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2011年5月27日 (金)

(O)情報とは ~CASE 92再考~

CASE 92を再考する
(O)情報とはどういう情報か
(O)を入れ替えて検証する

CASE 92再考

40歳 女性 

他科受診:なし  併用薬:なし

昨日の処方内容:
Rp1) ルリッド錠150mg 2T・テオドール錠100mg 2T / 2x朝・夕食後 4日分
 2) フラベリック錠20mg 3T・ムコダイン錠250mg 3T・ムコスタ錠100mg 3T / 3x毎食後 4日分
 

患者からのTEL: 「半音低く聞こえて、気持ち悪いんだけど…」

患者から得られた情報:
① 昨日、服薬後より半音低く聞こえる
② 昼中止後、今はよくなっている
③ カゼ症状自体は楽になっている

□CASE 92の薬歴
#1 フラベリックによる聴覚異常
  S) 半音低く聞こえて、気持ち悪いんだけど…
 O) 服薬中止後に改善
   カゼ症状は改善傾向
 A) フラベリックにて聴覚異常の報告(+)
 P) 咳止めの影響と思われる。
   咳がきつくなければ、フラベリックのみを中止し、
    そのほかの薬は服用して様子をみてください。

ここまでがCASE 92の内容

言葉足らずで雑な薬歴なので、補足すると

#2 フラベリックによる聴覚異常
  S) 半音低く聞こえて、気持ち悪いんだけど…
 O) 服薬中止後に聴覚異常は改善
    カゼ症状も改善傾向
 A) フラベリックが原因だろう(聴覚異常の報告あり)
   症状的にもフラベリックのみの中止で大丈夫だろう
 P) 咳止めの影響と思われる。
   咳がきつくなければ、フラベリックのみを中止し、
    そのほかの薬は服用して様子をみてください。

 
□(O)情報を変更してみる
 ここで違うパターンを考えてみる。例えば、「患者から得られた情報③」が

   「④ カゼ症状:咳が止まらない」

だったとする。するとSOAPの展開も変わってくる。

#3 フラベリックによる聴覚異常
  S) 半音低く聞こえて、気持ち悪いんだけど…
 O) 服薬中止後に聴覚異常は改善するも、咳が止まらない
 A) フラベリックが原因と思われるので(聴覚異常の報告あり)、
    再受診して違う薬を処方してもらう必要がある
 P) 咳止めの影響と思われる。
    Drに伝えておきますので、再度受診を。

 
 
□考察
 薬剤師がなぜ患者のカゼ症状を確認したのか。それは服薬支援の方向を定めるためだ。

 患者からのTELを受けて、おそらくフラベリックが原因だろうと考える。その次にすることは患者への具体的な指示だ。そのために患者の状態を確認する。

 #2では「カゼ症状が楽になってきている」ことを受けて、フラベリックのみを中止し、様子を見るように伝えている。それに対して、#3では「咳が止まらない」ので、再受診するように勧めている。

 (O)情報が変わったことで、服薬支援も変わることが確認できる。「カゼ症状が楽になってきている」と「咳が止まらない」、これらはともに(O)情報であり、服薬支援を方向づける大事な情報だ。そして、薬剤師が質問することによって、これらの情報は入手されることが多い。ここが「薬自体の情報」ならば、服薬支援の必然性が怪しくなる。つまりSOAPのバランスがとれない。

 薬の情報(ここではフラベリックに聴覚異常の報告があること)は、判断の根拠とした情報なので、SOAPに組み込むとすれば、やはり(A)しかない。けれども本当は、薬剤師が薬の情報をSOAPに組み込む必要はなく、それをどこに書くかなんて俎上に乗せる必要もない(薬歴を通して、他の薬剤師への教育的効果を考慮するなら話は別だが・・・)。医者だって、薬の情報やガイドラインといったものをカルテに書いたりはしない。

 (S)と(O)はやはり患者の情報であるべきだ。そうでなければ、その服薬支援は一方的、画一的なものになってしまう。今回のように症例の構造が単純ではなく、もっと複雑ならば、より顕著に現れるだろう。

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2011年5月20日 (金)

小柴胡湯とその派生処方 その1

柴胡は少陽病薬
基本処方は「小柴胡湯」
No.8、9、10 の違いを理解する

 「六病位」と「表証・裏証」の概念を用いる。
 六病位とは病気のステージ分類のことであり、今回は陽の群の「太陽病期」「少陽病期」「陽明病期」が対象となる。これをもう一つの概念、症状的な「証」(表証・裏証)で考えると捉えやすい。つまり、太陽病→表証、少陽病→半表半裏証、陽明病→裏証と考える。

