ほんとうにいろいろある
薬識なんて言葉が出る幕もない理由もたくさんある

CASE 96

70歳 女性 

他科受診:なし  併用薬:なし

処方内容:
Rp1) ミカルディス錠20mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後 
 2) ソラナックス錠0.4mg 2T・ブラダロン錠200mg 2T・ムコスタ錠100mg 2T / 2x朝・夕食後
 3) タケプロンOD錠15mg 1T / 1x夕食後
 4) マイスリー錠5mg 1T・ユーロジン錠1mg 1T・アローゼン顆粒 0.5g / 1x就寝前
    1)~4)x14日分
 5) モーラステープL 28枚
 
 
患者(のご主人)のコメント: 「血圧が測れないくらい低いんだよ」

患者(のご主人)から得られた情報:
① 手首式血圧計で家庭血圧を測定している
② 介護者のご主人が自分の血圧測ると正常に測定できる→故障ではない
③ 患者を測定するとエラーがよく出る
④ ベッドに横になって、腕を伸ばした状態で血圧を測定している
⑤ 血圧計のエラーを「血圧の下がりすぎ」と判断して、その時はミカルディスを控えさせている

□CASE 96の薬歴
#1 血圧計エラーの誤解を解き、ミカルディスを継続服用してもらう
  S) 血圧が測れないくらい低い
   その時はミカルディスを控えている
 O) ベッドに横になり、腕を伸ばした状態で手首式血圧計を用い測定
   エラー表示を「過降圧」と判断している
 A) 誤解を解けば、ミカルディスを自己調整することもなくなるだろう
 P) 血圧の下がりすぎで、エラーが出ることはありません。
   たいていは血圧の測り方が問題
   →正しい測定方法を伝える(胸の前で、逆の手で支えて)
 R) なんだ、てっきり下がりすぎているかと思った

□解説
 患者は在宅訪問を始めたばかり。訪問時に、ミカルディスの残薬を発見。介護者であるご主人に理由を尋ねると、「血圧が測れないくらい低いんだよ」とのコメントであった。

 患者は手首式の血圧計を使用している。ベッドに横になって、腕を伸ばした状態で測定し、ご主人が値を記録する。ところが、よくエラーがでる。故障かな? とご主人が自分の血圧を測ってみると、ちゃんと測れる。故障ではない。ということは、「血圧が測れないくらい低い」に違いないと考えた。

 手首式血圧計でエラーが出る原因として、「心臓の位置と高さが違う」ことが有名だ。これはご主人も理解されていた。しかし、メーカにもよるが、「心臓からあまり遠くてもダメ」なようだ。

 座位にて、胸に手を当てるようにしてもらい、もう片方の手で軽く支えて、実際に測定してもらう。エラーなく測定できると、安心した様子のレスポンスを得ることができた。

 ちなみに、今回は測定方法が原因であったが、「不整脈」「脈が弱い」「末梢循環障害がある」「肌着やシャツを巻き込んでいる」といった症例では、エラー表示が出ることも多いようだ。

 
□考察
 いわゆるノンコンプライアンスの原因は本当にさまざまだ。在宅患者だったので、簡単にその理由にまで、短時間で切り込めたようにも感じる。

 これを薬局窓口において、「飲んでいない」をただちに「飲まないといけない」という指導をやってしまうと何も解決しないだろう。そして、アセスメントには「薬識不足によるノンコンプライアンス」なんて、まったく解決に結びつかない言葉だけが踊ることになる。

 私たちがいわゆるコンプライアンスの問題を解決できないのは、問題の立て方そのものが間違っているからではないだろうか。

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2011年6月17日 (金)

接遇研修

ひさしぶりに「接遇研修」を受講する
こころに残るフレーズを書きとめてみた
意識の量をふやしていくことを心がける

【医療とは1対1の関係】

 たとえば挨拶。これは不特定多数にしているようでは意味がありません。「私にしてくださったんだな」と相手に伝わらなければ、その挨拶は無意味です。
 また、これはクレームにもつながっています。事務的とか、冷たい感じを与えるといった要因のひとつになっているからです。

 これはなにも接遇だけのことではない。医療とは1対1の関係である。患者応対の基本もここにある。「わたしとあなたの関係」をいかに築くか? 信頼が築けるかどうかはこの一点にかかっているといっても過言ではない。患者の顔がすぐに思い浮かぶようでなければ、信頼なんて築けない。

【伝えるために表現する】

 接遇が難しいのは、「やっているつもり」なんです。つまり接遇の評価は、自分の評価ではなく、相手の評価だということなんです。自分の仕事を優先しているのに、接遇はできています、というのは「やっているつもり」と考えましょう。
 なぜなら、自分の仕事を優先させておいて、相手の視点で考えることなんてできないからです。

