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2011年1月28日 (金)

睡眠薬による転倒の原因

睡眠薬によるふらつき・転倒
筋弛緩作用が強いことが原因なのか
それともTmax ? もしくは・・・

CASE 84

70歳 女性 
他科受診:整形 併用薬:セレコックス錠100mg 2T・ムコスタ錠100mg 2T / 2x朝・夕食後

前回の処方:
Rp1) ハルシオン錠0.125mg 1T・デパス錠0.5mg 1T / 1x寝る前

今回の処方:
Rp1) マイスリー錠5mg 1T・デパス錠0.5mg 1T / 1x寝る前

患者のコメント: 「ときどきふらつくことがあると先生に相談した」

患者から得られて情報:
① Drからふらつきの少ないタイプに変えておくと話あり
② 服薬後のトイレや歯磨きなどをしているときにふらつきがある
③ 夜中にトイレでおきたときにふらつきがある

□CASE 84の薬歴
#1 眠剤を服用後にすぐに床に就く
  S)服薬後のトイレや歯磨きなどしているとき、
   夜中にトイレで起きたときにふらつきがある
 O)ふらつきの少ない薬に変更と説明(+)
   ハルシオン → マイスリーへ変更  
 A)中途覚醒時のふらつきは改善しても入眠時のほうは服薬のタイミングが問題
 P)入眠時のふらつきはこの薬でも起こる可能性がある。
    この薬はすぐに効くので、服用後はすぐに床に就くようにしましょう。

   
 
□解説
 患者の訴える‘ふらつきの具体的な症状’にフォーカスする。すると、入眠時と中途覚醒時にふらつきを経験していることがかわかる。

 Drの説明とその処方変更からは、ふらつきの危険因子として‘筋弛緩作用’が浮かび上がる。

 筋弛緩作用の強いハルシオンから弱いマイスリーに変更されれば、中途覚醒時のふらつきは減るかもしれない(同じく筋弛緩作用の強いデパスが残ってはいるが)。しかし入眠時のふらつきは筋弛緩作用の強さによるものではなく、薬剤の血中濃度の立ち上がりの速さ、つまり‘Tmaxの短さ’による。

 であるならば、服用方法の見直しがなければ、入眠時のふらつきが繰り返される可能性は高い。そこで、床に就く直前に服用するようにアドバイスしている。

 
 
□考察
 こんなデータがある。

 藤田茂・鈴木荘太郎(2004). 転倒・転落と薬剤の関係に関する研究 病院管理,41,177-183.

Dsc_0186_3

 結論には「従来、薬剤の血中濃度の持続時間が長い薬剤(半減期の長い薬剤)は、転倒・転落のリスクが高いとされてきた。しかし、本研究では、特にベンゾジアゼピン類の睡眠薬と抗不安薬について、血中濃度が急激に上昇する薬剤(最高血中濃度到達時間の短い薬剤)ほど転倒・転落のリスクが高いことがわかった。・・・」とある。

 ‘筋弛緩作用だけでなく、Tmaxにも注目しなさい’というすばらしい視点である。

 たしかに、この資料を一見すると、筋弛緩作用の強いデパスは、Tmaxの短いハルシオンやマイスリーより転倒しにくくみえる。つまり急激に効くもののほうが転倒リスクが高いと。
 
 しかしこのデータの転倒件数は1錠あたりの発生件数なので、単純には比較できない。薬剤によってふらつきや転倒を引きおこす時間帯が異なると捉えるべきだろう。

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