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2011年4月 1日 (金)

あなたの服薬支援はなぜ「通じない」のか

山田ズーニー あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

この本には「服薬支援の心構え」が満載だ。

【根本思想~「何を言うか」より「どんな気持ちで言うか」~】

 その人の根っこにある想い・発言の動機、これを「根本思想」と言う。言葉は、ちょうど氷山の見えるところのようなもので、水面下には、その何倍もの大きな、その人の生き方や価値観が横たわっている。根本思想は、言葉の製造元。だから、短い発言でもごまかしようなく、にじみ出て、相手にわかってしまう。 (P.17)

 服薬支援に限らず、メッセージの8割は非言語情報で伝わるという。じゃあ、非言語情報を伝えるテクニックを、ではない。それは「にじみ出て」相手に伝わるものなのだ。相手を、患者を想うこと、関心を向けること、それが大切なのだと思う。

 根本思想は言葉の製造元だ。だから、根本思想に着目すれば、相手の発言のあっちをつまみ、こっちにこだわり、とするよりも、ずっと適確に相手を理解できる。(P.225)

 相手を理解しようとする場合も着目すべきは「根本思想」、つまりは相手の感情、基本感情だ。それは不安なのか悲しみなのか、それとも怒り。感情を理解することなく、ただただ患者の質問に直接答えているだけでは何も解決しないし、患者を理解できない。

【人は真空を嫌う】

 外から見て「わからない」という状態は「白紙」ではない。人は空白という状態に耐えられないから、憶測で埋めようとする。(P.33)

 この文章から連想したことは2つ。いずれもこの本の文脈からは外れる。

 1つは「人は真空を嫌う」ということだ。患者が何かを訴えようとするとき、こちらの質問に答えようとするとき、薬剤師と患者のあいだに無言の、もどかしいというか、そう「真空」ができる。これに薬剤師は耐えられない。待てない。次から次へといわゆる「服薬指導」をたたみかける。でもこの状態は「白紙」ではない。

 患者は言葉を探している。患者の内部の奥深くから、言葉が湧き出ようとしている。患者の根本思想が言葉を製造している。その大事な時間を、私は大切に見守ろうと思う。

 もう1つは「憶測で埋めようとする」ことだ。たとえば薬歴に書かれている情報。それはちゃんと質問して確認したものなのか。「わからない」から「憶測で埋めよう」としていないか。憶測で埋めるくらいなら「わからない」ものは「わからないまま」の方がまだマシだ。

【言葉は、関係性の中で、相手の感情に届く】

 理性より感情の方が、ずっとコミュニケーションスピードが速い。相手は、あなたを「自分を傷つける人間だ」と警戒する。正論をかざすことで、あなたの相手に対する「メディア力」は下がってしまう。(中略) 言葉は、関係性の中で、相手の感情に届く。だから共感を入り口にしたコミュニケーションは、正論より、ずっと確実に伝わる。(P.141)

 私は正論や正義をふりかざす人間が嫌いだ。だってそれは反論のしようがない。正しいからこちらは何も言えない。でもそれって呪いの言葉じゃないだろうか。

 翻って患者への服薬支援を考える。患者がはじめた取り組みに対して、誉めたり、認めたりすることなく、正論をかざしていないだろうか。患者のためを想ってお話ししても(それができているかも自問の必要がある)、私と患者との関係では、患者が私を警戒する。そんなことになっていないだろうか。

 「言葉は、関係性の中で、相手の感情に届く」。

 言葉を届かせるためには、感情への着目は欠かせない。そしてそこから先が私の課題だ。

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業界や業務に関係するブログはそれなりに見ているつもりですが、薬歴を公開しているちょっと珍しい「薬歴公開 byひのくにノ薬局薬剤師。」というブログ。もちろん個人が特定されるような情報は載っていません。 そこで紹介されていた本があって、面白そうだなと思って…... [続きを読む]

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