 ここでも相手に伝えることの大切さを説いている。そして、伝えるためには「形に表わす」ことが重要だ。

 たとえば、テレビの前を通るとき。いまでは薄型テレビの普及で、上のほうにテレビを設置することが多く、患者とテレビのあいだを通っても画面を遮るということは少ない(しかも、私は背が低いので、なおさら・・・)。それでも、頭を下げたり、一言断るなど、「自分に気をつかってくれているな」と相手にわかるように対応することを忘れないようにしたい。

【意識することが大事

 忙しいとは、心をなくすと書きます。忙しいと感じたら、あなたの心はそこにはないのですから、相手をいたわる余裕も、笑顔もないはずです。
 忘れてもいいんです。思い出せばいいんです。

 忙しいと感じたら、「心がなくなってるかも」と意識しよう。そうすれば余裕が取り戻せる。余裕というスペースにスルーパスを出せるかどうか、それは意識するかどうかにかかっている。スルーパスが通れば、「信頼」というゴールへの決定機が見えるに違いない。

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2011年6月10日 (金)

タルセバによる間質性肺疾患

間質性肺炎といえば、IFN、小柴胡湯、アンカロン、リウマトレックス
近年、アラバ、グリベック、エンブレル、
そしてイレッサとタルセバ
作用の強い薬とともに、注意すべき薬が増えてきた

CASE 95

70歳 男性 

他科受診: なし  併用薬: なし

処方内容:
Rp1) タルセバ錠150mg 1T / 1x朝食間 14日分
  2) ビオフェルミン錠 3T・アスベリン錠20mg 3T・ムコダイン錠500mg 3T / 3x毎食後 14日分
  3) クラリチン錠10mg 1T / 1x夕食後 14日分

患者のコメント: 「肺炎の副作用がでるかも」との説明を受けて、2週間入院していた

患者から得られた情報:
① 毎朝10時に服用しており、空腹時服用の必要性は理解OK
② かゆみ、下痢、咳はたいしたことはない
③ 咳は痰絡みの咳で、以前からある
④ 息切れ・息苦しさ(-)、熱(-)
⑤ タバコ(-)、GFJ(-)

□CASE 95の薬歴
#1 タルセバによる間質性肺炎
  S) 肺炎の副作用がでるかもとの説明を受けて、2週間入院していた
 O) 息切れ・息苦しさ(-)、熱(-)、痰絡みの咳が少し(以前からある)
 A) 間質性肺炎の初期症状を理解してもらう
 P) 今後も肺炎の副作用への注意は必要です。
   息切れや息苦しさ、発熱は、肺炎の副作用かもしれないのですぐ受診するようにしてください。
   咳は今のような咳ではなく、痰の絡まない空咳だと同様に副作用の恐れがあるのですぐに受診を。

 ◎ 毎朝10時に服用しており、空腹時服用の必要性は理解OK
  ◎ かゆみ、下痢の副作用は大したことなく、コントロールOK
 ◎ GFJは飲まない。副作用につながることを説明

□解説
 間質性肺炎について、重篤副作用疾患別対応マニュアルから、患者向けの内容を下記に示す。

 肺胞の炎症で動脈中に酸素が取り込みにくくなる「間質性肺炎」は、医薬品によって引き起こされる場合もあります。主に抗がん剤、抗リウマチ薬、漢方薬( 小柴胡湯など)などでみられ、また総合感冒薬(かぜ薬)のような市販の医薬品でもみられることがあるので、何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに医師・薬剤師に連絡してください。

「階段を登ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる」、「空咳が出る」、「発熱する」、などがみられ、これらの症状が急に出現したり、持続したりする

 主に肺胞隔壁を主体とした間質に炎症を起こすと、コラーゲンなどが増え壁が厚く硬くなる。その結果、上記のような症状が起こってくる。進行すると、肺は繊維化してさらに硬く小さくなる。この線維化が広範囲で起こると、呼吸不全から死に至る。

 ところで、タルセバ゙の添付文書には「間質性肺疾患(ILD)」という疾患用語が使われている。これは間質性肺炎、肺臓炎、肺線維症などの総称のこと指す。初期症状はほとんど同じなので、薬局窓口では、間質性肺炎と同じように扱っても差支えないだろう。

 
 患者はタルセバを入院にて導入しており、いちばんリスクの高い時期(投与開始から2週間)は過ぎている。

 投与開始からILD様事象発現までの期間

   ≦2週間      168例(37.3%)
 2週間<≦4週間  108例(24.0%)
 4週間<≦8週間  84 例(18.7%)  
 8週間<≦12週間  43 例(9.6%)
    12週間<      47 例(10.4%)

 「タルセバ錠 製造販売後 副作用収集状況のご案内」より

  しかし2週間以降もILD全体の24%、18.7%と、その後もモニタリングが必要なことがわかる(さらに症例を見ていくと、443日や326日で発現している例もあり、アレルギー性だけではないようだ)。

