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2011年5月20日 (金)

小柴胡湯とその派生処方 その1

柴胡は少陽病薬
基本処方は「小柴胡湯」
No.8、9、10 の違いを理解する

 「六病位」と「表証・裏証」の概念を用いる。
 六病位とは病気のステージ分類のことであり、今回は陽の群の「太陽病期」「少陽病期」「陽明病期」が対象となる。これをもう一つの概念、症状的な「証」(表証・裏証)で考えると捉えやすい。つまり、太陽病→表証、少陽病→半表半裏証、陽明病→裏証と考える。

【基本処方:小柴胡湯】

 柴胡剤の基本処方。もちろん主薬は柴胡。病期分類では少陽病、表裏分類では半表半裏。寒熱往来、胸脇苦満、食欲不振、全身倦怠感などがある場合に用いられる方剤だ。

適応:少陽病(半表半裏証)

No.9 (小柴胡湯)  :柴胡、黄芩、半夏、生姜、大棗、人参、甘草

 この方剤の構成生薬の中に配合法則が3つある(健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック新版 P.53 参照)。

1、柴胡+黄芩 : この組み合わせは胸脇苦満を治すために欠かせない。黄芩は柴胡の作用を強めるとともに副作用も防止する

2、半夏+生姜 : ここでは柴胡の副作用防止と少陽病期での食欲不振のために半夏が加えられている。そして半夏が入る方剤には半夏の副作用を除くために、必ず、生姜が組み合わされる。

3、生姜+大棗 : いずれも補性薬。多くの方剤に副作用防止と作用緩和のために配合される。

 以上で構成生薬が5つ紹介できた(生姜がかぶっているので)。これに人参と甘草を加えれば、小柴胡湯の完成だ。

 人参は補性薬の代表生薬で、これが入っているということは虚証向きの方剤ということになる。

【小柴胡湯の派生処方】 

No.9 (小柴胡湯)  :柴胡、半夏、黄芩、人参、甘草、生姜、大棗

No.10(柴胡桂枝湯) :柴胡、半夏、黄芩、人参、甘草、生姜、大棗、桂枝、芍薬

No.8 (大柴胡湯)  :柴胡、半夏、黄芩、        生姜、芍薬、枳実、大黄

 
 小柴胡湯は7つの生薬から構成されている基本処方。これは覚える。

 次に、柴胡桂枝湯。これは小柴胡湯と桂枝湯の合方剤だ(甘草、生姜、大棗が重なっている部分でその前が小柴胡湯で後ろが桂枝湯)。つまり、半表半裏証と表寒証(自汗ありのタイプ)の両方に効果がある。具体的には、微熱が続く(自汗)、食欲不振、疲れやすいなどに効果がある。
 さらに、柴胡・芍薬の組み合わせが自律神経を調整する作用や鎮痛作用を、また芍薬・甘草で鎮痙・鎮痛作用を強めている。よって不安やイライラ、関節痛・身体痛にも効果がある。

 
 最後に、大柴胡湯。これは小柴胡湯から人参・甘草(補性薬)を除き、芍薬(平肝止痛薬)、枳実(理気薬)、大黄(瀉下薬)を加えて構成されている。つまり、半表半裏にくわえ裏熱を改善する方剤になっている。さらに補性薬を除き、枳実や大黄といった瀉性薬を加えたことで、実証向きの方剤へと変化している。

 裏熱、つまり胃腸に熱があると便秘になる(陽明病)。裏熱は経絡に沿って上へと駆け上がり、めまいや頭痛などを引き起こす。半表半裏症で便秘があるときは、小柴胡湯や柴胡桂枝湯ではなく、大柴胡湯が適している。

 まとめると、

 少陽病 → 小柴胡湯

 少陽病+太陽病(表寒症の自汗) → 柴胡桂枝湯

 少陽病+陽明病(裏熱から便秘) → 大柴胡湯

 となる。

【投薬時の注意点】

No.9 (小柴胡湯)  : 手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状があるときには使わない。その症状がひどくなる。特に、空咳(肺陰虚)には用いない(間質性肺炎などの副作用が出やすくなる)。

No.10(柴胡桂枝湯) : 手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状があるときには使わない。その症状がひどくなる。また、桂枝・人参が入っているので、高血圧で赤ら顔の人には注意が必要。

No.8 (大柴胡湯)   : 虚証(体力がない、下痢傾向)の方には向かない。下痢や腹痛など胃腸障害時は中止する。

 

 いずれも漫然投与に注意する。証が変われば、方剤も変わる。患者の体調を把握できれば、未然に副作用を防ぐことができるはずだ。

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漢方 基本8処方とその派生処方」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しく読ませていただきまた実務に参考にさせていただいています。最近漢方の面白さにはまりかけていて少しずつ勉強させていただいておりますが基本的なところで詰まる毎日です。質問ですが柴胡剤とはサイコを含むすべての方剤でしょうか。資料によるとサイコとオウゴンのペアがある方剤のことをさすように見受けられますが。逆に必ずサイコとオウゴンはペアで含まれるのでしょうか。よろしくお願いします

投稿: セリ | 2014年7月 6日 (日) 10時03分

セリさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
仰せのとおり、サイコ+オウゴンを含むものを柴胡剤と理解しています。たしかすべてではなかったように記憶していますが、大部分はペアをなしていると思います。あるいはもう柴胡剤と呼ばなくなるのかもしれませんが。

投稿: ひのくにノ薬局薬剤師。 | 2014年7月 7日 (月) 00時41分

早々にお返事いただいていましたのにすみません。ありがとうございました。一つ一つ確認していきます!

投稿: セリ | 2014年7月14日 (月) 01時46分

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