【基本処方:小柴胡湯】

 柴胡剤の基本処方。もちろん主薬は柴胡。病期分類では少陽病、表裏分類では半表半裏。寒熱往来、胸脇苦満、食欲不振、全身倦怠感などがある場合に用いられる方剤だ。

適応:少陽病(半表半裏証)

No.9 (小柴胡湯)  :柴胡、黄芩、半夏、生姜、大棗、人参、甘草

 この方剤の構成生薬の中に配合法則が3つある(健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック新版 P.53 参照)。

1、柴胡+黄芩 : この組み合わせは胸脇苦満を治すために欠かせない。黄芩は柴胡の作用を強めるとともに副作用も防止する

2、半夏+生姜 : ここでは柴胡の副作用防止と少陽病期での食欲不振のために半夏が加えられている。そして半夏が入る方剤には半夏の副作用を除くために、必ず、生姜が組み合わされる。

3、生姜+大棗 : いずれも補性薬。多くの方剤に副作用防止と作用緩和のために配合される。

 以上で構成生薬が5つ紹介できた(生姜がかぶっているので)。これに人参と甘草を加えれば、小柴胡湯の完成だ。

 人参は補性薬の代表生薬で、これが入っているということは虚証向きの方剤ということになる。

【小柴胡湯の派生処方】 

No.9 (小柴胡湯)  :柴胡、半夏、黄芩、人参、甘草、生姜、大棗

No.10(柴胡桂枝湯) :柴胡、半夏、黄芩、人参、甘草、生姜、大棗、桂枝、芍薬

No.8 (大柴胡湯)  :柴胡、半夏、黄芩、        生姜、芍薬、枳実、大黄

 
 小柴胡湯は7つの生薬から構成されている基本処方。これは覚える。

 次に、柴胡桂枝湯。これは小柴胡湯と桂枝湯の合方剤だ(甘草、生姜、大棗が重なっている部分でその前が小柴胡湯で後ろが桂枝湯)。つまり、半表半裏証と表寒証(自汗ありのタイプ)の両方に効果がある。具体的には、微熱が続く(自汗)、食欲不振、疲れやすいなどに効果がある。
 さらに、柴胡・芍薬の組み合わせが自律神経を調整する作用や鎮痛作用を、また芍薬・甘草で鎮痙・鎮痛作用を強めている。よって不安やイライラ、関節痛・身体痛にも効果がある。

 
 最後に、大柴胡湯。これは小柴胡湯から人参・甘草(補性薬)を除き、芍薬(平肝止痛薬)、枳実(理気薬)、大黄(瀉下薬)を加えて構成されている。つまり、半表半裏にくわえ裏熱を改善する方剤になっている。さらに補性薬を除き、枳実や大黄といった瀉性薬を加えたことで、実証向きの方剤へと変化している。

 裏熱、つまり胃腸に熱があると便秘になる(陽明病)。裏熱は経絡に沿って上へと駆け上がり、めまいや頭痛などを引き起こす。半表半裏症で便秘があるときは、小柴胡湯や柴胡桂枝湯ではなく、大柴胡湯が適している。

 まとめると、

 少陽病 → 小柴胡湯

 少陽病+太陽病(表寒症の自汗) → 柴胡桂枝湯

 少陽病+陽明病(裏熱から便秘) → 大柴胡湯

 となる。

【投薬時の注意点】

No.9 (小柴胡湯)  : 手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状があるときには使わない。その症状がひどくなる。特に、空咳(肺陰虚)には用いない(間質性肺炎などの副作用が出やすくなる)。

No.10(柴胡桂枝湯) : 手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状があるときには使わない。その症状がひどくなる。また、桂枝・人参が入っているので、高血圧で赤ら顔の人には注意が必要。

No.8 (大柴胡湯)   : 虚証(体力がない、下痢傾向)の方には向かない。下痢や腹痛など胃腸障害時は中止する。

 

 いずれも漫然投与に注意する。証が変われば、方剤も変わる。患者の体調を把握できれば、未然に副作用を防ぐことができるはずだ。

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2011年5月13日 (金)