 よって、今後も間質性肺炎への注意が必要であり、その為には初期症状を理解する必要があると考え、服薬支援を行っている。
 
 その他の患者の状況やGFJについての注意は、SOAP外に箇条書きにて記録している。

□考察
 タルセバを卸に注文すると、メーカからの電話、FAX、そしてMRの訪問。そしてやっと納品。こういう手続きはリウマトレックス以来かな。

 リウマトレックスといえば、これも1年以上の服薬で間質性肺炎の報告があるので、タルセバのようにモニタリングを続けている。

 間質性肺炎を機序別分類で考えると、従来はアレルギー性のイメージが強かった。しかし、原因はそれだけではないようだ。

 
薬剤性間質性肺炎の発症機序は、一種のアレルギーのような免疫反応が原因となる場合と、細胞を直接傷害する抗がん剤のように肺の細胞が障害を受けて生じる場合の2種類がある。

好発時期は一般的に、免疫反応の関与が考えられる抗菌薬、解熱鎮痛薬、抗不整脈薬(アミオダロン)、抗リウマチ薬(金製剤、メトトレキサート)、インターフェロン、漢方薬(小柴胡湯)などでは1~2週間、細胞傷害性薬剤である抗がん剤では数週間から数年で発症することが多いとされる。ただし、これに当てはまらない場合もあり、癌分子標的治療薬であるゲフィチニブでは4週間(特に2週間)以内にみられる事が多いことが知られている。

患者さんのリスク因子としては、抗がん剤を用いる際、患者の全身状態が悪い場合や、肺に線維化などの所見があり炎症の素地があると考えられる場合は、間質性肺炎発症のリスクが高く、重篤な病像を取りうるので、慎重な経過観察を要する。免疫反応の関与する間質性肺炎では、発症の予測は難しいことも多いので注意が必要である。

安心処方infobox  第16回 副作用の好発時期(3)-重篤副作用疾患別対応マニュアルの事例から-)

 なるほど。多くはアレルギー性で服用初期に注意を要する。抗がん剤は細胞障害型、つまりは臓器毒性。そして、イレッサやタルセバはおそらくその両方なのだろう。

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2011年6月 3日 (金)

言葉の「コンテンツ」ではなく、言葉を差し出す「マナー」

言葉を交わすうえで、もっとも大事なファクターは?

立て板に水的服薬指導は届かない!

内田樹「街場の大学論」角川文庫

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【優先すべきは、言葉を差し出す「マナー」】

 そうではなくて、人と人が出会うときに優先的に配慮されるべきなのは、言葉の「コンテンツ」ではなく、言葉を差し出す「マナー」だ、ということである。 (中略) まとまりのある、つじつまのあったことをしゃべるのが勧奨されるのは、その方がそうでない場合より相手に届く確率が高いからである。
 ことの順序を間違えてはいけない。よりたいせつなのは「言葉が届く」ということであり、「つじつまのあったことをしゃべる」ことではない。

 (内田樹「街場の大学論」 P.64)

 ただただ服薬指導を畳みかける。患者が違うことを話始めても、自分の服薬指導を完結させる。患者と同時に話始めてしまったときにゆずらずに服薬指導をはじめる。これらはすべて優先すべきものを間違えている。言葉が届くはずがない。そこには、言葉を差し出す「マナー」が欠けている。

【ストックフレーズにはリアリティがない】

 恥ずかしげもなくできあいのストックフレーズを口にしておけば、世の中どうにか渡って行ける、というような世間を舐めた態度を私は評価することができない。 (中略) 
 そこにはぜんぜんリアリティがない。頭の中にあらかじめできあがって保存してあるストックフレーズを、きっかけが来ると「印字」して出しているときの人間の言葉は「すっきりしすぎている」せいで、「それ」とわかってしまう。そこにはふだんしゃべるときのような「ためらい」も「前のめり」も「気まずい間」も「嘘くさいことを言うときだけ早口になる」ことも、そういう微細なトーンやピッチの変化がまったくぬぐい去られて、平板に流れてゆく。

(同書 P.60)

 この薬にはこのフレーズ。その薬にはそのフレーズ。伝えないといけないことは確かにある。たとえば初回服薬支援などはその色合いが濃い。それは仕方がない。しかし、いつもいつもそれではどうだろう。ストックフレーズ的服薬指導は、患者も「それ」とわかってしまう。なぜなら、「それ」にはリアリティがないからだ。

【言葉は身体というフィルターを通過させると独特の響きを獲得する】

 そういう平板な口調は、言葉が「身体のフィルターを通過していない」ということをあらわにしてしまう。
 言葉は身体というフィルターを通過すると、深みと陰影と立体感を帯びる。
 それは身体が言葉に抵抗するからだ。頭の中で「次のせりふ」を決めておいたのに、口がうまく動かない、ということはしばしばある。

(同書 P.62)

 立て板に水的服薬指導は、患者に届かない。それでは服薬支援にならない。患者に言葉を届かせるためには、言葉が「患者のことを考えたあなたの身体のフィルター」を通過する必要がある。まずは患者に関心を持ち、患者を想うことだ。

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