セララを心不全に用いるとき、添付文書は役に立たない

併用禁忌がなぜ併用禁忌ではないのか?
禁忌が禁忌でないこともある
それらは「適応症」の違いに起因していた

CASE 94

60歳 男性

他科受診:A病院  併用薬:なし

処方内容:
Rp 1) フルイトラン錠2mg 1T・レニベース錠5mg 1T・バイアスピリン錠100mg 1T / 1x朝食後
  2) ピモベンダン錠2.5mg「TE」 2T・スローケー錠600mg 2T / 2x朝・夕食後
  3) セララ錠50mg 3T・ラシックス錠20mg 3T / 3x毎食後

疑義照会:
(内容)セララ‐K製剤併用にて、高K血症のリスクが高まるために併用禁忌となっている
(回答)A病院の指示。この処方で安定して退院できたのでこのままでよい。
* さらにセララの用法ならびに用量も添付文書の逸脱となっているが確認できず

患者のコメント:
「体調はもう大丈夫。ただ体重が増えないように言われている」

患者から得られた情報:
① 動悸やだるさなど高K血症を疑うような症状はない
② むくみや息切れ(-)、夜もよく眠れている
③ 利尿剤を夕に飲んでも頻尿で困ることない

□CASE 94の薬歴
#1 セララ-スローケー併用による高K血症のリスク(+)
  S) 体調はもう大丈夫。むくみや息切れ(-)
   ただ体重が増えないように言われている
 O) 動悸やだるさなど高K血症の初期症状(-)
   今回の処方にて体調が安定し、退院となる
 A) セララ-Kの組み合わせは併用禁忌だが仕方ないだろう
   しかし、高K血症のモニタリングは必要
 P) 身体のだるさやドキドキするときはすぐに受診を。
   体重だけでなく、きちんと採血を受けてKの値も見てもらいましょう。   
   
□解説
 
セララとK製剤の組み合わせは、高K血症のリスクが高まるために併用禁忌となっている。当然、疑義照会を行う。その回答は納得できるものではなかったが、その内容と患者の状態を考量した結果、そのまま投薬することにした。

 しかし、その組み合わせが高K血症のリスクを上げることに間違いはない(さらにセララの量も多い)。そこで、高K血症の初期症状を伝えるとともに採血の必要性も伝えている。
 
 

□考察
 
疑義照会の途中に感じた違和感、その正体が後でわかった。それは、なぜ同じアルドステロンブロッカーのアルダクトンAとKが併用禁忌ではないのに、セララとでは併用禁忌なのか? ということだ。そもそも、セララはアルダクトンAの改良型の位置づけのはずだ。

 その答えは「適応症」の違いにあった。セララは「高血圧症」のみの適応なのに対して、米国のセララ(商品名「インスプラ」)には「高血圧症」の他に「心筋梗塞後のうつ血性心不全」に対しても適応がある。そして、その2つの適応に共通の禁忌事項と高血圧症にのみの禁忌事項が設定されている。

<心不全と高血圧に共通の禁忌事項>
以下のいずれかに該当する患者には本剤を投与しないこと:
●投与前の血清カリウム値〉5.5mEq/L
●クレアチニンクリアランス≦30 mL/分
●以下の強力なCYP3A4阻害薬を併用している患者(例えばケトコナゾール、イトラコナゾール、ネファゾドン、トロレアンドマイシン、クラリスロマイシン、リトナビル、およびネルフィナビル)

<高血圧のみへの禁忌事項>
高血圧治療においては、以下のいずれかに該当する患者にも本剤を投与しないこと:
●微量アルブミン尿を伴う2型糖尿病
●血清クレアチニン〉2.Omg/dL(男性)、または>1.8mg/dL(女性)
●クレアチニンクリアランスく50 mL/分
●カリウム補給薬またはカリウム保持性利尿薬(例えばアミロライド、スピロノラクトン、またはトリアムテレン)を併用している患者

 つまり、高血圧にセララを用いる場合のみ、セララとK製剤は併用禁忌であって、心不全に用いる場合には併用禁忌ではないということだ(保険のことは考えていない。あくまでも有用性のみを考慮の対象とする)。

 セララの添付文書は、その効能効果が「高血圧症」だけであるがために、心不全に用いるときのことが想定されていない。

 例えば用量。最高用量は100mgに設定されている。これはセララの降圧効果が100mgでも200mgでも変わらなかったためであって、高血圧のみを想定して設定されたように見える(だからといって、心不全にどのくらいの量が適当なのかはわからない。文献やインスプラの添付文書を見るかぎり、25mg~50mgのようだ。やはり今回の症例は量が多いように思われる)。

 また、アルダクトンAとセララにおいて、高K血症のリスクファクターに違いがある(選択的アルドステロンブロッカ-のすべて P.213 参照)。高K血症のリスクはアルダクトンAが用量依存的なのに対して、セララは腎機能に依存している。そのため、セララの禁忌には

中等度以上の腎機能障害(クレアチニンクリアランス50mL/分未満)のある患者[高カリウム血症を誘発させるおそれがある。]
との記載がある。しかし先に示したように、心不全と高血圧に共通の禁忌事項には
●クレアチニンクリアランス≦30 mL/分
とある。さらに、AHAが作成する、心不全治療薬としてアルドステロンブロッカーを用いる際に高K血症のリスクを最小限にするためのガイドラインにも、「GFRあるいはクレアチニンクリアランス30mL/分以上を目安にする」との記載がある。
 
 よって、セララを心不全に用いるとき、添付文書は役に立たない。
 
 以上、得られた知見をトレースレポートで提出する。
 現在、患者のKは4.6、推定eGFRは75、随時モニタリングしていくとの回答を得る。

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2011年5月 6日 (金)

ルフィのブレークスルーとルフィを救った言葉、導いた言葉

ONE PIECE STRONG WORDS(解説:街場の『ONE PIECE』論)
尾田栄一郎 X 内田樹 の夢のコラボ
全巻読み返し、間違いなし

【ルフィのブレークスルー】

 では、ルフィのゾロに対するアドバンテージはどこにあるのか。それは、ルフィが「鍛える」ということにほとんど関心がないことにあると僕は思います。
 相対的な強弱勝敗にルフィは関心を持ちません。目的は「相手に勝つこと」ではなくて、ルフィにとって「たいせつな人」のために何かをすることだからです。多くの場合、ルフィのブレークスルーは「危機的状況にある仲間を救う」ための無我夢中の活動のうちで達成されます。(中略)
 たいせつなもののために生きる人間は、自分の中に眠っているすべての資質を発現しようとします。「スタイル」とか「こだわり」とか「オレらしいやり方」というような小賢しいものはルフィにはありません。そんなものは選択肢を限定するだけだからです。

(下巻 P.190、街場の『ONE PIECE』論②より)

 コツコツ鍛え上げているゾロよりもルフィが爆発的に成長する理由に溜飲を下げる。なるほど。

 薬剤師としてブレークスルーするためには、薬の勉強をコツコツしていくだけでは無理だ。それはいずれ限界にぶつかる。
 ではコミュニケーションスキルを磨けばよいのか。これもスキルだけを磨いているあいだは同じように壁にぶつかるだろう。線形的にレベルは上がるかもしれないが、非線形的にブレークスルーを果たすことはできない。

 知識やスキルを用いようとする対象は誰なのか。それは患者であるが、抽象的な意味での患者ではない。個人名を持つ具体的な患者だ。
 その患者一人ひとりのために、自分の資質を開花させていく。そんなプロセスの中にしか答えはなさそうだ。

【ルフィを救った言葉】

 失ったものばかり数えるな !!!
 無いものは無い !!!
  確認せい !!
 お前にまだ 残っておるものは何じゃ !!! (ジンベエ)

(下巻 P.65、巻六十 第590話)

 大切な人や大事なものを失ったとき、「がんばろう」なんて抽象的な言葉が届くのだろうか。もし友人にジンベエのような人がいたら「かけがえのないものが自分には残っている」と気づくことができるかもしれない。

【ルフィを導いた言葉】

 “疑わない事” それが“強さ”だ (シルバーズ・レイリー)

(上巻 P.134、巻六十一 第597話)

 ルフィの師匠、シルバーズ・レイリーの言葉。特別な能力である覇気の修行に入る際、ルフィをさらなる極みへと導いたフレーズだ。

 昭和49年、分業元年、政府主導の下に医薬分業ははじまり、今や分業70%超の時代。できあがった形には、お上はたいそう不満らしい。しかし医薬分業は門前スタイルで、地域に根を下ろしつつある。患者の心に、患者の薬物治療に深くコミットしている。

 お上の目指したものと形は違っても(それは端に欧米の薬局のあり方と違うだけなのだが)、「薬剤師の医療」は国民の健康に深く寄与できる。それは疑いようのないことだ。欧米とシステムが違うだけで迷ってはいけない。

 薬剤師は薬剤師の可能性を疑わない事。それが結果につながる。

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